可能性の獣達が行くキヴォトス珍道中   作:ハイギガ粒子砲

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不死鳥―プロローグ―
不死鳥の翔来


―私は宇宙(そら)を翔ける。

 

―ただ、鳥のように。

 

宇宙(そら)の、その先まで、ただ、ひたすらに。

 

―一つの光を見た。

 

―ふと、触れてみたくなった。

 

―私の知らない、新しい輝きを。

 

 

 

 

 

私は目の前のパフェをどのように攻略するかを考えていた。

一番上のいちごから食べようかな……いやいや最後に取っておこうかな……

悩みに悩みながら、考える。

カフェのテラスでパフェを食べる……うん、初めての経験だけど、楽しいね。

やっぱりいちごから食べちゃおう。

そうしてスプーンで取ろうとする。

 

「お前ら、うまそうなもん食ってんなー!よし決めた、全部私のだ!」

 

すると、見た目から不良です、という女の子が大きな声を上げて、他の似たような子と一緒に銃を持ち始めた。

周りの子は、きゃあきゃあと言いながら逃げていく。

十秒後ぐらいには、ここにいるのは不良の子と私だけになった。

 

「……おい、お前。なんでこの状況で逃げねーんだよ。おい、聞いてんのか!」

 

声に気を取られて、食べるのを忘れていた。気を取り直していちごを掬い、口に運ぶ。

 

「てめぇ、いい度胸だな!鉛を食わせてや―ぐへぇ!?」

 

私に銃を向ける不良の子。

だけど、空から降りてきた二つの翼によって、寝てしまった。

私はいちごを飲み込み、一言。

 

「軽くにしするから、許してね?」

 

 

 

キヴォトスにやってきて、数日が経った。

最初は驚いた。

こんな、『あの場所』に似た場所があるなんて。

でも、すぐに全然違うと分かった。

ここは、私が生まれた場所とそっくりで、悪意と、善意がある、人が生きる世界だと。

 

「……フェネクスさん、また暴動行為の対応をしたとか。本当ですか?」

「暴動ってほどじゃなかったけど……まぁ、一応ね」

 

私の名前はフェネクス。

今私は、キヴォトスで始めて会った子……ナギサとお茶を飲んでいた。

 

「すぐに駆け付けた正義実行委員会の方が仰っていましたよ。『我々が駆け付けた頃には、全員制圧されていた。武器も無しに、どうやったのか』……と」

「さあ、どうだろうね?」

「……はぁ……目立たないようにしてほしいと言ったはずなのですが……」

 

別に私も目立とうとはしてないんだけどね。

どちらかと言うと、暴れる子が多いここが問題のような……

 

「周りには見られていませんでしたか?あの金の翼は」

「うん。眠らせた後はすぐに隠したよ」

「……宇宙に、ですか」

 

不良達を相手した金の翼……『アームド・アーマーDE』と金の装甲、フェネクスの体はいつもは宇宙(そら)に浮かせてある。

そう簡単にはバレないところだし、呼んだらすぐに来るから、何も問題はない。

多分ね。

マカロンを手に取り、食べようとしたところでナギサに声を掛けられる。

 

「ところで……フェネクスさんはいつまでここに滞在を?」

 

ナギサには私の事を旅人と説明した。

深く説明してもいいけど、今の彼女はいろいろ抱えて大変みたい。

だから、そういうことにした。間違いではないし。

 

「うーん……まだかなりの期間いるつもり。ちょっと、やらなきゃいけない事もあるし……その時まではいつも通り、私に何でも言って」

 

最初の頃、止まる場所が無くて困ったときに何でもするって条件で、トリニティの寮の空き部屋に住まわせてもらうことになった。

本当は、少し覗いたら帰るつもりだったんだけど……

視えた。

光の中に潜む、底知れぬ悪意が。

それも、私のいたところにある何かが、いることにも。

 

「そうですか……では、早速ですが頼まれてほしいことが……」

 

 

 

「えーっと、バターに、小麦粉に、牛乳に……」

 

頼まれたのはお菓子の材料や紅茶の葉の買い出し。

こんな風に、雑用の仕事を頼まれる。

……ふふ、些細なことだけど、楽しいな。

私が買い物をするなんて、子どもの頃以外だとほとんどなかった。

未来を視てからは、そんなこと考える暇も無かったし。

うーんと背伸びをしながら目的の場所へ行く。

そんな時だった。

 

「きゃっ!」

「あっ、っとと」

 

リュックを背負った一人の女の子とぶつかった。

倒れそうになる女の子の手を掴んで引っ張る。

 

「ごめん、大丈夫?」

「こちらこそ、すいません。ありがとうございます、こけそうなところを……」

「……ねぇ、ついて行ってもいい?」

「……え?」

 

私の突拍子のない言葉に目が丸くなってるヒフミ。

確かに知らない人にそんなこと言われたら、驚いちゃうよね。

でも、危険だから。

 

「だって、一人でブラックマーケットに行くのは危ないでしょ?」

「………え、ええぇぇぇ!?」

 

 

 

私は、『ニュータイプ』と言われる存在だった。

一言で言うなら、サイキッカーみたいなもの。そんなことを言い方だと、いろんな人に怒られそうだけど。

この世界に来てから、その力が強くなった……気がする。

具体的に言うと、触れた人の事が全部じゃないけど分かる……名前や、考えていたこととかが。

それが普通だったりするみたいなのを聞いたことが会ったりもしたけど、よく知らない。

今は、それがたまたまヒフミ……ぶつかった子に当たってしまったから、起こった。

 

それで今はヒフミとブラックマーケットに来ていた。

 

「……あのぅ、本当にいいんですか?」

「うん。丁度暇だったから」

「そうですか……フェネクスさんは、エスパー……なんですよね?」

 

ヒフミにはそう説明した。かなりぼやかして説明をしたけど。

 

「うん、心を読むことは難しいけど、単語ぐらいなら、たまに聞こえちゃうんだ。ごめんね、あんまり気持ちのいいものじゃないでしょ」

「い、いえ!私がこっそり行ってることを黙っていただいてもいるので、全然大丈夫です!」

 

この子は、優しいね。

一度触れただけで伝わってきた。ヒフミの温かさが。

こういう子ばかりだと良いな。

 

「ところで、ブラックマーケットには何をしに行くの?」

「実は、限定ペロロ様がここでまた取引されてるようでして……これは買いに行かなければと!」

「ペロロ様って……そのリュックの?」

「はい!可愛いでしょう?」

 

そう言って背負っていたリュックを前面に持ってきてよく見せてくれる。

トサカが黄色い、ニワトリみたいな……うー、ん。

 

「個性的だね!」

「でしょう!?いいですね!」

 

運良くいい方向に受け取ってくれたみたい。

心が読めるからといって、人と人が上手に対話できるわけじゃないから……

 

そんなこんなで、目的ペロロ様が売っているらしいお店に着いた。

特に問題も無く、買い物するところを見ていると、ふと一つの装甲車が目に入る。

 

それには、『AE』と書かれたマークが付いていた。

 

「ごめんヒフミ、先に帰ってて!」

「えっ!?ちょ、ちょっと待ってください!」

 

私はヒフミに一言声を掛け、走って追いかける。

後ろから何か聞こえたけど、気にしてる場合じゃない。

 

あれだ。

伝わってくる、悪意が。

あれ自体に悪意はないけど、関係している何かの強い闇がこびりついている。

 

 

 

何より、あれはアナハイムじゃない。

これだけは、ただの勘だけど。




一方その頃。
「フェネクス……変な名前だね」
「ええ、明らかに偽名でしょう。ミカさんも、気を付けてくださいね」
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