可能性の獣達が行くキヴォトス珍道中 作:ハイギガ粒子砲
あの工場での戦闘から三日。
私はベンチに座り、ソフトクリームを食べながらヒフミを待っていた。
美味しい。いちごも気になったけど、黒蜜も良かった。次はいちごにしよっと。
なんだかいい気分だし、歌っちゃおっと。
「はっぴばーすでーとぅーゆー、はっぴばーすでーとぅーゆー」
なんで誕生日?
……うう、気分が悪くなってきたような……
っと、来たね。
「フェネクスさん!お待たせしました」
「全然待ってないよ。はい、どうぞ」
私はカバンから鳥みたいな小さいぬいぐるみ付のお菓子を渡す。
「これって!?百夜堂の期間限定ペロロ様コラボ最中!?いいんですか!?」
「もちろん。前のお礼、ってほどでもないんだけど……」
「あ、ありがとうございます!」
私だけ食べてるのも悪いし。
「ところで、なんでさっきバースデーソングを?誰かの誕生日なんですか?」
「あれ、聞かれてた?ううん、なんとなく。今日は気分がいいし歌おうかなって思って歌ったら、出ちゃった。なぜか気分悪くなってきたし」
「本当になんでですか!?」
うーん、なんでだろう?
神様じゃないから、全部分かるわけじゃないし。
そんなところで雑談もほどほどに、本題に入る。
「それで、例の資料なんだけど……」
「はい、持ってきてます!」
「おっとと、まだ出さないで。ここは人目に付くから」
リュックから出そうとするのを制止する。
ナギサの部下が私達を監視してる。
今の時期は大変そうだし、急に現れた私を監視するのも無理はない。
でも、今アナハイムの事を伝えると、さらに胃に穴が開きそうだからね。
ちゃんと調べてから言った方がいいと思う。解決出来たら万々歳。
でも、ヒフミは私が疑われてることを知ったら悲しませそう。
だから、ティーパーティーでも簡単には情報を知ることが出来ない所に行こう。
「じゃあ行こっか」
「どこにですか?」
「……あ」
つい脳内で完結させちゃった。
能力を使わないと伝わるわけないのに。
「とりあえず、あんまり人が来ないところ」
そう説明して私はヒフミを連れて歩き出した。
電車やバスに乗り、着いたのは大きなビル。
「着いたよ。ここ」
「来る途中で薄々気づいてましたけど……ホントにここなんですか?」
「うん。許可も取ってるよ」
さ、入ろっか。そう言って私は入っていく。
後ろから慌ててヒフミがついてくるのが分かる。
ふふっ、別に君は会ったことあるでしょ?そんなにドキドキしなくてもいいじゃない。
そんなこんなで目的の扉まで辿り着く。
ノックをして、扉を開ける。
「お邪魔しますっ」
「うん、時間ぴったりだね」
扉の先にいたのは一人の大人。
先生だった。
「こっ、こんにちは、先生」
ワンテンポ遅れてヒフミも挨拶をする。
「久しぶり、ヒフミ。アビドスの時以来かな」
「そうですね、お元気そうで何よりです」
「今日はフェネクスから話があるって聞いたんだけど……」
「ちょ、ちょっと待ってください。フェネクスさん、先生とはいつから……?」
「一昨日くらいかな、ここが条件がとってもいいことを聞いてね。電話で許可を取って、だから直接話すのは初めて」
「そうだね、こんなに今まで会ったことあるかのように話すからちょっと今ビックリしてた」
悪い人じゃない。それは電話だけでも伝わるほどに分かった。
なら、警戒することもないじゃない。
そんなことを二人に伝えると、
「あはは……そういうことじゃないんですけど……」
「個性的な子だね」
と言われてしまった。
うーん、釈然としない。
まあいいや、本題に移ろう。
「ヒフミ、あれを出してくれる?」
「分かりました!」
ヒフミは少しテンション高めに返事し、リュックから紙束を取り出す。
やっと出せたね。
「これは……?」
「私もまだ読んでないんですが……フェネクスさんは、分かってるんですか?」
「完全にじゃないけど……間違いなく言えるのは……」
ヒフミは紙束を表紙が見えるように机に置く。
書いてあるのは―
「……良くない事だよ」
―『UC計画』だった。
「……」
「……」
「……こ、これって……」
私と先生は黙って読み終えた紙束を見続ける。
書いてあったことはただの作ってる兵器の説明。
だけど、それが問題だった。
一つは、数々の銃器。
間違いなく私のいた宇宙にあったもの。
たまたま似たものならまだしも、すべて同じ形なのは間違いなくわざと。
