翌日の早朝、彼の姿はハンターズギルドにあった。
そう『ハンターズギルド』…モンスターの狩猟から採取、商隊の護衛から街の防衛まで、一般人どころか、軍人ですら立ち入るないし、立ち向かう事が困難な自然を、直接生活の糧とし、生業とする者たちが集う大陸共通の巨大組織の事だ。
そして、そのハンターたる彼もまた、この組織に所属し、依頼を斡旋させてもらっているのだ。
人類最大級の都市、別たれたシュレイドの双都や、開拓大都市『ミナガルデ』などに比べれば、その規模は比べるまでも無いこの街にもギルドは勿論、存在する。
「久しぶりに見たが相変わらずだな。」
「【幻獣】にカチ会うとは運がいいのか悪いのか。」
「『不敗のルーキー』もコレまでか、まっ、生きてりゃ勝ちってところあるからな。」
「…………。」
(心配して貰ってる?いゃぁ〜人付き合い終わってるから疎まれてると思ってたけど、流石民度が高い事で知られるモンハン世界、厳しいのは自然だけだな!)
自分に対する評価が低いわけではない事に内心安堵するも、肝心の外は【白猿狐】バリに鉄仮面の為、悲しきかな伝わる事はない。
「よ!あのキリンに会って生きて帰って来たんだって?本当に運がいいんだな!何たって、一生賭けて会えない方が多い【古龍種】だぜ!スゲェよ!お前は!」
「…………そうだ。」
(そうだよ!俺にはこうして話変えてくれる奴がいるじゃないか!……あれ?コレただのイキリ返答じゃね?)
「おっおう…。大した自信だな!それと俺と今度一狩り行かないか?是非その腕を見せて欲しいんだ、足は引っ張らないさ!レウス防具が壊れて何かしら新しいのが必要だろ?手伝わせてくれよ。」
「……断る。」
(なんて優しいんだ!断るわけないじゃないか!……は?(殺意))
「…ッ!?…そっそうか…。ま、ソロじゃないと本調子になれないタイプって事だろ?なら済まんかったな、下手に環境変えても命に関わる。またな!今度酒場で飯でも食おうぜ!」
「………。」
(いい人すぎんだろ……ほんまに、あのさぁ…。)
ボウガン使いの心優しい青年ハンターの嬉しい申し出を、いつものごとく、キッパリと断ってしまい、内心絶望すると同時に自分に対する呆れても湧く。勿論周りもどよめいた。が、そんな事は我関せずとでも言う様に、そのまま受付カウンターに直進すると、受注する依頼を選ぶ。
「ハ、ハンターさん、本来ならば上位クエストを受ける事が可能…と言うよりも前のドスジャギィが上位クエストなのですが…流石に下位ドスジャギィ防具で上位クエストを受けられるのは、些か無謀と言いますか何と言いますか…採取クエストで鉱石系の防具を作成する事をおすすめ致します。」
(せやな、嬢の言う通り!この装備でリオレイアとか終わりや、それで行くで!)
「リオレイア、あるか。」
()
「リッリオレイアですか!で、ですが…う…止めても無駄でしょうから……かしこまりました。こちらの依頼書になります…。」
受付嬢からの純粋な親切心かつあ否定する要素が何処にもない提案を、秒速で却下するハンターに周りも騒然とするが、だからどうしたと止める権利も別に無いわけで、「あいつマジかよ。」と、いう表情を皆浮かべ、受付嬢も考え直す様に提案しようとするも、冷え切ったその表情を当てられ、また、これまでの事から止めても無駄だと思い、仕方なく依頼書を出す。
「……成る程、いつからだ。」
(もういいわ、今に始まった事じゃ無いし、そんでこれいつ出発になるの?)
