O³コーポレーション ライダー事業部 活動報告
GFアドバンスの五來廉太郎がウェブライダー『ファウスト』となり、ファンガスロギアを撃破。
しかし、ファンガスの本体は別に存在。素性不明の男性の出現と同時に、急速に活性化。
以降、このファンガスロギアを『T型』と呼称。T型は近隣の建造物、機械類、動植物を取り込んで著しく巨大化。
『オービット』とReVTechnicaの『リボルト』により、取り込まれた近隣住民の救出は完遂されたが、救助の優先によりT型の撃破に失敗。
被害範囲は約40平方キロメートル。ロギアによる被害としては観測史上最大規模。
T型は依然成長を続けており、予測される最大被害範囲は未知数。
至急、T型の討伐にあたる。
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災害、という二文字がふと新歩の頭に浮かんだ。
常識外れの巨大ロギアと被害範囲。警察もO³もReVもマスコミに追求され、記者会見の連続。家を失った人たちも大勢いて、この避難所で生活をしてもらっている。
「はいどうぞ、配給です。他にも欲しいものがあれば遠慮なく言ってください」
「どうも。ありがとな、兄ちゃん」
「いえ。ロギアの被害に遭った方のサポートをするのも、僕らの仕事です」
「そうじゃねぇよ。知ってるぜ、あんただろ。俺らをあの怪物から助けてくれたの」
避難所で活動していた新歩に話しかける初老の男性。新歩もはっきりとその顔を覚えていた。
「若ぇのに立派だよ! あんたは俺らの命の恩人、ヒーローだ!」
「……ありがとうございます」
身に余る労いの言葉だ。しかし、その言葉は新歩の心の深い部分をチクリと刺す。
あの時、人命救助を優先してT型は倒さなかった。その判断は正しかったと思うのだが、あの時にT型を倒せていたら彼らが家を失うことは無かったはずだ。
本当に正しかったのかも時折分からなくなる。自分はただ、臆しただけなんじゃないのか。
新歩の記憶にこべり付くのは、巨大すぎる敵に対する根源的な恐怖。そして……
『適応し、抗って見せろ、ウェブライダー』
(あの男は……何なんだ……!?)
デバッガーと名乗った謎の人物。彼が放つ人間大の圧は、あのT型を遥かに凌駕していた。体験したことが無いはずなのに
激務の間を縫い、避難所で被災者に献身するしか思いつかなかった。
その罪悪感と恐怖を払拭できないと分かっていても。
「休めてない顔をしてるな、千才。あんな事をしている暇があるなら寝ろ。俺も人の事は言えないがな」
「帯刀さん。おはようございます……」
避難所から会社に戻った新歩に、帯刀が声を掛けた。バッシングこそ無いものの、未曾有の事態の当事者として新歩同様に帯刀も対応に追われていて、家にも帰れていない。しかし疲労困憊な新歩とは違い、帯刀は普段と変わらない様子で疲れなど無いようだった。
「お前は特に体を張るんだ、何より優先して休め。先堂を見てみろ、仮眠室にアロマとオーディオを持ち込んで悠々と8時間睡眠だ。元気そうだったから買い出しに行かせた」
[夜食はカレーヌードル(チーズ+温玉)しか勝たん]
[朝飯だけど]
先堂の仕事はT型の解析とオービットのメンテナンスなのだが、常人の9時間分の働きを1時間で済ませてその分寝ていた。強いというか、こんな時でも変わらず図太い。
「古月さんも姿を見せないからな……代わりに俺が上の意見を取りまとめて来た。社内会議はそのうちやるだろうがな、その前にライダー事業部の提出案を作る。座れ、作戦会議だ」
カップ麺に湯を入れて待つ3分間。まずは帯刀の口から、現在の状況が説明された。
「T型に侵食された領域は拡大を続けている。領域内部の機器は生きているようだがアクセス不可。権利を奪ったコンピューターを使って、自身の成長を促しているとも考えられる。問題はヤツのウイルスの感染経路がアナログなところだ」
