【完結】ようこそ、 比較人類研究部へ!! byウマ娘プリティーダービー   作:ちありや

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偽装と来訪

「『田舎の友達』…? ってまさか…?」

 

「はい、『香椎ランナーズクラブ』の仲間で、今は佐賀のトレセン学園で走っている娘たちです…」

 

 おお、確か水澤が小学校時代に走っていたクラブで、確かそこに水澤の旧友であるスズシロナズナも居たとかいう話だったよな。

 

「へぇ、昔話に花が咲きそうで良かったじゃん。何が問題なんだよ?」

 

 あっけらかんと返した俺を、また機嫌の悪そうな水澤が睨みつけてくる。

 

「問題だらけですよ! ミヨにもヨシにも3年会ってないんですよ? 結果はよく知らないけどあの娘達はまだ地方で頑張って走ってるし、ナズナに至っては日本ダービーを走るってのに、走りから落伍(ドロップアウト)した私がどのツラ下げて会えるっていうんですか!?」

 

 あぁ、そういう事か… 確かに現役ランナーと顔を合わせるのは精神的にキツい物があるだろうな。それは分かるわ。

 

「なら別に会わなくても良いんじゃね? 『お互いに気まずい思いをするだけだから会うのはやめましょう』って返せば…」

 

「それじゃ私が薄情な人間みたいじゃないですか! それにナズナはともかく、久し振りにミヨやヨシには会いたい気持ちもあるんですよ…」

 

 めんどくさ! 女子めんどくさ!! 何なんだよ? じゃあ一体どうしたいんだよ?!

 

 水澤の声が大きくなってきたのを受けて、残りのメンバー(三崎、星埜、ミノタウロス)が俺らの周りに集まってきた。

 

「話は聞かせてもらったよ水澤ちゃん〜。分かるよ〜、昔のウマ娘仲間に会うのって勇気いるよね〜」

 

 ミノタウロスも走りから脱落したウマ娘だ。『勇気がいる』のは本当だろう。そしてミノタウロスの言葉に三崎が懸命に頷いている。お前ウマ娘じゃないじゃん。星埜は星埜で無言でノートを広げだした。きっとこの(イベント)をメモして後で面白おかしく脚色しようって魂胆だな。

 

「そうなんですよミノちゃん先輩〜、私どうしたら良いのか分からなくて…」

 

 ミノタウロスと意気投合する水澤。まぁ一般ウマ娘あるあるなシチュエーションなのかも知れないな。

 

「ふっふっふっ… わざとか無意識かは分からないけど、水澤ちゃんは最初の相談相手をわたしや三崎ちゃんじゃなくて鷹山くんにしてるよね〜、ここにヒントが隠されていると思います〜」

 

 …???

 

 ミノタウロスが何か含んだ物言いをしてくるが、俺には何の事だかさっぱり分からない。水澤は単にウマ娘研究の第一人者であるこの俺を頼って対策を聞きに来ただけの話ではないのか…?

 

 話を振られた水澤も俺と同様『???』な顔をしている。三崎は何か察したのか、『おお』と手を打っていたし、星埜は我関せずと何かを書き殴っている。

 

「つ、ま、り〜、水澤ちゃんは古いお友達に引け目があるから会いづらいんだよね〜?」

 

 ニンマリとした顔で勿体ぶった言い回しをするミノタウロスに対して、心細そうに「はい…」と頷く水澤。

 

「ならば〜、現役で走ってる娘達が持っていない物を〜、水澤ちゃんが彼女達に見せつけてやればいいのよ〜」

 

 はぁ… もう少し分かりやすく具体的な説明をお願いしたい。水澤もそんな顔をしている。

 

「答えは〜、『ボーイフレンド』で〜す! トレセン学園は中央も地方ももれなく女子校なので〜、彼氏はおろか男友達すらいない娘がほとんどなのよ〜。だから『彼ピと青春してま〜す』みたいなネタは攻撃力が高いと思うんだ〜」

 

 ここまで聞いて俺と水澤の2人のリアクションは共に「???」だった。何故かここでキレたのが三崎だった。

 

「もう! 何で2人して揃ってニブチンなんですか?! 鷹山先輩が『ニセ彼氏』に扮してイッチーの友達と会えば、イッチーの劣等感も(そそ)がれるって話ですよね?」

 

 三崎の援護に満足そうな微笑みを浮かべて何度も頷くミノタウロス。

 え? ちょっと待って。それってつまり俺と水澤がカップルの振りして水澤の友達と会うって事…?

 

「そう〜、鷹山くんはウマ娘オタクだけど、黙ってれば知的なメガネイケメンに見えるから、適任だと思うのね〜」

 

 おいおい、待ってくれ。急にそんな事を言われたって心の準備って物があるし、水澤だって散々ケンカしてきた俺みたいなのが相手じゃその気になったりしないだろうし……。

 

「お願いします鷹山先輩! あの娘達と会う1日だけで良いので、偽装彼氏役やってくれませんか?!」

 

 ノリノリじゃん。ウソでしょ……。

 

 ☆

 

「あ、あの娘達ですね!」

 

 日本ダービーを明日に控えた土曜日、羽田空港の到着ロビーで、はるばる福岡からやって来た2人のウマ娘を迎える。

 水澤も何だかんだ言って旧友との再会が嬉しいのか「おーい、2人ともこっちこっち~!」とはしゃいで手を振っている。

 普通の人間ならまだ聞き取れない距離だったが、さすがはウマ娘、水澤の声を正確にキャッチして嬉しそうに手を振り返してきた。

 

「あ〜、イチや〜! 懐かしか〜。元気やったと?」

 

 2人のウマ娘のうち、活発そうに見える佐目毛の娘がいそいそと寄って来て水澤とハイタッチする。続いてもう1人のおっとりとした感じの青毛の娘が水澤と手を取り合って再会を喜んでいる。

 

「イッちゃん3年ぶりやね〜、変わりは無いとね?」

 

「2人とも元気そうで何よりったい。前原先生は元気でおると?」

 

 旧友を前にして福岡弁に戻る水澤、ちょっと新鮮で楽しい。そのなんとか先生ってのは多分クラブのコーチか何かだろうな。

 

「あん人はウマ娘に蹴られてもピンピンしよーが。多分殺しても死なんちゃろ」

 

 物騒な話で盛り上がって爆笑する3人のウマ娘。楽しそうで何よりなんだが、ここまで完全に空気扱いの俺もそろそろ構って欲しいんだが…?

 

「そう言えばイッちゃん、そちらの男性は…?」

 

 お、おっとりタイプが俺に気づいたぞ。さぁ水澤よ、存分に俺の事を友達に紹介するが良い!

 

「えっとこちらは『鷹山さん』、部活の先輩で… 彼氏、みたいな…?」

 

 ぶちまけた水澤と、興奮して「「キャ〜っ!」」とキャホりだす2人の友人を見比べながら、俺は変わらぬ居心地の悪さを味わっていた……。

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