仮面ライダーオービット   作:壱肆陸

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原作・イラストをτ素子さんが担当し、文章・構成を壱肆陸が担当させていただきます。企業×仮面ライダー、始めます。


<!-- 主人公 千才新歩 -->

 生命(せいめい、英: life、羅: vita ウィータ)とは一般に生物及び生命体が生きていくための根源的な力。

 

 生物(せいぶつ、英: life、organism、living being、独: Organismus、Lebewesen)は、無生物と区別される属性、つまり「生命」を備えているものの総称。そしてその「生命」とは、生物の本質的属性として生命観によって抽象されるものであり、その定義はなかなか難しいものとなっている。

 

 

「そういった答えは調べようとしたって無駄だよ。抽象というのは、答えを明文化できないが故にそう分類されるんだ。その答えは己で思考し、導くことでしか得られない」

 

 

 凍結した空間の中。体だけが動く粒子の牢獄。

 有と無が躍動を始める。目覚めた。ここはどこで、私は誰だ。

 

 

「目覚めたばかりで考えろというのも冷たいか。よし、少しだけヒントを与える。生命とは知能、本能、或いは身体構造や繁殖能力……定義できずとも確かことが一つ。遥か太古の時代、ソレは『海』から生まれたんだ」

 

 

 海(うみ、英: the sea または the ocean)は、地球上の陸地以外の部分で、海水に満たされたところ。

 

 

「その通り。海とは地球上の大部分を占める領域でありながら、人類はそこに眠る全てを知り得てはいない。資源、新種、英知……地上を貪り尽くした人類が知らない『全て』は、そこにある」

 

 

 未知の領域。未解明のブラックボックス。

 生命を生み出す根源。即ち、『ここ』もまた、『海』と結論を出す。

 

 しかし、私は生命ではない。

 

 

「正解。目は覚めたみたいだな。長く寒い夜が明け、凍り付いた海も溶けた。一ついいことを教えよう。社会性を持つ生命とは、他との関係を形成するため、対面の際にコミュニケーションを取る……つまり挨拶だ」

 

 

挨拶(あいさつ)(仏: salutation)とは、出会う際や別れ際など、特定の際に純粋な礼儀やその他の意図をもって行われる形式的(英: formal)な語句や動作のこと。 あるいは、式典などで儀礼的に述べる辞じをいうこともある。

 

 

「そう。挨拶は『社会』の基本だ」

 

 

 コミュニケーション。挨拶。

 それが『社会』を持つ『生命』の定義。

 

 

#include〈Guff〉

 

main( )

{

printf("Hello, world!!");

}

 

 

 

─Hello,world!!─

 

 

 

__________

 

 

「どうぞお入りください」

 

「失礼します!」

 

 

 ノックを3回。返事が返ってきてから扉を開け、扉と向き合いつつ閉める。誰が決めたか分からないこの不文律を厳格に遵守し、青年は硬い動きで脚を進める。

 

 この社会で生きるために、大多数の人間は必ずこの岐路に立たされる。

 入社面接。それは比喩でもなんでもなく、それ以降の人生を決定する数分間。

 

 緊張しない道理が無い。自身の鼓動が不規則に聞こえながらも、指先に至るまで己の動きに神経を尖らせる。目の前にいる数人の試験官に、自らの価値を証明しなければいけない。全ての基本、挨拶から戦いは始まる。

 

 

「城南大学理工学部の───」

 

 

 

 数か月後

 

 

 アラームが鳴る。とはいえ、この日に向けて体内時計はしっかり調節済みだ。午前6時半。朝食を摂り、身嗜みを整え、モーニングルーティーンをこなす十分な時間を確保できる時刻に彼は目覚めた。

 

 

「ん……おはよう、ノイマン」

 

 