接触や大気から感染し、寄生するコンピューターウイルス。しかも一度は人間を取り込もうとしたことから、人体にも有害なのは確定。リアルとデジタルの世界を繋げるロギアの能力、その極致のような存在だ。そのせいで人員どころか無人機ですら無暗に立ち入れない危険区域となっている。
「領域内を調査したければ、高度なセキュリティが施されたウェブライダーで直接行くしかない。それでも敵は無駄に巨大だからな、摂取した細胞やデータの破片から多少の解析はできてる。先堂」
[T型はコンピューターから直接Guffに繋がっててエネルギーは無尽蔵。そのリソースで地形ギミックもトラップも兵隊も作り放題。中身はゲームのダンジョンみたいになってる]
[攻略情報無しの初見じゃムリゲー]
「と、いうわけだ。この辺りまで解析できている企業はそれなりにいる。今は誰が
「……ちょっと待ってくださいよ。なんで睨み合ってるんですか? 皆で手を組んで戦えばいいじゃないですか?」
新歩は疲れた頭で、頭に浮かんだ疑問を口に出した。
T型は強大だ。あの力と恐怖に立ち向かうには、ウェブライダー全体で協力して立ち向かわなければいけない。新歩は当然のようにそう思っていた。
「睡眠が足りてないみたいだな。そんなことが在り得るはずないだろ」
しかし、社会の現実は甘くは無い。そう思っていたのは新歩だけだった。
「どうしてですか!? あんなの一人じゃ勝てっこない。詩さん……リボルトでも不可能です! そもそも、人類への脅威に対しウェブライダーは無条件で結束するのが大原則、法でもそう定められているはずです!」
[それは直接人命が害されるケースに限る]
[T型の推定侵食範囲の避難と対策は済んでる。T型による人命被害の可能性に、現状緊急性は無いってのが国の意見]
「先堂の方がまだマシだな。いい加減に自覚を持て、企業としてのゴールはそこじゃない。ロギアは特異なものほど希少性の高いデータを得られる。そしてT型の能力、規模はいずれも常識外だ。この意味が分かるか」
[どの企業もT型を倒して手に入るGuffのプログラムと、それが生む利益を狙ってる]
[協力なんかすれば利益を奪われる。だから誰も手を組もうとしない]
「はぁ……!? 街がロギアに飲み込まれたんですよ!? 家を失って帰れない人たちが沢山いるんです! それなのに……そんなこと言ってる場合ですか!?」
「そんなことを言わなければいけない状況なんだ。今のウェブライダー業界はReVですら『強豪』止まり、圧倒的な『王者』が不在でせめぎ合っている。実利も話題も過去最大級。T型の利益を獲った者が
「そんな……っ!」
まだT型による人命被害は出ていない。警察組織ウェブライダー『ファウスト』を得た結果九十九エンタープライズと繋がったため、状況は他の企業と同じで動きが鈍いが、他の行政機関によって、寄生領域の隔離・避難などの領域拡大に対する対策は十分に行われている。
確かに状況だけ見れば、悠長に利益争いを出来てしまう。これが恰好の機会だというのも、頭では理解できる。
「でも、だからって……!」
「だったら自分が最初に、なんて馬鹿なことを言うなよ。そんなことをせずとも、業績が伸びない中小企業がそのうち飛び込んでいく」
余裕の無い新歩の意見は、帯刀にはお見通しだった。それを全て見透かした上で、帯刀は更に残酷な現実を新歩に叩きつけた。
「この戦いは長期戦になる。直に一攫千金を狙った企業が攻め込み、敗れるだろう。そして、その足跡を頼りに次が進軍する。それが繰り返されることで開拓が進み、最後に一人が総取りする。これはそういう戦いだ」
「踏み台に……犠牲にしろってことですか!? 他の会社のウェブライダーを見殺しにして、自分だけ得をしろと!?」
「俺たちは命を預かり、命を賭けて金を得ている。これがウェブライダー業界だ。飲み込めなければ地獄を見るぞ。だから言ったんだ、『感情で仕事をするな』ってな」
