【完結】ようこそ、 比較人類研究部へ!! byウマ娘プリティーダービー   作:ちありや

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考察と反撃

「戻りましたぁ。ハイこれ私とナノちゃんの入部届です」

 

 水澤と三崎の2人が帰ってきて、2人の入部届を受け取る。よし、これで最低限の人数集めは達成した。あとはのんびり活動してもいいし、もう2人欲張って正式に『部』として大手を振って活動するのも悪くない。夢が広がる。

 

 まぁ出来れば更なる新入部員は暴力癖のある奴とか、無性に疑い深い奴じゃなくて、純粋にウマ娘を愛する同志が来て欲しい。可能であれば俺を水澤や三崎から守ってくれて、尚且つウマ娘にも理解が深い屈強な男子が望ましいな。

 

 ここまで俺以外の男が出てこないのは偶然の産物であり、俺自身は決して女に囲まれたハーレム展開を望んでいる訳では無い。むしろ積極的に交際フラグを折っていくストロングスタイルで生きて行く所存だ。

 

「確かに受け取った。改めて『ようこそ比較人類研究部へ!』」

 

 歓迎の印として水澤と三崎、両者に握手を求めるべく右手を伸ばしたが両者共に無視された。まぁ水澤は俺の右手を砕きかけた前科があるから怖気づくのはまだ分かる。

 しかし三崎は俺の事を性犯罪者だと認識している為か、あからさまな嫌悪感で一瞥された。これからは仲間なのだから、そこまで嫌わなくても良いんじゃないかな?

 

「それで、私のデータから何かウマ娘の弱点が分かりましたか?」

 

 水澤から預かったメモを未だに片手で持っていた俺に対して水澤が質問してきた。だからウマ娘を害する為の部活じゃねーっての。いい加減理解しろよ。

 

「おう、たったこれだけのデータでも色々な事が分かったぞ。まず『ウマ娘はフィジカルが強い』!」

 

 高らかに宣言した俺に対して女子2人は冷たい視線を返してきた。『なに当たり前の事を今更ドヤ顔で言ってんだコイツは?』って顔だ。

 

「…まぁ待て、話は全部聞け。とりあえず『当たり前』の事も含めて一通り語っていくから」

 

 『既知の事でも省かずに述べる』のは話法としてとても大事な事だ。万が一お互いの前提条件が食い違っていたら、そこから会話が成立しなくなるんだからな。

 

「ただ『フィジカルが強い』と言っても全般的に能力が高い訳ではなくて、ウマ娘が本領を発揮できる場面は意外と限られている、という事はハッキリしたな」

 

 俺の言葉にウマ娘当人の水澤は思い当たる節があるのか『ウンウン』と頷いていたし、学力以外でウマ娘と競う人生を送ってこなかった三崎は、キョトンと不思議そうな顔をしていた。

 

「まず筋力面に於いては言うまでも無く強い。成人男性の5〜6倍はあると思う。現役から離れた水澤で『これ』だから、鍛えられたウマ娘がどれほど強靭になるのか、考えるだに恐ろしいな…」

 

「あ、そう言えば子供の頃から行事とかお祭りの時は荷物持ちさせられました。年末年始とか米俵担いであちこち手伝いましたねぇ…」

 

 水澤は昔話としてほっこり話しているが、米俵って60kgあるからね? 小学生女子に60kg担がせるとか普通に虐待だよな。まぁ担いでいるウマ娘の感覚だと4〜5kgに感じているのかも知れないけどな。

 

 三崎は水澤以前にあまりプライベートでウマ娘と接してこなかったのだろう、急にスケールの大きな話になって理解がついてこれてないのか、キョトンとした顔をしている。

 

「まぁ確かに筋力は凄まじい物があるが、瞬発力等は成人男性並みで…」

 

 俺は2人に水澤のデータから得た情報と考察を語って聞かせた。それに対して水澤の答えがこうだ。

 

「なるほど… ではそこまでのデータを得て、ウマ娘を倒す効果的な方法は思いつきましたか?!」

 

 …ホントにブレないなコイツは。だが確かに気づきが無かった訳では無い。貰ったデータとは直接関係が無いけどな。

 

「うむ、ウマ娘を退治するのに効果的な作戦を思いついたよ。水澤くん、ちょっと耳を貸してくれたまえ…」

 

 芝居めいた俺の言葉に「おお!」と目を輝かせて無防備に頭の耳を傾けてくる水澤。そこで俺は大きく息を吸い、水澤の耳に向けて「わぁっ!」と大きな声を出してやった。

 

 その瞬間、水澤は「きゃあっ!」と小さな叫び声を上げてその場にへたり込んでしまった。ショックのせいか俺の事を信じられない物を見るような怯えた目で見上げている。

 

「ちょっと先輩、何てことするんですか?! 人の耳元で大声出すなんて…」

 

「そこだよ!」

 

 ショックから立ち直っていない水澤に代わり、三崎が抗議の声を上げてきたが、俺の即答した言葉の意味が分からずに三崎も『どこだよ???』という顔をしている。

 

「ウマ娘の特色として『筋力』を挙げるのは幼稚園児にでも出来る。しかしウマ娘の強みは他にもある。それが『聴覚』だ。ウマ娘の耳はただ大きいだけじゃない、その聴覚も普通の人間の何倍もの力を持っている。競走ウマ娘の中には『音を遮断する』目的で耳当てを付けている娘も多いらしいからな。『聞こえすぎる』事が却って弱点になると考えた訳だ。そして水澤を見ろ。『こうかはばつぐんだ』!!」

 

 実はこれは水澤と出会う前から考えていた案件だ。単純に「ウマ娘って耳がとても良いらしい。では耳元で怒鳴ったらどうなるのだろう?」という疑問は抱いていたのだ。 

 勿論それが良好な結果をもたらすとは考え難いので、実践する機会は一生訪れないと思っていたのだが、存外早く実験する事が出来た。

 

 難攻不落に思えるウマ娘にも弱点があるのは間違いない。例えば精神面ではウマ娘とて普通の女子と変わらない。一般の女性が抱く人間関係等で受ける喜びや悲しみはウマ娘も変わらないはずだ。失恋や死別を始めとする親しい人物との別離は、決して小さくないダメージとなるだろう。

 

 害する為の攻め方なんてのは実はいくらでもある。ただ俺はウマ娘を傷付ける行為がしたい訳ではなくて、彼女達との相互理解を深めて親しくなりたいだけなのだ。

 

 ただ水澤は普段から『ウマ娘を滅ぼそう』とか寝言ばかり言っているから、その為の悪意の一端をその身に受けて『分からせて』やろうと思ったのだ。

 これで『こんな酷い目に遭うならウマ娘の殲滅は諦めます』とか考え直してくれれば御の字だ。俺だって水澤が憎くてやった訳じゃない。右手を握りつぶされたり、ウマ娘パワーで平手打ちされた事を根に持っているなんて訳があるはずがない。

 

 ただひとえに水澤に己の間違いを分かって欲しくてあんな事をだな……。

 

「先輩… なんでこんなヒドイ事するんですか…?」

 

 俺の反撃に怒り心頭で荒ぶってくると思われた水澤は、頭上の両耳を押さえ、両目に涙を貯めて悲しそうに俺を見つめていた……。

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