可能性の獣達が行くキヴォトス珍道中 作:ハイギガ粒子砲
―一角獣―
朝九時半、ミレニアム展示会当日。
私は装甲を身に纏い、控え室で座っていた。
予定としては、この後来るスポンサーとやらと話をし、その後に展示会を回っていればいいらしい。
話しかけられたり、写真撮影を頼まれたら積極的にしろと。勿論、不快になることだったら拒否しろ、それでも来るならメイド達を呼べとのこと。
しかし……なぜ私と?
ユウカの言う通りなら、私の戦闘を見ていて、それに興味を持ったため、と……
……あの不良達が乗っていたアナハイム製の戦車の事もある、だが……全てを疑うのも間違いか……?
そう思考していると、扉にノックする音が聞こえた。
私は返事をして許可を出す。
入ってきたのは、ユウカと、一人のロボット。
珍しく、男性型ではなく、女性型のシルエットのロボットで、少し驚愕する。
「ユニ、この方が今回の展示会のスポンサーの……」
「初めまして。私、『インテリオル』代表代理の、セシールと申します。お会いできて光栄です」
機械越しに聞こえた声は若い女性、だが子どもではないと感じさせた。
話は得意じゃない。長く話すのはやめておこう。
そう思い、挨拶をした後すぐさま本題に移ることにした。
「初めまして。知っていると思うけど、ユニ・リンクス。よろしく。早速だけど、話したいこととは?」
「……よろしければ、早瀬様には……」
「分かりました。ユニ、ご無礼のないようにね?」
「善処する」
そうしてユウカが退室した後、セシールは話し始めた。
「お話ししたいのは一つ。ユニ様に、お願いしたいことがあるのです」
「願い?」
「はい。言い換えれば、本来の依頼でしょうか」
「……それは、何?」
セシールは一呼吸置き、発する。
「この会場に、テロリストが混じっています。その方々の排除、それが本来の依頼です」
……テロリスト、間違いなく彼女はそう言った。
もしそれが本当なら、疑問が残る。
「なぜ、私だけにそれを?ミレニアムには優秀な人達が揃っている、より確実性を増すならそっちに話した方がいい。中止にすることも出来る」
「……我々は、あなたの事も疑っています」
「それは……なぜ?」
「黒き、一角獣」
私は目を見開く。
まさか……来ているのか?
「あなたのその姿を漆黒に染めたような姿、その人物がテロリストの中に紛れていました」
「つまり、似た姿をした私も、その一員かもしれないと?」
「はい。今回の展示会は歴代でも最大規模を誇ります。それを一介のテロリスト如きに中止させられるわけにはいきません。ですが、そのテロリストがあなたほどの力があるとするなら別……」
淡々と話すが、言葉の節々に力強さを感じる。嘘では無さそうだが……
「あえて飾らずに言いましょう。あなたにはテロリストではないという身の潔白の証明、そしてテロリストの排除。これが、本当の依頼です」
一通り会話した後、セシールは部屋を出ていった。
結論から言えば、私は依頼を受けることにした。テロリストの話が本当なら、止めるのは当たり前だ。
だが……サイコフレームが感じ取った。言っている。
怪しい、と。
だから、こちらも策を取っている。
左耳に指を当て、『協力者』に話しかける。
「……どうだった?」
『一言で言えば、怪しい、ですね』
「同じ感想。頼んでおいたことは?」
『ええもちろん、もう終わっていますよ。この超天才清楚系病弱美少女ハッカーのよれば、聞いてから一分も掛かりません』
愉快そうに彼女は喋る。
その自信に負けない力を彼女は持っている。私はそれを知っている。
急に現れ、名前を呼ばれた時は驚いた。
超天才清楚系病弱美少女ハッカーは話を続ける。
『やはり、インテリオル・ユニオンという会社はペーパーカンパニー……存在していません』
「でも、今回の展示会の出資者らしいけれど」
『出資はされています。別名義で、ということですね』
「ならなぜ、名前を変えて?」
ハッカーは一呼吸置き、
『アナハイム』
とだけ喋った。
私は驚くでもなく、ただ息を吐く。
……結局のところ、何が目的か、分からない。
なぜペーパーカンパニーを作ってまで出資を?テロリストの把握はどうやって?なぜ私を指名して?
