可能性の獣達が行くキヴォトス珍道中 作:ハイギガ粒子砲
追いかけた先は、ブラックマーケットより外の、人の寄り付かない廃墟地帯だった。
そこへ踏み込もうとすると、後ろから足音が聞こえた。
私は振り返って声を掛ける。
「先に帰ってて、って言ったのに、ついてきちゃったの?」
「はぁ……はぁ……ふぇ、フェネクスさんがここは危ないって言ったじゃないですか……何かあるなら、私もついて行きます!」
「……ふふっ、優しいね、ヒフミは。でも、止めておいた方がいいかもしれない」
「ど、どうしてですか?」
ヒフミから目を逸らし、強い悪意の方を視る。
「間違いなく、恐ろしいものと出会うから」
そして私は
光が私へ降り注ぎ、体に纏い付く。
「眩しっ……い!?フェネクスさん、その、鎧は……?」
「……今なら、すぐに帰れるよ。どうする?」
最後の警告をする。
ヒフミは数秒迷った様子を見せた後、
「着いて行きます。私じゃ力にならないかもしれませんけど、手伝わせてください」
と言い放った。
ヒフミの瞳は、淀みなく……
ほんのちょっとしか過ごしてないけど、純粋な子だと、優しすぎる子だというのが分かる。
「フェネクスさんは私の事心配して着いて来てもらいましたし、その恩返し……みたいな……」
「……あははっ、本当について行っただけだよ?」
「それでもです!……正直に言って、フェネクスさんの仰ってることとか、全部は分かってませんけど、悪いものがあるんですよね。なら、止めなきゃいけないと思って……」
「………うん、分かった。私から、離れないでね」
私はヒフミがついてくることを了承し、微笑む。
そうして、私達二人は足を進めた。
悪意を感じ取って進んでいく。
廃墟には小さい気配しか感じない。
ずんずんと進んでいく。
迷い無く歩く私に困惑したのか、話しかけてくるヒフミ。
「そんなに進んで大丈夫なんですか?罠とか、監視カメラとか……」
「無いのが分かるから。ただの罠とかだったら分からないけど……あまりにも強すぎる悪意が無いことを証明してるの」
「えっ……と……つまり?」
「あるなら分かるよ」
「そうなんですか……それも、その鎧の力ですか?」
鎧……金色に光る、この装甲の事を、皆鎧と言う。
確かにそんな風に見えるなと思いながら答える。
「正確にはこの鎧の中にある力が、私の力を強くしてるの」
「へぇ……あ、あの、もしかしてなんですけど、私もそれを着てみたら、凄い力が手に入ったり……」
「しないよ」
「で、ですよね……」
あからさまに残念がるヒフミ。
「……自分のことを平凡だと思ってるから、でしょ?」
「え?」
「あなたは私のために、危険だと分かってても一緒に来てくれた。それは、その優しさは、充分特別なことだよ」
「い、いやいや、そんなの普通の事ですよ!」
ヒフミは手を振りながら、謙遜をする。けど、私はそうは思わない。
「普通の事って、簡単には出来ないんだよ?本人が望んでも、望まなくても……ね」
それにと足を止め、言葉を続ける。
とっても、大切なことだから。
「あなたには、強い意志がある。限りなく、強い意志が。それが、あなたの一番の力。ニュータイプでも、サイキッカーでもない。未来を切り開く力……」
「強い、意志……」
きっと、未来を切り開く力は大きな力があることじゃない。
それが有っても無くても、進んでいくことが出来る、意志の強さだと、思う。
「……っと、世間話はここまでだね。見えたよ」
「見えたって……あっ、あれは!?」
私とヒフミが見たもの、それは大きく、だけど小さい、『AE』のエンブレムが付いた、灰色の―
「工場……!?」
―だった。
「えっとぉ……ここまで入って大丈夫なんでしょうか……?」
ヒフミが言うのも分かる。
だって工場内そのままだし。
だけど大丈夫。
「ここには人はいないよ。人はだけど」
「なんでそんな怖いこと言うんですか!?」
「あはは、今は大丈夫だから。それより、凄いね、ここ。いっぱい兵器がある」
「今は、って……はい、しかも全て機械で作られてますね……!?この戦車、製造禁止の筈じゃ……!?」
工場の中は予想通りの兵器祭りだった。しかも、かなり大変な。
数々の銃器、戦車……そして、『爆弾』。
私はそこで、一つの
「そういえば、この工場……随分おかしな所に立ってるね」
「……確かに、どことなく変なような……工場は人がいない所に作りがちですが、それにしたってここは運営しづらいはずです。現にここまでの道はほとんど舗装されていなくて、車でも行き来は大変そうな道でしたし、作るとしても、もう少し近くに作れるはず……利点は、ブラックマーケットに近いぐらい……」
「じゃあ、別の角度から考えてみよっか。ここに作った理由じゃなくて、ここに作った意味」
「理由ではなくて、意味……」