「はい!、午後に狩場への竜車便が出ます。駅に行けば『リオレイア』のアイコンが掲げられてるのですぐに分かります。…はい契約金を受け取りました。……くれぐれもお気を付けて…。」
「………当たり前だ。」
(もちろん!一番は死なない事だからな!……あれ?これ我ながら俺性格悪すぎじゃね?俺が他人なら絶対関わりたく無いわ。)
「あはは…。」
苦笑いする受付嬢を背にして、ギルドを去り一旦家に帰還するハンター。帰るも帰るで爆弾が待っているので、基本内心が外に漏れない筈の彼の足取りも何処か重い、そしてそれに気付いた街人は余りの珍しさに今日は矢でも降るのかと本気で思った程だ。
「どこに行ってたのだ!不届者め!この我を置いて出掛けるなど何たる…何たる……。」
「…早く起きろ。午後から居ない、面倒起こすな…待っていろ。」
(いや起きないから…、てか出掛けるから面倒とかガチ勘弁、これ以上好感度下げられない。頼むから大人しくしてくれ………え?めっちゃ普通(当社比)に出力してくれた、今日死ぬ?拙者死ぬ?)
中々単純だと言う事が分かってから、ある程度の言葉遣いでビクビクする必要はないという発見は、彼の心に大きな安らぎを与えた、が、元が元なので大した意味はない。
「待つ?我が?……お前、我をそこらの家畜と同じに捉えてないか?我は偉大なる龍でa…〜〜〜〜ッ!ッ!ッ!」
「黙れ、目立つ。」
(お願いだから騒がないで下さい本当に見られたら本気で終わっちゃう!)
玄関先で叫ばれては敵わない。これ以上変な噂は懲り懲りだと、口を塞いで家に入る、見るのもが見れば失神ものだがやはり人間慣れるもの、結局は死に戻る為、物理的死よりも、蘇生不可能な社会的死の方が圧倒的に怖いと言う感情が、この行動を成功させた。
「………なぜ黙っている。」
(ふぅ、ここ以外に新しく拠点構えるとか考えたくも無い……なんか静かだな、え"ッ!)
目線を下げれば角と尻尾が生え、人化が解けつつあるルーツの姿、すぐさま手を離し距離を取って次なる行動に注意する。
「………、はじめてだぞ…この様な扱いは…絶対逃さないからな!」
顔を赤く染め、此方を指差し乱暴に二階に上がっていくルーツを見つつ、ハンターは考えた。
「……留守番……。」
(結局待ってくれるん?、てか逃さないって逆に逃げられるん?あんな奴に目付けられて逃げられるなら逃げたいわ。)
これ以上刺激するのもダメだと思い準備を整えてから、火竜の余った素材を持って加工屋により、駅へと向かうハンター。最後に家を見回るもののルーツの姿を見つけられず、去ったならこれ幸いと、しっかり戸締りをし、自宅を後にした。
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恐ろしく強い新人ハンターがいる。
仕事でこの街に寄った時、ギルドの酒場で聞いた話だ。そこのハンター曰く、
やれドスジャギィの群れを2回連続で張っ倒した、だの、
やれイャンクック狩猟時に乱入して来たイャンガルルガを撃退した、だの、
上位への登竜門たるあのリオレウス相手に大立ち回りで完封した、だのと、新人にしては明らかにおかしい大戦果を挙げ、更にはギルド加入後、一度も負けて帰った事は疎か、『一乙』もした事がないと言うではないか!
んまぁ……結局、上位初狩猟に運がいいのか悪いのか『キリン』に出会し生死を彷徨う大怪我を負ったらしいが、正直言って、新人が古龍に出会って交戦し、生きて帰っている時点で相当な事だ。熟練だって余裕で死ねる、それが【生きる災害】を相手にするって事だからな。
そんで、「昨日、例の新人が退院したらしい。」って噂を聞きつけてな、かなりの働き者らしく、今日は来るだろうと思って早朝から酒場で待ってるとちょうど奴が来た。
……正直言って、目を疑った。どんな筋肉ダルマが来るのかと思ったが、別に身長が高い訳でもなく、ガタイがいいかと言われればそう言うわけでもなさそうだった。だが、奴の表情、あれは簡単に忘れる様なものじゃない、ありゃ表情筋が逝っちまってる。氷結晶で作った彫刻の方がまだ温かみがあるくらいだった。
話し掛けようとも思っていたのが吹き飛んじまった、だが、奴に話しかけたあのボウガン使いのハンター、あいつの勇気には驚いたし、あいつの結末には同情するぜ、狩りの協力を問答無用で断って、更にはあの殺気。何があいつの逆鱗に触れたのか…、そんなに怒ることでもないと思うんだが、奴にも色々あるんだろうな、その後の受付嬢の親切もぶった斬った時は「コイツマジか!」って思ったさ。
…だが、奴も奴で悪い奴じゃ無いらしい。ただ…不器用なんだろうな、それでみんなそれを分かってて、その上で心配してるんだろうな、出なきゃ注意なんてしないからな、みんなもう手の掛かる無愛想な息子くらいに思ってるんじゃないのか?生い立ちも知っているらしいし。
それで?こんな話を聞いてどうしたんだ?
