【完結】ようこそ、 比較人類研究部へ!! byウマ娘プリティーダービー   作:ちありや

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推理と豹変

 しかし、このミノタウロス嬢。言葉通りに「比人研を見学しに来た」だけではあるまい。どうにも何か別の目的があってここに来たとしか思えない。俺の勘がそう伝えている。

 

 タカチャン先輩に会いに行った時には三崎はまだ居なかったので、タカチャン先輩経由の情報から三崎に用事があるとは思えない。

 となると俺か水澤に別件の用事があると考えるのが自然だ。

 

 問題は『それ』が何だか皆目見当がつかない点にある。

 

 俺に用事があるなら同学年なのだから教室に直接訪ねてくれば良い話だ。

 仮に人に聞かれたくない『俺に告白』とか色気のある話なら、わざわざ部室に乗り込んできて第三者である水澤達のいる前で話をする必要は無い。

 それに俺に用事があるならば、一瞬とはいえ俺に対して挑発的な視線を投げる意味がない。

 

 だとしたらミノタウロスが用事があるのは俺ではなく、水澤である可能性が極めて高い。仮に水澤だとして、どのような理由が考えられるだろうか?

 水澤も引退したとはいえかつて競走ウマ娘であった以上、彼女の足の速さを利用したい人達は少なからず居ると思う。

 だがしかし、ミノタウロスは演劇部という話だ。演劇部であるならば、水澤の足がいくら早かろうと特段役に立つことはあるまい。

 

 待てよ… タカチャン先輩は3年生でこの夏には引退するはずだ。ミノタウロスは大道具係という話なので、舞台に立つウマ娘がいなくなるのではないか?

 そう考えると、水澤のルックスを考慮すれば演劇部に対する引き抜きは十分に考えられうる。

 

 大方「『比人研』なんてわけのわからない活動をしている連中とつるんでいるよりも看板として演劇部に引き抜いてしまえ」という考えなのだろう。

 

 この考えが本当に正しいかどうかは分からない。だがしかし、カマをかけてみる価値はあるだろう。 

 

「ちょっと待ってくれミノタウロスさん、もしかして今日ここに来たのは何か別の理由があったりはしないかい?」

 

 俺の質問にミノタウロスは一瞬だけ動揺する視線を見せた。それだけで十分だろう、『ぎわくはふかまった』と言わざるを得ない。

 

「ん、ん〜? 何の事かなぁ〜? わたしはただ見学に来ただけでそれ以外に理由なんて無いよ〜?」

 

「そうですよ先輩、そうやって無闇に女の子を疑うからモテないんですよ?」

 

 うるせぇよ三崎、何でもかんでもモテに絡める女こそモテないぞ。

 三崎にツッコまれる一方、ミノタウロスはあからさまに俺から目を逸らしているし、水澤は状況を全く理解していないのか、ポカーンと口を開けてアホ面を晒している。

 

「とりあえずミノタウロスさん、あんたが大道具係というのは信じるが、役者をやっていないというのは嘘だな。もしかしてその芝居で水澤を演劇部に引き抜きに来たんじゃないのか?」

 

 探偵ものの「犯人はお前だ!」というシーンばりにズバッと決めたところだったが、3人の女たちは一様に呆けた顔をしていた。締まらないなぁ。

 

「いや、まぁその… 変に疑っている訳では無いんだが、せっかく新設した部の大事な部員を、そうそう引き抜かれる訳にはいかんのでね…」

 

 俺の考えが杞憂であればそれに越したことはない。ミノタウロスに頭を下げて非礼を謝罪すればそれで済む。それでミノタウルスさんが気を悪くすることもありえるだろう。

 

「……」

 

 目を逸らしたままのミノタウロス、何を言おうか考えているように見える。紡がれる言葉は『赦し』か『怨嗟』か…?

 

「フッフッフ… ば〜れ〜た〜かぁ〜!」

 

 歌舞伎役者のように大見得を切るミノタウロス。或いは某ヒーローに『外道照身霊波光線』を当てられた転生魔人が如く。

 しかし、(予想はしていたが)まさかすぎる展開に水澤達はおろか、俺も頭が追いつかずに固まってしまう。

 

「こちらの部活が真面目に文化的な活動をしているなら見逃そうかなぁ? とも思って偵察に来たのだけれども、こんな風にただ集まって駄弁っているだけの雑談クラブなら、水澤ちゃんはもっと有意義な部活をした方が良いと思うのよ! という訳で、タカチャン先輩も引退近いし、早急にウマ娘役の娘の補充が欲しいのよ。わたしじゃ出来ない役もあるしさ。水澤ちゃんは特に可愛いからヒロイン抜擢間違いなしよ、うん!」

 

 めっちゃ早口で喋ってきた。なんだよ、今までののんびりした口調は演技(フェイク)かよ。そんでもって俺の予感ばっちり的中かよ、嬉しくないなぁ……。

 

「私が、ヒロイン…?」

 

 こらこら、チョロすぎるだろ水澤。もう少し考える頭を持て。

 

「ミノタウロス先輩、さすがにそれは無理がありますよ? イッチーだって急に言われても困るんじゃ…?」

 

三崎(あなた)も可愛いから水澤ちゃんと一緒にどう? 『怒る演技』の上手い人は特に大募集なの!」

 

「え?! 私も、ですか…?」

 

 三崎よ、お前もか? お前まで軽い勧誘に流されて何処かへ行ってしまうのか? ていうか普通に部活動の妨害じゃねぇのか、このウシ娘は。

 

「あの、ちょっとミノタウロスさん…」

 

 さすがに我慢も限界だ。俺は傍若無人に暴れ始めたミノタウロスを掣肘するべく腰を浮かせた。

 

「鷹山くんも素晴らしい推理力だったよ! わたしの演技が今ひとつだったのは置いておくとして、これだけのヒントからわたしの目的を探り出すなんて、めっちゃ天才! わたし、そんな鷹山くんの頭脳から生まれる脚本とか読んでみたいなぁ… 鷹山くんも演劇部に入らない…? ていうか皆で移籍すればこのメンツでずっと駄弁れるよ?」

 

「俺の書いた脚本(ほん)で皆が芝居をする…?(キュン)」

 

 キュン… じゃねぇ! 危うく雰囲気に流される所だった。

 恐るべしミノタウロス。言葉をやたらと被せて相手を洗脳しようとするタイプか。油断すると開運の壺とか買わされてしまいそうだ。

 

「ちょっと待ってくれ! 水澤達も落ち着け! なんでいきなり演劇部に移籍する話になってんだよ? おかしいだろ?!」

 

「はっ!? そう言えばそうでした! 私、走ってばかりで演技なんかやったことないから無理ですよ…?」

 

 水澤は正気に戻ったらしい。三崎もそれにつられて正気を取り戻す。これで形勢逆転だ、このまま反撃してペテン師のウシ娘を追い詰めてやる。

 

「はっはー。さすがに雰囲気で言いくるめるのは無理かぁ… でもでもちょっと考えてみて」

 

 ミノタウロスはここで一旦言葉を切る。そしてもったいつけるように 俺たち全員の顔を見比べておもむろに口を開いた。

 

「このままじゃこの研究会は部員も集まらずに部として認められないよ? それならまとめて演劇部で面倒見るから、タカチャン先輩もいるしおしゃべりならそっちですれば良いんじゃない?」

 

 その言葉を受けて水澤と三崎の視線が俺の方へ向く。まるで『って言ってますけどどうします?』というリアクションである。

 何で『一考の余地あり』みたいな感じになっているんだよ? これはもう侵略戦争だぞ?!

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