英雄譚《しゅやくたち》を歌う歌姫《まがいもの》~異聞・英雄《しゅやく》になれない槍使い~   作:笹木さくまのファン

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【英傑達の英雄譚・第一章『英傑の邂逅』 26ページより】

「空壱流槍術・全方撃!」

「うわぁぁぁ―――っ!?」

 宗次の蜻蛉切から繰り出された打、払、刺の槍が出せる攻撃を全方向から食らい、英人は大きく吹き飛ばされた。

 

(つ、強い……! 俺と同じ年齢でどうやったら此処までの強さを……!?)

 英人は地面を転がりながら、自分と同い年の宗次の強さに愕然とする。

 

 その宗次は転がった英人に油断する事なく槍を構えていた。

 彼の祖父の口癖である「槍を握れば常在戦場」を理解しているからだ。

 

「……あれが天道寺さんの弟かよ」

「なっさけねえな」

「刹那さんも可哀相よね」

「ちょっと、やめなさいよ!」

「そうや、誹謗や中傷はするもんやないで!」

 英人が剣を支えに立ち上がろうとしていた所にそんな嘲りの声『のみ』が聴こえる。

 

 思い出すのは、姉と同じように英人を見て少しでも失望したら掌を返したかの様に冷たい目で見る人々……恐らくだが、人類最大の愚行となりかかった『ヘロス・エクス・マキナ(機械仕掛けの英雄)計画』の望む英雄像から英人を外さないためのサクラだろう。

 

 そして、ふらつきながら立ち上がる英人を『やはり立ち上がったか』と目で言う様に一歩踏み出す宗次と心配そうな目で自身を見る音姫と響……

 

(嫌だ、俺を知らない人に失望されるのはまだ良い。だけど、俺を姉さん(英雄)の弟じゃなくて、俺個人として見てくれた二人と音姫に失望されるのだけは……)

「嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 英人は咆哮と共に立ち上がり、己の頭の中に浮かんだ幻想兵器の力を解放する。

 

 人の幻想と妄執によって歪められた世界最古にして至高の聖剣から泣きも笑いも恋もする一人の人間を何の感情も抱かせようとしない歪んだ英雄(人形)へと変貌させる光の刃が出現した。

 

「お、おい……」

「あれ、ヤバいんじゃ……!?」

「英人……!?」

「天道寺君……?」

「天道寺、待て!」

 そんな彼を中傷した人間やそれを制止した人間、音姫に響や宗次が様子のおかしい英人に声をかけるが……

 

 今の英人には目の前の『打ち倒すべきかませ犬(空知宗次)』しか見えていなかった。

 

「エクスカリバーぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「嘘だろぉぉぉぉぉ!?」

「逃げろ!」

「生徒達の安全を確保するんだ!」

「ダメだ……間に合わない!」

 英人が渾身の一撃を振り下ろし、それから生徒達は慌てて逃げようとし、教師達も生徒達を逃がそうとするが……逃げるには余りにも時間が無さすぎた。

 

「……やるしかない!」

 宗次はそんな生徒達を見て蜻蛉切を横一文字にして上に向けると、振り下ろされた光の刃を防ごうとする。

 

 ……もしもの話だが。『歌姫』がいなかった場合、これによって空知宗次は敗れ『かませ犬(英雄のアクセサリー)』として歴史に名を刻まれ、天道寺英人は機械仕掛けの英雄への第一歩を踏み出していただろう。

 

「ダメーーーー!」

 しかし、彼女はそこにいた。迷子になった少女の父親と共に探し回り、少女を見付けて安心で微笑んでいた普通の好青年である天道寺英人を守らんと駆け出していたのである。

 

「『Balwisyall nescell gungnir tron』!」

 音宮響は己の胸の中に浮かぶ歌を歌い上げ、そこから現れた光の塊に己の身体を突っ込ませる。

 

 そして……

「HORIZON†SPEARーーーー!」

 響が放った必殺の砲撃が光の刃と拮抗し、絡み合うと互いを打ち消しあった。

 

「うおあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 英人は即座にエクスカリバーで砲撃を放った人物に斬りかかり……響はそれを身体で受けつつ、英人を抱き締めた。

 

「え、あ……? お、音宮さん……?」

「大丈夫だから。一人で刹那さんみたいにならなくても良いから……」

 エクスカリバーを叩き込まれた部分から血を流しながらも、響は英人の頭を撫でる。

 

「う、あ……」

「だから、だから一緒に頑張ろう? 私達と一緒に刹那さんみたいな英雄になろう?」

「く、ううぅ……うう……」

 英人の手の中からエクスカリバーが滑り落ちて砕け散ると、英人は目を閉じて眠りこけ……全てを包み込む夜の様ゆ優しい漆黒の槍……響の『最初の』幻想兵器にして最も信頼する愛槍になる神槍『グングニル』が砕け、響もまた英人を落とさぬようにしながらゆっくりと崩れ落ちた。

 

 此処に天道寺英人を歪んだ人類の英雄にせんとする計画は崩壊を始め……人類を救う数多の英傑達誕生への産声をあげたのだった。

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

「うっきゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「ぶへえ!?」

 響は気恥ずかしさの余りに読んでいた小説を叫びながら同じく小説を呆れた様な顔で読んでいた映助に叩き込んだ。

 

「な、ななな……何でこんな本があれから数年しか経ってないのに書かれるわけ!? おかしいでしょ!」

「数年しか経ってないからよ。定説が出来るまで想像で書けるもの」

「うーうーうー!」

 響は顔を真っ赤にしながら小説に対して文句を言うも、隣で読んでいた少女の言葉に涙目になり唸りながら少女にあやされる。

 

「……この小説の俺はなんで技名を叫びながら攻撃しているんだ? 避けられたり、対策をたてられるだろうに」

「いや、それはそうなんだが……」

「ツッコミをいれる所はそこやないやろ……」

 宗次の確かに気にはなるがそこではないツッコミに英人と英人に助け起こされた映助が呆れた顔で溜め息を吐いた。

 

「うう……久々に特高の皆に会うのに恥ずかしいよ~!」

「いや、他の皆も同じように捏造とかで書かれてるから……恥ずかしさは同じよ。……まあ、主役格の響と天道寺君と空知君は多目だけどね」

「うわーん!」

 少女の言葉に響はこれから会う仲間達にどんな顔で会えば良いのだろうと思いながら手で顔を覆いながら悶えるのだった……




如何でしたか?

次回も頑張ります!
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