帯刀の言葉は冷徹というより、冷静だった。
この混沌な状況だからこそ、揺らがず事実をその目で捉えている。新歩だって馬鹿じゃない。帯刀の意見の正しさは深く理解できてしまう。
それでも、納得はできるはずがない。
あんなに健気に生きようとする市民の方々を蔑ろになんてできない。
例え縁の無い競合他社だとしても、ウェブライダーを見殺しになんてできない。
それは『ギルダー』───藤城壮大を喪った悲劇を繰り返すのと同じだ。
「この際だから言っておくぞ、千才。俺たちの本分は『ヒーロー』じゃない」
帯刀の口から告げられた、新歩の夢の否定。
冷たい現実を前に心は砕け、新歩のデバイスに一通のメールが届いた。
___________
「……ダメ元のつもりだったが、本当に来るとはな。貴方も暇じゃないだろう」
「僕も……話がしたかったんです。五來さん」
新歩にメールを送ったのは五來廉太郎だった。
内容は人目に付かない場所での密会の誘い。彼が警察の資格者からウェブライダーシステムを強奪し『ファウスト』に変身したことや、九十九エンタープライズの傘下に入ったことなど、聞きたいことは山ほどある。
しかし、まずは一つ言っておきたいことがあった。
「藤城さんは……」
「死んだ、Guffの未開拓領域で。功績を焦った結果だ。あいつは俺たちの夢のために、行き過ぎてしまった」
「っ……お悔やみ申し上げます。でも、五來さんが立ち上がってくれて、僕は嬉しかったんです。僕よりも何百倍も辛いはずで、ずっと心配してたから……!」
建前の社交辞令じゃない。それが心からの言葉なのは、伺い探るまでもなかった。
「貴方は相変わらずのお人好しだ。壮大はそんな貴方と共に高め合っていきたいと、そう語っていた。だから今日、俺は───その壮大の意思と、決別するために来た」
気圧された。廉太郎の目を見た途端、新歩の言葉は出る前に掻き消された。
「俺は壮大が遺したGFアドバンスと、アイツの夢を守り抜く。巨大ロギアを倒し、ヤツから『Q-Pay』を取り返し、GFアドバンスの地位を上げる。その全ては俺が成し遂げることだ。誰とも慣れ合うつもりは無い。俺たちの障壁となる存在は全てこの手で打ち倒す」
『Q-Pay』は譲るから市民のために手を組まないかと、新歩は言うつもりだった。
しかし、廉太郎の強い言葉がそれを折る。新歩とは覚悟が違った。きっとそれは帯刀が言っていた、一発逆転を狙ってT型に玉砕するウェブライダーも同じで、藤城壮大もそうだったのだろう。
会社のため、己の野望のために命を賭ける覚悟。
その身には重すぎる責任を背負い、ただ一つの理想以外の全てを捨てた、強固な意志。それは何も知らない若輩者の言葉が揺らせるものではないと、痛感してしまった。
「それはO³コーポレーションや、私たちReVTechnicaへの敵対宣言と取ってもいい?」
そこに新歩と同じく呼び出された詩が、怪訝な表情で現れた。廉太郎のことが気に入らないと、表情で見せつけるように。
「私が『リボルト』だって知ってたのね。わざわざ呼んだってことは、そういうことでしょ」
「会話のサンプルと行動のパターンからReVの該当者は貴女しかいないと早い段階で分かっていた」
「優秀ね。でも気に入らない。エンジニア兼ウェブライダーって私のキャラと被ってる」
そこなんだ、と新歩は少し転びそうになった。詩はいつだってマイペースだ。
しかし、彼女の顔に笑みは無い。
「いい度胸ね、同情で手加減してもらえるとでも思ってる?」
「したければすればいい。俺は遠慮なく刈り取らせてもらう。O³も、ReVも、俺たちの夢を阻む者は全て敵だ」
それ以上の言葉を交わす理由は無いと、廉太郎は去って行った。
新歩は何も言えなかった。俯いて悔しさを噛み殺す新歩に、詩が言葉をかける。
「私も彼と同意見よ。今回はReVTechnicaもO³とは協力できない」
