【完結】仮面ライダーハルガ   作:じゅんけん

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 仮面ライダーハルガ!前回の3つの出来事!

 1つ!ルイとさくらは、オルタグアの仲間である風のハルガの存在を目の当たりにする!

 2つ!ふたりは、サメ型のオルタグアとの戦闘に苦戦するも、協力して群れのひとつを倒した!

 そして3つ!そこへ現れた風のハルガとの戦いで、ルイは、自分が過去の記憶を失くしたことを打ち明けた!



EPISODE 6 失われた記憶

 

 

 夕方の静かな浜辺に、さざなみの音が、風とともになびいていた。

 

 砂浜に立ち尽くすルイを、静かな紅い炎が覆った。ハルガの装甲が炎と一体となって、風の中に消えていった。

 

 炎を解いた彼は、波立つ海を見ていた。

 

「半年前、俺は意識を失って、街のどこかで倒れてた。」

 

 ルイは、さくらに背を向けたまま話しだした。彼女は、ただ黙って彼の口から出る言葉に耳を傾けた。

 

「そんな俺を見つけて、助けてくれた人がいるんだ。」

 

 ルイの目は、どこか遠い場所を眺めていた。ありもしない偶像に、視点を合わせようとしているかのようだった。

 

「その人のおかげで、おれは病院に搬送されて、、、意識を取り戻した。けど、目が覚める前のことは、何も覚えてなかった。自分の名前以外は、なにも。」

 

 さくらは青年がたどった予想外の過去を聞いて、驚き戸惑っていた。

 

「色々あって、おれは、その人の家に住むことになった。」

 

「じゃあ、、、」

 

「その子が、おれの新しい妹だった。その子は、、、」

 

 ルイはふいに話すのをやめた。震えながら、深く息を吸った。それから、後ろにいるさくらの方をふりかえった。彼の顔は、泣いているようにも見えたが、必死に感情をこらえているようだった。

 

「君もなんだろ」

 

「え?」

 

 さくらは、初めて見る彼の表情に、困惑していた。彼女と出会ってからずっと、ルイは気丈で勇敢な男を貫いていた。だが、血が繋がっていないとはいえ、共に暮らした家族が皆居なくなり、何も思わないはずがなかった。

 

「、、、どういう意味?」

 

 さくらはルイの言葉の意図を尋ねた。

 

「君も、記憶がないって、前に言ってたろ。」

 

「あ、うん、、、」

 

「俺達、意外と似た者同士かもな」

 

 ルイはそう言って小さく笑った。さくらには、無理に笑っているように見えた。

 

「無理してない?」

 

「してない。」

 

 意外にも、すぐに返事が返ってきた。でも、彼の顔は相変わらずだった。さくらが彼の目を見つめていると、ルイは顔を見られたくないかのように、そっぽを向いた。

 

「ちょっとだけ」

 

 ルイはそう言った。彼の背中は、さっきよりも激しく震えていた。

 

「、、、ずっと我慢してたのね」

 

 ルイは拳をぎゅっと握った。彼は子供のように泣きじゃくった。さくらは、初めて見る哀愁の漂う彼の背中を、後ろからそっと抱きしめた。

 

 橙色の夕日が、ふたりの影を東側に落としていた。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 部屋には、様々な大きさの画面が、部屋の中央に向けて設置されていた。画面の縁は金属質の銀色で、様々な角度で部屋の中のものを映していた。

 

 カイラは複数のモニターの前に座っていた。アルファベットの書かれたキーが曲線上にならんだ奇妙なキーボードの上で、両手をせわしなく動かしていた。

 

 ガラスが擦れるような、むーんという音がした。部屋の黒いドアが開かれていた。

 

 カイラはモニターのふちに、ブロンドの髪が映っているのを見た。彼はうしろを振り返らずに、話しかけた。

 

「アイゼか、、、君がここに来るとは珍しいな」

 

「ウッドに、様子を見に行けって」

 

「見ての通り、開発の途中さ」

 

