【完結】ようこそ、 比較人類研究部へ!! byウマ娘プリティーダービー   作:ちありや

70 / 86
懊悩と決意

〜水澤視点

 

 1週間待って上げる… その間にイッチーと鷹山先輩とで関係に決着つけて……。

 

 三崎 菜乃香(ナノちゃん)にそう言われて、ほぼ丸一日思考がまともに働かなかった。

 

 ナノちゃんがいつの間にか鷹山先輩を好きになっていたのもショックだけど、私自身の気持ちが未だに整理がついていないせいもある。

 

 合宿の時はタカナチャンポン(タカチャン)先輩らに一服盛られて恥ずかしい姿を見せてしまったけれど、あれは単に激情に駆られた結果であって鷹山先輩が好きという訳では無い……。

 

 …いや、やはり違うのだろう。本当に「好きでも何でもない」相手だったなら、正気に戻った際にとてつもない嫌悪感と後悔が襲ってくるはずだ。

 

 だがあの時の私の気持ちは、タカチャン先輩らへの怒りと恥ずかしさと鷹山先輩に対する『申し訳なさ』が大半を占めており、それほど『嫌だ』とは感じなかった。

 

 そして合宿の終わりぎわ、私が合宿での痴態を「忘れてくれ」と鷹山先輩に伝えた際に、ハッキリ「嫌だ」と拒否された。

 

 その時に私はすぐに立ち去ったが、それは急に火照った顔を見られたくなくて、一刻も早くその場を逃げ出したかったからだ。

 

 あの時の私の本心は、鷹山先輩との思い出を大事にしてもらえて『嬉しい』だった。嫌な気持ちは無かったと思う……。

 

 これはもう発情期とか関係なく、私は鷹山先輩が好きなんだなぁ。それこそナノちゃんに察せられてしまうくらいに気持ちが外に出ていたのだろう。

 

 そして多分トドメは発表会の日、機材の不調で鷹山先輩の録音音声が出なくなった時に、あれほど嫌がっていた舞台での声出しを先輩がしてくれた事だ。

 

 掠れてホールに響く声では無かったが、「トレーナーの声が聞こえない」という予想外の事態に、私もミノタウロス(ミノちゃん)先輩も舞台の上では対策が取れずに、ただただ走るフリだけしか出来なかった。

 

 そこに聞こえた「ウイング、行け」の地声は、まさに泥沼で足掻いていた私達を救う蜘蛛の糸だった。

 舞台の為、私の為に鷹山先輩が身を挺して叫んでくれたから舞台は大成功を収められた、と言っても過言ではあるまい。

 

 鷹山先輩は「やる時はやる、頼りになる男」なのだと見せてくれた。そりゃ好きになっちゃうよね……。

 

 ふぅ… 今までボンヤリとした感情で鷹山先輩と接してきたけど、いざ『恋心』を意識しちゃうと色々な面で困るんだよなぁ……。

 

 鷹山先輩には、これまで女子として可愛くないシーンを含め、あまりキラキラした思い出を上げられていない。先日の「嫌だ」発言から嫌われていないのは分かるけど、それは先輩にとって『ケンカ友達』くらいの認識で、好きな娘はまた別にいる、みたいな展開も考えられる。

 

 もし本当に()()だったら凹むなぁ。1ヶ月くらい落ち込みそうな気がするよ……。

 

 ナノちゃんは私と鷹山先輩が付き合うなら祝福する、とは言ってくれたけど、そもそも鷹山先輩が私をどう思っているのかを聞き出せていない。

 

 このまま私が何の策も講ずること無く鷹山先輩に突撃しても、普通に振られる可能性だって十分にある。

 仮に私から告白した所で、上手くいく保証などどこにも無いのだ。そう考えると一気に怖くなる。

 

 第一、「演劇部を含む今の部活の関係を壊したくないから」と一線を引く様な事を言いだしたのは私なのだ。どの面下げて「先輩が好きです」などと言えるだろう?

 

 アレコレ考えて、全くまとまらずドツボにハマる。むしろ1人で考えていると、悪い方向にばかり思考が向いてしまう。

 

 1人で悩んで1人で落ち込んで、歳を重ねたら「それが青春だ」みたいな気持ちで思い返せるのかも知れないけど、私としては『今』何かしらの導きが欲しいんだよね。

 

「とにかく鷹山先輩に会って話をしよう。いきなり告白じゃなくて、少し落ち着いた場所でリラックスしながら話せる環境を作らないと、多分2人とも固まっちゃって話せなくなるよね…」

 

 自分に言い聞かせる様に、独り言で脳内の話題を変えていく。とにかく何でも良いから動いて、このモヤモヤを吹き飛ばしたい。行動あるのみだ。

 

 とにもかくにも鷹山先輩を誘い出さないと話が全く進まない。私は自分のスマホを手に取り、LANEの画面を開く。そして再びそのまま3分ほど固まってしまう。

 

「何処にどうやって誘ったら良いのか分からねぇ〜っ! ダービーの時みたいに口実があればともかく、今なら何て言って誘えば良いのよぉ〜っ?!」

 

 ここに来て、私には恋愛だのデートだのと言う事に対しての『手持ち札』が全然無い事に気付かされる。

 世間の女の子ってこういう時どうしているのだろう…?

 

「買い物… は合宿で行ったし、地方のレース場… も特に私達で話題になる様なレースもウマ娘も居ないし… 海とかプールとか…? うぁぁぁっ! 今の精神状態で鷹山先輩に水着見られるとかあり得ないでしょ…」

 

 いくつかのプランが浮かんでは消えていく。他にウマ娘マニアの鷹山先輩が喜びそうなネタは……。

 

「トレセン学園に借りた服を返しに行くついでに中を見学させてもらうとか… でもそういうのは飛び込みで言って見せてもらえる物じゃないだろうしなぁ…」

 

 そもそも借りた制服を既に返したのかどうかすら確認していない。ちょっと確認してみるか……。

 

『制服? まだあるわよ。そろそろ返さないといけないんだけど、何だか返すのが惜しくてさ… でも何でそんな事聞いてくるの?』

 

 タカチャン先輩からはこの様な返事が来た。これならば『制服を届けに行く』という形で鷹山先輩を呼び出せるかな…?

 

 学園の見学は出来なくても、学園の外でトレーニングしているウマ娘の生徒さんに会えるかも知れない。あわよくば鷹山先輩の推しのブラックリリィさんとか… あ、今は合宿中か。

 

 ただそれだけだとやはり弱い、物足りない。何かもう一つイベントの『山』が欲しい。

 

 山…? 山かぁ… そう言えばトレセン学園の先には山、高尾山がある。高尾山ならハイキング気分で行って帰ってこられるだろうし、海やプールの様に肌を見せる必要も無い。

 

 私と鷹山先輩なら私の方が体力あるから、疲労した彼を助けて山頂に行き、「頼れる女」像をイメージさせつつ告白する、みたいなのはどうだろうか?

 お弁当なども作って持参すれば、これで男はイチコロ… なのかな…? よく分からんけど……。

 

 いささか強引で姑息な手段な気もするが、とりあえずは状況(シチュエーション)を作らない事には何も始まらない。ナノちゃんから与えられた猶予は長くないのだ。

 

 大体のイメージが出来た私は、意を決してタカチャン先輩に自分が直接返しに行きたい事、そして鷹山先輩に「制服返しに行くついでに山に行きませんか?」とお誘いのLANEを送った。

 

 さて、もう後戻り出来ないぞ……。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。