【完結】ようこそ、 比較人類研究部へ!! byウマ娘プリティーダービー   作:ちありや

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過去とあらすじ

 ドキュウセンカンのレースが始まった辺りから、ミノタウロスが何やら難しい顔をしているのが目についた。何かを思い出そうとして思い出しきれないもどかしい感じ、そんな顔だ。

 

 「う〜ん… わたしもしかして、このドキュウセンカンって娘のこと知ってるかも〜」

 

 ここでミノタウロスがまさかの爆弾発言。当然全員の視線はミノタウロスに集中する。

 しかし何だと?! 俺はスズシロナズナに続きドキュウセンカンとも繋がりが持てるのか? これは聞き逃がせないな!

 

「あ、聞かれる前に言っておくけど〜、水澤ちゃんみたいなドラマがある訳じゃないよ〜? ただ一時期同じ学校だっただけ、みたいな〜?」

 

 俺の目の色が変わったのを察知したのか、ミノタウロスは慌てて予防線を張ってきた。

 いやそれでも良いわ。ドキュウセンカンがどんな子供だったのか知れるだけでもありがたい。

 

「わたし生まれが北海道でさ〜、苫小牧ってわかるかな〜?」

 

 もちろん知ってるぞ。ダートGⅠを10勝しているホッコータルマエがローカルアイドルとして懸命に宣伝していた場所だ。

 

「わたしが小学6年生だったかなぁ〜? 1個下の学年に転入してきたウマ娘の名前が確か『ドキュウセンカン』ちゃんだったような気がするの〜…」

 

 ミノタウロスは記憶を探りながら話している。人違いの可能性もあるが、それはそれで小学生のウマ娘の生態のサンプルになるはずだ。

 

「学年が違ったから直接話をした記憶は無いんだよね〜。あと当時からムキムキマッチョじゃなくて、身長も体格もむしろ細めな娘だったから思い出せなかったんだよ〜。性格も大人しい感じに見えたなぁ〜」

 

 おぉ〜、ドキュウセンカンは昔は細かったのか。これはレアな情報をゲットしたぞ!

 

「わたしは普通の中学校に進んだけど〜、ドキュウ(あのこ)は門別のトレセン学園に進んだんじゃないかなぁ〜?」

 

 うむ、ドキュウセンカンは元々は門別トレセン学園の生徒で、去年中央へと転校してきたのは既述だ。

 

「ほら、わたしレース辞めちゃって長いから〜、あの娘が中央でデビューしてたなんて知らなくて〜、もぉ驚いちゃったよ〜…」

 

 ドキュウセンカンは寡黙なウマ娘で情報発信をほとんどしない。ウマッターやウマスタ等のSNSもやってはいない様だし、彼女のプロフィールは学園の公式ページに出ているくらいの情報しか一般には知られていない。

 

 結構謎の多いウマ娘だったのだが、ミノタウロスの昔話はとても貴重だった。下手したらドキュウセンカンの過去は、各種マスコミでも知られていない秘密かも知れない。

 

 いやぁ、本当に今回の合宿は実りが多い。来て良かったなぁ……。

 

 ☆

 

「あら皆さんいらっしゃい。何も無い所だけどゆっくりしていってね」

 

 中継の終わったタイミングで壮年の女性が現れた。

 

「あ、こちらはうちのお母さん。ご覧の通りヒト娘… 娘って歳じゃないけどね」

 

 タカチャン先輩が紹介してくれた、先輩のご母堂だそうだ。なるほど「やかましいわ」と、すかさずツッコミのチョップを入れてくる辺り、タカチャン先輩の明るい性格は母親譲りらしい。

 

「地域の会合があったのでご挨拶が遅れてごめんなさいね。この家は備品を壊さない限り好きに使って構わないわ。何か壊れたらその分、由美ちゃん(タカチャン先輩)のお小遣いが減る事になりますのでよろしく…」

 

「お母様! それは無慈悲という物ではっ?!」

 

 タカチャン先輩が即興で芝居がかった声を出す。さすが演劇部部長。でも結構切実な問題なのかな…?

