【完結】ようこそ、 比較人類研究部へ!! byウマ娘プリティーダービー   作:ちありや

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宿題とテーマ

 今回の演劇部の発表も無事終わり、演劇部サイドの仕事も片付いた。

 何やらタカチャン先輩がまたしても宴会を画策しているようなのだが、星埜がまだ盲腸で入院中である為に、打ち上げパーティーとやらは彼の退院までは当分お預けだろう。

 

 俺も8月からは大学入試に向けた夏期講習の予定が入っており、加えて俺の本筋である比較人類研究部としてのレポートを作成しなければならない。

 これを2学期早々に生徒会に提出しなければ、我らが比人研は部活動の許可が下りなくなる。

 

 せっかく演劇部と組んで人数を水増しし、大恥を忍んで舞台に上がったのだ。こちらのリターンが無くなってしまっては意味が無い。誰が何と言おうと、俺が第一義にするべきは演劇部ではなくて比人研だ。

 

 ☆

 

 さて、件のレポートだが一応書くべきテーマはズバリ《ウマ》だ。胎児に宿るウマソウル、それは別世界からやって来た『ウマ』の魂らしい。もうここから完全にスピリチュアルな話なので、科学的な検証は意味を成さなくなる。

 

 そもそもその『ウマ』とは何なのか? その正体についてはあくまで形而上的な存在でしか語られず、どうにも情報が少なすぎてまともな研究対象にすらならないのが現状だ。

 

 そこで以下の項目から多角的にウマのヒントを得て、

その正体を可能な限り検証して推理していきたい。という趣旨である。

 

 後は三崎に依頼しておいた水澤に関するネタで、追加出来る情報があれば適宜増やしていけば良いと思っている。

 

 あ〜、そう言えば、その三崎からの追加情報はその後全く音沙汰がない。まぁ夏休みに入ったせいで水澤との接触が減ったのは確かだろうから、仕方の無い部分はあるのは理解できる。

 

 三崎から新しいネタを貰うにしても、それが夏休み明けになってしまっては意味が無い。まぁ三崎のネタは「あれば良いな」レベルで期待せずに待つとしよう。

 

 さて、レポートの詳細であるが、やはり俺の実体験、つまり水澤イチ(アビスビースト)の情報がメインとなる。

 

 従って得られたデータはn=1であって決して広く応用できる物では無い。タカチャン先輩やミノタウロスのデータも入手したかったが、演劇部の都合でそれどころでは無かったのが悔やまれる。

 まぁその辺のフィールドワーク不足は『高校生の限界』と開き直ってしまうつもりだ。

 

 さて、以下にレポートに使う各テーマと、それぞれの簡単な解説と現段階の所感を入れておく。

 

①ウマ娘とはどの様な存在なのか?

 

 まず「ウマ娘はウマソウルを宿して生まれてくる女子」という定義があり、これは法律でも定められている。男子は生まれず女子でありながら常人を遥かに凌駕する膂力と耐久力を持ち、『走る』事に至上の喜びを見出す。 

 

 後述するが、この『走り』の部分がウマのヒントになるとは思っている。

 

②ウマソウル並びにウマネームの成り立ち

 

 前述した『ウマソウル』、これが何なのかは古今東西全くと言って良いほど解明が進んでいない。そもそも学会でもここから話が一歩も進んでいないのだ。

 

 ウマネームにしてもまるで型に嵌めたように「カタカナで9文字以内」に収められている。これにも偶然だけでは割り切れない秘密が隠されているはずだ。

 

③妊婦へ下るとされるウマネームの『天啓』とは?

 

 タカチャン先輩のご母堂より賜った話は大変に興味深いものの、やはりn=1ではレポートとしては弱すぎる。水澤とミノタウロス、最低でもそのどちらかの母親とは聞き取り調査をしてみたい。これは喫緊の問題なのだが、どちらに対しても「母親に会わせろ」とは言いづらい物があり、計画も難航している。ここは手持ちの資料で無理やり上げるしか無さそうだ。

 

④ウマ娘の食生活

 

 ウマ娘はヒトの何倍ものパワーを持つが、それ故に摂取エネルギー量も多くなると考えられる。

 オグリキャップやスペシャルウィークらの大食いエピソードは有名だが、一方でタマモクロスやツインターボの様な食の細いウマ娘も存在しているので、一概に「ウマ娘は大食漢」とも言えない。だが少なくとも水澤は俺の目の前でハンバーガーのセットを3つペロリと平らげた。