 カイラはキーを打つ手を緩めず、そう答えた。彼の機械の左腕と、生けるものの右腕は、同じくらいの速さでキーボードの上を行き来していた。

 

「何を作ってるの」

 

「炎のハルガが持つエネルギーを利用して、新しいイクイップメントを作っているんだ」

 

 アイゼは、人の形や様々な立体モデルが、赤いラインで表示されているモニターを眺めた。

 

「なんのために」

 

「風のハルガが現れたらしいからね。こちらの戦力も強化せねばならない。」

 

「、、、」

 

 女は無言でカイラの忙しい手を見ていた。突然、彼の手がピタリと止まった。画面を見上げると、中央には小さな四角い枠が表示され、右端には回転する立方体が現れた。

 

 カイラはふぅっと息を吐き、うしろへ背を倒した。

 

「そういえば、そっちの計画は進んでるのか?」

 

 カイラはやっとアイゼの顔を見て、尋ねた。

 

「全個体殲滅計画、”トラロック”。」

 

 その大いなる計画の名に、アイゼは少したじろいだ。

 

「ええ。ウッドが装置の配置場所を選定し終えたわ、、、もう取り掛かってるはずよ。」

 

「そうか。」

 

 カイラは再びモニターに目を向けた。中央の枠内は、白一色で埋め尽くされていた。

 

「まあ、案ずるな。その計画を実行する役目を負うのは、君、では、ない。」

 

 画面の中の白い長方形が消えた。カイラは姿勢を前に戻し、作業を再開した。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 朝。

 

 ルイはさくらに連れられて、アジトの地下ガレージに来た。部屋の壁のひとつに、黒い銃器や装備がかけられていた。

 

「一応、あなたにも知っといてもらおうと思って。」

 

 さくらは壁に近づいた。中央左端にかけられた長い銃を持った。

 

「これは狙撃銃、D106。たぶん、あなたが最初に見た装備ね。」

 

 さくらは壁に背を向け、狙撃銃のスコープを覗き込んだ。ルイが驚いて、銃口の睨む先を振り返ると、反対側の壁に白い正方形の的があった。かちゃりと小さく引き金を引く音がしたかと思うと、轟音が鳴り響くと共に、的の真ん中に穴が空いた。

 

「一発の威力が高いし、結構狙いやすいんだけど、当然、近接戦には向いてないわ。」

 

 さくらは銃器の頭を押した。すると、大きな狙撃銃は長方形の薄い板に変形して、彼女の手のひらに小さく収まった。四角い板には、白の混ざった銀色で、D106と印字されていた。

 

「こうやって、小さくまとめられるの。この間、カイラが改良したらしいわ。」

 

 そう言って彼女は小さな板をルイに差し出した。

 

「え?」

 

「万が一、使わないといけない時が来るかもしれないから。念のため、試しておいて。」

 

「わかった。」

 

 ルイは黒いプレートを受け取った。大きさの割に、微妙に重く感じた。

 

「これか?」

 

 板の中央部を上にスライドさせると、瞬く間に元の銃器の姿に戻った。さくらはそれを確認すると、こくっとうなずいた。それから、壁にかかっている別の銃を手に取った。

 

「こっちは電撃を与える銃、D156。いわゆるスタンガンってやつね。前に戦ったサメのオルタグアとかには、よく効くわ。これでとどめを刺すことは難しいけど。」

 

「この鎌みたいな武器は、D206。刃先にすごく細い歯がついてて、斬れ味がすごいわ。でも、これを使ってオルタグアを倒すと、なんかやな感じがするのよ。だから、ほんとはあんまり使いたくないの。それから、、、」

 

 サーマルレンズ付きマスクのD306、相手との距離に応じて変形できるマシンガンD506、背中と足に着用できるブースター装備D606。いずれも戦闘のさなかでさくらが使っていたものだ。

 

「あと、一応。バイクマシンM7。最高時速300km、ってカイラは言ってた。まだそんなスピード出したことないけど。」

 

 ルイの手元には、プレート状に変形した装備が並んでいた。白い文字で156、206、306、、、

 

