モンハンは狩ゲー?いや死にゲー   作:Ωが来た!

22 / 26
 スッゲェ難産だったゾ…(タイトル回収)


22乙目・焼き餅を詰まらせた男

 

 

 吐露は尚白く、共に出たるは熱の籠る蕩けた舌。艶やかに垂れるそれすら気にする事はなく、視界はぼやけ眼下の男を見下ろしその熱を共有…いや、それは最早一方的なまでの供給と化していた。

 

「〜〜〜っ!♡」

(ハンターさま!ハンターさま!ハンターさま!やはりこれは残しておいて正解でした!これを!忌々しく醸されるそれを!今まさに私が上書き、掻き消し!刻み込むこの快感!)

 

 

「………。」

 

 

 身体をくねらせ、声にもならない愛嬌と共に、より多くの面積で持ってその身を擦り無我夢中で刻み込む。

 

 それは正しくマーキング、己を上書き、自己を主張せんと独占欲を満たすが為に、猫撫で声で彼を誘う。

 

「ハンターさぁまぁ…♡」

(あぁ…疼いて仕方がないの……求めて止まない、欲しくて堪らない…私はこんなにも欲しくて欲しくて、いつだってその時を待っているのに、私がこんなに主張しても…貴方は全然乗ってはくれなくて…。)

 

 

「………。」

 

 尚も変わらずいつも通りの鉄仮面。ただひたすらに甘える彼女を見つめ続け、拘束されたその手足も未だ微動だにする事はない。

 

 甘えるも来ず、求めるも答えは無く、それが事更に焦燥を呼び込み必死さすら感じられようとも。

 

「… みて…もらえませんか?まだ…たりませんか?

(もっと踏み込まないと…そうしないとっ……頼って貰えない…そうしないとッ…。)

 

 

 自ずと手段は生えて来る。すればその視線は彼の唇へと吸い寄せられ、その身体は結論通りの行動を起こそうと動き出す。

 

「………。」

 

「…………。」

(…………。)

 

 

 いざ、今こそ口付けを、どんな形であっても契り、愛する事を。

 

「…すまないな。」

 

「………え?」

(…なに…を?)

 

 

「俺が、不甲斐ないばかりに。」

 

「足り得ないが為に。」

 

「お前に…。事を起こさせてしまった。」

 

 

「…すまn 「やめてッ!」

 

 聞くにも耐えず、思わず叫び遮るシナラ。余りにも緩急鋭く乱高下、思わず飛び出た己の叫びに驚く程に。

 

「やめてよ…。そんなことききたくて…。」

 

「……悪かったな。」

 

「やめてよ…。…?何をして?やめてっ、壊れちゃう!貴方が!壊れちゃうから…ッ!」

 

 

 鎖は鳴き、輪が肉に食い込み血が噴出する。…だが止まる事なく、表情一つ動かさずして上体を強引に起こそうと、痛々しくも確かに力強く。

 

 しかしそれは彼女の望むところではない。

 

「やめて!辞めてください!お願いします!…あぁそんな…。」

 

 いかに鍛え上げ様と、人間がその身一つで鎖を破壊するなど…、少なくともハンターにはそれは出来ない。が、それが据え付けられている根元ならば?元を辿れば木造の壁だ。

 

 であるならば出来よう。なに、壁ごとぶっこ抜けば問題は無い。

 

 

 バキャンッ!!

 

 

「…… あっ。

 

 

 ある程度の自由を得た両腕の、最初の行き先は未だ馬乗りの彼女へ。

 

 

「………。」

 

 

 語りかける事は無かった。

 

 

「わたしは… わたしは何をした?

 

 

 彼からの無言の抱擁が、正常な倫理観を取り戻させる。

 

 

「わたしは何をした?」

 

 

 津波の様に押し寄せる罪悪感、最愛の人を壊してしまった、愛したモノも、愛するべきモノも…。それでも彼は優しくて、そんな私を包み込む。

 

 …包み込んでしまう。

 

 いっそ怒ってくれたなら。…殺してくれたなら。…そんな思考、なんと浅ましい事かと唾棄すれど、しかし本心である事に変わり無く、グルグルぐるぐる堂々巡り…あぁ…。…ただ、わたしは…あの時からずっと…。

 

 ちゃんと、こうなりたかった。

 

「………。」

 

 

 虚ろい、俯き、全てを預け動かざる。今となっては辛い現実を見ること叶わず、巡りの果てに、夢の世界へと踵を向ける。

 