「やっと見つけた……。」
ん、何だって?道が悪くて騒音が激しくてな、よく聞こえん。
「いや何でもないです!独り言ですよ、あっ後最後に、そのハンターが住んでいる街ってどこですか?。」
街か?結構辺境ではあるが…それなりに栄えて入るな、確か町の名前は…
「『カッペン』、モンスターが居ない数少ない土地故に必然的に人が集まった辺境の街、あの人の故郷…。あぁ…待ち遠しい。こんな依頼を受けてなきゃ居ますぐ飛んで行くのに……でもダメよね、第一やめるだなんて彼もそんな事は許さないはず、あぁ、ようやく近付ける…私の心が壊れたあの日、私の心を繋ぎ止めたあの人、私を必要としてくれた不器用で愛しの彼は…。」
「私が居ないとダメなのだから……。」
手を伸ばす。届かないから手を伸ばす、脆く割れた幼心は、最も容易く歪に変わる。戻る機会もなければ、戻ることも望まない。彼女は過去も含めて今を望み、貪欲に光を求めるこの姿こそが……
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息を荒げる、瞳は紅くより赤く、雪の様だと讃えられるその肌も、まるで雪溶けかの様に水を生み、獣の様に唸りながら蹲る、疼くまる。
「何だ?何だ?この熱は、何を?何ぜ?これは治らない……。」
未知の感覚に困惑するも、本龍は否定するだろうが、その表情は誰がどう見ても蕩けきっていた。
通常であればあの様な事、誰であっても許されざる蛮行として苛烈に怒り裁きの雷を降らさて居ただろう。だが、しなかった。
「何故なのだ?。」
それは興奮、しかし今まで【英雄】相対する度に沸いて来たモノとは似て非なるもの、左目は異常に熱を帯び、胸は苦しく締め付けられ、考えれば考えるほどに頭はどんどん茹で上がる。
脳裏に過る出逢いの記憶、抗い挑むその姿、『我』を見据え、『我』を離さない輝く瞳……
「〜〜〜〜ッ!…はぁ〜〜……、お前を見たい、お前をこの身で感じたい、『瞳』では足りない、『匂い』では足りない、もっと深く、もっと多く……、ぁぁ、楽しみであるぞ、『我』にその『目』を向けて、その『刃』を持って交わる日を……。」
最強の個である為に、最弱の個として生きる者達を理解出来ない。やる意味もないからだ…故に彼等彼女等の言葉を覚え、その形を取り、同じ生き方をしようとも、理解に及ぶ事はないのだろう。
『推察』は出来ても、『理解』はない。『考え方』が違うのだから……
手を伸ばす。届いて欲しいから手を伸ばす。古くより続く刻まれた歴史の【証】が証明する。完璧であるから不変である。崩れて仕舞えば歪むのみ、戻る事もなければ、戻る事も望まない、彼女は識ってしまったのだ、不変に宿る変化の光。見ていたい、感じていたい、そう思う事こそが……
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「…クスンッ!……?」
(ヘックション!……我慢せんといて?耳とか辛いから。)
草食竜『アプトノス』に引かれる荷車に、ハンターは乗り込んでいた。狩場まで行くには時間がかかる、安全なルートもいつも安全ではない。そういった事を考慮すれば、力が強く、持久力がありおとなしい彼等は、多少の強行軍も必須なこの仕事に向いているだろう。
「………。」
(もうそろそろかな?、アプトノスも懐かしいよ、生肉取るのに八乙かまして先が思いやられたっけ……。)
ぼーっと前を見る、視界にはアプトノスの背と、それを操るアイルーの姿。
「…………猫か…。」
(よくよく考えなくてもアイルーが行者やってるって凄いな……人件費って奴か?ブラックそう…でもなんかあってもアイルーならしっかり逃げられるから報告も確実なんやろか?………ん?)