「装備の名前に、やたらと6が多いけど、何か意味はあるのか?」

 

 ルイが尋ねると、さくらは振り返って、彼の手中に収まる、小さくなった装備たちを見た。

 

「ああ、私の誕生日が4月6日なの。それで、最後の数字を6にしてるんだって。なんでそうしたのかは分かんないけどね。」

 

「じゃあ、406もあるのか?」

 

 言いながら、ルイはもう一度数字の並びを見た。306、506、606。

 

「それは、ないわ。」

 

 と、返事が返ってきた。

 

「4月6日だから、私のために空けてくれてるのかも」

 

 そう言って彼女は笑った。

 

「406、、、どこかで見たような気がするけど、、」

 

「うそ、どこで見たの?」

 

 さくらの目は好奇心に満ちて爛々としていた。ルイの頭のなかには、枠で囲まれた白い四角の内に、406という数字が刻まれている光景があった。が、それがどこかは分からなかった。

 

「うーん、良くは覚えてないな」

 

「そっか」

 

 さくらは少しだけがっかりな顔をした。

 

「じゃあ、思い出したら教えてよ。」

 

 そのとき、警告音が鳴りはじめた。さくらのバイクのハンドルの間が、赤く光った。

 

《オルタグアが現れた。》

 

 機械ごしの、カイラの無機質な声がした。それとともに、通信機の上に、現場の位置を示すマップが映し出された。さくらは駆け足でバイクの傍らに寄った。

 

「わかった、すぐ行く。」

 

 彼女はうしろを振り返って、ルイの目を見た。

 

「行ける?」

 

 ルイは強い眼差しでさくらを見て、頷いた。

 

「ああ、もう大丈夫だ。もう十分泣いた。」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 某都市圏のビジネス街。階層が20階を上回る高層ビルが立ち並んでいた。しかし、ビルの中に人影はなく、しいんと静まり返っていた。ルイとさくらはビルの屋上を、周りを見渡しながら走っていた。

 

 さくらは、道路を挟んだ向かいのビルの上に、複数の影を目撃した。

 

「いた!」

 

 彼女は敵がいる方角を指さした。ルイがその先に視線をやると、4体の爬虫類のオルタグアが、こちらをまっすぐ睨んで立ちそびえていた。

 

 ルイとさくらは敵の姿を認めると、戦いのために体勢を構えた。だがそのとき、背後から強い風が吹いた。

 

 後ろを振り向くと、そこには10体ほどの爬虫類のオルタグアが出現していた。一番前に立つ怪物が、ルイをめがけて跳んできた。

 

 ルイは身体を炎で覆った。攻撃を両腕で受け止めながら、炎のハルガに変身した。

 

 ルイの身体から、一段と紅い炎が湧き出た。紅い炎は、オルタグアの攻撃を押し返した。

 

「こっちは任せろ、あっちのオルタグアをたのむ!」

 

「でも、、、」

 

 さくらは不安そうな顔をした。

 

「大丈夫だ。」

 

 ルイは強く言い放った。

 

「分かった」

 

 さくらは向かいのビルの方角に駆け出した。塀の上に跳び乗り、屋上から飛び上がった。それとともに、彼女の背中と脚にブースターD606が装着され、彼女の身体は宙を舞った。続いて右手には電撃銃D156が握られた。

 

 さくらは向かいの屋上に着地した。向かいのビルの屋上に、白い稲妻が走った。

 

 ルイは、さくらの姿が見えなくなると、目の前のオルタグアたちに向き直った。

 

 ルイは体勢を低くし、怪物たちに炎の打撃を叩き込もうとしていた。だがそのとき、ルイの目の前に、なにかの影が飛び込んだ。

 

 その影は、着地するやいなや、先頭にいるオルタグアに向かってなにかを振り上げた。オルタグアは攻撃を受けたらしく、宙へ飛び返った。

 

 ルイの前には、黒い金属質の鎧が立っていた。ゴツゴツとした、ロボットのような鎧だった。それは、以前戦った巨大なロボットを連想させた。

 