「…………。」

 

 

 残る拘束を外し、立ち上が…れない。

 

「……持てばいい。」

 

 

 アイテムBOXにはあのリオレウスの片手剣。……これは…少し工夫すれば義足になりそうな長さ……。

 

 

 

………

……

 

 

 

「……いって来る。」

 

 返事は無い。現実は辛く、世界はどうしようもなく、それは自分すらも一纏めて。

 

 今ここで自害すれば、もしかしたら…出会に遡れるかもしれない。しかしそれは今までの自分を、その生き様と信念を否定する。

 

 『生きる為に死ぬ』…死に戻りは全てを無かった事にはしない。自分がいるからだ。自分がいる限り、確かにあった事実だからだ。

 

 だからこそ適手を抜く事は許されない。自分に恥じず、力の限り足掻き、全力を尽くして砕けなければ、あり得た自分に、あり得た人々に失礼だ。

 

 …ごたごた抜かしたがとどのつまりは…意地、ケジメ、死に戻りの流儀に過ぎず、己の愛した世界への敬意でしか無い。

 

 この力強い世界に生きるからには、生まれたからには、と言う事だ。

 

 皆が歩む中、自分だけ歩みを止める事はない。

 

 

「……来るか。」

 

 

 天候が変わる。アレと初めて出会った時のように、むしろそれ以上に荒ぶる気迫を嫌でも感じる。

 

 

「……随分と、様変わりしたようだな。」

 

 

………

 

 

 その姿は凄惨を極めた。ここに来るまでに幾つもの激戦を繰り広げたのだろう、その間に休む間はなく止まる事なく。

 

 その身を包む純白の龍鱗は割れ或いは剥がれ落ち、白輝を放つはずの外殻ですら穿たれ、角ですら根本から折れるほどに。

 

 その背中には半壊した銃槍が突き刺さっていた。

 

 その脇には持ち手無き太刀が深く斬り込まれていた。

 

 その右肩には大剣が、その左肩には双剣が。

 

 その翼は破れ、裂け、数多くの穴を残していた。

 

 それは数多の名のある者達が、その一度限りを放った証。

 

 それは確かに、命に届き、削り崩していた。

 

 …左目は、左目には片手剣が突き刺さっていた。

 

 あの時、初めて出会ったあの理不尽極まる邂逅にて繰り出した決死の一撃、刃を振り翳し突き立てたあの場所に。

 

 だが、やはりと言うべきか傷付くばかりで済むはずもなく。

 

 その背に並ぶは淡い紅の結晶が、折れた角の根本から、更に生えるそれはなんたるか?

 

 迸る紅雷は己が血によって具現化され、その身を貫き顕現する。

 

 記憶を辿れば苦々しく、かつての『モンスターハンターフロンティア』に登場せしめたあの姿を重ねざるおえない。

 

 無論、相違は多い。鼻先より伸びる角もなく、その翼もそれと同じでは無い。

 

「……お揃いだな。…互いに枷付きか。」

 

 対峙するハンターは余裕を演じる。だからどうしたとでも言うように、所詮は生き物だと、その身にガタが来ているのは一目瞭然故に寧ろ足の欠損はいいハンデ、身体に武器がくっついてる点ではお揃いだと。

 

 

………ッ!

 

 

 舞い降りる伝説が唸る。果たして祖龍の真偽はいかほどか?しかしその名に負ける事は決して無く、この世に真祖と称するに相応しい者がいるならば、この龍以外にして他にあらず!

 

「………ッ!」

 

 狩人は駆ける。己の持ちうる矜持にかけて折れる事は許されない。

 

 その走りは不恰好極まりない。

 

 その装備は上裸であり、舐めてるとしか思えない。

 

 でも!それでも……!

 

「理由にはならないっ!」

 

 

 白光著しく、雷鳴轟々紅雨迸出。

 

 

……

 

 

あぁ…殺してしまった

 

 

……

 

 龍は、龍が、泣いた。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

………

……

…………

 

 

「……なっ!?(ガタンっ)……何だと?!」

(ぶろあっ!?…え!?!?竜車?…ここから!?……はぁ"ァァァ……良がっだぁ"ぁ"…詰んだがどうぅ……。)

 

 

 その手には護石。その空間は緩やかにガタゴトと、本来であるならば安心とは無縁の大自然…であるはずだが、この時ばかりハンターにとっては、何処までも安心出来る空間である事には違いない。

 

 

「……上があるのか。」

(ミラユニコーンかよ…いや正確には違うけど、なんの慰めにもならんし、はぁ…。…しゃあなし、考えても仕方ない、今は後回し、切り替えていけ。)

 

 

「……ここから…か。」

(いやまぁ、普通に右足ぶった斬りスタートかと思ってたし、良いとこ玄関エンカからだと思ってたよ?寧ろそこが限界で一生懸命祈りながら最後を迎えた訳なんだよ!)

