【完結】ようこそ、 比較人類研究部へ!! byウマ娘プリティーダービー   作:ちありや

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休日と混沌

 『比較人類研究部』を立ち上げたのが木曜日、その日水澤やタカチャン先輩と出会い、金曜日に北野生徒会長に話を聞きに行った。

 水澤は生徒会室からフラフラと出て行ってしまってそれきり会ってない。俺も水澤を気にかけてはいるのだが、いかんせん彼女の自宅も携帯番号も知らされていない為に何らかの手を打てる状況では無かった。

 

 一応水澤の後を追っていった友人の三崎がフォローしてくれていると思いたいが、当然ながら三崎の連絡先も分からない。

 

 そういう事情があるので、俺は後輩達を気にしつつも変に動く事なく、土曜日と日曜日はテレビの前に釘付けになっていた。

 これは毎週土日には、トゥインクル・シリーズレースの中継番組が放送される為だ。水澤達が本当に心配なのは間違い無い、ウンウン。いやぁそれにしても土曜日(きのう)の京王杯スプリングカップ(GⅡ)は熱いレースだったなぁ……。

 そして今日は日曜日。GⅠである『ヴィクトリアマイル』の開催日だ。

 

 URAが筆頭株主を務める「ウマ娘チャンネル」という民放の放送局がある。名前の通りウマ娘だけに焦点を当てたテレビ局で、1日24時間ウマ娘に関する情報のみを全国に向けて発信している。

 

 ウマ娘のレースはトゥインクル・シリーズだけではない。ドリームトロフィー・リーグやNAU(ウマ娘全国協会)の主催する地方レースの中継、更には各地の才能の有りそうな小学生ウマ娘や社会で働く一般ウマ娘の紹介などと一風変わった情報まで網羅した、誠に欲張りな放送局なのだ。

 

 平日は地方レースやドリームトロフィー・リーグの予選、各レース場の食堂オススメメニューなんかをまったりと放送しているのだが、土日のトゥインクルシリーズのレースがある時はガラッと雰囲気が変わる。

 

 朝は9時くらいから晩は20時くらいまで、未勝利戦を含むトゥインクルシリーズ全レースの生中継と解説とウイニングライブ、レース前後のインタビュー等が延々映し出される。そして今は春のGⅠレースが毎週開催され、世間も大いに盛り上がっている所なのだ。

 

 ドリームトロフィーもリーグ予選の上位者による決勝戦は年初と夏場という、トゥインクル・シリーズのGⅠ開催期間を避けた形になっているあたり、やはりウマ娘人気の総本山はトゥインクル・シリーズなのだと思い知らされる。

  

 さて、先週はクラッシック級の1600m(マイル)チャンピオンを決める「NHKマイルカップ」があり、前述の通り本日はシニア級のマイルGⅠである「ヴィクトリアマイル」が開催される。

 

 そう言えば、水澤に言われるまでウマ娘の名前の由来に注目した事など今まで無かった。確かに改めて言われてみれば『これ名前か…?』と疑う様な語感や意味のウマ娘は、ウマ娘に対して甘々な俺の感覚からしてみても相当数存在していた。

 

 例えば先週の「NHKマイルカップ」の優勝者は『オカメハチモク』。これがそのまま故事成語でいう『岡目八目』であるならば、『第三者には当事者よりもかえって物事の真相や得失がよく分かる事』が名前になっている事になる。

 確かに人間の名前で名字+四字熟語、あるいは四字熟語単体という名前はついぞ見掛けた事がない。

 

 水澤では無いが、この娘は自分の『オカメハチモク』という名前をどう思っているのだろう? などと一昨日までは全く考えた事もない問題に頭を悩ませる様になってしまった。

 このオカメハチモクというウマ娘がどういう性格なのかまでは調べきれなかったが、水澤の様に変に(こじ)らせた考えを持っている事はまず無いだろうな……。

 

 今から始まるヴィクトリアマイルに出走する面々も、一番人気の高松宮記念覇者ヘラクレスビートを筆頭に、ブラッドハーレーやレーザーディスク、スターバトラーやピコグラムといった重賞の優勝者が多数参加している。

 

 ヴィクトリアマイルは主にティアラ路線の終着点としての意味合いが強く、出走するウマ娘の構成はクラッシック期にティアラ路線を走っていた娘が圧倒的に多い。

 もちろんヴィクトリアマイルはGⅠであり、このレースの上位入着者は秋にフランスで行われるジャック・ル・マロワ賞やムーラン・ド・ロンシャン賞の優先出走権が与えられる、という名誉もある。

 特にジャック・ル・マロワ賞は、過去に日本勢としてタイキシャトルが勝利している(ヴィクトリアマイルとは無関係だが)ので、それ絡みで知っている人もいるだろう。

 

 今、テレビでは東京レース場での前レースである青龍ステークスのメンバーによるウイニングライブが終了し、これからヴィクトリアマイルを走るウマ娘達が続々とパドックで己の勇姿と勝負服を見せつけている。

 先程の5名に加え、総勢16名で行われるレース。水澤のせいでどうしても個々のウマネームが気になって仕方がない。枠順で名前を挙げるとこんな感じだ。

 

1 ブラッドハーレー

2 ピコグラム 

3 メンキョカイデン

4 ヤークトパンター

5 スターバトラー

6 メイキョウシスイ

7 リュウコゲキシン

8 ヤオビクニ

9 ロンリーセガール

10 ヘラクレスビート

11 ヤマノテレディ

12 ミサイルパンチ

13 スクランダー

14 ブルーノア

15 ワレニテキナシ

16 レーザーディスク

 

 英語由来や日本語由来も合わさって、全く持って関連性が無い名前ばかりで混沌(カオス)の極みとしか言いようがない。

 仮にここに『アビスビースト』や『タカナチャンポン』が入って並んでいたとしてもきっと違和感はゼロだ。断言できる。 

 これだけ雑多に意味不明な名前が並んでいれば、確かに『そんなんいちいち気にする方がおかしい』となる。やっぱり水澤がおかしいんだよな。

 

 レースは高松宮記念覇者のヘラクレスビートと昨年の大阪杯覇者のレーザーディスクのGⅠホルダーの一騎打ちかと思われたが、終盤の直線で脚を溜めていたヤオビクニが先行、しかし最後はヤマノテレディが差し切ってゴールを決めた。

 

 この『差し切ってゴール』というシチュエーションは観客として見ると、とても盛り上がる気持ちのいい勝ち方だ。

 そう言えば先週のオカメハチモクもそうだった。彼女は第4コーナーまで16人中16位の位置でゆったり走っていながら、最後の直線で驚異的とも言える末脚を見せて1着をもぎ取った。

 こんなん見ている方がこれだけ気持ちが良いのだから、走っている本人はもうきっとヘヴン状態なんだろうな。

 

 よし、ウマ娘チャンネルのおかげで俺の動力源である『ウマ娘ニウム』はしっかり補給出来た。来週は『オークス』、更に再来週はいよいよ『日本ダービー』だ。楽しみで体が震える。

 よぉし、また明日から学業と部活を頑張ろう! あと水澤から身体測定データを忘れずにもらおう!

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