英雄譚《しゅやくたち》を歌う歌姫《まがいもの》~異聞・英雄《しゅやく》になれない槍使い~ 作:笹木さくまのファン
幻想変換器の起動に成功した生徒達は、校舎外のグラウンドで待たされていた。
「もうええ、ワテはサバンナで暮らしたる……」
「……何があったの?」
「実はね……」
何故か猛烈に拗ねている映助を見て響が何事かを音姫に問い掛けると、音姫は苦笑いをしながら話し始める。
音姫曰く映助の幻想兵器は『
ヘラクレスの使っていた棍棒であり、能力は……『ライオン相手だとダメージが増える』。
「……能力の使い所が難しいなんて程じゃないよね?」
「そうなのよね~……」
しょんぼりと落ち込む映助に何も言えない響と音姫だった。
「そう言えば……音姫ちゃんと天道寺君、空知君の幻想兵器はなんだったの?」
「空知君の幻想兵器は天下三名槍の一振『蜻蛉切』よ。能力は『乗った蜻蛉が切れちゃうくらい鋭い』ですって」
「あ、本多忠勝の槍なんだ……凄い!」
響が三人の幻想兵器を音姫に聞くと、音姫は先ず宗次の幻想兵器について言う。
「私はアーサー王伝説の聖剣『ガラティーン』よ」
「えっと……確か、太陽の騎士って言われた『ガウェイン』の剣だよね?」
「そうね。能力は『午前9時から正午の3時間と午後3時から日没までの3時間だけ力が3倍になる』よ。正直言って当たりの部類よね」
「伝説で言われてる能力まんまだね……」
音姫の幻想兵器の能力に驚く響に音姫は苦笑いをする。
「で、英人のは……」
「おい、それマジかよ」
「本当だって、あいつきっと天道寺さんの弟だよ」
音姫が英人の幻想兵器について説明しようとすると、そんな会話が響達に聴こえてきた。
「あ~……やっぱりバレたんだ」
「しょうがないよ、名字が同じなんだもん。……でも、刹那さんは刹那さん、天道寺君は天道寺君なんだから過剰な期待はしないでほしいなぁ……」
「……何かそれで嫌なことを経験したの?」
「中学の友達がCEのせいで昏睡したお姉さんと同じ道を歩くように親に過剰な期待をかけられてノイローゼ起こして自殺しそうになったからね……」
「うわぁ……」
響の生々しい体験談に音姫はドン引きする。
「だからね、私は三つの目標を立てたんだ」
「その目標って?」
響が胸を張りながら言った事を音姫は首を傾げながら聞く。
「先ずは長野ピラーを倒して、長野ピラーから出現したCEに殺された人達の仇討つこと。それをしないと人は前に進めないからね。……私を含めて」
「じゃあ、響は……」
「うん。6年前の侵攻時にお父さんもお母さんもCEに、ね……」
響は音姫の言葉に寂しそうな顔になる。
「次に、6年前にはぐれちゃった親友の女の子を探すこと」
「それって、どういうことだ?」
響の言葉に近くで聴いていた英人がそう聞く。
「うん。6年前に一緒に刹那さんに助けられた子がいて……短い間だったけど、友達だったんだ。私はお祖父ちゃんとお祖母ちゃんに引き取られてから音信不通になっちゃって……だから、その子を探したいんだ! ……まあ、その子も刹那さんに憧れてるだろうからひょっとしたら、特高で再会できるかもしれないけど」
「そ、そうね。再会できると良いわね……」
響の言葉で何故か動揺しながら音姫はそう言う。
「っで、三つ目は……」
響が三つ目の目標を言おうとするが、その辺りで新入生全員の起動テストが終わったらしい。
保科京子を含む教師陣もグラウンドに出てきて、約百五十名の新入生に呼びかけた。
「皆さん、幻想変換器の起動テストの成功おめでとう。続いて幻想兵器の稼働テストを行います――実戦形式でね」
「「「えぇっ!?」」」
思わぬ発言に、生徒達の間から驚愕の声が上がる。
しかし、京子は慌てないでと手を振って制する。
「安心して、ちゃんと怪我がないよう、変換器から『
「え、そうなの!? 音姫ちゃん、ちょっとごめんね」
「うん。大丈夫よ」
驚いた響は許可を貰って音姫の肩を叩こうとするが……透明な膜でもあるかのように、当たる直前で弾かれてしまった。
「実感できたかしら? その強固な鎧と幻想兵器という剣があるからこそ、エースはCEと戦える最強の兵士なのよ」
「成る程~……」
隣の者と確認し合う生徒達を見て、京子は優しく微笑む。
「幻子装甲は貴方達の幻子干渉能力――分かりやすく言うとMPね、これが切れると使えなくなるけど、それまではほぼ全ての攻撃を防いでくれるし、切れる前には警告音が鳴るから、幻想兵器で斬り合っても安全に試合ができるわけ」
(確か、私の幻子干渉能力が機械にエラーが出るレベルで高かったから帰れなかったんだっけ?)
それなら安心だと、生徒達もほっと胸を撫で下ろす中で響は研究員に言われた自分が帰れなかった理由を思い出す。
「それに、皆もせっかく手に入れた幻想兵器だもの、一度はちゃんと使っておきたいでしょ?」
(……頭の中に浮かんだ歌と
響は自身の幻想兵器を思い出しながら、溜め息を吐く。
「では、相手が決まった人から前に出てきてね」
開始の合図にパンと手を叩くと、生徒達は戸惑いながらも二人組を作って、京子達の前に出ていった。
「宗次、ワテらも行くか」
「悪い、また今度にしてくれ」
「なんでやっ!?」
「ん?」
映助の誘いを断り、英人に向かって歩き出した宗次に響は疑問に思うのだった。
そして、彼女の幻想兵器の本当の姿の一つを知るのはこのすぐ後の事であった……
如何でしたか?
次回も頑張ります!