 

「なりませんわ。これは全て決定事項です!」

 

 お母さんも負けじと劇っぽく返してくる。なかなかノリの良い親子だな……。

 なるほど、タカチャン先輩の生育環境がちょっと知れてこれも良いレポートのネタになる。メモ帳が手放せない。

 

「え〜… そんな訳で皆さん、楽しむのは良いけど暴れるのは無しにしてください、お願いします…」

 

 タカチャン先輩の悲痛な『お願い』がロビーに虚しく響き、俺達全員がそれを微笑ましく受ける。

 大体、羽目を外して暴れる様なメンツはこの中には居ないだろ。男子とは言え俺も星埜もノンアクティブなので暴れたりしない。

 

 ウマ娘でもミノタウロスは常に落ち着いて行動出来る奴だし、水澤ら1年生はタカチャン先輩らの前で暴れる様な真似はするまい。

 

 結局タカチャン先輩が一番『やらかしそう』ではあるのだが、敢えてツッコまない事にした。

 

「んじゃレースも終わった事で、昼間出来なかった稽古をやっちゃおうか!」

 

 タカチャン先輩の『鶴の一声』で、昼間に行う予定だったがパーティーで潰れてしまった劇の通し稽古をやる事になった。

 

 ☆

 

 劇のタイトルは「千の翼」。ストーリーは、トレセン学園でトレーニングに励むウマ娘『サウザンドウイング(以下ウイング)』を主人公とした学園青春ドラマだ。

 

 ウイングは中央トレセン学園に入学、中等部でメイクデビューを果たしたものの連敗、初勝利が出来ないまま足を怪我してしまう。

 勝てないままに秋を迎えると自主退学の道しか残されていない。しかし怪我で満足に走る事もままならない。

 

 次第に(すさ)んで周囲からも孤立していくウイング、トレーナーとも仲違いし自暴自棄になって無理な自主トレーニングをしてしまった結果、足を滑らせて河原の土手から落ちそうになる。

 

 その危機を助けたのが、近くの普通科高校に通う『野座間(のざま) (ゆい)』であった。

 唯も陸上部の選手でありながら、記録が伸び悩んでおり、互いの境遇を話すうちに2人に友情が芽生える。

 

 そこでウマ娘にはウマ娘の、ヒトにはヒトの悩みがある事を理解し合う2人。

 新たな視点を得ることで両者は互いを高め合っていく。そこにウイングのトレーナーも合流し、唯を加えた新たな体制で再出発する事になる。

 

 やがて迎えた次のレース、果たしてウイングはその勝負で羽ばたけるのか?!

 

 という割と熱い内容だ。正直、俺の所感として唯の加入程度でウマ娘の走りをどうこうできるとは思えないのだが、そこを突っ込むと物語の根幹から揺らいでしまうので、ここからの手直しは無理だ。

 この辺は俺達が演劇部に入る前から決まっていたストーリーでもあるのだから尚更だな。

 

 ちなみにトレーナー役は星埜、タカチャン先輩とミノタウロスはウイングの友人で且つ、レースでのライバルキャラを演じる。

 

 上記の様なやりとりをしながら、主役の水澤と橘が台本片手に演技をしている。練習開始当初は誇張抜きで棒読みだった水澤も、今ではそれなりに見られる演技をする様になった。

 

 しかしトゥインクルシリーズでもウマ娘達は何でも無いみたいに走って歌って踊って見せる。どれか一つでも極めるのは大変なのに、だ。

 ウマ娘って結構何でも出来る娘が多いのかなぁ? 水澤もそうなのだろうか…?

 

「私、初めて見ましたけど、イッちゃんも頑張ってるんですねぇ…」

 

 演劇部とは無関係で、水澤の芝居を初めて見た三崎が、しみじみとした感想をもらしていた。

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