【完結】ようこそ、 比較人類研究部へ!! byウマ娘プリティーダービー   作:ちありや

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服薬と誤解

 その後の晩のイベントは特に無かった。俺と星埜はそんなに雑談が盛り上がる関係でもないので、解散後は各々の布団に入る早々に寝てしまったのだ。

 タカチャン母の刺激的な話に興奮したおかげで、ぐっすり寝付ける程度には適度に疲れたみたいだった。

 

 女部屋の方からは結構な時間までキャーキャー話しているのが聞こえていたが、何の話をしていたかまでは聞き取れなかった……。

 

 さて、夜が明けて合宿2日目。食堂で3つある長テーブルに三々五々腰掛けて、ハムエッグにわかめの味噌汁、デザートの杏仁豆腐という、日本ならではのカオス、もとい国際色豊かな朝食を頂く。

 

 その際に少し気になったのが、ウマ娘勢が全員揃って食後に何か薬の様な錠剤を飲んでいた事だ。始めにタカチャン先輩が。続いてミノタウロスと水澤がほぼ同時に飲み始めたのだ。

 

 これが誰か1人だったなら気にもしなかったのだろうが、3人同時となると何やらキナ臭い。事件の予兆の可能性もある。

 

「どうした水澤、具合でも悪いのか? それって何の薬なんだ?」

 

 気になって聞いてみたのだが、水澤からは「ジト目で見つめられる」という意外な展開になった。まるで『そんな事も知らんのか?』とでも言いたげな表情だ。

 何だよ? 余計に気になるじゃんか。

 

 まぁ、それならそれですぐ答えを教えてくれても良さそうな物なのに、水澤は俺を無視する様にコップに残った水を一気に飲み干した。そして横目でチラリとこちらを見て一言、「それセクハラですよ」と言い放ったのだ。

 

 水澤からセクハラと言われるのは慣れっこではある。水澤(こいつ)は何でも無い事でもすぐセクハラだの何だの言ってくる面倒くさい奴だからな。

 

 ただ、飲んでる薬を聞いただけでセクハラ呼ばわりはさすがに納得いかない。どう対応して良いのか分からず狼狽える俺を、タカチャン先輩とミノタウロスが生暖かい目で見てくる。本当に何なんだ?

 

「鷹山くんくらいの人でも、やっぱり男の人には分からない物なのねぇ…」

 

 ため息と共にタカチャン先輩が呟き、それにミノタウロスも「そうですね〜」と傚う。

 

 結局答えを教えてもらえないまま、モヤモヤした気分で朝食タイムは終了した。

 

 ☆

 

 さて本日の予定だが、高井家の御夫婦は揃って用事があるらしく朝食後すぐに出掛けていった。ただ夕方にはお父さんが戻って来て、俺達を駅まで送ってくれるそうだ。それで今回の合宿は完全終了となる。

 

 さて、夕方まで何をするのか? という話だが、演劇部は本格的に舞台衣装も身に着けて、もう一度通し稽古をするらしい。熱心な事だ。

 それが済み次第、打ち上げと称して浜辺でバーベキューパーティーをする予定となっている。

 

 昨日と同様、手か空いているのは俺と三崎になる訳だが、一応三崎と水澤は「勉強のため」という体で合宿に参加しているので、アリバイ作りの為には少しでも勉強しない訳にもいかない。

 

 そしてその勉強の面倒は誰が見るのか? となると手隙の俺しか居ない計算になる。なにげに俺、ちょっと怖いから三崎(こいつ)苦手なんだよなぁ……。

 

 しばらく黙々とドリルをこなしていた三崎だったが、小休止で一息入れた所で変な事を言い出した。

 

「私、鷹山先輩のこと誤解していたかも知れません。…何ていうか、ウマ娘オタクが過ぎて彼女達を研究材料にしか見てないとか、ウマ娘を研究する振りをして、純朴なイッチーにイヤらしい事をしようとしているんじゃないかって思ってました…」

 

 あ゙…? 話の初っ端からケンカ売ってんのかオイ? まぁ三崎が俺に対して偏見しまくっているのは最初から知っていたけど、ここまで面と向かって侮辱されてヘラヘラ笑って許せる鷹山さんじゃねーぞ…?

 

「でも先輩を見ていて思ったんです。あぁ、本当にウマ娘が好きなんだなぁ、まるで3歳の男の子みたいに自分の疑問に全力でぶつかって居るんだなぁ、って… あ、褒めてるんですよ一応」

 

 ホントかよ…? いつも通りにディスられていただけにも見えたけど。

 

「最初は私もセクハラされるんじゃないかと警戒していたけど、こうやって普通に勉強も見てくれるし、意外と優しい人だったのかな? って最近は思い始めてて… だから2人で話す機会があったら、これまでの態度を謝りたいなってちょっと思ってたんです…」

 

 ほぉほぉなるほど。なかなか愁傷な心掛けだな。そうやって心を入れ替えて反省するってんなら、鷹山さんは広い心で受け止めるよ?

 

「…まぁ分かってくれれば良いよ。俺も入れ込む余りデリカシーに欠けた言動が多々あったろうし…」

 

 正直セクハラだの何だのは男の俺には未だに基準がよく分からないので、今後も同様の『やらかし』をする可能性は否定出来ない。ただこれからは三崎も、無駄に騒ぎ立てて攻撃してくる事は無いと思われる。それは普通に助かる。

 

「俺に謝るって言うなら、生徒会に提出するレポートを手伝ってくれよ。お前も()()比人研の部員なんだしさ…」

 

「それは構いませんけど、どんな事をレポートするんですか? イッチーのスリーサイズとかプライバシーに関わる事には強力出来ませんよ?」

 

 …お前本当に反省してるのか? もう少し曇りの無い(まなこ)で俺の事を見て欲しいんだが。

 

「個人的な数字を出すつもりは無いよ… ホラ、昨夜聞いた『天啓』とか、ウマ娘ならではの面白エピソードが幾つかあるだろ? お前も水澤と一緒にいる時間がそれなりに長いんだから、俺の知り得ない『ヒトから見たウマ娘の特異性』みたいなネタがあれば教えて欲しいんだよ」

 

 水澤と三崎という、同級生同士とか女性同士といった、俺とは違うポジションからしか観測できない言動も絶対にあるはずなのだ。それが知りたい。

 

「はぁ、なるほど… じゃあ後でちょっとイッチーの行動を思い返してメモしておきますよ」

  

 今までは部員でありつつも、部活動の妨害しかしてこなかった三崎が、ようやく戦力として計算出来るようになったのかな? 油断は禁物だが、彼女に出来て俺には出来ない分野の活動は確かにあるのだ。

 

 頼むぜ三崎。濃ゆいの期待してっからな!

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