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先の話しで、ダンまちの世界観的にこの展開はおかしくない、というご意見を頂きました。
えぇ、言われても当然。確かに展開がおかしいかもしれません。
思わず、削除して一から作り直そうと思いましたが――――やめました。
\やめたのか/
えぇ、やめました。
これから面白くなりますから! いいや、本当! どうかこれからもよろしくお願いしますねっ!
っと、隙を見せましたねえええ!!急急如律令!喰らえい!箸休めの幕間!!
オラリオではないどこか。
都市に比べて簡素すぎるような村落。人口も数十人程度の集落で、子供特有の声が響いていた。
この集落では珍しい。
というのも、子供自体の数が少なく、片手で数える程度の人数しか存在しないからだ。
村民は何事だと声のした方へと視線を向けて、騒いでいる子供が何者なのか見ると、直ぐに笑顔を浮かべて直前までやっていた行動へと戻っていく。
子供が騒ぐのは珍しいといったが、最近では見慣れたもの。
それも村の中では有名な“好好爺”を訪ねてきた二人の旅人がやって来てから。
「いいですか、ベル!」
ビシッ、と。
身体が小さな少女。
男の子は正座している。
自発的にではない。きっと、リリルカが座るように言ったのだろう。ここで正座を選ぶ辺り、男の子の性格が出ているというもの。
謙虚、あまりにも謙虚。人が好いといってもいい男の子の名はベル・クラネル。雪のような白い髪、宝石のような赤い眼をした少年は、どこか緊張したような面持ちで。
「は、はい! リリさん!」
「それです」
「はい?」
いまいち要領の得ないように首を傾げる。
当然だ。
ベル少年がわからないのも無理はない。
何せリリルカは主語を言ってない。不満そうにしていることは、ベル少年でも辛うじてわかるものの、何に対して自分が怒られているのか、いまいち解っていなかった。
対するリリルカは指を差したまま、堂々とした口調で。
「貴方は、アルフィアさんをお義母さんって言いましたね?」
「は、はい」
だって呼ばないで叔母さんって言うと無言で睨むんだもん、という言葉を飲み込む。
賢明だった。この辺りは“好好爺”の教育が行き届いているというもの。一言多い男はモテないと散々言われている故の配慮であった。
そんなベル少年の必死な心境は知らずに、リリルカは頷いて。
「よろしい。では次に進みますね?」
「……はい」
「アルフィアさんをお義母さんっていうってことは、息子同然ということですよね?」
「そう、なるんですか?」
「そうなるんです。ベルはアルフィアさんの息子同然なのです」
実のところ、悪い気はしなかった。
アルフィアという女性は、幼いながらベルから見ても美人の部類である。件の“好好爺”も会話するたびにセクハラをし、目に見得ぬ打撃を叩き込まれているのをベル少年は目撃している。
“好好爺”だけではない。
村落に住まう老人、中年から青年に至るまで、アルフィアを一目見ようとベル少年達が住まう住居に押しかける程だ。
そのような美人がお義母さんというのだから、ベル少年も誇らしくなるというもの。亡くなった母の姉であり、ベル少年の師でもあった人の同志だと聞いている。謎は深まるばかりだが、美人がお義母さんというのだからそれは嬉しいに決まっている。美人は正義だ。大人の女性はもっと正義なのだ。
「……なんかエッチなこと考えてませんか?」
「思ってません! マム!」
思わず反射的に、背筋を伸ばしベル少年は必死に答えた。
半眼で睨むリリルカに眼を合わせることが出来ない。合わせたら最後、直前まで抱いていた雑念を読まれそうだから。
ジーっと見てリリルカは。
「まぁいいでしょう。話を戻します」
「は、はい!」
助かった、と安堵するベル少年にリリルカは言う。
「アルフィアさんの息子と言うことは、リリの弟になります」
「え、どうして?」
「どうしてもなにもないです! リリの方がアルフィアさんに会ってます! ということはつまり、リリの方が先に娘なんです!」
「な、なるほど?」
子供特有の力任せの謎理論。
それを論破できるほど、今のベル少年は物の道理を解っていない。これがもう少し成長していれば、言い返せてただろうがまだまだ子供。
だからこそ。
「それにリリの方が一歳上です!」
「な、なるほど!」
丸め込まれるのは必定。
わかりましたか、とリリは言うと腰に両手を当てて、あまりにも威風堂々とした様子で、胸を張ってベル少年に告げる。
「何度も、何度も言ってますが、これからはリリのことはリリお姉ちゃんと言うように。いいですか、ベル?」
「は、はい! リリお姉ちゃん!」
「よく言えました。ベルは偉いです。偉いので今日も遊んで上げましょう。着いて来て下さい!」
「急に走り出したら危ないと思います、リリお姉ちゃん!」
「今日も儂の孫達が可愛い件について」
その様子を、家の窓から見送る件の“好好爺”が見守っていた。
顔はニコニコと、両肘を突いて、両手をあごに乗せて支え。これでもかというくらいニコニコと笑みを浮かべていた。
「狒々爺、ベルとリリルカを見るな。病気でも伝染ったらどうする」
そんな“好好爺”に冷たい声が突き刺さる。
見えない暴力。つまりは暴言。老人虐待をするのはアルフィアであった。
彼女はオラリオで着ていたメイド服ではなく、どこにでもいるような村娘が着ているような質素な衣服に身を纏っている。
“好好爺”は振り向いて、アルフィアに残念そうに眼を向けて。