 だが、鎧を着た人物は、巨大ロボットとは違った。見た目に反した素早い動きで、怪物たちに迫った。鎧で覆われた四肢を勢いよく振り回すかのようにして、連続打撃を決めた。攻撃を受けた4体のオルタグアの姿が、一瞬のうちに弾けて消え失せた。

 

 鎧の戦士は動きを止めることなく、残る6体の怪物たちに襲いかかった。圧倒的な速さと力で、オルタグアに着実にダメージを負わせた。その様はまさに、向かうところ敵なしであった。ルイは、突如現れた戦士の無敵っぷりに、唖然としていた。

 

 鎧の戦士は、6体のオルタグアの姿がなくなると、ピタリと動きをとめた。そして、ゆっくりと立ち上がった。

 

 ルイは、正体の分からぬ戦士を、警戒するような険しい眼で見つめた。風のハルガのように襲いかかってくるかもしれないと思い、身構えた。だが鎧を着た人物は、まるでルイがそこにいることに気づいていないかのように、平然と彼に背を向けた。その場を去ろうとしているようだ。

 

 しかし突然、強い風が吹いた。とともに、屋上のコンクリートを黒い影が覆った。上空を見ると、巨大な鳥の怪物がいた。ルイが立つ屋上をめがけて、まっしぐらに飛翔していた。

 

 巨大な怪物は、灰色に濁った大きな鉤爪をルイに向けた。それから、彼の身体を腰の辺りでがっしりと掴んだ。巨大な鳥は翼をはばたかせ、上へ移動した。

 

 ルイは鉤爪の中から抜け出そうと、全身に力を込めたが、びくとも動かなかった。顔を右に向けると、もう一方の大きな鉤爪に、鎧の戦士が捕まっていた。

 

 黒い鎧の戦士は、怪物の鉤爪の中で身体を縮めた。それから、全身に力を込めるかのように震えた。すると、黒い鎧が赤みを帯びていった。黒色だった鎧が、ルイの炎の装甲と同じくらいに紅くなったとき、爆発が起こった。

 

 巨大な鳥は爆発にひるんだかのように、ルイと鎧の戦士を掴んでいた鉤爪を離した。仰向けに落ちるルイの視界に、上空を飛ぶ巨大な鳥の姿が映った。巨大な怪物の脚に、紅い炎がまとわりついていた。

 

 向かいのビルの屋上では、さくらが1体のオルタグアと向きあっていた。コンクリートに立つ彼女の両腕には、鎌が装着されていた。

 

 鱗の怪物は、彼女に飛びかかった。さくらは両腕を前に掲げた。すれ違いざまに、相手の脇腹に斬撃を与えた。

 

 オルタグアの最後の1体の身体が消えた。さくらは立ち上がって、深く息を吐いた。彼女の目の前に、紅い影が飛び込んだのは、その時だった。

 

 さくらの前に着地したのは、ルイだった。彼女は、目の前にいきなりルイが現れたので、驚いた顔をした。

 

 だが少し遅れて、鎧の戦士が舞い降りてきた。さくらは鎧の人物が降り立った方を振り返った。

 

「誰?」

 

 鎧を着た人物は、さくらの質問に答えるかわりに、その場にしゃがみこんだ。それから、上空に向かって勢いよく跳んだ。鎧の戦士は、巨大な鳥のオルタグアと衝突した。

 

 すると、巨大な怪物の身体が白く閃光を放った。オルタグアは、人と同じ大きさの5体の鳥の怪物に分裂した。

 

 ルイは、5体の怪物を目がけて、跳び上がった。彼の身体は、真紅の炎で覆われた。上空を進むにつれて、ハルガの炎は段々と大きくなった。

 

 真紅の炎は、オルタグアたちとぶつかった。ルイは、炎に捕らえられた怪物たちに、炎の突撃を貫かせた。

 

 オルタグアとすれ違ったとき、ルイは何者かの声を聞いた。

 

",,,ラギィ,,,モノ,,,"

 

「え?」

 

(なにか言った、、、?)

