ブギーマンは世界を大いに嗤う   作:兵隊

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 更新が遅れて申し訳ありません。
 ハイラルを救っていました。最後なんて泣きながらやっていました。私の中のイマジナリー英傑とイマジナリーハイラル王が大変な事になっていました。
 我、勇者ぞ? ゼルダ様救う者ぞ? 


幕 間 顔無しの憂鬱

 

 

 ――――何事も思い通りにならないのが、世の常であると男は自覚している。

 

 

 何もかも思い通りになるのなら、人として欠陥を持つ自分のような人間は産まれていない。

 視る物全てが醜く視え、口にする物全てが形容しがたい異物として認識し、耳に入る声は全て雑音に聞こえる。人が美しいと思えるものを醜く思え、醜いものは醜い物でしかなかった。

 そう考えると世界は平等なのかもしれない。彼のような人間を平等に産み出し、不平等な人として欠落してはならないモノすらも平等に奪っていく。

 

 男は自身の欠陥を正しく認識していた。

 眼に見える何もかもが灰色に映り、美しいと感じたものは他者から流れ落ちる鮮血。自分から流れ落ちるものでは心は揺さぶられないのだから始末に終えない。

 それだけではない。ただ他人から流れ落ちる血を見ても何も感じない。血が流れ、他人が浮かべる表情が、嘆き、悲しみ、絶望に染まり、恐怖に慄いたモノではないと、彼は美しいと思えなかった。

 

 男は一人であった。

 欠陥を知りそれでも愛そう、と嘯いた邪神は既にいない。

 本当の意味で男は一人になった。 

 

 そういう意味では、男が自分のように置いてかれた“彼”に興味を持つのは必然といえるのかもしれない。

 もしかしたら、自分のような。どうしようもない欠陥を持っているかもしれない、という期待もあった。傷を舐め合いたかったもかもしれない、置いてかれた者同士で慰め合いたかったのかもしれない。

 真偽は男にしかわからず、男もおいそれと自身の本心を口にすることはないだろう。

 

 結論から言うと、男が期待していた者ではなかった。

 むしろ真逆。男とは対照的に、同じく置いてかれた“彼”は――――愛されていた。

 邪神が後を託す程度には完成されており、己の力に絶対的な自信を持ち、ブレることなく世界は己を中心に廻っていると豪語ほどの自我。

 

 使い捨てられ、捨てられた男とは違う。

 “彼”は誰がどう見ても、邪神に――――愛されていた。

 

 男から視えていた景色は灰色。

 何もかもが醜く視え、例えのようのない不快なモノをずっと視ている。

 他人から流れた負の感情を伴った鮮血こそが、男の心を脅される唯一なモノであった。

 

 しかしここで、男の世界に新たな色が産まれた。

 それはどうしようもないほどの黒色。

 墨よりも黒く、何よりも黒く、何者にも染まらぬ黒。

 世界が臨終を向かえ、何もかも消え去ってもそれだけはそこにあるような、そんな錯覚すらさせられる圧倒的な黒。

 

 醜い灰色とも、美しい絶望に染まった鮮血とも違う。

 一言では表せない“黒色の彼”が新たに、男の世界に産まれた。

 

 それが何を意味しているのか、今の男にも理解が出来ない。

 ただ一つ言えることは――――無視出来ないということだけ。

 その黒に背を向けることも、眼を逸らす事も出来ない。男の何もかもを賭けて、男の存在する世界まで、“黒色の彼”を堕とすと気が済まなかった。

 

 

 そのために男は行動に移した。

 相対し、手始めに、“黒色の彼”の出方を見るために、どのように行動し問題を解決するのか、その手段を探るために。

 だが――――。

 

 

「よう、【顔無し】」

 

 

 やはりというべきか、世界は思い通りに動いてくれない。

 現にこうして、目立つ事無く身を潜めていたかった男に声をかける人物が一人。

 

 【顔無し】とは男の二つ名。

 それを知り、敢えて呼ぶということは、男の素性が解っている人間に他ならない。

 

 男は声のした方へと顔を向ける。

 同業者の女だった。つまりは――――闇派閥(イヴィルス)の冒険者。

 

 ニタニタと、意地の悪い笑みを浮かべる女に向かって、【顔無し】と呼ばれた男――――ヴィトーは薄ら笑いを顔に張り付かせる。本心を悟らせないように、わざと驚いた調子で口を開いた。

 

 

「これはこれは、【殺帝(アラクニア)】殿。驚きましたよ、貴女は死んだと聞いていたのですが」

 

「残念、ピンピンしてるぜ。嬉しいだろ?」

 

 

 挑発的な笑みを浮かべて【殺帝(アラクニア)】――――ヴァレッタ・グレーデは嬉々として声を上げる。

 

 別に嬉しくもありませんが、と心の中で呟いてヴィトーは出方を探るように問いを投げた。

 

 

