【完結】ようこそ、 比較人類研究部へ!! byウマ娘プリティーダービー   作:ちありや

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羞恥と大義

 水澤の怨念(ルサンチマン)タイムも終了したので、お茶と茶菓子を補充して、心機一転トークタイムに入りたい。

 

「以前から不思議なんだけど、何故ウマ娘はその細い体で一般男性の何倍ものパワーを持っているのかな? もう筋肉組織の仕組みからして違うのかな?」

 

「え? 私細く見えますか? やったぁ、最近ダイエット頑張っているから効果出たのかな…?」

 

 …あの、話聞いてる?

 

 嬉しそうな所を申し訳ないけど、水澤(きみ)のダイエットとか別に興味無いんだ……。

 …いや違うな、そう言えばウマ娘の体重ってのも全般的に一般女性と比べて重いのだろうか? やはり筋肉量が多いと比重も増えるので、ウマ娘の体重事情も知りたいぞ。

 

「ちなみに強靭なパワーを活用するには、自分自身もある程度の重量が必要になると思うんだけど、ウマ娘の体重って…」

 

「セクハラやめてください」

 

 間髪入れずにピシャリと合わせて来やがった。何なの? 何でそんな訓練されてる様な上手いタイミングでツッコめるの?

 

「…いやいや違うぞ水澤。お前さっき『何でも協力したい』『モルモットになるつもり』とか何とか言ってただろ。これはセクハラとかで無くて、純粋な研究の第一歩なのだから協力してくれないと困る」

 

 俺の指摘に言葉を詰まらせる水澤。自分の発言を盾に反論されればグウの音も出ないだろ、フフン。

 

「あ、まぁそうなんですけど、やっぱり乙女のプライバシーは尊重してくれると嬉しいかなぁ、って…」

 

「そんな甘っちょろい考えで理想を叶えられるとでも思っているのか? 誰にも言わないからさっさとデータを提供しなさい」

 

 ここは変に日和らず堂々としている方が良い。こちらがキョドると逆にセクハラ目的だと邪推されてしまいかねないからな。

 

「うぅ… 分かりましたよ… ホント誰にも言わないで下さいよ? 情報漏らしたら()ちますからね?」

 

「大丈夫だ。俺を信じろ」

 

 この件に関しては本当に外部に漏らすつもりは無い。ウマ娘に殴られたら命の危険すらあるから尚更だ。

 

「じゃあちょっと耳を貸して下さい…」

 

 水澤はおもむろに立ち上がり、俺の耳に口を寄せてきた。彼女の息遣いが少しくすぐったい。

 俺達以外に周りに誰もいないのに、水澤は顔を真っ赤にして小さな声で俺に耳打ちする。

 

 なるほど、57kgか……。

 

 彼女の身長が150cm代中盤だろうから、『一般の女性よりは筋肉質な体重』という感じなのだろうか? 予想していたよりも遥かに軽かった。

 というか、俺よりも体重軽いのに俺よりもパワーあるんだよなぁ。不思議だよなぁ……。

 

「うぅ… 入部してすぐこんなセクハラを受けるとは思ってませんでした…」

 

 水澤のやつ、真っ赤な顔をしたまま言うに事欠いて変な事を言い出した。

 それは違うんだ。俺はエロ目的じゃなくて純粋にウマ娘を研究したいの! それに『何でも協力する』っていう言質も取ってるの!

 

 ☆

 

「じゃあウマ娘の力の秘密について次の調査な。入学して間もなくに身体測定しただろ? その時のデータって教えて貰える?」

 

 背筋力だの握力だのといった調査はウマ娘を含む全校生徒が行っている。改めて調べなくても、つい先月のデータがあるならまずそこから参照させてもらって……。

 

 水澤は胸を隠す様な仕草で、俺に対して警戒した視線を送っている。今度は何だ?

 

「さ、さすがにスリーサイズまで調べるのはセクハラだと思います… やっぱり私、帰りますね…」

 

「ま、待て! 俺が知りたいのは握力とかジャンプ力とかの体力面であって、お前のバストサイズじゃない!」

 

 俺から距離を取って立ち去ろうとする水澤を慌てて引き留める。

 まぁ俺も健全な男子生徒なので女性のバストに全く興味が無い訳では無い。それは認める。

 実際、制服のセーラー服の下に隠れている水澤の胸は、詳細こそ不明だが『それなり』の物がある様に見て取れる。

 

 だがここで俺が劣情に負けてしまったら「比較人類研究部」其の物の存続に赤信号が点ってしまう。創設初日からそれだけは避けたい。

 

「……ホントですかぁ…?」

 

 水澤の頬は相変わらず赤いままで、俺を疑う視線は変わらない。このタイプはアレだ。ゴチャゴチャ理屈を重ねるよりも勢いで押してしまった方が良い気がしてきた。

 

「当たり前だろ! 第一うちは『研究部』なんだからデータが無いとどうしようも無いだろ? 大体データ提供を申し出てきたのは水澤(そっち)からなんだからな!?」

 

 水澤は俯いたまま答えない。10秒近く長考した後にようやく「…………わかりました」と不満げに呟いた。

 

「身体測定の結果は明日にでも持ってきます。でも本当に何処かに発表したり横流ししたりしないで下さいよ…?」

 

「しないっつーの! あんまり疑い深いと俺も気を悪くするぞ? まぁなんだ、分かってくれたなら再度和解(なかなおり)の握手でもしようじゃないか…」

 

 俺は極力『爽やかキャラ』を演じて水澤に対して手を差し出した。

 初対面から間が無いとはいえ、何度も(いわ)れなき変質者扱いをされて俺もかなり傷付いている。だからと言ってこのまま水澤(モルモット)を手放すのは余りに惜しい。

 

「はい… 済みませんでした…」

 

 水澤からも手が伸びて俺達は固く握手を交わす。根は素直な良い子の様だ。そして何気なく力を込めただけのはずの彼女の握力は、俺の拳を砕かんばかりに締め上げてきた……。

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