 

 だが、ルイが真相を確かめる前に、怪物は爆発とともに散った。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 さくらはビルの屋上に立ち、ルイがオルタグアと決着を付ける様子を見ていた。だが、空を見上げていたのは彼女だけではなかった。

 

 ルイとさくらが最初にいたビルの上に、風の戦士が立っていた。その視線は、宙から舞い降りる黒い鎧の人物に注がれていた。

 

「あの力は、、、」

 

 風のハルガは、なにかを悟ったような声色で呟いた。

 

「やはり、やつらの近くに居させるのはまずい、、、」

 

 そう言って、蒼穹の戦士の身体は風に包まれて消え失せた。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 ルイはさくらの隣に着地した。それから、彼と同時に降り立った黒い鎧の戦士に顔を向けた。

 

 鎧を着た人物は両手で自分の頭を掴んだ。そして、頭に被っていたヘルメットのようなものを脱いだ。

 

「ひぃー、この新装備、暑くて喋れやしないっす」

 

 厚い鎧の中から出てきたのは、赤い目をした若い男の顔だった。その顔を見たさくらは、はっという表情になった。

 

「キキス、、、」

 

 さくらがそう呟くと、鎧を着た男はさくらの方に顔を向けた。

 

「久しぶりっす、さくらさん。」

 

 そう言って、赤い髪の男はにっと笑った。

 

「知ってるのか」

 

 ルイはさくらに尋ねた。

 

「うん。カイラと同じ、組織のメンバーよ」

 

 さくらはそう言った。それから、キキスこと鎧を着た男に話しかけた。

 

「なんで戦いに来たの?」

 

 若い男は視線を上にやり、考えるような仕草をして見せた。しばらくして視線を前に戻し、口を開いた。

 

「組織の一番上の人、の命令らしいっす。」

 

「一番上って、ウッドのこと?」

 

 さくらが尋ねた。

 

「いや、ダイラって人っす。ウッドさんは俺たちにとってボスじゃなくて、キャプテンって感じ、っすね。」

 

 若い男の言葉に、さくらは疑いの眼差しを向けた。赤く鋭い目で見つめられた男は、彼女から目をそらして、肩をすぼめてみせた。

 

「ま、俺も詳しくは知らないっす、他の人に聞くといいっす。じゃ、」

 

 そう言うなり、鎧を着たキキスは跳びあがった。

 

 さくらは何か言おうとしたが、そこにはもう男の影はなかった。キキスは、建ち並ぶビルのガラスの壁の上を跳ぶように伝って、瞬く間に彼方へ消えた。

 

「やっぱり、何か隠してるわ」

 

 さくらはむっとしたような口調で言った。さっきまでキキスが立っていた屋上のコンクリートの上を、むくれた顔をして見つめていた。

 

「ひとつ、聞いてもいいか?」

 

 ルイがそう尋ねると、さくらは振り返った。彼はすでに人間の姿に戻っていた。

 

「いいよ、何?」

 

「組織って一体、何なんだ?」

 

 以前、カイラからオルタグアと戦うように言われはしたものの、組織がなんのために存在しているのか分かっていなかった。

 

「そういえば、ちゃんと話してなかったね。」

 

 さくらはコンクリートの上を2、3歩前へ歩いた。昼の空を眺めながら、話し始めた。

 

「怪物オルタグアから人間を守る組織。名前はない。けど、オルタグアと戦うという同じ目的のために動いてる。

 

 組織のメンバーは4人。ウッド、カイラ、アイゼ、それからさっきのキキス。皆それぞれに役割みたいなものがあるの。ウッドは全体の計画進行を担う。カイラは装備品の開発、アイゼはオルタグアについての情報統制と、組織の拠点の維持。で、キキスは私の戦闘訓練の相手をしてたわ。今は何をしてるか分からないけど。

 

 あと、あいつがさっき言ってた、ダイラって人は、私も知らないわ。」

 