 

 

「………。(深く、ゆっくりと息を吐く)」

(……こんなところからスタートとかバグでしょもう。)

 

 

「……。」

(取り敢えずだ!なぜあんな事になった?…シナラはなんて言ってたっけ?…誰かのものになるくらいなら…だったか?なら何処でそう判断した?…ダメだ素材が無い。……そう言えばルーツが部屋に篭ってるらしいな。……一か八か、侵入してみるか?)

 

 

 もう一度、今度は用心して彼女に接触することも考えたが、闇雲な体当たりは望むところでは無い。……ならばルーツとなる訳だが、我ながら自宅に侵入するなどと言う言葉を使う羽目になるとは…。

 

「……ままならん。」

(俺はまともに帰宅する事も出来ないのか?)

 

 

 嘆きも届かず。…届く場所がないから当たり前ではあるが…あいも変わらず脳内警報はレッドアラートを示している。

 

 …解けることのない緊張感と、ただ先行きの見えない帰路と共に揺られれば、あれやあれよと自宅が見えて来た。

 

「…様子見か。」

(裏口から入っても良いがそれでもバレるだろうしな。なんかシナラの気を逸らす様なイベントがあれば…おん?)

 

 

 距離を取って物陰に隠れる。狩場で培った気配殺しは街でも健在だが、出来ればこんな事はしたくない。何が悲しくて狩場の技能を街中で生かさないといけないのか…。

 

「……客人?…今か。」

(珍しいけどナイス!その内シナラが出てくるだろうから今のうちに回り込め!)

 

 

 素早く裏口に回り込み、かくして潜入成功…なのだが、部屋に近づく度に心臓が跳ね上がる。

 

 …しかしハンターはさほど重大には考えてはいなかった。これはシナラに対して、或いは自宅に侵入する異常事態に対しての反応だと結論付けた為に、だからこそ、

 

 

「………ッ!?…グボァッ!?」

(…殺気!盾かmッ!!?!)

 

 

バゴッ!!

 

 

「……?」

(あれ?何で俺空を飛んでるんだ?てか俺の家に穴空いてるんだが?…は?待て待て待て!!高すぎんだろ!?不味い不味い!早い早い!?)

 

 

 指し示された警告が何処を指していたのか見ることさえしなかった。

 

 咄嗟に盾を構えるもその衝撃は凄まじく、紅雷を伴った物理的な何かに確かにぶん殴られれば、壁を貫いて遥か遠くに、それはもうギャグか何かの様な有様でぶっ飛ばされる!

 

 ところで、ハンターの家の立地は少々悪く、街でも端の方になる。だからこそ畑をやれているのだが、家の裏は森であり、少し進めば…大体5分程くらいで大きな川もある。…まぁ、とどのつまりは。

 

 

 ドボンッ

 

 

 そう、いくら二階からとは言えど、軽くこの距離を吹っ飛ばされた事になった。奇跡的に川ぽちゃで済んだが…。

 

 

……

 

 

「…ボハッ!?ゴフッ…ハァ…ハァ…。」

(クソッタレ!何だよ!何だってんだよ!っ〜〜!右腕バッキバキじゃねえかっ!…俺生きてる?…俺生きてる!!)

 

 

 確かに、今世の肉体は前世に比べれば遥かに良いが、それも平均すれば突出する事はまず無いスペックだ。

 

 そもそも死に戻りが無ければ下位ハンター以下の人生で幕引きなのは確定している。

 幾ら帰宅したばかりで未だフル装備だろうと、幾ら盾を構えようと、幾ら川に落ちようと、相当な奇跡を拾った事に違いは無い。

 

「…んぐ…はぁ…相変わらずだ。」

(苦い草と変なキノコのスムージーに無理やりハチミツどうなるか。…形容し難い…が、これで本当に回復するから訳分からん。…まぁ、取り敢えず大自然はすごいって事だな。)

 

 

 何とか回復薬グレートを飲み込めば、みるみるうちに腕が元通りに!とはいかないが、出血は止まりつつあった。

 

