ついに‥2025年だ。
「……おっ、英雄になった無乙さんじゃね?」
「…久しぶりに見た気がするな、なんか。」
「…英雄に対する反応か?これが?」
「……確かに。なんかこう…なんかある筈なんだがなぁ…。」
「いつも通りのガルルガ装備に…なんか剣すごくなってね?」
「確かに…ありゃ相当な武器だぞ…。」
流石、ここまで来ると注目の的だ。
「……。」
(そうか!解る人には解るか!このさらなる力を手にしたこの武器を!ギルド行くついでに、帰路の途中で鍛冶屋に預けたのを回収したんよ!アップグレード!…良い響きだ。)
……?では自宅で整備整理していた武器は何かと言う声が聞こえてきそうだが、それはレウス片手とバゼル片手だ。使う機会が無いとはいえ、埃を被せて放置では、レウスとバゼルに失礼だ。
…それ以前にお世話になったことに違いは無い。
「…あっ、ハンターさん!すみません凄く突然な話になるのですが、貴方を待って居たところです。…奥の会議室に来ては頂けないでしょうか。」
「……あぁ。」
(……うわっ…厄ネタ…。)
…ギルドに来て早々に呼び止められ、言われるがままに会議室へと入っていく。余りにもすんなりとことが進み、受付嬢自身、その内心驚くのであった。
「……んお!?よく来てくれた!君も案内ご苦労、さて、事が事だ。私の方から説明させてもらうぞ?」
難しい表情も一瞬。切り替えは凄まじく、活気に満ちた声色で早速事を説明するギルドマスター。
「さて、君のことだ、何を言うまでもなくすんなりとここに来たと言う事は何となく察したからだろう。……ネルギガンテだ。」
「……。」
(いや全然…は?なんだよぉもぉぉおお!またかよぉぉお!?)
「ただ、どうも様子がおかしくてな?今回は、君が、そしてシナラが共に戦ったあの地に、何と腰を据えて居座っていると言う…。放浪性の強いネルギガンテが、何の因果かあの地に、まるで君か、彼女を待っているかの様に。…いや、この街にはもう彼女は居ない。ともすればその目的は正に、君だろう。」
一旦の一呼吸。長きを生きる彼と言えど、この事態は正に異常。慎重に事を運ばなければならない。で無ければこの街も滅んでしまう。
「……そうか。」
(ア ホ く さ。ほんとアホらしいわぁ〜もうマジで、今すぐにでも台パンかましたいくらいにな。具体的にはも⚪︎うのパルシェン発狂くらいにな?)
「基本的には避難一択なんだが、こうも予期せぬ事をされると取れる行動も取れない。……とどのつまり我々もどう動いて良いのか見当もつかないのだよ。」
ほとほと参ったと言う表情のギルドマスター。確かに、破壊の道中に街があるなら、街を犠牲に人を逃がせる。…か、どうやらそうでは無いとしたら?闇雲に大移動して、もし刺激してしまったら?相手は一つ軽く飛んだだけで行手を阻める存在だ。
「何度も君本願になってしまうこと、そして……生贄のような形になってしまうこと…。それでも頼むしかないだよ。引き受けてはくれないか?ネルギガンテの対応ともなれば君ほど頼もしい存在はこの世に居ない!…世辞では無いからな?」
「………。」
(んなわけねえだろ!禿げ上がるキルレを超えての今があるんやぞ!?全人類の中で一番ネルギガンテに殺された男だわ!)
比喩ではなく直喩。死は一度、命はひとつ。今の自分はバグみたいなものだし、実際前世の肉体は今頃火葬in埋葬だ。
ネタ抜きに死に続けたハンターが、一番生存率が高いと言われてしまうとは、ほとほとこの謎の力も考えものだ。
「……。」
(しかし本当にこの死に戻り何なんだよ、なに?アルファ個体の血でも浴びた?変なのに魅入られた?それとも本当に魂のバグか?…俺はまともに死ねるのか?)
