【完結】ようこそ、 比較人類研究部へ!! byウマ娘プリティーダービー 作:ちありや
「あははは、イヤだなぁ『ナノちゃん』。変な部なのは認めるけど、心配しなくても私は全然大丈夫だからさ!」
とりあえずこの娘らがお互いを『イッチー』『ナノちゃん』と呼び合っている程に仲が良いのは理解した。
恐らく『みさき』と『みずさわ』で出席番号が近くて親しくなったパターンだろう。知らんけど。
それはともかく
「だってイッチーは普段から危なっかしいから放っておけなくてさ…」
この三崎という娘は、どうやら水澤の身を心配して随行して来たらしい。悪い子では無いらしいのは理解するが、俺への視線が完全に犯罪者を見る『それ』だ。
だが本来心配されるべきは強靭なウマ娘ではなく、脆弱なヒトの身体の方である。俺は昨日の僅か1日で何度も水澤の暴力に晒されているのだ。ここは声を大にして言いたい所だぞ?
「それで三崎さん…? は結局何をしにここまで来たのかな? とりあえず水澤から何を聞いたのか知らないけど、大きな誤解が生まれている気がするんだよね…?」
俺の言葉に三崎は眉をひそめて無言のまま睨んでくる。まるで取り付く島がなくて説得できる状態に無い。
水澤といい三崎といい、どうしてうちには思い込みの強い女子しか来ないのか…?
「いえ、誤解かどうかは私が決めます。まずは今日1日部活を見学させてもらって様子をチェックします。せいぜいボロが出ないようにして下さいね」
何だろう? 『悪の女幹部』みたいなノリで挑戦状を叩きつけてくる三崎。どうにも部を立ち上げてからの俺は理不尽な目にばかり遭っている気がするなぁ……。
「受けて立つよナノちゃん! 先輩! 頑張ってナノちゃんの疑いを晴らしましょうね!」
いや
☆
「それで先輩、今日は何をするんですか?」
「うーん、昨日水澤が帰った後にタカチャン先輩から面白いネタを仕入れたので、今日は生徒会長に話を聞きに行きたいと思っている」
そう、北野会長が実はメジロ家のお嬢様であるという情報は、先に帰った水澤は知らないはずだ。
「おぉ、生徒会! 何だかよく分かりませんが、生徒会長を上手く説得出来れば私の野望にも一歩近付きますね!」
いやそうじゃねぇんだよ。そうならない様に俺が止めないといけないんだよ。やっぱり水澤を連れて行くのやめようかなぁ…?
「現生徒会メンバーにウマ娘は居ないはずですけど、何の話をしに行くんですか?」
水澤がポンコツな分、三崎が話を繋げてくれる。まだ三崎の方が話が通じる可能性が高いかも知れないな。
「実はな…」
昨日タカチャン先輩から聞いた話を2人に伝える。水澤は『メジロ家』というキーワードに目を輝かせつつも、北野会長の気持ちを配慮したのか、直後に考え込む様なリアクションを取った。
一方の三崎はあまりピンと来ていない雰囲気だった。まぁここ最近はメジロ家のニュースなんて良いものも悪いものも殆ど無い。一般の女子高生では『なにそれ?』という反応も無理からぬ事と言えるだろう。
☆
「ご無沙汰しておりますわ、鷹山 留吉さん。『比較人類研究部』は盛況の様で何よりですね」
俺達のアポ無し突撃にも関わらず、北野 愛璃先輩は笑顔で迎えてくれた。
生徒会室には他にも副会長や書紀、会計といった役職の面々が揃っていたが、差し当たって急ぎの議題は無いらしく、『15分ほど』という条件で会長を貸してもらえた次第だ。
「で、
北野会長は俺の見立て通り良家のお嬢様だった。それが今、答え合わせの様に優しく、上品で、それでいて一定の距離感以内に踏み込ませまい、という強い決意の結晶の様な存在として俺達の目の前に鎮座している訳だ。
お嬢様だと理解した上で感じる『圧』は、心なしか以前よりも強く感じた。
「はい、実は…」
「会長ってメジロ家の方なんですよね? やっぱりウマ娘って嫌いだったりするんですか?!」
いきなりやらかしてくれたな水澤!!
せっかく俺が当たり障りない話題から、ゆっくりとさり気なくウマ娘の話にスライドさせようと思っていた矢先に、なんてこった……。
なんつって、これは想定内のイベントだ。時間が限られていたのでさっさとウマ娘の話に移行したかったのはまちがいない。なので俺は、水澤には会長の生い立ちのデリケートな部分への口止めを『敢えて』しなかった。
水澤の暴走に対して、会長が応えてくれたならそれがベスト。そのままインタビューに持っていけば良い。
もし会長が水澤に対して嫌悪感を見せるなら、水澤を叱って追い出して「うちの莫迦が空気読めなくてスミマセン。では気を取り直して…」とこちらも被害者の体で、話を新しく切り出せば良い。
どちらに転んでも目的は達せられる計画だ。水澤には申し訳ないが俺の盾になってもらう。
「私がメジロの人間なのは確かです。その様子では私の生まれの事情もご存知の様ですね…」
静かに微笑んで答えを返す北野会長。美人の静かな微笑みって時々怖いよね。なんかちょっとでも対応をミスったら壁の影から恐いオジサンがたくさん出てきて、そのまま海外に売られてしまいそうで困る。
そんな事無いよね…?
「実は私、自分もウマ娘なんですけどウマ娘が嫌いなんですよ。なので会長さんとお話し出来たら『同志』を増やせるんじゃ無いかと思って…」
水澤が一気呵成に言葉を続ける。こいつをこれ以上調子に乗らせてはいけない。俺は話を俺のペースに持っていくべく水澤を抑えようとした。
「ええ、その手の話は昔からよくされております。そして残念ながらご期待には添えない事も申し上げておきます。私は決してウマ娘が嫌いではありません」
北野会長はしっかりと水澤の目を見つめ、キッパリと言い切った……。