異変、竜車が止まり、業者のアイルーが動かそうと鞭を打つ、しかしまるで効果がない様で、辺りをしきりに見渡し遂にはあらぬ方向へ進んで行く。
「ハンターさん!すみませんにゃ!落ち着かせるから少し待って下さいにゃ!」
申し訳なさそうに此方を見ながら、アプトノスを宥めようとする行者アイルー。
「…いい、逃げろ…。」
(何となくわかるし、アイルーもわかってるだろう。仕事だから言わないだけで……。)
「にゃ!、で、でも…。」
「……ここからはハンターの……仕事だ。」
(こっちもこれが仕事なんでね!)
そう言うと荷台から降りて、道の際を行く。
「ハンターさん!気を付けてにゃ!」
振り返りもしなければ、手も振らない、ただ真っ直ぐ突き進む。【獲物】は"居る"。
GUuruuuuu……
そおら、"居た"
深緑に紛れる翠の鱗、空を舞い、制するにふさわしい翼、陸を駆けるに最適である強靭な脚、太く長い、巨大な毒棘を先端に蓄えた尾、女王の領域に侵入し、数多さえその身を害そうとする不届者に、今ここに!制裁を下さんとその口腔に炎を蓄える!
対するは狩人、偉大なる首領より作られた鎧を身に纏い、相対する火竜の番、【火竜】『リオレウス』から作られた王の息吹を宿す剣を構える。
優勢は【雌火竜】『リオレイア』。格下の生物の皮を纏おうと、王の剣を構えようと、その鎧は容易く破られ、その炎は容易く塞がれる。しかし、狩人もそれは周知の事実、その上でやりようなどいくらでもある。
「……何故とは聞かん……狩る…。」
(何で狩場から離れたこんな所にいるのかは知らんが…負ける訳にはいかない!)
GuOOOooooo…ooooo
脈打つ心音、ざわめく木々、獣の唸り、巨竜の咆哮、それは太古より響く自然の律動………
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クエスト名
誰が誇りを傷付けた?
依頼主
近隣の若い村長
依頼文
最近、リオレイアが近くで暴れている。産卵期はまだのはずなのに、どうして気が立っているのか気になるが、それよりも村人に被害が及んじゃ全て遅い。かなり昔から居座っている個体で、かなり強力だが、どうか受けてはくれないだろうか?
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ハンター君
心と体のギャップのおかげで死んでも客観的に物事を見れる。ただ痛いのは痛いので死にたくは無い。
因みに現実ではハンター君はレイア初見。無意識のうちに上位加入RTAやってる。
ルーツ
嗅ぐだけかいて姿を消す。変態。
話を聞いた女ハンター
幼少期に何かあった模様、ハンター君孤独問題に関わる。自分がいればキリンとか言うドスケルビ倒せると思ってる。実際できる実力は持ってるから困る。
話をしたハンター
この世界でガンランスとか言うゲデモノを使いこなす。そしてただのガンランサー協会の名誉会員、という名の野生のプロハン。絶賛加入者募集中。
話しかけたハンター
ボウガン使い、安全に稼げそうに見えて、弾代が馬鹿にならずいつも金欠になる武器種。とにかく前向き。
受付嬢
想定内ではあったが、流石に100%善意をぶった斬られてドン引きする。
女王は『気高く』ありますからね。さて何乙するでしょうか。
因みに作者はサンブレイクでは太刀とガンス使ってます。その癖してガンスは永遠にバゼル一式だけ使ってます。あれエグいです、一式揃えればスロットも完成されてるからもうやばい(語彙消失)