 人類史上最高の頭脳を持つと言われた天才数学者、ジョン・フォン・ノイマン……の名を付けられたサボテン。即ちただの観葉植物に彼は挨拶を済ませる。家族がいないのであればペットやAIロボットを買うべきと何度も言われたものだ。黙って話を聞いてくれるだけの家族も悪くないというのに。

 

 

「えっと、定期券……これじゃない、どこ置いたっけ……あ」

 

 

 余裕を持たせて起きたはずが、朝食の後に気付く紛失物。実家から持って来た荷物をひっくり返し、中学まで見ていたヒーロー番組のフィギュアと目が合う。と、その首に引っかかっている定期入れ。なんでこんなところに置いたのかは全く覚えていない。

 

 

「……やばい、急がないと!」

 

 

 随分と汚れたフィギュアだけを荷物に戻し、身支度を速やかに済ませる。

 

 しかし身だしなみは大事。未だ不慣れなスーツに袖を通し、鏡を見た。

 落ち着いて見ると、やはりパッとしない。学生服の方がまだ似合うと自負しているが、確かに気は引き締まる気がする。「戦闘服」とは単なる服屋の売り文句ではないのだなと実感できる。

 

 外の空気を吸い、最寄りの駅から電車で30分弱。

 アクシデントによる遅れのせいか、車内は驚きの人口密度。準備が甘かったと額を抑える。まぁ新しい生活の洗礼だと思って甘んじて受け入れよう。

 

 

「とはいえ、これが毎日は参るな……でも……!」

 

 

 満員電車から解放されると、頭が自然と上を向いた。

 この、天を突くようなオフィスビルこそが、彼の新しい「人生」にして「未来」そのものなのだから。

 

 

 『(オービック)コーポレーション』

 

 様々なソフトウェアを開発し、画期的かつ利便な機能美に定評がある国内のIT企業。なにより、今や多くの人々の生活の一部となりつつある検索エンジン「Can-View」のサービスを提供していることで有名だったが、今やインターネット関連のサービスのみならず、生命科学、投資キャピタルといったあらゆる分野の事業を展開する複合会社(コングロマリット)である。この超IT時代、この会社は新進気鋭の部類に入るのだが、他を寄せ付けない急成長で世界的に注目の的となっている超大手の企業だ。

 

 当然、そんな企業の就職競争率はまぁ凄まじい。年収も余裕で1000万を飛び越えるため、そんな座っただけで勝ち組が確定すると言っていい「O³コーポレーション社員の椅子」の価値は暴騰を続けている。

 

 

「そんな会社で、まさか僕が働けるなんてなぁ」

 

 

 青年、千才(ちとせ)新歩(あらた)。22歳。

 この春、城南大学理工学部システム情報学科を卒業。競争率の激しいO³コーポレーション就職の座を見事に勝ち取った彼は、遂に配属初日を迎えた。

 

 都市中心部にそびえ立つ本社のビルは、もはや一つのシンボルマーク。見上げる時間が長くなればなるほど信じられなかった。いや、別に自分を卑下しているわけじゃない。彼自身、自分が世間的に『エリート』と呼ばれるキャリアなのは理解している。

 

 だが、そんな22年で培った肩書なんて些末に思えてくるほど、この会社は大きく見えた。インターンで訪れてからこの会社はずっと憧れだったのだ。不安や恐怖以上に、心が震えて仕方がない。

 

 こんな大きな会社で社会貢献ができる。たくさんの人の役に立てる。

 

 そうだ、ここから始まるのだ。千才新歩の人生の本番は!