謎は尽きない……が、時は人の力では前にしか進まない。それこそ神の力でもない限り。
やるしかない。
私はハッカー……ヒマリに礼を伝え、左耳に付いていたインカムを外し、控え室を出た。
『関係者以外立ち入り禁止』と書かれた柵のところにユウカが立っていた。どうやら私を待っていたらしい。
「話は終わったのよね?」
「ああ。ユウカは?」
「仕事とはいえ、ユニにとって初めての事でしょ?せっかくなら楽しんでもらおうと思って、案内でもしようかなって」
なるほど……厚意に甘えない必要もない。私は縦に首を振った。
そして数分後、ついにミレニアム展示会が始まった。
始まったばかりというのに、会場には大勢の人が入ってきている。
横にいるユウカもどことなく嬉しそうだ。
展示されているものは掃除機、エンジン、ゲーム機と多種多様で、見ていて飽きない。
そんな中、見たことのある集団が立っていた。
私とユウカは近づき、声を掛ける。
「こんにちは」
「ん?おお、やぁ、ユニくん」
「こんにちは、ユニさん!」
そこにいたのはエンジニア部の三人、ウタハ、コトリ、そしてヒビキだった。
ウタハとコトリは挨拶を返してくれたが、ヒビキは作業に夢中のようで返ってこなかった。
その横には、巨大なパネルが。
「これが、例の?」
「ああ。もうすぐ準備が終わるから、せっかくなら見ていかないか?」
「あら、ユニはもう知っているの?」
横のユウカがそう聞いてくる。
私は首を縦に振り、答える。
「彼女達に情報提供したのは私だから」
「そう、今回私達が展示するものはユニさんあってのものですから!」
コトリがそのまま説明を続ける。
「ユニさんからお借りした盾に付いていた、Iフィールド、その研究結果が私達の展示物なのです!」
「ユニくんの私物だから、展示してもいいか、事前に聞いていたんだ」
「なるほど、そうだったんですね」
「それで、成果はどんなものを?」
「それはですね―」
「コトリ、詳しい話は今度でにしよう。今やるには、少し時間が足りないからね」
「むむむ……ウタハ先輩が言うなら……」
そうか、せっかくならコトリの説明を聞きたかったが……
「さて、簡単に説明したいところだが……あまりにも情報が多くてね……」
そう言いながら、分厚い紙の束を渡してくる。
「おもっ……!?どれだけ書いてあるんですか!?」
「それでも減らした方なんですよ。ざっと116枚です」
「多すぎるわよ!?」
「……ふむ……」
パラパラ、と軽く読み進めていく。
途中で気になるものがあり、その都度聞いていく。
「この、『特殊粒子(仮称)による重力下での飛行』というのは?」
「それは、Iフィールドに使用された粒子を使って、重力下で巨大な……例えるなら、宇宙戦艦とかを浮かせられる、っていうの」
「ヒビキくん、準備は終わったかい?」
「うん、後は電源を入れるだけ」
独自の研究でそこまで行けるとは……さすがマイスターだ。
「……これは?」
「『特殊粒子(仮称)による次世代推進システム』かい?それは私達でも、未だ夢物語ではないかと思うくらいの代物さ。推進剤要らずで、空気抵抗のない場所なら、理論上は亜光速まで加速する。そして、場合によるが、24時間以上使用してもエネルギー切れにならない。……ユニ、君はどう思う?」
「……私は技術に関してはよく分からない。けれど……」
「けれど?」
「信じている。人の可能性を。だから、出来る」
そう言うと、ウタハは面白そうに、ヒビキは少し驚いたように、コトリは説明したそうな顔をする。
何か、おかしなことを言っただろうか。
「実に君らしい。分かった、君の期待に応えるようにするよ」
「楽しみにしている」
そうして私達はエンジニア部に別れを告げ、その場を離れた。
その後も、色々なものをユウカの説明を聞きながら、見ていた。
「あれ、なんかバンシィに似てない?」
「言われてみれば、そうですね……」
「ここの展示扱いみたいだし、写真撮らせてもらおーっと。すいませーん、ちょっと写真いい?」
「構わない」
たまに、このように写真を求められながらも、とくに問題は起こっていなかった。
このまま何もなければいいが……
その時だった。
ドガァァァアアン!