「……考え込むのも無理はない。まずこうして『2回目』がある事自体がどんなに稀有な例であるか。…せっかく拾った命を捨てにいく様な事を頼み込んでいる事は承知してこの通りだ。」
黙るハンターに何を勘違いしたのか、頭を下げようとするギルドマスター。
「もういい、決まっている事だ。…気にするな。」
(…ん?あっやっべっ!…いやいいから!こっちの話だから!受けますから!受けますからどうかそれは…特に落ち度のない爺さんに頭下げさせるとか心が傷付くから!)
「………ッ!そうか!本当にありがとうッ!…ここに来てこれを言うのは煽てる様で悪いのだが、それでも言わせてくれ、君は正しく【モンスターハンター】だと。」
「…モンスターハンター…。」
(モンスターハンター?…モンスターハンター…いいねぇ…にやけそう、ここでタイトル回収は激アツ展開!1ファンとして、この言葉に心躍らない訳がない!)
「そうと決まればだ!至急!クエストの手配を!竜車の準備は出来ているから、後は君の準備だけだ。…今一度力を貸しておくれ。…そして願わくば、龍との因果を断ち、晴れやかな帰還を願うよ。」
準備は事前に済ませてある、コンディションは最高だ。
いつも通りクエストカウンターで依頼を受注し待機する。その間の暇潰しにクエスト名や依頼文に目を通すのもまた密かな楽しみだ。
【殲滅は静かに、鐘を前にし座して待つ】
殲滅とはまるで関わりのない、静かに座して待つと言う一文が、この事態を物語っていた。
ただ、心配する事はない、確かに相手も万全だろう、だからこそ出現したのだろうから。
しかし臆する必要もない、確かに幾度となく死ぬだろう、しかし経験は裏切らない。
竜車に乗り込めば、いつぞやのアイルーがいた。…だいたい自分と同じ様な理由での選抜だと言う。
あのジャギィも居た。言わば青年期と言うべきか?赤みを帯びた鮮やかな体表は実に滑らかで健康的、スベスベと触る手はなかなかに止まりそうにない。
アプトノスもそうだ。こいつもコイツで図太い様で何事もなく、命逃げ去ったこの地を闊歩している。
空は晴れ、ネルギガンテの出現事態は天候を左右する事はない。ただ虫は鳴かず、鳥は囀らず、息吹は無く、風のみが吹き抜けるのみ。
キャンプに着けばすぐ青いBOXから支給品を受け取る。
ネルギガンテの襲来移行、地形が幾らか変わったらしく、地図は持って損はない。
そして回復薬や携帯食料。…目的地…と言うよりかは決戦ステージとでも言うべきか?…探し回るわけではない、食料は辞めておこう。
回復薬は、おっ、グレートなやつじゃん!…心なしか今回の戦いは飲める気がする…。
「……。」
(さて、決戦のバトルフィールドに行きますか。地図見た感じ、おあつらえ向きにこさえてるらしいし。)
地図の内容は単純明快。現在地のキャンプと、決戦広場、そしてそれをつなぐ一本の順路、この三つだけだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ザッ ザッ ザッ ザッ
酷く軽くて、少ない足音が聞こえてくる
…rrrrr
黒い巨体が唸りを上げてこの身を起こし、そして。
…来た。『ハンター』が。
森の奥からやってくる。纏う外殻のその奥に、確かな眼光を携えて。
その姿は変わらずとも、纏うそれは確かに違う。何処か気分が良さそうだ。
……それは凄く良い事だ、なにしろ己も気分が良い。ここまでの静寂を己は知らなかった。ここにくればハンターは来る、そう確信を持てば、何故か動く気にはなれなかった。
身体が、内の内、更に底から、何かが込み上げて溢れそうだ。
四肢を踏み締め、翼を広げ、息を吸う。
O"O"O"O"O"O"ッ!!!
