【完結】ようこそ、 比較人類研究部へ!! byウマ娘プリティーダービー 作:ちありや
翌日の放課後、俺と水澤はあくまで『比較人類研究部』の活動の一環として演劇部の部室へとお邪魔していた。三崎は「私は既に保健委員と兼部しているので」と、同行を辞退している。
部室にはタカチャン先輩とミノタウロス、さらに小柄で陰気そうな男子生徒と、髪を後ろでリボンで縛ったギャルっぽい女生徒がいた。
「助かるよ鷹山く〜ん。ミノ子がだいぶ無茶言ったみたいだけど、怒らないであげてね」
手を合わせて俺に詫びるタカチャン先輩。ミノタウロスはミノタウロスで先輩に怒られて意気消沈しているのかと思いきや、なぜか思いっきり鼻高々でふんぞり返っている有り様だ。どういう状況なんだよ?
「1学期いっぱいであたしも引退だからさ。部員確保に必死なんだよ…」
タカチャン先輩の言葉も分からないでもない。演劇部なんてのは大道具や小道具にやたら金がかかるから、部費確保に必死になるのは致し方ない。
『部』と『同好会』では学校から支給される予算にも雲泥の差があるし、部員不足により廃部となったら、それこそ活動自体ができなくなってしまう。
「とりあえず空いてる所に座って。まずは演劇部のメンバーを紹介するね、あたしとミノ子は知ってるからいいよね? こっちの男の子が2年生の
「よろしく…」
小柄な男が立ち上がって頭を下げる。抑揚の薄い声に生気は感じられない。何だろう? 亡霊とかアンドロイドの役とかやらせたらハマるかもしれないタイプだ。
「ちぃーすっ!
ギャルっぽい娘が横ピースを顔に自己紹介する。校内だから化粧こそしていないが、一旦町に繰り出したら、元の人相がわからないレベルで化粧を盛ってくるタイプだろう、知らんけど。
それにしても彼女陸上部か… ヒトの女子陸上の選手から見て、完全上位互換の『ウマ娘』とはどのように見えているのだろうか? これは大変興味あるな。この橘という娘と一度ゆっくり話をしてみたいものだ。
「俺は『比較人類研究部』部長の鷹山です。こっちは部員の水澤、イチ… です…」
まずはこちらも自己紹介。2人で立ち上げり会釈をする。水澤に関しては本当は『アビスビースト』と名乗らせるのが正しいのだろうけど、その瞬間に水澤からの殴打乱撃が繰り出される可能性を感じて、俺は自己防衛の為に敢えて忖度してみた。
☆
「ねぇねぇ、ミノちゃん先輩から聞いたんだけど、水澤さんてトレセン学園から転入してきたって本当? いいなぁ、足が速いんだろうなぁ、アーシもウマ娘に生まれたかったな〜」
自己紹介を終えて雑談タイムに入った訳だが、早速
つまりこの橘って女生徒も「人の話を禄に聞かない」タイプの人間という事か……。
「ト、トレセン学園になんて入ってないよ… むしろ入学試験で落ちてるから…」
さすがの水澤もギャル属性は苦手なのかいつもの勇ましさが鳴りを潜め、本来言わなくても良い情報を早速開示してしまっている。
しかし『ウマ娘になりたかったヒト娘』というパターンもあるのだな。アスリートを目指すのならば、ウマ娘の様な強いフィジカルは言うまでもなく羨望の的だ。この橘と北野会長で話をさせてみたい。きっと大変興味深い話が聞ける事だろう。
「そ、それにウマ娘になったらなったで、その分ハードルは上がって過酷になるわけだし、それに結果が出ないと自分がすごく惨めな気持ちになるから、あまりオススメしないよ…?」
水澤が俺がツッコもうと思っていたことをツッコんでくれた。男と女とウマ娘、言うまでもなく三者三様の利点があり難点がある。楽な性なんてありはしないのだ。
「そうなん…? でも単純に時速50kmとかで走るのは凄い気持ちよさそう〜。1回でいいからそんな速度で走ってみたい〜」
「そ、そのくらいなら私が抱えて車道(この場合『ウマ娘専用レーン』)を走って上げるよ…?」
「マジで?! 水澤さんやさしー! 超イケピじゃん! ねね、『イッちゃん』て呼んで良い? アーシもユカリで良いからさ!」
「えぇ?! あ、はい…」
1年女子2人組は、出会って5分で早々に仲良くなったらしい。タカチャン先輩とミノタウロスは『作戦通り』とでも言わんばかりに、悪の組織の幹部よろしく満足気に頷いている。
彼女らの目的が初めから水澤なのは明らかだ。俺は水澤のおまけにすぎない。それは分かっているが、それが故に腹が立つ。
「鷹山くん、ウマ娘の生態に詳しいんだよね…? 脚本作りや演出の為に話を聞いても良いかな…?」
いつのまにか俺の隣に忍び寄っていた男… えぇと星埜とか言ったっけ? が話しかけてきて
生気の無い顔色をしているのに、目だけは飢えた肉食動物の様にギラギラと輝いている。食いつかれはしないだろうけどちょっと怖い……。
「あ、あぁ… 俺の分かることなら何でも聞いてくれていいよ… ていうかウマ娘の事なら、当事者のタカチャン先輩やミノタウロスに聞いた方が早くないか…?」
俺も引き気味で対応する事になる。確かに男子の同志が欲しいとは言ったが、これはちょっと思ってたのと違うんだ……。
「まぁそうなんだけど、女子には聞きづらい事もあるからねえ…」
何だよ『女子に聞きづらい事』って? エロい事か? エロい事なら俺だって知らねーぞ? ウマ娘はおろかヒト娘に対してもエロい事はほとんど分からないからな?
…おいちょっと待て? ミノタウロスは比人研に兼部するもう一人は『演出担当の男子』と言っていた。つまり