 

 食と言えばウマ娘は総じてニンジンが好きだ。過去の資料を当たっても、野菜嫌いで有名なウマ娘もニンジンだけは別らしく好んで食していたらしい。うちのウマ娘どもも生ニンジンをそのまんまボリボリ食ってたから余程好きなのだろう。普通は細く切るとか熱を通すとかして食べやすくするもんだよなぁ……。

  

⑤優れた身体能力

 

 ここは前に水澤から貰った体力テストのデータが役に立つ。今は特別なトレーニングをしていない水澤ですら、ゴリラ並みの力があるのが分かっている。

 全体的に一般女性と大きく変わらない体型なのに、その細く見える筋肉からどの様にしてあの超パワーが生み出されるのかは、これまた研究者にも分かっていない。

 どうにかしてその秘密を突き止めたいのだが、何から手を付けて良いのか雲を掴む様な話で、途方に暮れてしまう。

 

⑥目鼻耳の感知能力

 

 前項と同様にウマ娘は頭上に生えたその大きな耳が特徴で、その聴力もヒトの限界を遥かに超えている。同時に「聞こえ過ぎる」という弱点も併せ持ち、俺が水澤を大声で撃退した事もあるが、これはそのままレポートには使えなさそうな気がするな……。

 視力そのものはヒトと大差ないらしいが、ウマ娘にはほんのり暗視能力があるのは判明している。水澤の目も暗い所で少し光っていた。 

  

⑦走りへの本能

 

 これこそがウマ娘の『根源』とも言える部分だが、そこに「なぜ?」と言われると誰も、ウマ娘自身ですら答えられない問題だ。

 タカチャン先輩やミノタウロスらの様な現役を早くに離れた者でも「走りたい」気持ちが消えない、という事は元々『ウマ』という存在が走りたがりなのだろうとは推測される。

 

 実際、ウマ娘はその気になれば徒党を組んでヒト社会を武力で征服し、支配する事も出来たはずだ。それをせずに同族で速さを競い合ってばかりいるメンタルも解せない。

 

⑧蹄鉄とは?

 

 一般にウマ娘が走る際に使う靴の底には、滑り止めの為にスパイクではなく蹄鉄が使われる。この『蹄鉄』という物体は主にロバや牛といった家畜に装着する物で、本来人間の使う物では無い。

 

 俺はこの蹄鉄にこそウマの最大ヒントが隠されていると思っている。

 俺は以前、『ウマ』とは恐ろしい形相をした悪魔の様な怪物を想定していたが、そこからどうにも「走る」事に繋がらない。

 

 ここで打ち立てた仮説が「ウマとは牛やロバの様に(ひずめ)のある動物、雑食或いは草食で特にニンジンが好きな、大人しいが体躯の大きい力の強い生き物では無いか?」である。

 

 そう考えてみると、世俗の権勢欲よりも原始的な走力を求める所や、肉食の外敵から素早く逃げる為の聴力や暗視能力、そして速度が備わっている事にも説得力がある。

 異世界の『ウマ』がその様に大人しい畜獣ならば、蹄鉄を打たれるのも有り得る話だ。

 

 農耕や土木に使われる他、人が乗って競争に興じたりしたら「レース好き」の属性も説明出来るな。名前の文字数制限もきっと大会規定とか何とか… まぁさすがにここまでは飛躍しすぎか……。

 

⑨発情期を含むウマ娘の恋愛観

 最後にこれだが… ちょっとレポートに入れるかどうか思案中だ。一応ウマ娘には『発情期』という物が存在し、普段は薬によって抑えているが、その摂取が途切れた場合に妙な事になるのは水澤で実際に体験した。

 だがこれがウマの正体に近づくヒントになるかどうかは少し怪しい。下手するとエロ目的の惰弱なレポートと受け取られかねない。それは困る。

 

 書きたい事は多々あるのだが、女性である水澤や北野会長から誤解を受けるのも回避したい。何か説得力のあるネタが出るまで封印かな…?

 

 ざっくりだがこんな感じだ。だがまだまだ情報量の弱さを感じている。今からでは三崎が何か掴んできてくれるのを祈るしか無い。

 とは言うものの、ただ待つだけでは埒が明かないのも事実だ。とりあえず三崎には「ネタを待っているから早めに頼む」的なメールでも送っておくとするか……。

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