久しぶり過ぎて至らない点があるかも知れませんが、楽しんでくれたら嬉しいです。
(実は2024年11月にここの話は改修と分割化(次話)を受けています)
十一乙目、前を向け
「父さん、武器、何使ってるの?」
なんて事は無い。ただ降って来た、言葉にしなければ消えてしまう。他の事を考えれば思い出す事すらしなくなるような質問。
しかしながら、タイミングは良かったようだ。
「ん?気になるか!そうかそうか!お前もやはり男の子だからな!少し待ってろ、すぐに持ってきてやる!」
目を輝かせてドタドタと自室に駆け込んでいく父親の背を見届ける少年。すると背後から呆れた声が一つ。
「全く落ち着きが無いのですから……これじゃどっちが子供なんだか……。」
「………。」
首を左右に振りながらこちらに歩いてくるのは少年の母親、家事の後なのか、布で手を拭きながらその表情は呆れ顔。
「……いつも本ばかりに齧り付いて、武器の話どころか、お父さんの狩り話すら聞いたことがないのに、どうして唐突に武器?母さん気になって来ちゃった。」
「……なんとなく。それだけ。」
「……まっ、そんなものよね、でもそれも立派な行動理由よ、思った日がやりどきって言葉があるでしょ?何処だったかしら…ユクモとかだった気がするけど……ん?どうやら見つけたようね、私は買い物あるからしっかり父さんの話聞いてやりなさい?話す機会がなくてウズウズしてたから。」
そのまま慣れた手付きで身支度を整えると外へ出ていく母親、それと同時に入れ替わりで父親が騒がしく戻ってくる。
「ほらコイツが自慢の片手剣だ!」
自慢げに掲げられたその武器の様相は、思っていたものとは何処もかしこも違っていた。
「………なにこれ?」
まず色だ。深く、濃い緑の刀には、赤黒くありながら、何処か緑色の色彩を持ったナニカを放ち、刀身には無造作に引き裂かれたかとも思えば何処と無く規則性を見出せそうな模様が刻まれている。
「盾もなんか違う。」
盾も盾だ、刀身同様の有様ではあるが、一部が朽ちてしまっている事から相当古いものだという事は分かった。
「これ使えるの?」
正直なところ、この父親がこんな訳も分からない武器を使えるのか?と言うのが本音だ。
「まぁ……使えん!」
「………。」
この潔さ、こうもキッパリ言われるとどう反応すればいいのか困ってしまう。
「性能はいいんだろうが特化し過ぎて汎用性は全く無い。普通の武器の方がまだ良い。ただ、これには圧倒的浪漫が詰まっている!」
「……、名前は?」
「うぐっ……無視……ン"ッ。」
「コイツの名前は『屠龍剣【狩回門】』、これを除いて未だ発掘された事も無く、新たに製造された事もないとされる、今のところ世界に一つだけの武器だ!」
「屠龍剣?封龍剣じゃなくて?」
『封龍剣』、【絶一門】と【滅一門】、二つの門派から打ち出された武器の事を指す、圧倒的な龍属性を秘めた武器の事だ。純粋にかっこいい名前と見た目もそうではあるが、その性質と主な入手方法が『発掘』からのただひたすらに『研磨』である点などから、知名度は高い武器である。
「なんで封龍剣を知って?…まあともかくだ!これはまさに我が家の家宝にするべき一品!俺もこいつに何度も助け……助け…………たすけ…られたっけ?」
誇らしげな表情から一転、見る見るうちに苦虫を噛み潰したような表情に変化して行く父親。
「錆びてて全然使えなかった挙句に、こいつを使用可能にまで持っていくために過ごしたあの地獄の日々、挙句に普通に使えない、忘れもしないあの日々を、研磨研磨採掘採掘研磨採掘大地の結晶研磨大地の結晶………。」
何やらぶつぶつと言うだけになってしまった父親、戻し方なんて知らないし、知るわけも無い。大人しく復活を待ってみる事にする。
「……。」
「………ふぅ、ま、助けられたわけだな!」
「……無理があるよ。」
自力で戻ってきたらしく、いつもの明るい表情でそう言い放つが、流石にそれは無理がある。
「つまり大変だったけどそれがいい思い出になるくらいにこいつはすごいって事だ!」
本当だろうか?とてもいい思い出だと思える有様ではなかったのだが、ともあれ誇らしげに語り続けた。
「こいつはなんと『古龍』に反応し、『古龍』に絶大な打点を誇るらしいぞ!加工屋が古龍骨に近づけた途端、龍属性が滲み出して、さらに斬ってもないのに古龍骨が変色したらしい!恐らくは存在自体がヤバい系なんだろうが、こいつは出来る。」
そして最後に、まさに少年の様に純粋な目でこう言った。
「俺はこいつで、『古龍』を討伐するのが夢なんだ。」
「…無謀だよ。」
まさに無謀、たがハンターならば一度は想ってならない称号『古龍討伐』の夢。無謀だと言われても憧れ、辿り着く事に思い馳せることをやめられない、ハンター達の永い夢だ。
「ははっ!案外行けるかもしれんぞ?自然の化身とも言われようと、俺たち同様、生命ある物に変わりはないからな!」
「なら!もうそろそろ大型モンスターの狩猟も達成できてもいいんじゃない?」
「げっ!…ちょっと腹が…トイレ!」
「……はぁ、自慢ばかりで中身がまるで追い付いてない。あぁ恥ずかし、持ち主があれじゃ、剣も作った奴も泣いてるよ、売った方が家計にも優しいんだけどね。」
「………。」
口ではそう言うもののその表情には蔑むような表情は見られず、それどころか心なしか安堵しているような気が……しないでもなかった。
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「………?そうか、休みか。」
(なんか懐かしいような………ん?あっそうか、防具がないから狩に行けない、つまり休みか。)
いつもよりもゆったりとした動きで部屋を出ようと扉を開けると、食欲を掻き立てる匂いが鼻をくすぐる。
…
……
………
「……?」
(あれ?いつのまにか俺は飯を?)
