【完結】ようこそ、 比較人類研究部へ!! byウマ娘プリティーダービー 作:ちありや
「じゃあ最初から通して読み合わせしてみようか。水澤ちゃんはもっと力を抜いてね」
「…は、はいっ!」
夏休みに公演される舞台の練習は着々と進んでいる。タカチャン先輩はこれが演劇部としての最後の仕事となる為に、かなり気合が入っているのが限りなく部外者の俺でもヒシヒシと伝わってくる程だ。
スズシロナズナの手術に向けた募金も順調に集まっているらしく、塞ぎ込んでいた水澤の調子もダービー観戦前に戻った気がする。
劇の脚本は以前と大きな変更点は無い。ただストーリーの舞台を一般の高校からトレセン学園に変更し、よりウマ娘の実情にフォーカスを当てた仕様になった。
これはウマ娘レースに造詣の深い俺と、ウマ娘レースの雰囲気を実際に肌で体感している水澤の新加入によって、ドラマ性を増加させても物語が破綻しない見通しが取れたからだ。
劇の内容は以前にも聞いた通り『故障して走れなくなったウマ娘をヒト娘の陸上選手が勇気づけ、その力でウマ娘は見事復活を遂げる』という物だ。
元々のシナリオでの舞台は俺達の通う江戸城高校だったのだが、そんなローカルな話よりも思い切って舞台をどこかのトレセン学園として、ウマ娘同士の熱いレースバトルも演出で取り入れてみよう、という目論見なのである。
主役を水澤、レースでのライバルウマ娘をタカチャン先輩、学園の友達キャラとしてミノタウロス、水澤を元気づけるヒトの女の子を現役陸上部の
さて、タカチャン先輩原作、俺と星埜で共同執筆した脚本も出来上がり、今まさに台本の読み合わせ作業に入った所である。
水澤の不調でしばらく稽古が中断していたが、逆にそのおかげで舞台を変更した事による元脚本との齟齬を修正する等、より良くブラッシュアップする時間が取れた。
☆
「ねぇ先輩、ちょっと思ったんですけど、こういうのってURAとかトレセン学園に許可取らなくて良いんですか? あの人達、権利関係結構うるさいですよ?」
読み合わせ後の休憩時間に、水澤が俺に話しかけてきた。むむむ、確かにそれは考えてなかったな。どうなんだろ…?
俺には何とも判断がつかず、タカチャン先輩やミノタウロスに目をやり救援を求めるも、2人は2人で互いに目を合わせたきり同時に首を捻ってきた。
あれ? 誰も知らない…? これひょっとして下手うつとヤバいやつじゃね?
「あ〜、ちょっと考えたこと無かったわね… でも水澤ちゃんナイスよ! 早く気づけて良かったわ!」
水澤にサムアップしてくるタカチャン先輩だが、もちろんそれだけでは何の解決にもならない。
「多分高校生の演劇くらいなら問題になる様な事は無いと思いますけど、一応どこか… URAの広報とかに問い合わせてみますか…?」
星埜の意見に俺も賛成だ。金儲けに使ったり公序良俗に反する内容でなければ、大抵の二次創作はお目溢ししてもらえる物だ。
「でもぉ、それって
橘も意見を表明する。むー、確かにこれも言われてみればその通りだな……。
みんなの『どうします?』という視線が部長のタカチャン先輩に集中する。タカチャン先輩はタカチャン先輩で「え〜? ミノ子どうしよう…?」とか言っている。決断力の無いリーダーの下では組織はまとまらない物である……。
「う〜ん、そしたら先生か生徒会に相談してみたら良いんじゃないかなぁ…?私達だけで勝手に動くよりはマシだと思うの〜」
「よし任せた次期部長」
なるほど、これはタカチャン先輩の罠だったんだな。ミノタウロスに判断を投げて自分の責任を回避しつつ、ミノタウロスが次期部長である事のアピールも兼ねている訳だ。
「もぉ〜、そうやって全部私に投げるんだからぁ〜。でも1人じゃ寂しいから誰か付き合って欲しいなぁ〜…」
ミノタウロスの視線はガッツリ俺に固定されていた。
☆
「で、何で俺を指名したの?」
「指名なんかしてないよぉ〜。ただ目線の先に鷹山くんが居ただけだよぉ〜」
ホントかよ。まぁ何らかの折衝が想定されるなら、比較的口の回る俺が出張った方が成功率は高いだろうからな。気持ちは分からないでもない。
俺とミノタウロス、2人で職員室に来たものの、俺は演劇部の顧問教師を知らない。今まで会った事もないな。
「顧問の久我先生は居ないみたいだねぇ〜、困ったねぇ〜…」
職員室には目当ての人物は居なかったらしい。久我先生って確か美術の教師だった気がする。俺は美術を選択科目として取っていないから知らないのも当然だったな。
「どうしようか〜? 久我先生も美術部の顧問を掛け持ちでやってたりで忙しいから、あまり迷惑かけたくないし…」
チラチラと俺の方を見てくるミノタウロスだが、どうもこうも新入部員の俺には決定権は無い。それに……。
「教師が駄目なら生徒会じゃないのか? それこそ『メジロ家』の北野会長ならURAにも伝手があったりして…」
冗談半分で言った言葉にミノタウロスは目を輝かせて一気に食いついてきた。
「それだよ! わたし達は先に生徒会に行くべきだったんだよ!」
お、おぅ…
☆
「お久しぶりですね、鷹山 留吉さん。今日はアビス… いえ水澤さんはご一緒では無いんですのね…?」
生徒会長の
彼女は『優しくて穏やか』な人ではあるが、逆に『堅物でユーモアに欠ける』面も見られる。まぁ北野会長相手にふざけた話はしないだろうから、これは余談だ。
実は彼女はウマ娘の名門『メジロ家』の出身で、俺なんかが名前を聞くだけで平伏してしまう様なメジロ家のレジェンドウマ娘の方々と幼い頃から親交があったらしい。前回はメジロパーマーの話を聞かせてもらった。
ただメジロ家そのものがレース界から
「それで今日は何用でしょうか? 演劇部のミノタウロスさんもご一緒なのは何か理由が…?」
ここで俺達は会長に事情を説明した。URAへの問い合わせがしたい事、ついでに比人研と演劇部とで部員を融通し合って互いに5名以上の人員を確保できた事、更には比人研と演劇部のクロスオーバーで夏休みには素晴らしい公演が出来そうなこと等、諸々だ。
「そうですか、部員問題はクリア出来たのなら何よりです。URAの件も承りました。
北野会長はニコニコと俺達の相手をしながら話を進めてくれた。ミノタウロスの持っていた台本を渡して中身を吟味してもらう。
やがて台本を読み終えた会長は何故か寂しそうな顔で微笑んだ。
「へぇ… 素敵なお話だと存じますわ。ではこれで話を進めさせて頂きますね… 実はこの秋に私の従姉妹の