「……。」

(これとか他のアイテムも狩猟中に使えれば良いんだが、大きな隙を晒すし、それをカバーする人も居ない…、そもそも回復するの手遅れじゃね問題が多すぎてな…。ただ足りないな、効果も時間も……秘薬、試してみるか…。) 

 

 

 意を決して秘薬を飲む。

 

 秘薬は、使っても流石に吹っ飛ん腕が生えてくる事はないが、ただくっつく事はあるくらいには絶大な効力を持っている。

 ハンター的に興味はあったのだが、後々多大な影響を喰らいそうで踏ん切りがつかず躊躇っている状況だった。

 

 ごたごた文句を言ってられる状況ではない。味を感じるまでもなく一飲みすれば、瞬時に歩けるほどまで回復する!

 

 空を見ればつい最近見た異様な空。川流れにあったのはあらゆる意味で助かった。落下死は免れ、街との距離も離すことが出来たからだ。

 

「……来るか。」

(…この空も2度目だな。)

 

 

 落雷が近づく。一つ一つと間を置いて、まるで歩みが如くゆっくりと。

 

 そうして見据えて身構えてれば雷光に照らされ人影が映る。

 

 彼女(祖龍)が来た。

 

 

 

………

……

 

 

 

 本を読んでいた。ずっとずっと、戻ってくるまで読んでいた。

 

 知らぬ事ばかりで目が離せず、無知な己をどうにか思う事すら出来ず、ただ興味のあるがままに見漁り、貪った。

 

 

 …何よりもその本は、染み付いていた。あれもまたこれで学んだのだろう。追わずとも共にあるかの様な、不思議でありながら、実に満たされる様な日々であった。

 

 

…ッ!

 

 

 扉を隔てて突如現れたそれ、余りにも不快且つ不愉快極まりないが故に反射で殴り飛ばしてしまう。

 

 

「…… どうして?。」

 

 

 何を殴り飛ばしたかは一瞬で理解した。一切の手加減はしていないあの一撃を、不意打ち同然の状況下にも関わらず防いで見せるなど、生きてる範囲では1人しか。……理解してしまったからこそ、我は… ()は…。

 

 

 憤怒、嫌悪、憎悪、落胆、失望(嫉妬悲哀混乱絶望焦燥)に心を支配される。

 ごちゃごちゃと、……もどかしい。酷く酷くもどかしい。霧は晴れず激情の最中とて何かが澱み沈んでいく様な、歩くたびに降り積る様な。

 

 なんだなんだ?これはなんだ?素直に怒れず、荒ぶる事もままならずただひたすらに沈み湿気り暗く陰を作る…これはなんだ?

 

 ……そんな事はどうでもよい。目の前にその原因がいるならば、

 

 

 

裏切リ者メッ!(いいなぁ…)

 

 

 その攻撃に龍としての面影はない、ただひたすらに蹴りと殴りを繰り返す。まるで子供、嫌々と怒りの赴くままに発せられる暴力の嵐。

 …容姿相応と言えば更なる怒りを呼ぶだろうか…。

 

 

 ………楽しくない(苦しくて…)。何一つとして疼かず、そこにかつての高揚はない。ただ暗く湿った何かが澱むのみ……なぜだ?…それは…嫌だ…。

 

 

 嫌だ…ッ!

 

 

 ハンターは酷く冷めた様子だ、何一つとして行動にキレが無い。

 

 鎧兜を打ち砕こうと、まるで反撃の意も感じ取れず、言ってしまえばバタ臭く、物足りない。

 

 あの憧憬は何処だ?泥臭くもその行動は無駄がなく、あらゆる手を看破され、あらゆる手を使って立ち回り、貪欲に生を掛けて立ち向かう…。

 飢える双眼は我のみを写し、矮小ながらに高みに刃を突き付けたあの輝きは!?!?

 

 

 此処には…それが無い。出会う前、まるで無機物の様に過ごしてきたあの時が、刻々と今を侵食してくる様で。

 

 ただ漠然と、ハンターが纏うその気配が、まるで横取りするかの様に主張してくるそれに赫怒(嫉妬)のみが噴出する。

 

 あらゆるきっかけであったはずのこの行為が、もし冷めてしまってはどうなってしまう?

 

 全てが色が褪せてしまう、失ってしまうの?もう、我に興味がない?