「酷くない? 儂って病原菌か何かか?」
「誰彼構わず口説く程度には、頭が茹っているだろう。あと、いつからリリルカが貴様の孫になった?」
「リリちゃん理論で言えば、儂もお爺ちゃんってことになるじゃろう。儂は構わんぞ。リリちゃん、可愛いから」
「これ以上、あの子に悪影響を与える男はいらん」
考える余地なく、明確な拒絶。
“好好爺”は、ひどいっ! とハンカチでもあれば噛む勢いで悲しみ素振りを見せるが、アルフィアは無視。構えば付け上がると知っているからの放置であった。
改めて彼女は家屋を見渡す。
オラリオにあるあばら屋よりも立派な住居。人が住むには充分すぎる家財があり、家とはこういうものだと再認識させられる。
中でも彼女が注目するのは寝台の数。その数は三つあった。アルフィアやリリルカが来る前から一つだけ多いベッド。それが誰のものなのか、ここに訪れて仔細をアルフィアは聞いて納得する。
「アイツが生きていたとはな」
アイツ。
それはかつての同志であり、次世代の踏み台になることを共に選び、
ザルド。【暴喰】の二つ名を持つ冒険者の名前であった。
いた、とはつまりは過去形。
彼は既に亡くなっていたことを、訪れた日、つまりは数日前にアルフィアは聞いている。そして、亡くなる直前までベルの師として、鍛えていたと。
「何じゃ、あの黒いのから聞いとらんのか?」
「聞いてない」
「かぁー! 相変わらず駄目じゃなあの黒いの! 態度だけデカいんだもんなぁー!」
いけ好かないと言わんばかりに“好好爺”は文句を言い始める。
もはや内容は悪口に近い。慢心小僧やら、油断が過ぎるやら、いつか刺されろやら、態度がデカいのが気に入らないやら、黒髪の風上にもおけないやら、好き放題言いまくっていた。
とはいえ、その口調は嫌悪しているそれではない。
むしろどこか暖かく、悪友に向ける愚痴のようなものである。
「んで? 黒いのは元気でやっとるんか?」
「元気といえば元気だな」
「風邪でもひけばいいのに」
「ひかないだろう。阿呆だから」
アルフィアもあんまりな事を言うと、そのまま続けて疑問に思っていることを口にした。
「何故、そこまで眼の敵にする?」
「だって、儂とアイツ、喧嘩別れしたし」
「初耳だ。何故喧嘩した?」
「性癖語り合ってたら、いつの間にか殴り合ってた。……あれ、儂らってどうして殴り合ってたんじゃ?」
「……知るか」
思ったよりも下らなかった。
アルフィアは思わず目頭を押さえて、謎の頭痛を覚える。聞いた私が馬鹿だった、と後悔して遅い。狒々爺と問題の黒い男に、まともな理由があるとは思えない。この男共はこういう男共であるとアルフィアは再認識し、“好好爺”の顔を見る。
“好好爺”の表情はどこか晴れ晴れとした、満足したような表情。
それはまるで、ベルを見つめる眼差しに近く、孫を見つめる翁のような顔でもあった。
笑みを浮かべて“好好爺”は言う。
「元気そうで良かった良かった」
「……貴様、知っているのか」
「何がじゃ?」
「アイツが何者なのか、だ」
アイツとは、“好好爺”がいう黒いの。態度がデカい規格外の彼のことだ。
アルフィアが育ての親でもあった
それが先程の“好好爺”の反応で、知っていると確信を持つことになる。
そして“好好爺”は考える素振りすら見せずに。
「知っとるよ?」
それから試すような笑みを浮かべて。
「何じゃ、知りたいのか?」
「…………」
知りたくないといえば嘘になる。
黒い彼とは長い付き合いであるものの、何者なのかアルフィアは知らなかった。それは妹であるメーテリアも同じといえるだろう。
いつの間にか現れて、世界のバグのような黒。それが彼だった。
知りたいといえば知りたい。
何一つ、知らない彼のことを知れば、もっと近づけるかもしれないとアルフィアは考える。
だが。
「いらん」
否、と。
他人の口から聞いては意味がない。
これは本人の口から、語られるべきものであるとアルフィアは断じる。
それに何か負けた気がする。
まるで黒い彼のことが気になって仕方ないような、まるで乙女のような自分に苛立ちをアルフィアは覚えていた。
“好好爺”はそんな複雑な内面を視て、ニヤニヤと笑みを浮かべて。
「青春じゃのう~」
「殴るぞ」
「……もう殴られとる」
目視不可の拳を、いつの間にか“好好爺”の顔面に叩き込まれていた。
鼻血が滝のように出ているのはきっと気のせいではない。
“好好爺”は何事もなかったように、鼻を押さえて。
「まぁ、黒いのは黒いので色々ある。勝手に産み出されて、勝手に捨てられた可哀想なヤツじゃからな」
「可哀想とは程遠い男だがな」
「確かに。もうちょっとばかり、謙虚になれないものか。ベルを見習えベルを」
それは確かに、とアルフィアは頷く。
我が甥ながら、アレはアレで人が好すぎるが、と考えながら。
「今夜発つ」
「ほう、もう行くのか? アレか、黒いのが気になって仕方ないのか?」
「殴るぞ」
「――――だからもう殴っとる」
再び、“好好爺”の顔面へと拳を叩き込み、アルフィアは溜息をついて。
「どうせあの男は、私とリリルカがいないことを良いことにサボっているに違いない」
「業腹だが、私達が戻ってやらねばなるまい」
▼爺「というか、ザルドと二人掛りで黒いのに負けるってどうなの?」
▼アルフィアポイント加算
▼爺「もっとしっかりしてほしいわけ。黒いのに負けるとかナイワー。本当にナイワー」
▼アルフィアポイント加算
▼爺「ヘラがなんていうかなー?」
▼アルフィアポイント限界突破
▼アルフィアのこうげき!
▼いちげきひっさつ!
▼爺「あっ」