俺は主人公になれない 〜〝ただの石ころ〟が、誰かの〝特別〟になる物語~   作:岩重八八十

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104話 そしてもう一つは――

 束の間のティーブレイクを挟み、会議は再開される。

「それでは、第二の情報になります。議題は〝原初の魔力〟についてです、〝新発見された原初の魔力〟に加えて現状把握されている〝原初の魔力〟の特徴についての再確認を行います」

 

 改めてシジアンが巨大な本のページを繰りながら話を始めた。

「聞くまでもねぇな。新たなる原初の魔力――〝拒絶の闇〟。最悪なヤツが敵に回った」

 俺は眉間に皺を寄せて言った。

 

「我々は交戦しなかったのだが、やはりそれ程までに厄介だったのか、その〝拒絶の闇〟というものは」

 イルゼルナさんが興味深そうにその細く閉じられた視線を送る。閉じられた瞳の隙間からうっすら、ギラリと輝く光が幾つか見えた気がした。

 

 しかしそこで、

 

「申し訳ありませんが皆様、情報の整理には順番が肝要です。まずは〝現状我々が把握していた原初の魔力〟についての知識を共有したいと思います」

 とシジアンが議論の方向性を修正する。

 

「あ、ごめん。邪魔して悪かった」

「私も、すまない。つい、知的好奇心が湧いてしまった」

 俺とイズナさんが頭を掻きながら慌てて目を逸らす。

 

「いえ先輩、イルゼルナ先輩もお気ににならさずに」

 謝る俺達にシジアンは小さなお辞儀を返して、続ける。

「事件発生に至るまで我々がその存在を把握、認知していた〝原初の魔力〟は〝二つ〟です」

 

 ――え?

 

 シジアンの言葉に、俺は疑問符を浮かべた。しかしそれを言葉に出すよりも先に、同じように驚き、その仕草を示してくれる人物が現れる。 

 

「二つですかぁ!?」

 こういった場では大人しいアーシェが声を上げて驚いたのだ。無茶ぶりをさせられて涙目で取り乱す事は多くても、会議や会話中のアーシェは委員長らしく終始落ち着いているイメージがあったため以意外だ。

 

 しかし、その疑問を持ったのはアーシェだけではない。俺やレン、ドライズ。主に中学年の八天導師達が驚いていた。

 

「ああ、貴方達は知りませんでしたの」

 ルクシエラさんやイルゼルナさん、アイルさん達高学年組や三賢者の先生方は常識、と言わんばかりの様子だ。

 

「続けます。この事件に至るまで現在我々が把握していた〝原初の魔力〟、その一つは言うまでも無いでしょう」

 シジアンの言葉を受けて会議室皆の視線が、ルクシエラさんに集まった。

 

「〝破滅の光〟――あらゆる魔法を〝魔力へと分解〟し、無効化する上に、それそのものが本来の光属性の魔力の領分を超えた大きなエネルギーを持つ魔力……」

 アーシェは、半ば恐れるような、感嘆するような、少し昏い声色で零す。

 

「それで、もう一つって?」

 俺はシジアンに顔を向けると、シジアンは窓の外を指さした。

「第二の原初の魔力。それは〝豊穣の大地〟と三賢者の皆様は定義しました。それが〝永久の森〟を支える魔力の根源です」

 

「はぁっ!?」「え!?」「……っ」

 俺やドライズ、レン、皆が同時に驚きの声を上げる。

 

「〝原初の魔力〟って人間以外にも宿るんですか!?」

 俺達を代表するようにドライズが問うと、ティアロ校長が答えた。 

 

「うむ。現に〝永久の森〟は本来の地域とは一線を画した超常的空間であろう? 通常の十二倍のサイクルで営まれていく命の循環は〝豊穣の土〟の力――〝他の魔力と融合し、その魔力へと変化する事で賦活化する〟事によるものじゃ」

 

 更に、付け加えるようにアーシェが口を開いた。

「この世界は、火・風・土・水の四大元素により土台のようなもの構成せれていて、そうして組み上がった世界の中で光・雷・闇・氷の転成元素が産まれる事で今の世界が存在していると言われていますぅ。ですから、〝四大元素の原初の魔力〟が大地や空など〝自然に根付くモノ〟だと仮定できるのかもしれません……」

 

 アーシェは〝原初の魔力〟が既に二つ既知である事に驚きを示していたが、それが人以外にも宿りうる、という点には疑問を持たない様子だった。

 

「それでは話を戻します。今回の事件の情報を整理し、新たに認知された〝原初の魔力〟の情報を共有しましょう」

 シジアンの言葉を受けて、俺達は一呼吸を置く。

 そうだ。今大事なのはそっちの要件。新たな原初の魔力、〝拒絶の闇〟がどんな存在なのかを実際に対面しなかった八天導師のみんなに共有する事なんだ。

 

 そう思っていたら。

 

 シジアンの口から、再び驚きを隠せない言葉が放たれた。

 

「今回新たに認知された〝原初の魔力〟もまた、二つになります」

 

「ええええええッ!!?」

 

 俺はガタッと椅子を蹴り飛ばし飛び上がった。

「ファルマくぅん、流石にうるさいよぉ」

 目を×印にして頭をくらくらさせながらジン先生が言う。見渡すと、他の八天導師のみんなや先生達も頭に手を当てたり耳に指栓をしたりしていた、

 

「あっ、す、すんません……」

 ものすごく恥ずかしくなって、俺はすごすごと席に着く。

 しかし、驚く心は変わらない。今回の事件で、まさか〝拒絶の闇〟以外の原初の魔力が見つかっただんて。

 

 一体、何処で、誰が――あるいは何に宿っていたと言うのだろうか。

 

「その二つとは。第一は〝第四の賢者〟カイと〝原初の魔力そのもの人格〟トーラが操る闇の魔力〝拒絶の闇〟」

 それは判る。俺は気になるもう一つの原初の魔力の説明を待った。

 

「そしてもう一つは――」

 

 シジアン、更に三賢者の先生達の視線がドライズへと向く。釣られて、俺や他のみんなの視線もドライズへと誘導された。

 

「氷天、ドライズ先輩が宿し続け、今に至るまで気付かれる事の無かった氷の魔力です」

 

「……へ?」

 

 ドライズはその言葉を、キョトンとした様子で受け取り。

「我々三賢者はシジアンから得た情報を元に、ドライズが宿す氷の魔力を第四の原初の魔力――〝明鏡の氷〟と定義した」

 ティアロ校長先生がドライズの瞳を見据えて、言い切った。

 

「僕が、〝破滅の光〟じゃない原初の魔力を宿してる……?」

 

 当のドライズ自身も自覚が無かった様子で、呆然としていた。

 




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