【完結】ようこそ、 比較人類研究部へ!! byウマ娘プリティーダービー   作:ちありや

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天啓と親子

「お疲れ様、なかなか素敵なお話だと思うわ。男の子2人であの脚本を書いたって聞いたわよ? 凄いのねぇ」

 

 タカチャン母が稽古の陣中見舞にとコーヒーとお茶菓子を差し入れてくれた。当のタカチャン先輩や水澤達は感想戦モードになっており、侃々諤々(かんかんがくがく)と思い思いに「ここはこうしたら?」と意見を交わせている。

 

 そこで暇そうに見えたのだろう、御役御免となった俺と演劇部の部外者である三崎がタカチャン母の雑談相手として捕捉(ロックオン)されたという訳だ。

 

「いやぁ、話の大筋は俺じゃなくてあそこの星埜くんが考えたので、彼を褒めてやって下さい。俺は設定の監修をしただけです」

 

 これは本当にそうで、俺は劇の完成度を上げたサポーターに過ぎず、俺達が合流する前から話のデザイナーは星埜なのだ。

 この件に関してこれ以上俺は出しゃばるつもりは無いし、俺の助言が劇の昇華に役立てたのならそれに勝る喜びは無い。

 

 そんな事よりも、だ。

 

「あの、高井さん。実は俺、演劇部とは別に『比較人類研究部』の部長もやっていて、ウマ娘の研究をしているんですよ。なのでウマ娘を家族に持つ人の話を是非聞きたいんですけど、良いですか?」

 

 俺の問いにタカチャン母は目をパチクリしていた。まさか自分が取材されるとは夢にも思っていなかったのだろう。

 

 俺はそこでウマ娘の母にしか分からない『天啓』(そのウマ娘の真の名前であるウマネームが母親の頭に閃く現象)について聞いてみた。「ウマ娘を授かってどう思ったか?」「ウマネームとはどの様に知らされるのか?」等々、今まで気になっていたが調べきれなかった事を色々とだ。

 

「へぇ、あれ『天啓』って言うの? 上手いこと言うわねぇ。う〜ん、まずウマ娘と言っても『別の種族』ではなくて、『たまたまウマソウルの宿った人間』なのよね。ママさん研修でもそう習ったし、うちの由美ちゃんも耳と尻尾とパワー以外はホント普通の女の子だしね」

 

 そう、意外と忘れがちになるのだが、ウマ娘とヒトとで遺伝子的な違いは無いのだ。宿る魂の種類が違うだけで、その容れ物に変わりは無い。

 そして既述だが、ウマソウルの何たるか? についての研究は有史以来ほとんど進んでいないのだ。

 

「名付けもねぇ、うちは全然参考にならないわよ? だって妊娠してしばらく経った頃、『晩ごはん何にしようかな?』って考えてた時にドーンと頭に浮かんだのが『タカナチャンポン』だもの」

 

 それはまた何というタイミングで……。

 

「初めての妊娠だったし、私は親類にウマ娘も居なかったから、まさかそれが『天啓』だなんて思わなくてねぇ。普通にその日は美味しく高菜ちゃんぽんを頂いたわよ」

 

 なるほど… 『天啓』に関して大なり小なりの勘違いが発生するだろうとは考えていたが、やはり俺の予想は間違っていなかったんだな……。

 

「その後産科の定期検診でエコー写真撮ったら、お医者様に『尻尾生えてますねぇ』って言われて、『えぇ!? ウソマジまさかウマ娘ちゃんですか?』ってなったのを覚えてるわ」

 

 楽しそうに話すタカチャン母の笑顔が本当に幸せオーラ全開で、しかも話術が巧みだよねこのお母さん。聞いてるこちらも暖かい気持ちになる。

 

「生まれてからお役所に出生届けを出す時にも、ウマネームを書く欄に『タカナチャンポン』って書くのは抵抗あったわ。本当にそれで合ってるのか自信無かったから…」

 

 あぁ、まぁ確かに『ふざけてるのか?』と疑われかねない名前ではあるよね……。

 

「でも由美(あのこ)が3歳くらいの時に自分から『タカナチャンポン』って言ったのよ。それまでずっと家では『由美』って呼んでてウマネームは使った事が無かったのに… あれは不思議だったわねぇ…」

 

 当時を思い出したのか、タカチャン母は嬉しそうで優しい『母親の顔』になる。

 よちよち歩きでたどたどしく喋る幼いタカチャン先輩を想像して、俺も表情が緩んできてしまうな。

 

「でもせっかくウマ娘に生まれてきたのに、経済的な理由で良いクラブとかに通わせられなくてねぇ… 由美(あのこ)ももっとしっかり走りたかったのかも? って思うと少し申し訳なくて…」

 

「ちょっとお母さん! 本人不在の所で後輩に変な事を吹き込まないで」

 

 タカチャン母の話にタカチャン先輩本人が割り込んできた。向こうの話は終わったのかな?

 

「私はウマ娘の中では平均以下だってのは早いうちから思い知らされてるから、どの道トレセン学園に進学してもすぐ辞めちゃってたの確定だから… もうその話は止めよ、ね?」

 

 なんか高井家の家庭の深い事情に踏み込んでしまったみたいで少し気まずいかもな……。

 確かに普段の先輩の言動から、本当にレース人生に未練は無いように見受けられる。ただ走る事自体は好きなようで、たまにミノタウロスとフリースペースで走っているとは聞き及んでいる。恐らくはそれで満足出来ているのだろう。

 

「あ〜、大体分かりました。貴重なお話をありがとうございます高井さん。先輩の明るい性格がお母さん譲りだと分かって、少しほっこりしましたよ」

 

 高井家で親子喧嘩が始まらないうちに、原因の俺が身を引いた方が得策と考えた。更にフォローも入れておく。これで大きな喧嘩になる事もあるまい。

  

 しかし『天啓』は本当に興味深い現象だな。こうなると水澤やミノタウロス、ついでに北野会長のお母さん達にも是非とも話を聞いて回りたくなってくる。いつか機会があれば良いのだが……。 

 

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