アーカムハウスのヨコハマ暗躍記 作:DUN.ネコノカンリニン
「あの、僕は武装探偵社の中島敦と言って...」
と、少年は語り始めた。
しかし、私は――私と所長は――書類整理に戻らねばならんのだ。このような無駄話に付き合っている暇はないのだが、悲しいかな。私はこう、話しこまれると自分から切り出せない性格なのだ。
なので、仕方なく、私は少年――敦と話し始めた。
「ほう。挨拶かね。では、ここではなんだから中に入りなさい。お茶を出そう。」
「ありがとうございます。」
と、言う訳で、私は一時的にあの地獄(書類整理)から抜け出せたのだ。
「所長!お客ではなかったですけど、挨拶と言っていたので少し抜けますね。」
「ちょ、ちょっと、ちょっと待ちなよ!!挨拶?どこから?」
「えーっと、武装探偵社って言ってましたね。」
「ぶ、武装探偵社!?」
「そうです。んじゃ。」
武装探偵社。それは、このヨコハマの昼と夜の狭間を支配する組織。
社長は福沢諭吉、その下には太宰治、江戸川乱歩、与謝野晶子、谷崎潤一郎、国木田独歩等がいる、北米でもそこそこ名の知れている組織である。
そして、太宰治は元ポートマフィアであり、昔、双黒として名をはせていた――少なくとも、この様な裏稼業をやっていれば――このアーカムハウスは、裏稼業の手伝いや、代行もやっている――北米でもその名を聞かぬ日はないほどに――。
そういう事から、所長が驚くのも無理はない。
――しかし、あの敦とか言う少年は聞いたことがない。しかし、あの武装探偵社に入るとなると、よほどの実力者なのだろう。一応の警戒はしておこう。
「敦...少年。粗茶だ。そんなに美味くないと思うが、まぁ、それは日本に来たての外人が淹れたからってことで許しとくれ。」
嘘である。およそ十四年前――十五の頃には来ている。
しかし、敦は疑うという事を知らないのか、すぐに私の言葉を信用し、私が淹れた茶――恐らくそこら辺の茶道を嗜んでいる奴よりかは上手い――を飲もうとした。
「いえ、こちらこそ突然お邪魔してすみません。では、いただきます。」
そう言って飲むと、彼は驚いたように目を見開き、私に向けて、
「何ですかこのお茶!!そこら辺の和菓子屋のお茶よりおいしい!!」
「そうか、それは良かった。...して、挨拶とは?一応名乗っておくが、私の名前は小泉八雲と言う。」
「いえ、普通にあいさつで...あ、そうだ!!」
と、なんか叫んだので、こっそり、
「異能力『骨董の怪談』――耳なし芳一(ボソッ)」
と、耳なし芳一を降ろしておいて、いつでも逃げれるようにしといた。
「ん?どうしたんですか?何か言っていたようですけど。」
「いや、何でもない。最近経営が厳しくてね、何とかならないものかと少し、ほんの少しだけ杞憂になっただけさ。お得意様が今、何でも忙しい時期に入っているという事で、何とか、依頼が来ている状況だからね。」
「へー、ちなみにそのお得意様って言うのはどこなんです?」
「あぁ、そのお得意様の名前は、ポーt...」
あ、危っね!!確か、ポートマフィアと探偵社は敵対していたはず。ここでポートマフィアとの繋がりがバレれば、ここで殺されてもおかしくない!!
「ん?ポー...なんです?」
「あ、あぁ、ポータルブックスと言う海外の所だよ。ウチの本業は印刷所だからね。何でも屋は副業さ。」
「そうなんですね。あ、こちら、挨拶用の和菓子です。」
「あぁ、ありがとう。こちらともよろしくだよ。探偵社。」
「そうだ!!確か、近くに太宰さんが来ているはずだから、会ってみたらどうですか?」
太宰。もとい太宰治。元ポートマフィアの元双黒。異能力を無効化する異能力者。私の中では、完全に警戒レベルはトップクラス。日本に来て十四年だが、彼ほど私が日本人の中で警戒している相手はいない。そんな奴である。
そんな相手に会えというのか!!こいつは!何という所業!鬼!悪魔!