気付けば並べられている料理を食べていた、前を向けばそこにはシナラ、そして横にはルーツが……。
「どこ行った。」
(あいつどこ行ったん?珍しい事もあるもんだ。…てか初めてじゃん)
そう言えばいないルーツの姿。
「ルーツ様?確かに見かけませんね、いつもなら腹が減ったとおっしゃって騒ぎ立てている頃……。」
「わからん。」
(考えても見当なしか、取り敢えず探してみるか?まずはじぶn………今はルーツの部屋か…。)
(心の中で)肩を落としつつ、「我を抜きに何勝手に食べておる!」と言われるのが目に見えた為に食事は中止、取り敢えず立ち上がり、部屋に向かおうとしたその瞬間。
「おや?ルーツ様?寝坊とは珍しい事で。」
「?……ッ!?」
(え?何がどうしてそうなった?)
「…よ…〜ー……や。」
「それに…機嫌も少々損ねているご様子で。」
「………。」
(あっ。)
怒っている。俯いてよくわからないが非常に機嫌が悪いのは見て取れた。感情によって人化が解けていないのは、彼女がこの生活に慣れたからなのかはわからない。
ただ姿は最早関係ない、迸る赤雷は記憶のままに色褪せず、その瞳は脳裏に焼き付いたあの瞳と変わらない。今の彼女は龍だ。
「まさ………ぞみか?……でも……んだぞ?……かま……からな……。」
「………。」
(え?何かした?俺何かした?……いやわからんぞ?なにが?なんでそんなに機嫌を損ねてるんだ?俺の部屋()に何かあったか?…エロ本なんて無いぞ?……残念ながらな。……シナラ君肝凄いな。)
彼女を普通の人に括ってしまうと何が普通か分からなくなる事間違いなしではあるが、龍の威圧を前にここまで構えていられるのはやはりG級。それに比べて最早言葉が止まらないハンター。
「して、どういうことだ?。」
「……?」
(え?唐突すぎて理解が追いつかん。)
「コロせぬならばヨワらせようとでも?よもやあんなクルいものをシノばせておくなどと…。」
「……?」
(え?何の話?)
ふとシナラに目線を向けるとどうか彼女も少々困惑気味な様子で、視線に気付いたのか此方に顔を向け、結果目線が合う形になる。
「……。」
(こっち見ないで、何もできないから!)
「コタえてみよ。それともワレのカンチガイか?。」
「……そうだ。」
(いや知るかよ、そうなんじゃね?……いや割とマジで、頼むから家を壊すのだけは辞めてくれ!生きていけない!)