天に向かって吼え穿ち、轟々と大気を震わせた。
その視界にハンターは居らず、ただ天を一心に、威嚇に在らずして何であるか?……宣言だ、戦いを、宣言しているのだ。
…Grrrrr
余韻まで残さず轟かせれば、再び構えるハンターを視界に入れた…。
………
……
…
GHaaAッ!
先手はネルギガンテ、現実でもゲームでもよく見たその行動は飛び掛かり。その強靭四肢を持って一瞬の内に距離を詰め、上から前脚を叩き付ける、そんな技。
これは前に回避するのが正解だ。前に飛び込む以上着地後の衝撃も前に行き、後ろはお留守になるからだ。
「…?…なッ!?」
(飛び込み!前に回避を…何!?滞空した!?聞いてなi)
……しかし今回は、飛び込み中に羽撃きを挟む事で着地点を修正、ひと足先に回避したハンターはまんまとその前腕の餌食となった。
……1乙目
「……突撃は辞めたか?」
(脳筋だから何とかなってたのに!技習得されたらどうすりゃ良いんだよ本当にッ!…おしまいだぁ…もうだべだぁ…。)
ネルギガンテの我が身を顧みない攻撃は確かに凄まじいが、その有り余るパワーを主体にした攻撃故に、読み易いと言う特徴がある。
読まれた上から叩き潰せるスペックの為、対策をする事はなかったネルギガンテ。…しかし、ネルギガンテは二度の対峙の中で理解した。
……誰が言ったか三度目の正直。何も次があるなら対策する事は、別に誰かの特権では無い。
「…俺からッ!…これはッ…。」
(なら飛び掛かる前に斬り込…クッソ間に合わないか…しょうがない!)
考えなくとも解る。滞空からのアレは一度でもああなれば避ける事は不可能。距離的に余りにも余裕が無い。
……一応対応策はある。閃光玉だ。…ただ、手持ちは3つで眼前に炸裂させなければならず、この激戦でそんなプレーは賭けが過ぎる。
それに絶対闇雲に暴れて手がつけられなくなる事は明白。それに耐性だってあっという間に出来るだろう。
で、あるならば?一番はやらせない事だ。…が、今回のリス地点はそれをギリギリで許さなかった。
GrHaAッ…!
一度駆けたのなら、止まる事は死を意味する。今はただ突撃あるのみ。
「……足りない様だなッ!」
(…っぶねっ!?…どうやら跳躍距離が短いと滞空出来ないみたいだな!俺の勝ちか?)
一つ、糸口を見つけた。滑り込みで背後に回れば振り向きざまに一閃、ネルギガンテは反射で、棘の生え揃う靭尾を損傷も厭わぬ威力で叩き付ける…が、余りにも素直過ぎた。
「…読める。」
(反射が来る事は予想通り、これもまた何かしらの捻りを加えられたらお手上げだったが…。流石にだった様だな?)
破棘の散乱も掻い潜り、今正に切り込まんと踏み込んだ瞬間。
「……?」
(あれ?なんか…なんか静かに…。)
そして遅れて耳を頬を顎を伝う、何か液状の物体。
……そして、目の前には、前回触れ、飛び込んだあの肉球が。
…2乙目
「……おそらくは、咆哮…。」
(何が起きた?耳から血?…アイツ咆哮かましたな!?…そりゃ人間にとってはよく効く全体攻撃だけど…バゼル装備が欲しいよぉ…(切実))
駆け出しながら死因を分析する。
残念ながらこの装備に耳栓は付いていない。モンスターにとって咆哮は最も基本的な行動の一つ。なにか特別な動作が必要なわけでは無い。
…確かに息を吸う必要があるが、それも時間のかかるものでは無い。
「……ここかっ!」
(斬り込むところまでは一緒…今息を吸ったな!?)