「あ、あぁ、そ、そうだな。しかし、私は、少し、用事があるのでここで失礼したいのだが...」
ここで、私は思い返した。彼を警戒しているのは、昔の事であり、普通に今なら勝てるのではないだろうか、と。
「だが、良いだろう。その、太宰と言うやつに会ってみよう。」
と、言う訳で会いに行く事にした。
―――ヨコハマ、某所。
今日は、よく晴れた日。散歩日和である、が。
私は、何故、こんな心霊スポットに来ているのだろう。
ここは確か...そうだ。自殺の名所だ。
そんなところに来るとは、太宰とは、そんな奴だったか?!
そうこうしている内に、敦は足を止めた。
「恐らく、今日はここで自殺してると思うんですけど...太宰さーん!!」
「え、ちょ、ちょっと、なんでこんな所で大声出しているんだ!!ここは自殺の名所だぞ!分かっているのか!これは、日本の文化で言う霊への冒涜ではないか!」
「いえ、恐らく、太宰さんはここで首を吊っているので、」
「そ、こ、が、理解不能なのだ!!なんでこんな日中に首を吊っているんだ!!」
「そういう趣味の方なので。」
「何という事だ...確か、自殺者は地獄に行ったらキツイ責め苦を味わうのではなかったのか!!」
「そうなんですか!」
やはり、太宰は狂人だったようである。
そして、まぁ、そんなことを話していると、どこからともなく、
「やぁ、敦君。...と、そちらの方は?」
いや、どこにいたんだよ。
「あ、太宰さん!どこにいたんですか!」
「あぁ、あちらの木で首を吊っていたのだが、途中で縄が切れてしまってね...また、死ねなかった...」
と、落ち込む太宰治――異能力「人間失格」――は、さっきまでそちらの方だった私の事を思い出したようだった。
「あぁ、なるほど。君は確か...ラフカd」
「あーーーーーーーー!!あーーーーー!!」
私は、叫んで彼の口を塞いだ。
無論、狂気に陥ったわけではない。ここには夢野はいないのだから。
ならば、何故口を塞いだかと言うと、私の嫌いな私の本名を言おうとしたからだ。
「ちょっと、ちょっと、何やってるんですか、小泉さん!」
「いや、すまない。彼が余計なことを言おうとしてね。」
「あぁ、先程はすまない。君はこれが好きじゃなかったね。確か君は、小泉八雲、だったかな。」
「その通りだ。久しいが、私は君に会いに来たわけじゃない。この少年――敦に連れてこられてここまで来たのだ。君がどうしてそちらにいるかは知らないが――もっとも、知ろうとする興味もないが――、良いことだ。人を救う側にいた方が落とす側よりよっぽど綺麗だ。」
「あれ、二人は知り合いなんですか?」
「あぁ、ちょっとした縁でね。あ、そうだ。敦君。少し、向こうに行っててくれないか。彼と一対一で話したいことがある。」
「分かりました。では。」
と、言う訳で、何を話したいのか、太宰が敦を追い出し、一対一になってしまった。何という事だ。悪夢だ。悪夢なら早く目が覚めろ。いや、現実だな。もう諦めよう。死んでもアーカムハウスはダーレスなら大丈夫だ。うん。あの書類地獄もいい思い出だ。
「それじゃあ、八雲、話そうか。」
あああああああ!!助けてぇぇぇ!
「久しぶりだね。八雲。また、戦いに来たのかい?それなら、期待には答えられないな。今は中也がいない。と、いうか、もう、永遠に中也と組むことはないだろう。」
「やめてぇ!!殺さないで!!...って、え?もう君は中也とは組まないのか?」
「あぁ、私はポートマフィアじゃないからね。中也とは敵対状態にあるんだよ。だから、もう組むつもりはない。」
あの、中也と別れた理由がなんとも驚くべき理由かと思ったら、ただのポートマフィアからの離脱が理由だったと、私は少し、落胆した。
第二話fin.
どうも。DUN.ネコノカンリニン(セカイノ/ネコノカンリニン)です。今回は特に言う事はありませんが、近いうちに、設定集出します。ネタバレされたくない人は、もし、それが出ても、読まないで下さい。あと、皆さんの出してほしい文豪、感想欄で募集します。ドシドシ出してください。では、また次回で。
この中ならどの文豪が出て欲しい?
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ゲーテ・J――異能力「ファウスト」
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紫式部――異能力「源氏物語」
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ダンテ・A――異能力「神曲」
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幸田露伴――異能力「風流微塵蔵」
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ジョン・M――異能力「失楽園」
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カーター・L――「ネクロノミコン」