 

 嫌ッ!我だけを…我を見ろ…ッ!()を見ろッ!()以外を見るな!靡くなど許されない…ッ!

 

 

お前はッ!我だけの物だッ!(行かないで!見捨てないでッ!)

 

 

「…グゥガッ!!?!」

 

 

 ……なに?我は今?……うふふっ…そうか、そうかそうか。『嫉妬』か。

 

 ならば、私も、そうすればいいんだ。

 

 

 構えられた盾すら無視して殴り飛ばせば、ゴム玉のように吹き飛び。跳ね転がり、果てには大木に衝突して沈黙する。

 

 …だが、生きている。あれしきで死ぬ事はない。その様な男ではない。

 

 

「ふふ…。そう…これが嫉妬…。」

 

 

「…グフッ…憑き物が…取れたッ…ようだな…ッ…。」

 

 

 なんとか視界だけは彼女を捉える。先ほどから泣きそうな、苦しそうな顔をしていたのだが、どうにも吹っ切れた様で柔和な笑みを溢している。

 

 筈なのだが、……死よりも暗く冷たい感触が全身を包み込む。彼女は紅の瞳に輝きは無く、古傷残る左目を愛おしそうに摩っていた。

 

 

「お前はどっちがよい?我か、私か、どちらでも構わぬぞ?…うむ…そうじゃな…一度決めた事じゃ。」

 

 

 楽しげだ。鈴玉を転がすようにコロコロと、良く聞こえる声が鼓膜をくすぐる。大変気分がよろしい様で。

 

「不屈で大胆、唯我独尊に泥臭く、されど断固己の道を征く、なんと好ましい…。私の大好物の塊よ。そんな英雄は素敵な場所で、命を賭した殺し愛こそが至高なの。」

 

 

「だけれどハンター、貴方はトクベツなのよ?貴方に出会って全てが変わった、変わってしまったの。こんなにも殺したいのに、終わりを考えるだけで、疼いて火照り、だけど苦しくて切なくなる。」

 

 語り歩き、いつのまにか目の前へと近づけば、態とらしく覗き込む。

 

 その瞳には光が灯っていた、妖しく輝いたそれはギラギラと…、それだけで全て感じ取れた。『逃がさない』と言うただ一つの意思を。

 

「綺麗……。傷つき果てたあなたも素敵よ。」

 

 優しく両頬を包みこみ、顔を合わせる形に持っていく。

 

「私の世界を彩った、私だけの英雄…。私が先に見つけたのに…。他の誰でも無い私の物なのに…。私が、私だけの無垢の白なのに、勝手に染められ受け入れた愚かな人。」

 

 後に続くにつれてその声色は、表情が、冷酷なものへと変わって行く。

 

「……ッ!!?」

 

 ビキビキと嫌な音が響き渡る。…それは己の頭蓋から、響いていた。

 

「私から目を離すだなんて、酷い事をするものね。そんな薄情ものにはしっかりと分からせないと。…自由なんて許可した覚えはないわ。」

 

 心底冷えた声というものを初めて聞いた。

 

「…この…程度…ッゲネポスに…比べれば…。」

 

「そう、そうよ、命を握られようと何一つ変わる事のないその表情、何処までも真っ直ぐと脅威を見定めるその瞳。反骨心に満ちたその言動。」

 

「あぁだけれど…強いて言えばそこに殺意が加わっていれば尚のこといいの、だから私は好きなの…貴方との殺し合い(愛し合い)が、心の底から…、退屈とは無縁なあの空間が…。」

 

「…でも、それだと失ってしまう。綺麗さっぱりそれっきり…。だけど生き残る前提だなんてつまらないわ。…何も沸かないの。」

 

 目が…飛び出そうだ。だが…耐えられないものではない。ゲネポスの麻痺殺しの方が遥かに壮絶なものだった。…だが、とは言えどもじわりじわりと命が削られて行く様は、どうにも気分の良いものでは無い。

 

「ふふっ、心の底からゾクゾクするってこういう事かしら?…もっとよ、また見せて、そしてもっと私を見て…。」

 

 煽りを受ける嗜虐心、今まで以上の電撃的快感、それらを生み出す特別を、なんとしてでも手中に納めたいと願う遥かなる独占欲。

 

 彼女が、ルーツが理解する方はない。ハンターの体は、彼女が思うよりずっと弱い事を。

 

 

 





 ゲネポスの麻痺毒って、体が動かなるだけで感覚は全て生きてるらしいですね。その状態で貪られる訳だから…。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。