可能性の獣達が行くキヴォトス珍道中 作:ハイギガ粒子砲
私は今、とある部屋に連れられ、あるものをしていた。
「ここはAB同時押しからの右斜め上回転Z下斜め上横九十度……」
ゲームである。
「す、すごい!もしかして、初めてのクリアになるんじゃない!?」
「あともうちょっと、頑張って……!」
「アリス達がついています!」
「が、頑張れ……!」
私の後ろにはモモイ、ミドリ、アリスと、もう一人の部員のユズが私のことを応援していた。
なぜ、このようなことになったのかというと……
始まりは、私が名乗った後の事だった。
ガンダム。
そう名乗った私に対して三人は口を開けて呆けている。
しまった、そう思った。
私の名についているユニコーンは神話の生物の名でもあって、ガンダムというのはモビルスーツの名だ。
ここにガンダムの名があるかは知らないが、少なくとも人に名乗る名前ではなかった。
「悪い。いま言ったことは忘れて」
慌てて私はそう言い、その場を離れようとした。
しかし、後ろを向いた瞬間、右腕―正確には装甲―を掴まれる。
「待ってください!」
引き留めたのは、アリスだった。
「……何?」
「ユニコーンさん!よければアリス達の部室に来ませんか?」
………え?
「ユニコーンさんは、困っているように見えます。アリスは、そんなユニコーンさんを助けたいです!」
「……だけど、そこまでされるような……」
「勇者は、困ってる人を見捨てません!」
「勇者?」
「はい!アリスは勇者になりたいんです!」
勇者。
つまり、アリスは自分のことを勇者だと思っているのだろうか。
……勇者とは、ユニコーンと同じ神話や伝説の類の存在。そんな存在になりたいと。
「モモイ、ミドリ、ダメですか?」
「うーん……確かに、困ってる人は見捨てられないね!私はいいよ!」
「私も、そう思う。先生だって、そうすると思うから」
「だそうです!ユニコーンさん、来ませんか?」
……そうか。
「分かった。そこまで言うなら。そこで私のことを話す」
「!パンパカパーン!ユニコーンガンダムが仲間になった!」
感じた、お前の温かさが。
アリス。
君はなれるだろう、勇者に。
可能性という内なる神を持つ心が、あるのだから。
「……あれ、今一瞬光らなかった?」
「気のせいじゃない?お姉ちゃん」
ということで連れられてやってきたのは彼女達の部室。今更だけど、部室とは何だろうか。
一見散らかって見えるが……ん?
「そこにいるのは誰?」
「ひっ」
ロッカーに熱源反応。どうやら人の様だが。
「ああ、あんまり怖がらせないであげて。そこにいるのは我らがゲーム開発部部長のユズだよ」
「部長……リーダーということ?」
「まあ、そんな感じかな!人見知りだから優しく接してあげてほしいな」
「分かった。なら、私のことを……」
「あっ、その前に電話したい人がいるんですけど、してきていいですか?」
「?別に構わない」
ありがとうございます、と言ってミドリは誰かに連絡を取り始めた。
正確には分からないが、『先生』という人物と会話しているように聞こえる。
ミドリが会話している間、モモイが話しかけてきた。
「ねえ、その格好暑くないの?」
「暑い……?」
「だって全身に重そうなものが着いてるんだよ?ごてごてしてるし」
「確かに、まるでホワイトアーマーみたいな姿です」
「それはテイルズ・サガ・クロニクルのでしょ。あっ、それとそのカチューシャ!本当にユニコーンみたいだね」
カチューシャ……?目線が頭に向いているということは、頭に何か……
触ってみると、そこには堅いものが。
引っ張ってみると、簡単に外れた。
これは……私の角?外れるのか。ということは、装甲も外れるのか?