うーんと唸りながら考えるヒフミ。
だけど、数秒後には根を上げる。
「ごめんなさい、分かりません……」
「ちょっと意地悪しちゃったかな?正解を言おっか。ここを作った人は……
バレるために作ったの」
「バレる……ため?」
ヒフミは心底分からないという顔をする。
「うん。実は私、ここの会社……アナハイムって言うんだけど、ちょっと関わったことがあるの。だから分かる。アナハイムはもっと上手にやる」
「……!つまり、そのアナハイム、という会社に擦り付けるため……!?」
「ちょっと違うかな。多分、目的は……」
突然警報が鳴り響き、ぞろぞろと足音がやってきた。
「もしかして、入ってきたのがバレちゃいました!?」
「いや、最初から知ってたと思うよ。敵は全部、機械……オートマタって言うんだっけ。じゃあ、手加減しなくてもいいかな。ヒフミ」
「な、何ですか?」
「私が相手するから、何か良さそうなもの……証拠を見つけてくれる?」
「えっ、ええ!?一人で大丈夫なんですか!?」
「確かに、一緒に探せればいいんだけど」
「私じゃなくて、フェネクスさんがですよ!」
私の心配をしてくれるなんて、優しいね。
……やっぱり、こういう子が未来を創るのかもしれない。
っと、今はそうじゃないね。
気付けば、すでに見えるところにオートマタが来ていた。
「大丈夫。私、そこまで―」
銃を構え、撃ってこようとするが―
「―弱くないから」
―天井を突き破って降ってきた光に貫かれ、それは叶わなかった。
「そ、それは……金の、翼?」
「だから、大丈夫。さ、行ってきて。多分、書類が見つかるから」
「分かり……ました。でも、気を付けて!」
そう言ってヒフミは走っていった。
よし、これ心置きなく戦えるね。
次々と現れるオートマタに対して、私は一歩も動かず、アームド・アーマーDEだけで処理する。
DEを突進させたり、DEに付いてるメガキャノンを低出力で放ったり。
たまにそれを搔い潜って側面や後ろから撃ってくるけど、瞬時にDEで防ぐ。
……うん、やっぱり。
オートマタが持ってるのは全部アナハイムで見たことのあるものばかり。
あのビームライフルは、たしかジェガン。あっちはリゼルだ。
「凄いね、これぐらいまでの大きさにするなんて、凄い技術者ばかりみたい。お金も多く掛かったでしょ?ということは、今まで名前も見なかったアナハイムにお金を出した人たちがいる……」
……やっぱり、機械越しじゃ分からないか。
こびりついた悪意は分かるけど、その先は、本人からじゃないと……
……来たね。
「フェネクスさん!見つけました!」
「ありがとう、ヒフミ。じゃあ、逃げようか」
駆け寄ってくるヒフミの手を取る。
「あ、あの、何を……」
「あったかいね、ヒフミの手」
「本当に何を!?」
「絶対に、離さないでね」
私はDEを真上に飛ばし、大きな穴を作り、そして―
「わ、わぁ!?」
―飛んだ。
工場が手のひらで隠せるほどまで飛び、外見を再び見る。
あんまり大きくない。
……やっぱり、どうなってもいい用に作られてるね。
でも、それでも、残しておくわけにはいかない。
ヒフミを掴んでる腕とは反対の手を大きく振り被る。
「それ、は……?」
腕を下ろす。
工場に、虹が架かる。
工場は一見、何も変わらないように見えたけど、すぐに崩れ出す。
それを見てから、私は離れた位置に降りる。
「一体、何を……」
「必殺技……みたいな」
中にある機械、マシーンの『時』を全て『巻き戻した』。
『爆弾』もしっかりと。
工場を支えていた部分もそうすることで工場を壊すことが出来た。
「……怖い?私の事」
「………ちょっと、いやかなり、驚いてます。けど……フェネクスさんは皆のために、使った力だと思います。だから、怖くはないです」
そう言って、ヒフミは微笑む。
それを見て私も微笑む。
「そっか……それじゃあ、私の事、教えてあげる。って言いたいんだけど……もう暗くなってきてるね」
「本当だ……気付かなかったです……」
「送ってあげる。それで、資料なんだけど……」
「あっ、これですね」
ヒフミは背負ったリュックから取り出そうとする。
それを私は止める。
「持っててくれる?私が持ってると、今はちょっと大変だから」
「えっ、でも……」
「あと、ここであったことも、秘密にしてほしいな。……それで、また会ってくれる?」
「………分かりました。それまで、大事に持っておきますので!」
「うん。……ありがとう、ヒフミ」
そうして、私はヒフミを抱えて、空を飛んだ。
……本当に、凄い子だね。
一方その頃。
(ヒフミも届けたし、フェネクスも空に戻したし、今日はもう大丈夫)
「あの、フェネクスさん。頼んだものは……?」
「……お店、潰れてたよ」
「忘れてましたよね?」