その瞳はは赫赫と、しかし猛烈な焦燥を色濃く表す。
その表情に余裕はない。怒りに、焦りに満ちていると言うのにその口角は狂気の笑みを浮かべている。はっきり言ってめちゃくちゃだ。
「そうかそうか、ウレしいぞ。…ワレもこんな事でのスレチガイいはノゾまない…。。」
一体何をそんなに…?と、思えどそれはそれ。一時の危機は去ったようだ。琴線に触れたどころか琴事叩き割ったかのようだ。……誤解を解くのは……難しいものがあるが…。
「……いくぞ。」
(取り敢えずとっとといくべ。俺の部屋に一体どんな厄ネタがあるって言うんだよ…。いや厄が居着いては居るんだが。……いや?その厄もこうなる厄ってなんだよ…。)
「……なっ!?!?ぬお!?」
「ハッ、ハンター様!? ……いいな。」
ひょい。先程のピリつきは?まるでギャグの如きお手軽さでルーツを小脇に抱えると急ぎ部屋へと向かっていく。
「いきなりなにをしている!?我は子供では無い!」
ジタバタとするものの本気とは思えない。……形だけでも抵抗の意思は見せれど内心は、満更でも無いようだ。
「遅い……重いな。」
(はい?なんで流れる手つきで小脇に抱えられるの?何を抱えてるのかお分かり?もっと丁寧に扱って差し上げ…なんか思ったより重いな。……あのさぁ。)
「我が遅いだと!?…は?重い!?重いと言ったか!?」
「……。」
(うおw自分で蒔いた種なのに全然意に返さないその姿勢!に憧れるわけもなく。常識を学び直して来い。)
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「……理解した。」
(あぁなんか出てますねこれは。)
「ハンター様?…これは、一体…。…龍属性にも見えますが、それにしては少々…緑気味…ですが。」
明らかヤバいのが床上に水溜まりを作ってる。水たまりになるレベルで濃縮された何かがだ。これ以上はほったらかしには出来ない。いや、したく無い。
「私が取りに行きましょう、ハンター様に大事があっては行けません。」
「………必要ない。」
(いやそっくりそのまま返すよその言葉。人類最強格なの自覚してや、俺なんかよりよっぽど大事だし……それ抜きにしてもこれは俺がやらんとルーツも許してくれないだろうしな。)
「ですが!このような得体の知れない…ハンター様!?行けません!」
シナラが言葉を発する前にズカズカと入り込むハンター。
静止しようとついて行こうとするものの、止められてはどうにもとオドオドするシナラ。
終始目を細めてことの顛末を…珍しく静かに見守るルーツ。
「……。」
(家の中で靴を履く文化圏に生まれて、初めて感謝した瞬間だよ…。)
最悪のお漏らしを呈する寝具をどかしながら、やや呆れ気味に思っていると何やら如何にもな箱が出てきた。
……如何にもこうにもだ。兎に角寝具から箱を取り出す。重くずっしりと、しかし中はガチャガチャと音を立てている。
二人に見える位置まで移動するとその場の床に、丁寧に降ろしていく。
…その際、ジュワリとも、ビチャリとも取れる不思議な音がした。
「……。」
鍵すらかかっていない箱だ。簡単に開いたその中には…。
「片手剣。」
「まるで……これは封龍剣?…ですが色味や形状が異なっています。」
「やはりそれか。……どうしたハンターよ、固まってないで早う説明せ。……ハンター?」
朝の怒りの根源のはずであるが…。それも仕方のない事。その心はまるで自然故に、時に荒れれど、気づけば晴れる。そんな彼女自身のコロコロと気分が変わる性質が功を奏したか?
それに、その存在自体に忌避感はある。それは確かに毒である。だが、募らせど、やはりルーツから見てもその異常性は確かなもの。だからこそ、やはり気になるのだろう。
「ハン…ター様?どうかされました?先ほどから微動だに…。」
「どうしたのだ?これはなんなのかさっさとはっきりさせんか。……のおハンターよ…?」
先ほどから一才の会話に参加する事もないハンター。その事自体は珍しく無いが、それでも何らかのアクションは行っていた。だからこそ、まるで石像のように振る舞うそれに不安を感じるのも、仕方のない事なのだろう。
彼を慕うのであれば尚更。
「ハンター…さま?」
シナラが恐る恐ると覗き込む。手に持つ剣と、未だ箱に眠る盾を見下げた体制で固まるハンター、向き合っていてはその表情は窺い知れない。
「………ッ!?どうされました!?!?まさかこれが原因…?!」
それもまた無理は無い。その表情こそいつも通り。しかしその状況はどう見ても芳しくなかった。
瞳は焦点があっていない。ブレにブレたそれは最早世界を写す役割を担っていない。
玉のような汗はこの場においては正しく場違い。少なくとも、冷やすべき体温などでは無いというのに。
「…………違う。これは、その力が人に仇なすことはない。非常に不愉快ではあるが、これはそういうものだ。」
一見冷静にことを述べるルーツではあるがその実飛び出た尻尾は垂れ下がり、ソワソワと落ち着きは無い。シナラの前である以上、ハンターの前である以上、そして、やはり自分が龍である以上、醜態は晒したくは無い。…今更?……それとこれとはまた別なのだろう。
「……。」
「「………ッ!」」
突然、顔を上げる。焦点は…今度は一旦に明日を見ている。汗は、止まっている。
「……申し訳ない。……申し訳ない。」
「……え?あっ!……気絶…してる…?」
譫言が、それにしては誰かに、はっきりと伝えられた謝罪の言葉。その真意を知るものは、それを語れるのもは、今はここにはいなかった。
「……許さなぞ、こんな訳のわからない終わりなど、絶対に許せるはずなどない。はようなんとかしろ!こういうのはお前の仕事であろう!」
「今やってる!黙ってて!あぁハンター様に一体何が…。……いや、しっかりしなきゃ、支えたいんでしょシナラ!…まずはここ以外のベッドに運んでそこからは…。」
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ハンター君
おめめぐーるぐる
ルーツ
強がってはみるがすごい動揺してる
シナラ
しれっと自身のベットへ…。
読んでくれてありがとう!ではまたどこかで。