可能性の獣達が行くキヴォトス珍道中   作:ハイギガ粒子砲

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獅子―プロローグ―
獅子の目覚め


―私は思考する。

 

―『彼女』や、『彼』に従った私は、正しかったのだろうか、と。

 

―私は思考する。

 

―人の心は、どのようなものだろう、と。

 

―私は思考する。

 

―思考とは、何なんだろう。

 

 

 

 

 

「……?」

 

目を、開く。

……開く?どういうことだ?

私には開く瞼は無いはず―というか、体が動くだと?誰かが動かしているわけでもなく?

腕を持ち上げる。そこには白い布が掛かっている。

 

「……ここは……どこだ……?口が……」

 

喋れ、る?

クソッ、頭が痛く―ああもう、訳が分からない、今の私は、まるで人じゃないか!

とりあえず、起き上がるしかない。

 

「あっ、起きた?」

 

私は体を起こそうとすると、上から声が聞こえた。

その方を見てみると、いたのは―

 

「にん、げん?」

 

―だった。

 

 

私と少女は向かい合わせになるように椅子……ソファに座った。私は、寝転びから起き上がっただけだが。

 

「君、倒れてたんだよ?」

 

少女はムツキと名乗った。

心配というより、面白いものを見つけたような声を出しながらそう言う。

 

「変な鎧みたいな格好してたし、その下は裸だったし、びっくりしちゃったよ。君はどこの学校?」

「……学校?」

「もしかして、訳アリ?じゃあ無理には聞かないであげる。なんで倒れてたか分かる?」

「……分からない。ここは、連邦か?」

「君、連邦所属?てことは……私達の敵かな?」

 

そう言うと、ムツキはどこからか銃を取り出し、私に向けた。

 

「連邦に敵対している……ということはまさか、ジオンか?」

「は?ジオン?なにそれ?」

「いや、どれくらい寝ていたかは知らないが、少し前まで連邦はジオン残党とフル・フロンタルと戦闘していただろう?」

「?」

「?」

 

話が食い違っているような……

この地の事を聞いてみる。地球か、宇宙のコロニーか、どちらだろうか。

 

「地球に決まってるじゃん!キヴォトスは科学は凄いけど、まだ宇宙に行ってないみたいだし」

「キヴォトス……」

 

私が無知なだけかもしれないが、そんな地は知らない……まさか。

 

別の……?

 

あり得……いや、『兄』ならそんなこと平気でやりかねない。

つまり、巻き込まれたのか?

いやいや、だが今は封印されていて、彼の『主』がいなければやらなそうだし……

そういえば、私の体は人になっている。

だからか、思考することが増え―ああああ!

 

「あたまいたい……」

「えっ、大丈夫?」

 

水を貰い、飲む。

これが水分補給か……

 

 

 

「へー、記憶喪失……」

「ああ、それで、覚えていることが混濁していたみたいだ」

 

記憶喪失。

私はそう自身を表した。

実際この地の常識を知らないんだから同じようなものだろう。

キヴォトスのことや、そこにある常識をムツキから聞き、学んだ。

 

「ならムツキ、お前はどこに所属しているんだ?」

「一応ゲヘナ、かな」

「一応?どういうことだ?」

「説明しましょうか?」

 

突然ムツキとは別の方向から声が聞こえた。

 

「アルちゃん!」

「社長。いつもそう呼べって言ってるでしょう?ムツキ室長」

「社長……ということは、何か企業を?」

「ええ、私達は『便利屋68』。お金を貰えばなんでもする、アウトロー集団よ!」

 

便利屋……か。

 

「そして私が便利屋68の社長、陸八魔アル。以後お見知りおきを。あなたの名前は?」

「……私の名前は……

 

バンシィ、だ」

 

「バンシィね……よろしく。私達がなぜゲヘナではないのか……」

「ゲヘナの風紀委員長にビビって逃げ出したからだよ!」

「ムツキ!」

「ビビったのか」

「真に受けないでよ!」

 

そうわちゃわちゃしながら、便利屋の事を聞いた

アル、ムツキ以外にも二人社員がいることや、アルが無鉄砲に浪費してしまうことや、アルは調子に乗るくせにすぐにテンパったりすることや……

 

「ほぼアルの事しか聞いてないんだが?」

「面白いでしょー?」

「面白いって何よ!?」

 

ほとんどアルのポンコツぶりしか聞かなかったが……つまるところ、彼女達は犯罪者だ。

キヴォトスではありふれたことらしいが……しかし、許されることなのだろうか?

分からない。私には、人の心は完全には理解出来ていない。

一度、『彼』の想いを感じ取っただけ……

 

……今の私には、出来るんじゃないか。

人に従うだけのマシーンではなく、人になっている私なら。

 

「アル。頼みがある」

「頼み?依頼なら、まず話を聞かせてもらうけど」

「バンシィちゃんの記憶を取り戻すとか?」

 

「私も、入れてくれないか?便利屋68に」

 

「……は?」

 

自身の思考のままに、行動することが。

 

 

 

「と、いうわけで!新入社員のバンシィちゃんだよ!パチパチパチー」

「よろしく頼む」

 

私はそう言って目の前の少女二人に頭を下げる。

 

「え、えっとぉ……」

「……はぁ」

 

平社員のハルカと課長のカヨコ。私の先輩になる者達だ。挨拶もしっかりしなければ。

……いや普通に考えて知らぬ間に一人増えていたら困るよな?やってしまったな?

 

「……また社長が変なこと言ったの?」

「また!?またって何!?」

「社長が……出来るとは思わないけど、弱みを握られてたり、言いくるめられたりしてない?」

「いや、これは私の意思で言っている。決して無理矢理ではないし、騙されてもない。まあ彼女が出来るわけないが」

「で、出来るわよ!私だって社長よ!?」

「そういうところだぞ」

 

会話して数時間だが、もうすでにポンコツだということが分かる。

 

「……なら、私から言うことは無いかな。社長がいいなら」

「私も、アル様がいいならそれで……」

「そうか……良かった。改めて、よろしく」

 

私は二人と握手する。認められたようでよかった。

 

「とりあえず、やるべきことは……服、買わなきゃだね。シャツ一枚しか無いのは問題でしょ」

「そうね、私もそう思ってたところよ」

「でもアルちゃん、そのためのお金、あるの?」

「うっ……あ、あるわよ!新入社員のための歓迎パーティーも出来るわ!」

「どこにそんな資金あるの?」

「ふっ、今から、手に入れるのよ!」

「さすがですアル様!」

「いや別に無理しなくても……」

 

こうして、私は便利屋68の新入社員となったのだった。




ギャグ枠の便利屋68に来たということは……
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