「しかし、妙な気持ちですね

 

「何がだ?」 

 

「往来の激しい道端で、日陰者である我々が顔を合わせるというのは」

 

「木を隠すなら森の中ってヤツだろう。それに、世間は私達のような木端なんてどうでもいいのさ」

 

「というと?」

 

「とぼけるなよ。性格が悪いぜ、ヴィトー。てめぇだろ、今回の騒動の火種を作ったのはよぉ?」

 

 

 ニヤニヤ、と。

 どこか粘着性のある笑みを浮かべてヴァレッタは言う。

 

 今回の騒動。

 つまりは“黒色の彼”――――アルマ・エーベルバッハの指名手配に他ならない。

 

 ギルド内部に忍ばせていた、闇派閥(イヴィルス)の協力者を使って、今回の騒動を巻き起こしたのだろう、とヴァレッタは暗に問う。

 

 しかしヴィトーはそれに対して、何を馬鹿な、と鼻で笑い一蹴する。

 

 陥れようと画策した。

 途中まではヴィトーの思い通りに事が進んでいた。

 望んでいたのは小さな噂。アルマは冒険者を殺したかもしれない、たったそれだけのモノをヴィトーは望んでいた。そしてその小さな噂は積もり、他の小さな噂を伴い大きく肥大し、数年後には無視できないモノにまで成長する。ヴィトーが思い描く策はそんなもの。長い目で、種から花を育てるように大事に、少しずつ小さな取るに足らない噂を流し、アルマを陥れるモノ。

 

 間違っても、今の現状のような。

 性急で繊細の欠けるモノでは断じてなかった。

 

 

 ヴァレッタの表情から察するに、今回の騒動の主犯はヴィトーではないことはわかっている。

 解った上で問いを投げているのだろう。自身の作戦を台無しにされた気分はどうだ、と喜悦を伴った眼でヴィトーに尋ねていた。

 

 ヴィトーはうんざりした口調で、溜息を吐いて。

 

 

「きっかけを作ったのは私ですが、ここまで大きくしたのは私ではありません」

 

「んじゃ、誰だ?」

 

「【ルドラ・ファミリア】ですよ」

 

 

 想像していなかった名前を口にされて、多少は面を食らったのはヴァレッタは興味深そうな口調で。

 

 

「へぇ、意外だな。何でアイツらが出張ってきたんだ?」

 

「知りません。大方、【アストレア・ファミリア】と事を起こすにあたり、“彼”が邪魔だと思ったのでしょう」

 

 

 とはいっても、ヴィトーは【ルドラ・ファミリア】と【アストレア・ファミリア】が争ったところで、アルマが介入してくるとは思わなかった。

 多少の親交はあるといえど、それはかなり薄いもの。炊き出しといった慈善活動をする際に、雇った程度の繋がりしかない。

 

 騒動が起きる前のアルマなら、間違いなく【アストレア・ファミリア】に何が起きても介入する事はなかっただろう。

 しかしそれも、騒動が起きる前の話。今となってはどうなるのか、ヴィトーすら予想がつかない。

 

 放っておくべきだったのだ。

 アルマ・エーベルバッハは埒外な行動に出る。

 邪魔だと思ったのなら、監視でもつけて放っておくべきだった。間違ってもどうにかしようと考えるべきではなかった。

 

 ヴァレッタも理解しているのか、クツクツと喉を鳴らすように笑みを浮かべて。

 

 

「悪手にも程があんだろ。ああいう手合いは、どう戦うかじゃねぇ、()()()()()()()、だ。どうこうしようと考えた時点で間違ってる」

 

「それに、忌々しい神々に欺瞞は通用しません。“彼”にかけられた容疑など簡単に覆る」

 

 

 深くため息を吐いて、浅はかな手段を用いた【ルドラ・ファミリア】の面々を呆れながらヴィトーは続ける。

 

 

「配役がなかった者に役柄を与え、上がらせなくてもよかった舞台に上がらせた。既に結果は見えています」

 

「てめぇはどうするんだ?」

 

「しばらくはオラリオを離れますよ。それに興味深い存在から声がかかっていましてね」

 

「誰だそれ?」

 

「――――エニュオ、といえば解りますか?」

 

 

 

 

 

 





>>ヴィトーの憂鬱
 ここまで大きくするつもりはなかったというのが真相。
 小さな噂を流して、また違う噂を流し、これまた違う噂を流し、ゆくゆくはオラリオ中の人間をアルマに対して疑心悪鬼にさせる、といった陰気な思惑だった。
 寝て覚めたらこんなことになってて、流石に苦笑を浮かべる。
 ルドラ・ファミリア、焦りすぎでは?
 闇派閥、統率取れてなさ過ぎ問題。これを率いてたエレボスのカリスマ凄くないってなる。

アルマ「アイツ、基本ダメ人間だぞ?」
アルフィア「確かに」
ザルド「残当」

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