違うのは大きさだけ。
この世界の事はまだそこまで詳しくないけど……部分的には技術力はこちらの方が上。
だからモビルスーツ用の兵器を人のサイズまでに出来るのは設計図さえあればおかしくないはず。
そして、もう一つの問題は……
「……ヘイロー破壊爆弾」
そう、殺すための兵器。
先生は、これを特に意識してる。
……作られる、ってことは使われる、ということ。
ただ……これも多分、メインじゃない。
きっと、それは最後のページあったもの。
そこだけは破られてた。けど、少しだけ文字が見える。
『―――イコフレー―に―――の―――』
……間違いない、サイコフレームに関係するもの。
「聞きそびれたんだけど、これは、どこで?」
「えっと、ブラックマーケットの外……と言いましょうか、ブラックマーケットの人でも寄り付かない廃墟だらけの場所にあった、工場にあったんです」
「……次からは呼んでね。危ないから」
「はい、分かりました……って、そうでした、フェネクスさんに聞きたいことがあったんでした。これを先生に見せた後、どうするんですか?」
「……調査を続けるつもり。もちろん、一人で」
私がそう言うと、二人は凄い速さで私の方を見る。
そして、すごい勢いで止めてきた。
「駄目だよ!今言ったよね呼んでって!」
「そうですよ、何なら、ティーパーティーにも協力を―」
「ううん、それこそダメ」
「「な、なんで(ですか)!?」」
更には勢いよく詰めても来る。
私は訳を説明する。
「ティーパーティー……というより、今はどこも忙しいからね、これ以上負担を増やしたくないの。それとね……ヒフミ、この資料を探すとき、襲われた?」
「えっ、えっと……そういえば、一度も無かったです。でもそれってフェネクスさんが止めてくれてたんじゃあ……」
ううん、と首を横に振って否定する。
「きっと、最初から私しか狙ってなかった。だって、他からも入るところは沢山あったんだよ?なのに私だけ……それに、人は誰もいなかったのに、なんで資料が置いてあったのか。きっと、犯人は……」
わざとバレるようにしたの。私に。
そう言って私は息を吐く。
ヒフミと先生は訳が分からないという顔で私を見る。
……じゃあ、私の事を教えなきゃいけないかな……
でも、その前に……
「今から私の事を教える。ヒフミ、先生。今、君達は選べるよ。何の関係もない、今の状態なら、きっと怖い目に合わない。でも、聞いてしまったら……」
「フェネクスさん」
ヒフミはそう、大きくない、でも確かな声で私を揺さぶった。
「最初は、変な人だなって、思ってました。ブラックマーケットに行くことに気付いてたり、ついて行くって言い出したり……でも、それも全部、私のために、言ってくれたんですよね。危ないからって。それで、今回の事は、もし本当ならフェネクスさんが危ないなら、今度は私が助けたいんです。
だって、頑張ってる『人』は報われてほしいから!」
「私も、同じ気持ちだよ。それに、子供達の命に関わることなら、見過ごせない。絶対に失わせない」
私は驚く。
そのすぐ後に大きく笑った。
「な、なんで笑うんですか!?」
「あははは!だ、だって、何にもしてないよ?私がいなくても大丈夫だったじゃない!そ、それなのに……ふふっ、それに、その分は前の時にやったでしょ?あはは!」
「そ、それは終わってません!フェネクスさんの問題が解決するまで続いてますから!」
「先生も、今日あったばかりの存在を助ける、なんて言うなんて……」
「私は先生だからね、このキヴォトスにいる子供達全員の味方だから」
ふふふっ、本当に、変な子達……
間違いない、この子達は……『光』。
人の未来を照らす、太陽より明るく、月より優しい『光』。
そして、伝わってくるこの感情は……間違いなく本気だ。
私は窓の方へ歩き、全開にする。
「分かった。じゃあ、教えるね。まるで、嘘のような……本当の話を……」
そして、
「それは……!」
その様子、見たことあるみたいだね。
「じゃあ、始めようか。フェネクスの……リタ・ベルナルの話を」
そうして、サイコフレームを展開し、この部屋をサイコフレームの光で包んだ。
長く感じる時間を体験させてしまったけど、実際の時間は一秒もない。
「……こんなことが……」
「……っ」
一応、ショッキングになりそうなところは見せなかったけど……それでも、大変だったかな?
