【完結】ようこそ、 比較人類研究部へ!! byウマ娘プリティーダービー 作:ちありや
「まぁ、それはそれとして、そのスズシロナズナとは今でも連絡とか取り合ったりしているのか? なんならここから府中ならその気になれば会いにも行けるよな?」
水澤の友人が現役レーサー、しかもGⅠを走る様なトップクラスのウマ娘というのは大変に大きな情報だ。是非とも話をしてみたい! なんならサインとか欲しい!
だが水澤は不機嫌そうに顔を曇らせた。
「連絡とかもう何年も取ってないですよ。それに私きっとあの娘に軽蔑されて嫌われてるから…」
あ、そうなの? お前さっき「仲良かった」って言ってたじゃん。まぁ女子同士は色々あるみたいだから、これ以上ツッコむのは地雷かも知れないな。
「そっか…
「えぇ多分… でも青葉賞って…」
「おっと、皆まで言うな水澤。たとえ『元』でも友人なんだろ? 不吉な事は言わない!」
『青葉賞からダービーに進んで優勝したウマ娘は居ない』
この青葉賞 (更に改称以前の「日本ダービー指定オープン」を含む)に絡むジンクスは40年間誰も打ち破れていない。水澤もレース界隈の常識としてその辺は理解しているらしい。
「ま、まぁどのみち私には関係ない話ですけどね…」
水澤は長い耳を垂らしフッと自嘲気味に微笑んで、また気まずい沈黙が訪れた。
それにしてもウマ娘って落ち込むと耳が垂れたり、興奮すると尻尾を振り回したりと、傍目から感情が読み取りやすいな。ホントどういうシステムで動いているのか気になるわぁ。
そろそろその辺も色々検証してみたい。あ、そう言えば水澤から身体測定データ貰う約束をしていたじゃないか。また忘れる所だった。
☆
「こんにちは。イッチー来てますか…?」
そう言ってノックしながら部室に入ってきたのは水澤の友人の
「お、ヤホー、ナノちゃん。会合どうだった?」
旧友の話題で暗くなりかけた雰囲気とは打って変わって、小さく手を振りながらフレンドリーな笑顔を三崎に向ける水澤。
俺に対して「キモい」から三崎には「ヤホー」だ。この扱いの差に腹が立たないと言えば嘘になる。だが俺だって腐っても『先輩』だ。この程度でいちいち腹を立てていては水澤の相手は務まらない。
せいぜい『お前ら2人で1人の男を取り合って互いに憎み合え』と平和な呪いをかけるくらいしかしないでおいてやる。
「どうもこうも中間テストに向けた連絡事項の打ち合わせだけだよ。あ、そうだ鷹山先輩、泉先生から湿布を持たされました。先生無視されて怒ってましたよ?」
…あー、そう言えばタカチャン先輩に会いに行く前に、水澤からやられた右手の治療に来いと響子先生から言われていたんだった。翌日には痛みが引いていたから、そのまま生徒会長に会いに行ったりしてたから自分の怪我などすっかり忘れていた。
まぁ意識すると鈍痛もあるし関節の動きに違和感あるけど、まぁ大した事は無いだろう。それこそ貰った湿布でも貼っておこう。
「…うん? という事は三崎がうちの部に入った事とかを響子先生と話したって事か? 変な噂を立てないでくれよ…?」
「私は入部してませんよ! 先輩こそ変な捏造話を広めないで下さい!」
すかさずツッコまれた。あ、そっか、
自然に三崎を部員と勘定していたから、俺、水澤、三崎の3人で『同好会』としてなら部の存続条件がクリア出来たと
部員集めかぁ… まだ期限はかなりあるとはいえ、危機感は持っておく必要がある。
三崎もあまり頭が良さそうじゃないから、なんとか言いくるめて入部させたい所存だ。
☆
「それで、今日は誰に会いに行くんですか?」
話が一段落ついた所で水澤が「今日のおやつは何ですか?」なノリで聞いてくる。うちは別に誰かに会いに行くのが目的の部じゃないんだからな?
「いや、今日は外部の誰かと合う予定はない。それよりも今日の予定は静かにデータの取得と検証だ。という訳で水澤、約束していたお前のデータを寄越せ」
催促する形で水澤に手を差し出す。水澤は入学時の身体測定データを俺に渡す約束をしているのだ。
「あぁ、そう言えばそうでしたね… 一応身長以外の体のサイズは黒塗りさせてもらいましたからね?」
水澤はカバンの中からメモ状の紙切れを取り出した。それを俺に渡そうとした所で横槍が入る。
「ちょっとイッチー、なんでそんなデリケートな個人情報を付き合いの浅い男の人に渡そうとするの? 駄目だよそんな事したら」
もちろん三崎だ。先週散々水澤がゴネていたのを何とか言い
「うん、私もそう思うんだけどさ、鷹山先輩が『ウマ娘を滅ぼすためにはデータが必要だ』って言うから仕方なくね…」
そう言ってまたしても『強制されて仕方なく』みたいな顔して「フッ」と
あーもう、ぶっちゃけ俺このコンビ嫌いだわ……。