【完結】ようこそ、 比較人類研究部へ!! byウマ娘プリティーダービー   作:ちありや

24 / 86
提案と逡巡

 俺の視線に込められた殺意を感じ取ったのか、ミノタウロスは一度言葉を区切る。その上で先程まで演じていたほんわかキャラの仮面を再度被り直した。

 

「あ、待って待って〜、わたしは別にこの『ひじんけん』? だかを潰そうなんてつもりはサラサラ無いんだよ〜。お互いに少ない人員を都合しあって、両方の部を存続させてWin-Winにしようって計画なのよ〜。だから話だけでも聞いて〜?」

 

 こちらに手を合わせて懇願してくるミノタウロス。ここまでほんわかキャラクターの演技を含めて、数多くの嘘をついてきたこの女を信用してやる義理も義務も本来は微塵も無いのだが、相手がウマ娘となれば話は大きく変わってくる。

 

 我々『比較人類研究部』はヒトとウマ娘の架け橋となるべく創設された部であって、(水澤以外の)ウマ娘と敵対する事は、方針として甚だよろしくない。俺だって(水澤以外の)全てのウマ娘とは仲良くしたいのだ。 

 

 まぁそういう事情も踏まえて、話だけなら聞いてやらん事もない。もし仮に本当にWin-Winの話になるのであれば決して悪い話ではない。話を聞いた後で『そりゃ無理だ』となれば、改めてその時に蹴っ飛ばしてやれば済む。

 

「とりあえず話だけは聞くけど、君が一度俺たちを裏切った事には変わりないからね? その分厳しくなるよ?」

 

 交渉継続の確認にほっと胸を撫で下ろすミノタウロス。水澤達も黙って俺とミノタウロスのやり取りを見守っている。未だに比人研にアイデンティティを持たない彼女達はどういうつもりで話を聞いているのだろう? 

 

「あのね〜、うちの学校って2つまでなら部活動や委員会活動の兼任が許されるでしょ〜?」

 

 そうなのか? 知らなかったぞ。あ、そう言えば三崎は保健委員会に所属していて、今回更に比人研に入部したんだったな。なるほど兼部という概念があるならば、俺もその辺のシステムをもっと上手く取り入れるべきだった。調査が足りなかったな……。

 

「だから2つの部で協力して、部員を融通し合う事で解散から逃れられるんだよ〜」

 

 なるほど、1人の人間を2つの部に所属させ、部員数を粉飾して報告することで活動人員実績として、部費を不正に受給しようという作戦なのだな。悪どい事を考える奴もいたものだ。

 

「しかしさっきの話しぶりだと、その『なんちゃって』入部じゃなくて本気で引き抜きをかけていた様に見受けられたがな」

 

俺の指摘にまたしても目を逸らすミノタウロス。マジでタヌキ女だなこの野郎……。 

 

「それに大道具小道具の費用の嵩む演劇部様と違って、比人研(うち)はあまり金を使わないから同好会のままでも大して不具合は無い。そちらの都合の一方的な話だけでは比人研(こちら)にメリットがあまり無い様な気がするんだが…」

 

「わたしが『比人研(ここ)に入部する』って言ったら〜?」

 

 なん、だと…?

 

 比人研は確かにウマ娘を研究する為の部活動だ。現状ウマ娘部員は水澤が居るが、ウマ娘とて多種多様なパターンがあるはずで、サンプルを水澤だけに限った『n=1』の理論では遅かれ早かれ破綻するのは必定だ。

 うちの学校全体には約20名のウマ娘が在籍しているが、すでに5月半ばの今から他のウマ娘生徒を入部させるのは容易なことではない。

 

 ウマ娘の新たなサンプルとして水澤以外の声は聞きたいし、タカチャン先輩も演劇部になら顔を出すだろうし、気軽に話も出来るだろう。

 

 どうすればいいんだ…………?

 

 悩む。大いに悩む。あくまで孤高の存在として『比較人類研究部』の純血を守り抜くか、他の部と融合して新たな血の交流を成すか?

 せっかく立ち上げた比人研が演劇部に飲み込まれるのは面白くないが、このまま水澤や三崎とだけダベっていても有意義な研究成果は出そうにない。

 

 部活動として互いに部員の都合をするシステムも、何か落とし穴を見落としている気がする。何よりミノタウロス1人では比人研の部員数は4名にしかならずに『同好会』止まりとなってしまうのだ。

 

「そ、そうしたら、もう1人… もう1人比人研(うち)に寄越してくれ。比人研が5名になるならその条件を考えても良い」

 

 長考の末の俺の返答にミノタウロスはニッコリ微笑んで頷き返した。

 

「うん、それなら今演出やってくれてる男の子が『リアリティの為にウマ娘の生活様式を勉強したい』って言ってたから話してみるよ〜。多分鷹山くんと話が合うんじゃないかなぁ〜…?」

 

 おお! 演劇部にそんな奴が?! しかも男だと? 良いね良いね、凶暴な水澤の機嫌を取りながら女どもの中身の無い話を聞き続けるよりも、専門的でマニアックな会話のできる同好の男子が欲しかったんだよ。

 

 となると断る理由がどんどん無くなってきてしまっているぞ? 確かに悪い話ではないとは思うが、このまま向こうのペースでちゃんちゃんと終わらせてしまうのも何だか面白くない。もう少し比人研を高く売りつけるネタは……。

 

「んじゃあ話は決まりでいいかな〜。話をつけておくから、また明日にでも皆で演劇部に遊びに来て〜」

 

 おいこら勝手に締めるな。こっちはまだ言いたいことがだな……。

 

 話の展開に飽きてきた水澤と三崎は思考を放棄して、『解決おめでとう様でした』とばかりに手を叩いてミノタウロスを称賛している。とてもじゃないが、ここから話を蒸し返したら女子軍団から総攻撃を受けるに決まっている。俺は口を閉じざるを得なかった……。

 

 その後は何事も無かったかのように水澤、三崎、ミノタウロスの3人で普通に雑談して活動終了となった。

 その間、俺は秘技(スキル)漆黒の潜伏者(ハイドインシャドー)』を発動して存在感を消し、特に会話には参加する事は無かった。今後の為に考えておかなければならない事が山積みだったからで、決して無視(シカト)されていた訳では無いからな。

 

 最後にミノタウロスがLANEのアドレス交換を申し出て、女達がスマホを持ち出してキャイキャイ言っている。

 

「鷹山くんもおいでよ〜。みんなで盛り上がろう〜」

 

 などとミノタウロスに誘われ、俺もLANEのグループリストに仲間入りする事になった。俺の事を性犯罪者の様に扱う水澤や三崎だけでは、確実に俺は確実にハブられて、帰宅後に孤独に枕を濡らしていたかも知れない。

 その点についてはミノタウロスには感謝している。まぁ水澤達とLANEで繋がったからと言って何が変わるわけでも無いのだが……。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。