「覚えてる限りでは、私は最初から組織にいたのよ。でも、それが半年前くらい。それまではどうしてたのか、分からない。組織の人たちは何か知ってそうだったけど、何も教えてくれないし。」

 

 ルイは、さくらが以前、過去の記憶がないと話したことを思い出した。

 

「そう、なんだ。」

 

 ルイがそう言うと、さくらは振り返った。

 

「ただ、なんとなく、病院みたいな場所に居た気がするのよね。あなたに連れられて病院に行ったとき、なんだか前にも同じようなことがあった気がして。幻想かもしれないけど。」

 

 さくらはそう言って少しだけ笑った。そのとき、彼女の言葉を聞いて、ルイの記憶の奥に潜んでいたものが飛び出した。

 

「それだ!思い出した。」

 

「え?」

 

 さくらはルイの顔を見た。

 

「今朝、話してたこと。」

 

「何?」

 

「俺が見た、406の番号の正体。」

 

 ルイがそう言うと、さくらは固唾を飲んで、彼の口から出てくる言葉を待った。

 

「君が寝てた、病室の部屋の番号だった。」

 

 さくらは彼の言葉を聞いて、固まった。だが、突然弾けたように笑いだした。

 

「なによそれっ」

 

 ルイも彼女につられて笑った。

 

「でも、ある意味奇跡かもね、私の誕生日と同じ番号の病室で寝てたなんて」

 

 さくらは、ルイの口から飛び出たものが、なんということのないものだと知り、少しがっかりした一方で、ほっとしていた。

 

「あの病院、俺も前にお世話になってさ。すごくいい先生がいたんだ。今は、辞めたみたいだったけど。」

 

「それって、あなたが記憶を失って倒れた時のこと?」

 

「ああ、」

 

 ルイは返事をしたあと、神妙な顔になった。

 

「あの病院でもたくさんの人がオルタグアに襲われた。」

 

「、、、うん。私が寝てた時だよね。」

 

 ルイは頷いた。

 

「これ以上犠牲を増やさないためにも、戦わないと。」

 

 ルイは、鋭く青い眼で、空を見上げていた。さくらの赤い眼は、彼の見つめる先を追った。空は青く、澄み渡っていた。

 

「私も、みんなが犠牲にならないように、一緒に戦うわ。」

 

 ふたりの目は同じ方角を向いていた。ちょうど、太陽が南の空に昇った。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「なぜキキスを戦わせた」

 

 荘厳な男の声が轟いた。声の主は、険しい顔をして、正面を睨んでいた。

 

 黒い壁の部屋の、黒い丸テーブルに、二人の男が向かい合っていた。片方は灰色のスーツを着ており、もう一方は軍服を着た中年の男だった。

 

「なにか問題でもあるのか」

 

 カイラは冷たい口調で答えた。

 

「ダイラ様の意志に背く気か、カイラ」

 

 と、軍服の男はわだかまりのある口調で、彼に警告した。

 

「ウッド、、、あなたはいつからそんなに他人にすがりつくようになったのだ、、、」

 

「なんだと」

 

 中年の男は声を荒らげた。カイラはその様子を気にすることなく、言葉を続けた。

 

「所詮、ダイラは我々の目的遂行のために支持するだけの存在、、、実際にどんな手を使うかは、我々自身で決めれば良い。」

 

「貴様、、、ダイラ様に受けた御恩を忘れたのか!あのお方のおかげで我々はこうして存在しているんだぞ。」

 

 男は今にもカイラに飛びかかるような勢いで喋った。それに対し、カイラは冷淡な笑みを浮かべた。

 

「分かっている。私もそんなに大それたことはしないさ。約束の刻までは。」

 

 






<報告>
先日、仮面ライダーハルガのUA数が、600を突破しました!ありがとうございます。


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次回もよろしくお願いします!


<注意書き>

・本作は作者独自のフィクションであり、実在する人物や団体と一切の関係はありません。
・エピソードの更新頻度は不定期です。ご了承ください。

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