可能性の獣達が行くキヴォトス珍道中 作:ハイギガ粒子砲
大量の戦車。
そこから聞こえるのは、今日聞いたばかりの声。
「あれの声は、襲ってきた子の……」
「えっ!?じゃあもしかしたら、報復しに来たんじゃ……!」
「そう言っても、まだ数時間しか経っていない。……まだ数時間しか経っていないの?……ともかく、すぐにそう行動を起こしは―
「出てこい角野郎!ぶっ潰してやる!」
「―早いね」
「ど、どうしよう!?」
……あれの目的は私。ならば。
「ミドリ、頼みたいことがある」
「なんですか?」
「私の装甲を取ってきてほしい」
「装甲って、あの鎧みたいな」
「そう。それまで私が時間を稼ぐ」
「えっ、一人でですか!?危ない―って待って!」
私はシールドとガトリングを持ち、向かっていった。
重い。
歩いている時には気付かなかったが、とても疲れる。これが、疲労。
気付いてはいたが、装甲が無いと身体能力がかなり下がるようだ。シールドは一度近くに投げ捨てる。
そして最前の戦車の前に立つ。
……ん?
「てめえは……朝の!ふんっ、あの鎧はどうしたぁ!?」
「……」
私は相手の声に応えず、ただ目の前の戦車にビームガトリングガンを構える。
多くの戦車と言ったが、数えてみれば五つ。
どこから持ってきたのか知らないが……
人を傷つけるというのなら、真正面から打ち砕くっ!
私はビームガトリングガンのトリガーを引く。
しかし―
「……っ!?」
「あっはははっ!どこ狙ってんだ!」
銃弾はあらぬ方向へ飛んで行ってしまう。
反動にも耐えられない。
「次はこっちだ!」
「……くっ」
ビームガトリングガンを捨て置き、近くの物陰に隠れる。
隠れる瞬間に横を砲弾が掠め、近くの建物の柱を破壊する。
素人の為か、五機の内二機の射線がこちらに向けれていない。
全く、元の体ならばかすり傷すらほとんどつかないだろうが……今では大きな脅威だ。
「おいおい、これで終わりかぁ!?」
「……どうしよう」
時間を稼ぐとは言ったものの……このままでは、不味い、か。
戦車の駆動音が聞こえる。近づいて来ているんだろう。
……一か八か、やってみよう。
私は目的の場所まで走っていく。
「体が丸見えだぞぉ!」
それはもちろん分かっている。
だが、それでも、力の限り走る。
「っ!」
砲弾の一つが左腕にぶつかる。
痛い。
これが痛み、か。
しかし、鋭い痛みと多くの血が出るだけで動く。
……よし。ならば、問題ない。
私はまた駆ける。
「何がしてえのか分からねえが、このままじゃ潰れるぜぇ!?」
「……いや、ならない」
「あぁん?まあいい、お前らやっちまえ!」
位置からすれば、さっきより増えた四機がこちらを狙っている。
だが……
「これがある」
一気に砲弾四つが飛んでくるが―
「……ふっ、ぐぅうう……!」
―さっき投げ捨てたシールドを持ち上げ、体を丸め潜める。
ギリギリ全弾防げたようだ。
しかし、シールドはボロボロに。後二、三回だろうか、耐えられるのは。
「これで終わりだぁ!撃てぇ!」
「……私より、後ろを見た方がいい」
だが、防ぐ必要はない。
次の瞬間、建物が崩れる。
「なぁっ!?」
さっき破壊した柱で崩れるのは分かっていた。指令塔があれならば、気付かないことも。
ここの住民なら建物が崩れたぐらいなら大丈夫だと聞いた。
これで終わり――なら、良かったが。
「てめえ、一度ならず二度までもぉ!」
「……まだ、か」
巻き込めたのは二機だけの様だ。
私も、頭を使うことは苦手……どころか、考えたことが無い。
さて、次は――その時だった。
「光よ!」
横から光の刃が一台にぶつかる。
この声は……
「ユニっ!」
そう言って駆け寄ってくるのはゲーム開発部の皆だった。装甲はアリス以外の皆が手分けして持っている。
その後ろから見慣れない男の人が。
「一人でよく頑張ったね」
「……もしかして、あなたが?」
「うん、君と会う予定だった大人だよ。気軽に先生って呼んでね。よろしく、ユニ」
「……よろしく」
「おめー、なかなか根性あるじゃねえか」
さらに後ろからネルが獰猛な顔をしてやってきた。
「後は私達に任せて。ユニは休んで……」
「いや、残りも任せてほしい」
私は首を振り、先生からの提案を断る。
「だけどユニ、左腕が……」
「……皆、渡してくれる?」
