【完結】ようこそ、 比較人類研究部へ!! byウマ娘プリティーダービー   作:ちありや

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思いつきと予想外

43 思いつきと予想外

「強化合宿をしましょう!」

 

 タカナチャンポン先輩が突然変なことを言い出した。舞台発表の日が夏休み入って間もなくの7月の末という事で、それまでに泊まり込みで特訓して劇の完成度を上げたい! との建て前で、せっかく賑やかになった演劇部の面々で遊びたい。という事らしい。

 

「実はあたしの実家、九十九里浜にあってさ、ビーチで泳いだり遊んだりする事も出来るし、ある程度はっちゃけてもOKなスペースもあるから、みんなで青春の思い出作ろーよ!」

 

 だそうだ。俺としては近くでウマ娘の生態観察が出来るならば参加するに(やぶさ)かではない。

 

「い〜ですね〜、バーベキューとかやっちゃいます〜?」

 

 ミノタウロスが最初に参加を表明する。大食漢のウマ娘が全員参加するなら凄まじいバーベキュー大会になりそうだな……。

 

「僕は構いませんよ」

 

 星埜も参加表明する。こいつはいつも無表情なので、どういう意図での発言なのかが掴みにくい。

 

「アーシは陸上部の練習もあるから時期次第かな〜? 夏休みに入ってからだとキツイかも…」

 

 陸上部と兼部していて大会も控えている(たちばな)は少々難しい顔をする。

 

「楽しそうですが、うちは『泊まり込み』となると親に相談しないと…」

 

 まぁ確かに女子高生が男子を含み泊まり込みで、等と言う事態は親としては心配だろうから気持ちは分かる。

 貞操の危機、という意味ではない。俺も星埜も邪心を抱いたとして、屈強なウマ娘達を手籠めに出来る力など持ってはいない。なんなら体育会系女子の橘にすら勝てる自信が無い。

 

 夏場はお年頃の女子にとって、普通に悪い誘いが増える時期でもある。場合によっては取り返しのつかない悲劇が起こる可能性も否定できない。そういう話だろう。

 

「そしたら夏休みに入る前の試験休みの期間に、一泊二日くらいのスケジュールで考えましょうか。明後日辺りにもう一度聞くから、各自都合の良い日にちを教えてね」

 

 メンツはともかく、もう『行く事』は決定しているらしい。俺も普段の学校では出来ない分野の観察項目を洗い出す必要があるだろうな……。

 

 ☆

 

「失礼します…」

 

 演劇練習そっちのけで、合宿でやりたい事ランキングをして盛り上がっていた演劇部に来客があった。

 

「会長さん…」

 

 タカチャン先輩が呆気にとられて間抜けな声を出す。先日会った当校の生徒会長、北野 愛璃さんが単身演劇部に乗り込んできた。

 

 全く予想外の展開に『すわ、敵襲か?!』と身構える演劇部員達。あー、比人研と合流するまでは演劇部も部員数足らなくて廃部の危機だったみたいだから、生徒会に対して警戒心が残っているのだろう。

 

「あまり警戒しないで下さい。先日ご相談を受けた件で参りました…」

 

 北野会長も自分が歓迎されていない事を理解しているのだろう。困りながらも必死で笑顔を作っている。

 

「もしかしてURAと連絡取れたんですか? あれから3日しか経ってないのに早いっすね」

 

 北野会長はメジロ家の人だから、「メジロ経由でURAに問い合わせれば早い」みたいな事を言っていたが、まさかここまで早いとは予想外だった。

 さて、そのお返事や如何に…?

 

「ええ、先方は『中央トレセン学園』の名称使用を快諾して頂けました。それどころか、公演に合わせて衣装… 学園制服の貸し出しまでして頂けるそうです」

 

 うひょ〜、マジかよURA。えらく太っ腹だな! しかし公式に応援されるって事は、余計にしくじる訳にはいかなくなったって事でもあり、途端に物凄いプレッシャーに襲われた気分になった……。

 

 他のメンツも事の重大さにビビって動きが止まっている。なんだかトンデモない方向に進んでいる気がしてならない。大丈夫かな…?

 

「先方より、『必要な数と各々のサイズを申告して欲しい』との事でしたので、申告書を持参しています。書いたら(わたくし)宛に持ってきて下さいませ」

 

 会長はそれだけ言うと机の上に書類を置き、笑顔のまま何事も無かったかの様に帰っていった。

 

「え…? なんかコレ逆にヤバくない…?」

 

 タカチャン先輩の顔が真っ青だ。軽い気持ちで「トレセン学園を舞台にしよう!」とか言っていたら、公式からサポートを受ける羽目になった。

 

 俺や水澤を含めて、俺達の中でトレセン学園の実態に詳しい人間は居ない。ましてや日本中からスピード自慢のエリートの集う中央トレセン学園の内部は非公開事項も多く、我々部外者はその秘密のベールの奥を想像する事しか出来ない。

 

 これでもしトレセン学園に対してトンチンカンな解釈をした演劇でもしよう物なら、俺達はURAから目を付けられて社会的に抹殺されるかも知れない……。

 

 いやまぁ高校生の演劇にそこまで過酷な対応をしてくるとは思えないけど、例えばトレセン学園の内情を知る人物が劇を見て『ここは現実のトレセン学園とは違う!』と言ってくる可能性はゼロではない。

 

「なんか〜、タカチャン先輩も鷹山くんもすんごいビビってるよね〜。舞台演出的に心配事があるなら〜、申告の書類と一緒に質問状を出せば良いと思うの〜」

 

 やはりミノタウロス、ボケ〜っとしている様で実は冷静に物事を見られる女だ。侮れない。

 

「鷹山くん、何か失礼な事を考えている顔なの〜」

 

 そんな事は無い。素直に評価しているぞ。

 

「まぁそうだね。実際のトレセン学園と劇の舞台との相違点を洗い出して、直せる所は直して行こう! もし何か問題が起きたら脚本の2人が腹を切るって事で…」

 

「うぉい!!」

「ちょっと待ってくださいよ!」

 

 俺と星埜のツッコミがアンサンブルされる。そこは部長が責任を取れよ。

 

 その声と同時に演劇部は笑いに包まれる。ボケツッコミのコンボがキレイに決まった訳だな。

 

 そんな中、水澤1人がまだ心ここに在らずといった感じで呆けている。

 

「中央トレセン学園の制服… 私が着るんだ…」

 

 などとブツブツ呟きながら……。

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