だがどうやって……念じてみるか。
すると、全身からプシューという音がして、次々に装甲が床に落ちた。
「わああ!すごいすごい!まるでロボットみた……い……」
「今まで確認できなかったけど、腕、脚部、胴体、腰部、バックパック以外に装甲が無かったのか。腕や脚部に至っては途中までしかない。人の部位で言えば確か……二の腕や、太ももというのだったか。だけど、そのおかげで体が動かしやすい気がする」
「ちょちょちょ!?なんでそんな平静なの!?」
「?なぜモモイは焦っているの?」
「ユニコーンさんは裸で鎧を着ていたんですね!」
そう言われて自身の体を見てみれば。
これが裸。
見たことはあれど、『彼』とはかなり違うように見える。
これが性別の違い、ということか。
「えーと、うんと、こ、これ!これ着て、早く!」
「分かった。……どうやって、着用するの?」
「……もしかして、わかんない?」
「分かってたら聞かないと思う」
モモイやアリスの協力で、やっと着ることが出来た。けれど……
少し……息苦しい。
これが、息をする者の大変さか。
「ユニは私達と違ってロリ体型じゃないからパツパツだ……」
「つまり、大きさがあってないんですね!」
「言わなくてもいいでしょ!」
「……ユニとは?」
「ユニコーンのあだ名!ユニコーンだとちょっと長いからね。もしかして嫌だった?」
「いや……あだ名、か」
まだ彼女達と会って数時間ほどだが、心地よい気分だ。
いろいろと、初めての経験が多くあった。
謎もまだ多い。
なぜ、ここに私が人として降り立ったのか。
分からない、だけど……私に心があるならば、それに従う。
感じてみたいと。人としての、感覚を。
ミドリが戻ってきた後、ようやく説明することが出来た。
私が何で、どこから来たのか。ほとんど答えられることはなかったが。
「つまり……ユニはモビルスーツってロボットで、その、アナハイムって所に封印されていた……だよね」
「それで、そこで眠りについていたけど、気付いたら人の姿になって、ここに……」
「そういうことになる。信じられるかは、わからないけど」
「……うーん、とりあえず言えるのは、モビルスーツとか、アナハイムとかっていうのは、聞いたことなかったね」
「はい。アリスもよく冒険に出かけますが、初めて知りました」
「アリスちゃんのは近いところばっかだけど……もしかして、だけど……異世界からやってきた、とか……?」
「あはは、ミドリってば、漫画の読みすぎだよ!」
「真面目に考えて言ったんだけど……でもそうでも考えない限り、ユニさんが嘘つきになっちゃうし……」
「……考えて分からないのなら、後回しにしよう。次はここの事を教えてほしい」
ということで今度はこの場所の事について教えてもらった。
学園が集まった都市であるキヴォトスという地であったり、その中でも特にテクノロジーなどが発達している場所がここ、ミレニアムらしいということなど、様々なことを教えてもらった。
ただ、私には学校など常識と思われる知識もほぼゼロだったため、説明が少し長くなってしまった。
「申し訳ない、疲れたでしょう?」
「ううん、しょうがないよ。ロボットだったもんね、ユニは」
「でも……このままここにいる、ってわけにもいかないよね。ホントだったら、いない人だし……」
「じゃ、じゃあアリスちゃんみたいに……偽造、してみたら?」
そう言い放ったのは、この場で初めて声を出す者。
「ユズ!」
「その方法が……!」
「よし、じゃあ私すぐに行ってくる!」
そう言うとモモイは部屋を飛び出していった。
「……色々、ありがとう。よく分からない私を助けてくれて」
「いいんです。よく分からない子を助けるのは初めてじゃないですから。それより、これからどうしますか?」
「……私は、急ぎで帰りたいわけでもないから……」
やることが、無くなってしまった、ということか。
困った、ということになる。ここに来てからよく悩む。
そんな時に、またユズが案を出す。
「わ、私達の新作を、やってもらう、ていうのはどうかな……?」
私はそれに承諾したため、現在ゲームをしている。
いや、していたと言うべきか。
「……ふぅ」
「やった!ユニが初めてのクリアだよ!おめでとう!」
「おめでとうございます!こんなクソ……ゲームをクリアするなんて……!」
「すっ、すごい……」
「パンパカパーン!ユニはプロトタイプゲームをクリアした!」
私は初めてゲームをしたが……こんなにも理不尽が多いんだな。
宝箱を開けようとしたら爆発し、階段を上ろうとしたら爆発し、村人に話しかけようとすれば太陽系が爆発する。
「やっぱり、爆発がちょっと多かったかな……?」
「ちょっとどころじゃないと思うけど」
「……ど、どうでしたか……?面白かったですか……?」
今までロッカーの中にいたユズがいつの間にか出てきていて、不安そうに私に問いかける。
「……私にゲームの良い悪いは分からないけど……間違いなくこれは……」
「……ごくり」
「面白かった」
「……!」
「想いが伝わってくる。面白く、楽しくしようとする想いが。物語も彼らなりの感情があることが感じた。きっとこれは、いい物だ」
私がそう語ると、一同は跳ね上がり、喜んでいた。
私も口角が自然と上がる。
これが、嬉しいと感じる心。
とても、温かい。
そんな時だった。
ゲーム開発部の扉を開ける音がした。
誰だと思い、後ろを振り向いてみると……
「あぁん?誰だお前」
荒々しい、子供だった。
一方その頃。
「アルちゃん、なんか倒れてるよ?」
「ええ!?嘘、助けてあげないと……って、変な格好をしてるわね……まるで黒い鎧だわ……」