やっぱり……しない方が……
「……フェネクスさん」
「な、なに?」
「私は絶対に、味方ですから!」
そう言って私の手を握り締めるヒフミ。
「……ごめん、辛いことを思い出させて」
「ううん、いいの。私から言い始めたことだから。じゃあ、続けよう。黒幕の……アナハイムの話を」
「はい。……って、アナハイムって、フェネクスさんの世界にあった会社ですよね?ってことはつまり、フェネクスさんみたいに、この世界に来たってことじゃ……!?」
「うん、あり得ない話じゃないよ。ね、先生」
頷く先生。
「フェネクスと会う前に、一人の少女と会ってね。その子は君と同じような鎧……装甲を着てた。きっと、君と同じ世界の子だ」
「本当にそうなら、他に来てもおかしくない。でも……」
「でも……?」
「アナハイムの人じゃない。それは確か」
「なんでですか?」
「アナハイムは大きい会社だけど、個人のものじゃない。一人二人来てるだけなら、ここじゃ簡単に起業できない。大勢で来ているなら、もっとパニックになってるはず」
「じゃあ、一体誰が……」
「残念だけど、確定は出来ない。言えるのは、アナハイムを知っていて、私の事を恨んでる人、かな。アナハイムの名を使ったのは、アピールするため。お前を狙ってるぞ、ってね」
「だから、バレるため……」
そういうこと、と話を締めくくる。
恨みを晴らすだけなら、バレない方がいいけど、皆が皆、それをただ果たすだけとは限らない。
道中も重用する人もいる。今回はそっちなんだと思う。
「……ごめん、ちょっと関係ないんだけど……」
「どうしたの?先生」
「こうやって重要な話が出来るように、って来てくれたと思うんだけど……ここって、よく知らないうちに盗聴器を仕掛けられてたり、誰か潜んでたりするんだよね……」
「えっ、先生……ヴァルキューレに通報した方がいいんじゃないんですか?」
「悪気はないから……」
「犯罪ですよ!?」
「ごもっとも……」
自覚無し、も大変だね。
どこかの誰かさんみたい。
「大丈夫。さっき、サイコフレームを共振させた時に誰かいないか確認したから。盗聴器は破壊しておいたよ」
「す、すごい能力ですよね、ニュータイプって……」
そう言いながらも、ヒフミは前みたいに、欲しがったりはしていない。
っと、最後に話すべきことは……
「これから、どうするか、だね……」
「ですね。アナハイムの本社がどこにあるのか分かりませんし……やっぱり、地道に探すしかないのでしょうか?」
そこで先生が手を上げる。
「じゃあ、一つ提案なんだけど……会いに行ってみない?お姉ちゃんに」
「……なるほど」
「私も、まだちゃんと交流してないから。あと、今思い出したんだけど、アナハイムの戦車がばら撒かれてるみたいだ。お姉ちゃんも戦ったし」
「分かった。そうしよう」
そういうことで、近々会いに行くことになった。
……初めまして、お姉ちゃん。
「あっ、なぜかバースデーソングと同じ感覚が」
「なんでですか!?」
一方その頃。
「……!今の共振は……」
「どうしたんですか、ユニ?」
「……っ、今の感覚……!」
「どうしたのバンシィ?風邪を引いたの?」