爆音と揺れが私達を襲った。
間違いなく、爆発だ。
「な、何!?爆発!?いったいどこで……というか、警備は何してるのよ!?」
「……ユウカ、避難誘導を。私が原因を探す」
「ちょ、ちょっと!これ以上壊さないでよ!?」
「分かってる!」
私はブースターを吹かし、音の方へ飛んでいく。
予想では、会場の入口付近で聞こえてきた……怪我人はいないでほしいが。
だが、その想いは簡単にかき消された。
一分も掛からずに、到着したが、そこにいたのは―
―怪我だらけの少女を抱えた、光り輝く、黒き獅子だった。
―獅子―
現在、朝の十時半頃。
私達68はミレニアム展示会の会場前で依頼人を待っていた。が……
いくら待っても来ない!
八時半前に合流って昨日会った仲介人は言っていたのに、もう二時間立つぞ!?
アルはもう今にも噴火しそうだし、それがハルカに引火してもっと悲惨なことになりそうだし、つまらないことが嫌いなムツキも結構もうはち切れそうだ。
カヨコは落ち着いてはいるが……疲れはあるみたいだ。
まあ壁に寄りかかっているとはいえ、立ちっぱなしはつらいよな……
私も、割と重たい
そしてついに、ムツキが言葉を放った。
「ねー、もう来ないんじゃない?今日はもう仕事無かったことにしてさ、普通に展示会楽しんじゃおーよ」
「うう……だっダメよ!私達はプロ、万が一に備えていた方がいいのよ!」
ムツキはつまらなさそうにそう提案したが、便利屋としてのプライドを持っているアルは即座に却下した。
だがな……アル……しょうがない。
アルの傍に寄って私からも提案する。
「別に、全員ここにいる必要もないだろう。先に中の状態を把握しておくとか何とか言っておけば怒られないだろ」
「で、でも「催してるんだろ?」……!」
顔を赤くして口をパクパクとさせるアル。確かに直接言うことじゃないのは分かってるんだが、そうでもしないと噴火するだろ、別の部分が。
ともかく、アルのプライドを守るためにもここは通してほしい。
「……はぁ。私もいるから、三人で先に入ってたら?」
「く、くぅ……分かったわ。その代わり、無礼のないようにね?」
カヨコの援護もあって頷いてくれたアルは、「行くわよ、ムツキ、ハルカ」と言って足早に入っていった。
「カヨコも行ってきてよかったんだぞ?」
「別に、私は興味なかったし」
「そうなのか。私は高性能ネコ会話機とかいうのが気になった。ホントに会話できるのか……」
「……」
全く別の生物との対話……宇宙生物と融合したらできそうだがな。
そんな感じで、カヨコと他愛ない話をしながら待っていると、一台の車が近くに止まってきた。
運転席には、見たことのあるロボットが。
「よう、元気か?」
今回の依頼の仲介人だった。
「いやよう、じゃないが……」
「依頼主が現れないんだけど?」
「まあまあまあ、言いたいことはよく分かるぜ」
そう言いながら手招きしてくる。
「なんだ」
「ちっとばかし、依頼内容の変更だ。これ以上は大きな声で話せねえよ」
車に乗れ、ということだろう。
カヨコに目を合わせ、どうする?と伝える。
「……社長は先に中に入ってるけど、呼んだ方がいい?」
「いや、あんたらがいたら問題ないだろ」
「投げやりすぎないか?」
兎にも角にも、仕事なら、突っ立ってるわけにもいかないので、仕方なく、後部座席にカヨコと乗る。
仲介人は窓を閉め切り、早速本題に入った。
「依頼の変更内容を説明する。依頼主はGE。本来はお偉いさんの護衛だったが、急遽変更して、展示会内にいるとある人物の捜索になった」
「捜索……って、いったい何を?」
仲介人は一呼吸置いて、
「白き一角獣」
と言った。
……噓だろ。
カヨコは訳が分からないという顔で仲介人に聞く。
「白き一角獣……って何?」