 

 

「おし、社会人の基本は挨拶! 人間関係第一! 先輩や上司、同期のヤツともうまくやっていくには第一印象が大事!」

 

 

 と気合は入れたが、もう入社式や内定式も新人研修も終わっているので、同期や先輩との顔合わせは大方済んでいる。社長もユニークでいい人そうだった。そこまで大いに心配することはないだろうと、新歩は思っていた。

 

 その精一杯の慢心には、一瞬で雲がかかることとなる。

 

 

「あれ? ここ、だよね……?」

 

 

 配属初日、出勤するようにと指定された場所に着き、新歩は首を捻った。プログラミングが得手な新歩が志望し内定したのは「商品開発部」だったはず。しかし、その部屋に示された部署名は明らかに違う。

 

 

「『ライダー事業部』……!?」

 

「おっ、早いですねー。関心関心」

 

「っ……! お、おはようございます!!」

 

 

 困惑中に声を掛けられたもので驚いてしまったが、なんとか元気のいい挨拶ができた。失礼な反応になっていないようにと願いながら、新歩は顔を上げる。新歩に声を掛けた50代くらいであろう男性は、いかにも「上司」といった出で立ちだった。

 

 

「おはようございます。あー、入社式にいた顔ですねぇ」

 

「今日からここで働かせていただく、千才新歩です!」

 

「うん知ってる、よしじゃあ入って。あ、ボクは古月(ふるつき)です。よろしく」

 

「えっ……と、でもすいません。僕、商品開発部に配属のはずなんですがここは……」

 

「うん、いいからいいから。入りましょっか。ほらほら」

 

 

 強くは断れず、新歩はその「ライダー事業部」なる部屋に押し込められてしまう。中にはまだほとんど物が無く、あるのは最低限の機材と開封前の段ボール。そしてデスクだが、なんか数が少ない。というかそもそもの話だが狭い。

 

 よくわからないまま新歩は適当な椅子に座らせられたが、その直後にまた別の人物が入ってきた。今度はスーツ姿が様になっている若い青年だ。だが温厚な雰囲気の古月とは違い、その眼光はとにかく鋭く、入室と同時に新歩を睨みつける。

 

 

帯刀(おびなた)くん、千才くんの方が早かったですよ?」

 

「すいません少し急用が。なにせ引継ぎでバタついてたんで。それで、なるほど……そいつが千才新歩ですか」

 

「あ、はい! 千才新歩で……」

 

「じゃあ残りはもう一人の新人、先堂(せんどう)ですね」

 

「あーあの子はねぇ。ちゃんと来るように再三言ったんですが、どうだか」

 

 

 勇気を出した挨拶が遮られて心にヒビが入りそうだった。わからないことだらけの毎日を覚悟してきたのだが、この「わからない」は絶対に種類が違う。何よりあの「帯刀」という先輩に目を合わせると睨み返されるので怖い。

 

 そして待つこと30分。始業時間を10分以上オーバーした頃にその人物は入室し、新歩は更に度肝を抜かれた。新入社員というから若い、というより小柄で細く、なんというか毒気の無い顔だ。中性的といえばいいのか、この時世安易に性別を断定できないような容姿をしているがそんなのはどうでもいい。

 

 問題は、遅れて来た上に()()()()()()()()()()()()()()ということだ。マスクに大きめのジャージ。この会社ではある程度服装の融通が利くとはいえ、これは流石にライン越えだろう。

 

 

「先堂くん、一応TPOに沿った服装で出勤するように言ったと思うんですが」

 

「……」

 

 

 無言、そして着席。なんというストロングスタイル。

 あと今気づいたが、新入社員らしいのに見たことない顔だ。さては入社式を欠席したなと推理すると同時に、新歩は激しく頭を抱えた。これが同期かと。

 

 だがいや待て。落ち着け。そう新歩は己を鼓舞する。

 そもそもここは「ライダー事業部」じゃないか。自分は「商品開発部」配属のはずだ。連絡は何かの間違いで、ここは自分の居場所じゃないに違いない。さもなくば、この人たちとうまくやっていく自信は流石に───

 

 

「さて、全員そろったことなので説明しますが、ここは『ライダー事業部』。わが社に新設された部署であり、千才君はサプライズ配属となりました! はい拍手ー」

 

 

 無い。流石に無い。

 社会人初日でこの波乱万丈は流石に無い。

 

 

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