【完結】ようこそ、 比較人類研究部へ!! byウマ娘プリティーダービー 作:ちありや
「あー、それ聞いちゃいます?」
水澤はニンマリと顔を歪めて俺の顔を覗き込む。えー? やっぱり聞いちゃ駄目系の何か恐ろしい秘密があったりするのかな? 俺、組織から消されるのかな…?
「いや、その… ウマ娘ってほぼ例外なく『
どうせ消されるなら真実を知ってから消されたい。サスペンス映画の巻き込まれた一般人主人公みたいな気分になってきたな……。
「あまり気にしたこと無かったけど、確かに不思議だよね。ウマ娘って耳が4つあったりするの?」
三崎もこの話題に乗ってきた。よしこれで消されるとしても三崎も道連れだ。
「うーんとね、『耳』はあるにはあるんですよ。正確に言うと『耳の残骸』とか『耳だったもの』? みたいな。だから普通に眼鏡やサングラスを掛ける事も出来るし、冬場とか寒い時はイヤーマフで温めたりします」
水澤はここで言葉を切って、呆気にとられる俺と三崎に『話を続けていいですか?』と目で合図する。無言のまま頷く俺と三崎。ずいぶんシュールな絵面になっていると思う。
「『なぜ隠すか?』 って言うと単純に形が少しグロくてカワイク無いので、あまり他人に見せたくないんですよね。ヒトの耳たぶの上部分が3割くらい微妙に残ってる感じって言えば伝わるかなぁ…?」
今の説明で大体の所は理解できた。なるほど、そういう事ならウマ娘全体として『人目に晒したくない』気持ちは分からないでも無い。頭上の耳が本体だとして、本人が『カワイクない』と思う器官を興味本位で見られるのは不本意ではあるだろう。
そもそも人間の耳の形ってじっくり見ると、結構不気味な造形をしている。そこから更に半分退化して変形しているならば、女子としては『見せたくない』気持ちも出てくる、と言うのは共感できる。
「今の話が嘘じゃないって証拠に、見せて上げても良いですよ。…見ます?」
水澤は顔の右側を覆っている髪の毛をすくい上げようと手を当てる。こちらの返答次第では『見せてやらん事もない』って感じだ。
水澤の顔が少し赤くなっている気がするのは、やはり本心では恥ずかしさを抱えているからであろうか?
まぁ正直興味はある。そういう事も含めての部活だし。
…だがしかし『見せたくないから隠している』のだから、本人が乗り気でないのなら無理強いしない方が良いだろう。
「あー、いや、嘘だとは思ってないよ。ただ三崎が見たいんじゃないかな? って思ってな…」
「なんでそうやって私をダシにするんですか? 私、イッチーの耳が見たいなんて考えた事も無いですよ?!」
三崎は秒でツッコんできた。尻尾の時の様に、三崎に探らせて情報を得たい気持ちもまだあるのだ。
大体変に食い付いてお前らからセクハラとかどうとか言われない様に、俺は防御しながら生きる必要があるんだよ。
「まぁとりあえず、耳の名残りがあるってのは分かったよ。見せたくないなら無理に見せなくても良い。またの機会にしよう。そんでそっちの耳は聴力があるのか? あるとしたらどれぐらい聞こえるんだ?」
俺の問いに水澤は首を振って見せた。
「いやぁ、こっちは耳としての機能は無いですねぇ。ウマ娘イヤーはこっちがメインです」
水澤はドヤ顔で再び頭上の耳をピョコピョコと動かす。ホントどうやってんだアレ…?
恐らくだが、尻尾同様にウマ娘は胎児の段階からヒトとは違う生長を遂げているのだろう。親指の先程の大きさの胎児に
これは別に特別な事じゃない。ヒトの男と女も最初は
性同一性障害に圧倒的に男性が多い理由は、『母親の胎内で胎児の脳が男に変化しないまま、体だけが男になってしまった』事が原因だと考えられている。
ウマ娘も同様にヒトと違う部分は後から構成されていき、耳の様に元からあったが使われない部分は退化しつつも完全には消失しない、という事なのかも知れないな。
「あ、そう言えば私も気になってる事がひとつある! イッチー良い?」
俺が考えに耽っている隣で、今度は三崎が挙手して何か疑問を発表したいらしい。
「イッチーの『目』ってネコみたいに時々瞳の太さが変わったりするよね? あれもウマ娘みんなに仕組みがあるの?」
ほぉ、三崎も何だかんだで水澤の事を観察しているのだな。もしかして部の活動方針を理解したが故に、今まで見えてなかった物が見える様になったのかも知れない。素晴らしい事だ。
確かに耳や尻尾に比べると、分かりにくい上に地味な違いではあるが、ウマ娘の『目』もヒトとはかなり違っている。
三崎の言うように水澤の瞳は時々ネコの様な針型になる事がある。
ネコ等と同様に周りの光量に依って、目に入ってくる光を調節する機能があるらしい。
「うん、
その辺も仕組みはともかく理由付けが難しいよな。同様の目の動きをするのは犬や猫を始め、野生動物の中には掃いて捨てるほどいる。その中で何故、人類の築いた文明の中で生きるウマ娘にその様な古い
それらの解に通じる仮説として、俺は《ウマ》という存在が大きく関わっていると思っている。
ウマ娘達に宿る『異世界の勇者』の魂と言われる「ウマソウル」。そもそも《ウマ》とは何なのか? 異世界の勇者であるならば、その「異世界」とは何処なのか? どうやって行き来するのか? 連絡手段はあるのか? 誰が言い出して誰が確認したのか? これらの情報ソースが神話レベルにまで遡らないと出てこない上に、当然ながら信憑性に極めて乏しいのだ。
もし、ヒトとは大きくかけ離れた特徴であるウマ娘の耳や尻尾が、その
長い耳で遠くの音を捉え、速い脚で獲物を追い詰め捕食する。きっと夜行性で黒豹の様に暗闇から襲いかかるんだ。そんな猛獣みたいな特性を持った獣人の戦闘民族が俺の抱く《ウマ》のイメージであり、同様の考えを持つ専門家も多い。
もしこの世界に《ウマ》が実在していたら、あっという間に世界は征服されて、俺達ヒトは奴隷か食料にされる恐ろしい未来しか見えない。
だがそれほどに凶悪な種族であるならば、ウマ娘の様にレースで強弱の差をつけるのも変な話でもある。遺伝子に刻まれる程の
まぁ、そういう矛盾点が見つかる辺り、まだまだ俺の考察は甘いのだろうな。この部活動を通して徐々に真実を明らかにしていきたい所だ。
コンコン。
俺が思索に耽って、三崎と水澤の2人でなんやかんやと戯れている中、部室の引き戸を叩く音がした。
俺達3人の視線が音の主に集まると、戸を開けて少しぽっちゃりした1人のウマ娘が顔を覗かせた。
「こんにちは〜 タカチャン先輩から『面白そうな事をやってるよ』って聞いて来てみたんですけど、見学していって良いですか〜? あ、わたし2-Cの『ミノタウロス』っていいます〜」