「う、うん。でも……」
「私が直接聞きたいことがある。……信じて」
「……せ、先生」
「……うーん、ネル、すぐに動けるように、準備して」
「おう、任せろ」
「一回だけ、許すよ。ただし、危ないと思ったらすぐに退かせるからね」
私はそれに首を縦に振り、シールドを手から落とし、皆から装甲を受け取る。
念じるようにすると、全身に装着できた。
さて……
「……流石に、これ以上は暴れさせられない」
使おう、あれを。
「『NT-D』」
そう呟く。
目の前には口にした言葉と同じ文字が現れる。
すると全身の装甲が変化……『変身』する。
装甲の隙間から『サイコフレーム』が露出し、脚部はヒール型になり、頭部の角が割れる。
そして、サイコフレームから赤い光が輝き始めた。
「うわぁ……!」
「これは……一体……!?」
「ヘイローも赤くなって……!?」
「なんの、光……!?」
ユニコーンガンダム、デストロイモード。
残りは三機……一機はアリスの射撃で中破している。
まずは……よし。
ブースターを吹かし、ビームガトリングガンまで飛んでいく。
そして中破している戦車に―熱源感知で人とエンジンが無いところを探しながら―撃ち込む。
穴だらけになった戦車からは少女達が慌てて出ていく。
「ひぃっ!?」
「なんだよあれぇ!?」
「お、お前ら慌てるな!流石に戦車の火力なら……」
何か会話をしていたようだが気にせず、ブースターで近づく。戦車の速度では追いつけない。
一機はさっきと同じように破壊する。
リーダーと呼ばれた者が乗っている戦車には、ビームガトリングガンとは反対の腕でバックパックからビームサーベルを引き抜き―
「……ふっ!」
―斬り刻んだ。
辺りはもうオレンジ色になる頃。
少女―不良達は大人しく捕まっていた。
私はリーダーに質問する。
「聞きたいことがある。あの戦車は、一体どこから?」
「あ、あれは、あんたにやられた後、変な奴が出てきて、渡してきたんだ。お前を、ガンダムを壊せ、って言いながら……」
「どんな見た目だった?」
「わ、分からねぇ!奴は暗い場所にいて、顔も分かんなかったんだ……嘘じゃない!」
「そう……もう大丈夫。ありがとう」
不良達はそうして、ヴァルキューレと呼ばれる警察組織に連れていかれた。
……ふむ。
考えていると、ミドリが声を掛けてくる。
「どうして、そんなことを?」
「……あの戦車には、あるエンブレムが着いていた。それが、見覚えがあった」
「見覚え……ってことは、元の世界の?」
「うん、あれは……
アナハイムのエンブレムだった」
「噓……」
「それってどういうこと?この世界には無いはずだよね?小さかったら、分かんないけど」
「それは……おっと」
私の考えを喋ろうとすると、ついふらついてしまった。
その様子を見て、先生が口を開く。
「会話もいいけど、今日はもう休んだ方がいいよ。後の処理はやっておくから」
「……確かに、そう。申し訳ない、先生。来てもらったのに……」
「いいんだよ。生徒第一だからね」
「じゃあアリス達が鎧を持ちます。重たくはありませんか?」
「さっきまでは大丈夫、だった……疲労状態だと多分、駄目なんだと思う」
「こ、壊れた盾は私がエンジニア部まで持っていきます」
「ユズだけだとちょっと重たいし、私も着いていくね!ミドリ、アリス、任せたよ!」
そう言ってモモイとユズは歩いて行った。
私達も部室へ戻ろうとすると、一人の少女が前に現れた。
「私も手伝ってやるよ」
「ネル先輩!?」
ネルだった。ネルは近づいてきて、私が持っていた装甲を奪い取るようにして抱える。
「ったく、ホントは暴れてやろうかと思ってたのによ、お前が全部やっちまったせいでストレス解消出来なかった」
「アリスに十五連敗してたからでしょうか?」
「アリスちゃん、しーっ!」
そう言うが、ネルの顔は笑っていた。アリス達の会話は聞こえていなかったみたいだが。
「だが、面白いモンも見れた。お前、なかなか骨のある奴だしな……今度私と戦おうぜ」
「えっ!?ユニさん、この人強いんですよ!止めた方が……」
「ユニがネル先輩に決闘を挑まれています!」
そんな会話をしながら、私達は部室へ戻っていった。
そうして、私の長い一日が終わったのだった。
一方その頃。
「……ク、クク……また、お前達が敵になるのか……ガンダム……!」