巻き上がる砂塵、露骨に膨らむ胸部。よく見れば何とわかりやすい予備動作であろうか。しかし対処となれば…。
「……ッ!…グボァッ!!?」
(耳を塞ぐしか無いんだよッ!……おい…な…んで空を…アイツやりやがったn)
……3乙目
「……読んできた。」
(コイツ…ッ!俺が凌ごうとするの見た瞬間掌撃に切り替えやがった!終わってるぜ!あ〜頭おかしくなっちゃぁ〜う。ほぁあ^〜)
ならば深追いは禁止だ。一撃を斬り込むと同時に素早く離脱する…しかしこれでは埒外が開かない…。いや。
「…効くはずだ。」
(クッソジリ貧じゃねえか!…いや落ち着け、こっちの武器は何だ?ゴリゴリに強化した結果、とんでもあたおか龍属性値を誇る、古龍絶対殺す片手だぞ!)
文字通りのドラゴンキラー。事実ネルギガンテは然りに切り付けられた尾を気にしている様子だ。
「……再生…していない?」
(…棘が生えない…?何なら傷も治ってない!…違うな、これは阻害とか妨害って感じだな、よく見りゃちょっとずつ治ってるし。)
棘の生える速度は見るからに鈍化し、傷口はなかなか塞がらない。
これが『龍封力』だ。風を操るクシャルダオラであれば、纏う暴風を霧散させ、業火を振り撒くテオ・テスカトルであれば炎を散らさせる。
ネルギガンテであれば、その圧倒的再生能力に待ったをかける。
まさに、これこそが龍殺しと言われる所以であり、そう願われた武器の真価である!
ルーツとの戦いでは与ダメUPくらいではあったが、それで済んでいるルーツがおかしいだけ。本来ならば露骨に発現する筈なのだが…。
「……焦るな。」
(かっ…勝てるっ!切れ味も十分!属性値も十分超えて最早過剰!あとはただ技術のみ!)
GAAAAAッ!!!
跳躍、からハンターに向かって前脚を地面に突っ込むもやはり避けられるネルギガンテ。しかしここらからが本番だと怒涛の殲滅を開始する。
「…手数で押すかッ!?」
(ちょっと待ってちょっと待ってちょっと待って!多い多いどんだけ攻撃すんの!突っ込みからのハマった前脚軸にして旋回、その力で強引に抜きつつ離脱して、間髪入れずにまた飛び込み!?)
更に言えばまだまだ続く。ネルギガンテに技術を磨く時間はなく、また磨く気も更々無い。ならば編み出した策となれば…果たして策と呼べるのかも怪しい、純粋なまでのゴリ押しだった。
回避されるなら回避できなくなるまで攻撃を押し付ければ良い。本当に単純明快、だからこそ、その対策は限られる。
「…手段は……。…しまッ!」
(原ゼナを思い出す…。…何か手立ては?一撃でも貰えばアウト、ガードもアウト、回避は今は出来てるがもうそろ無理…ッ離脱は…ダメだ後隙の少ない技を連打してるからそんな時間がない…あっ。)
飛散する金剛棘に石礫はハンターに確実なダメージを蓄積させ、最早我慢比べの攻避合戦も、明らかにネルギガンテに軍配が上がる。持久戦で勝つなど土台無理な話。
……4乙目
「…天秤は戻せない。ならば。」
(バランスを崩しちまった。一度でも相手のペースに持ってかれるともうどうにも出来ない、ひっくり返す程の爆発力が無い。…完封か、完敗の二択っておい…。)
バゼル武器なら爆破属性でゴリ押しも…いや、確かに最初は押せるが、耐性のついた後半に必ずひっくり返される。
そもそもあの時はシナラ込みであの削りだった。1人では確実に終わる。
………ッ
「………。」
(取り敢えずこの一撃まではテンプレ化に成功した。絶望視する要素は全然ない、俺はただ、全力を尽くすだけだ。)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ハンター
これさ、地味にネルギガンテ強化形態に移行してるんだよ。金剛棘生え揃ってるんだよ。だから何だって?…辛いって事だよ。
ネルギガンテ
しぶといの権化。多分古龍としての能力は再生能力じゃなくてしぶとさだと思う。
いや本当にしぶといな。