「さてな。コードネームじゃないかと俺は思ってる。これ以上は俺も知らないし聞かされてない」
「分からないのに捜索しろって、依頼として成り立ってなくない?」
「依頼主が言うには、あんたらの一人が分かるだろう、ってさ」
……白き一角獣も気になるが……依頼人も気になる。
間違いなく、私の事を選んでいる。
「捜索した後はどうすればいいんだ?」
「相手の出方次第にしろ、だと。全く、こんないい加減な依頼送ってくるなんて、俺の仕事に響くんだよ……」
仲介人は面倒そうに呟く。大変だな……
「俺から見ても、怪しいとしか言いようがないが……その分報酬も本来の三倍だとよ」
「さんばっ……!?」
あまり大きな声を出さないカヨコが珍しく声を出す。
私から見たら、怪しさ十倍なんだが。
「まあ自分達の力に自信があるなら、悪くない話だと思うぜ」
こんなところか、と言って仲介人は話を閉めた。
正直止めたいが……
「既に受けている依頼なんだよな……」
「うん、止めようにも止められない。アルもいないし」
「大変だな、あんたらも」
そうして、私達は車を降りる。
そのまま会場に入ろうとしたところ、仲介人に止められる。
「ほらよ」
そう言って二つの缶を投げてきた。
ココアだった。
「餞別ってやつだ。また会うかもしれないけどな。じゃあな」
仲介人は車を発進させ、そのまま去っていった。
……粋な奴、というのだろうか。
片方をカヨコに渡し、気を取り直して会場に向かっていった。
中に入ってみれば、大勢の人で溢れかえっていた。
この中から、白き一角獣を探せ、なんて無理難題をやるなんてな……
「……とりあえず、皆を呼んでこの後の事を話し合おう」
「だな」
私はカヨコの提案に頷き、通行の邪魔にならないよう、二人で壁の近くに寄る。
……思ったが、もしその一角獣がいたとして、私と同じタイプなら、装甲を外してるんじゃないか?
そう思いながら、唸っていると、カヨコがスマホを見せてきた。
「これ、見て」
「どうし……!」
スマホに移っていたのは、ハルカと―白い装甲を纏った少女だった。
……
「なぜハルカが?」
「確かに気になるけど、今はそうじゃない」
「分かってる……白い装甲に、角」
「うん、この人っぽい。……どことなく、バンシィの鎧に似ている気がする」
だろうな……
……話してみるか、色々。何か知っているかもしれん。
……ん?
人、周りにいなくないか?
「なぁ、カヨ―」
『横を見て』
なんとなく横を見てみると、アタッシュケースが置いてあった。
……滅茶苦茶嫌な予感が―
『危ない』
一つの声が、頭の中に響いた。
すぐさま背中の馬鹿でかい鞄から装甲をほぼ落とすように取り出し、すぐさま装着する。
「バンシィ、何やって―」
カヨコの声を無視して、アタッシュケースをすぐさま真上に投げ、BSで撃ち抜いた。
あれは、爆弾だ。それも、かなり良くない。
だから、かなり上に投げて、爆発させた。
それだけで、満足したのがいけなかった。
「っ、まずい!」
「バンシ―」
カヨコに覆いかぶさり、爆発から守る。
爆発の熱気が私達を包む。……クソっ、予想よりも爆発が強い!
しかも、この肌を焼く熱は、ただの熱じゃない!
あの時の爆弾と、同じだ!
すぐにデストロイモードを発動させ、出来るだけ守る。
数秒後、やっと熱は収まった。
腕の中のカヨコに声を掛ける。
「おい、大丈夫か?おい、おいっ!」
どれだけ声を掛けても、揺さぶっても起きない。息はしているが、ところどころ火傷している。
ただの怪我じゃない、そんな気がする……!
次の瞬間、何かが高速で近づいてくる音が聞こえた。
次から次へと……何なんだ……!
その方向を見てみると、そこにいたのは―
―汚れ一つない、白い、一角獣だった。
どこかに透明文字があるぞ!探してみよう!
ヒントは獅子編に二個だよ!