「……っ!」
「私もママから立場を任されてるし、皆の生活を守らなきゃいけない。
もたらされる恩恵を前に、信頼という概念は弱すぎる。会社という国境を越えた信頼は成り立たない。そういうことだ。
「なんか……わかんなくなっちゃったな」
何のために働くのか。何のために、命を賭けたいのか。
未熟な夢が現実に押し流されていく。
__________
その密会の直後のことだった。どこかの名前も知らない企業のウェブライダーが数人、T型の攻略に踏み切った。その結果は、帯刀の予想通りの玉砕。奇跡的に死者は出なかったが、内部のトラップによって重体に陥ったという。
ウェブライダーはロギア討伐の為ならば法律上強い権力を持つ。一度ウェブライダーとして認可されてしまえばロギア討伐に警察等からの許可は必要ない。しかし、それは巨大なロギアが長期間地上を占領するなんてケースを想定していないルールに過ぎない。
結果、取るべき統率が取れない。止めるべきことが止められない。この混乱の中、ルールを変える程の余力なんて誰も持っていないのだから。
「僕らは仕事以外をしちゃいけない……人を信じるのも、人助けも、『ヒーロー』も……! 僕らの仕事じゃない」
死にそうだと思った時は何度もあった。けれど、まただ。藤城が死んだと気付いた時もそうだったように、どうして涙が止められないんだろう。
辛い。顔を上げたくない。それでも前を見なければ進めないから、新歩は顔を上げる。
そこには、泣いている新歩を見て凄く気まずそうにしている先堂がいた。
先堂はメッセージでも何も言わず、黙って後ろ歩きで退室。
「ちょ、ちょっと待って先堂!!」
大慌てで呼び戻した。
[パワハラ?]
「違うよ!? 泣いてたこと黙っててね。変に気を遣わせてしまうのは嫌だし」
一言目から物騒な単語を出した先堂は、持っていたコーヒーをそのまま新歩に渡し、自分はジュースを口に含んだ。彼は仕事以外が不器用だが、意外とこういう所で気が利く。
頼まれたものであろうこのコーヒーが誰のかは、新歩は一旦考えないようにした。
[別に誰にもチクらんけど]
[やめるなら言えよ。一緒にやめるから]
「辞めないよ……うん、辞めない。必要とされてるんだ。オービットは僕がやらなきゃ」
[よくわからん]
[お前がいなくたって何も変わらないだろ]
[でも気持ちは分かる]
[自分のせいで人が死ぬのは嫌だ]
「……そうだね」
命を顧みず、なりふり構わず助けることは「できる」かもしれない。
でもそれは社会人としては失格で、生還したとしても会社に仇を成す行為となる。つまり、どうあろうとその瞬間に『オービット』として新歩は死ぬ。
「言ったっけ。僕は、ヒーローになりたかったって」
[好きなヒーローの話だけで14回は振られた]
「ごめん。でも、ヒーローって何なのか分からなくなっちゃってさ。だって、僕一人じゃ助けられない。僕一人じゃ何も……変えられない」
新歩はデスク上に飾っていたヒーローの人形を力なく握った。
サボテンのノイマンと一緒に、家から仕事場に持ち込んだ私物。新歩の憧れの象徴だ。
「ねぇ先堂。僕は……会社のために、夢を忘れるべきなのかな」
個人には限界がある。ミスもするし弱点もあるし、単純に一人の力などちっぽけにすぎない。それでも覚悟を持って理想を追ったとしても、その先にあるのは『死』だ。
それは壮大がそうなってしまったように。
手段を選ばなかった時、新歩がそうなってしまうように。
新歩はわかっている。わかっているからこそ、そうなってしまいそうな他人を見捨てたくない。それを割り切ってしまった時、新歩があの日抱いた憧れは消えてなくなってしまうから。
それとも全部割り切って、仕事だと理解して、甘い憧れを捨てる。
それこそが『オービット』であるべきなんだろうか。
[なんで?]
[全員助けなきゃいけないヒーローってのも潔癖すぎだけど]
[なりたいならなればいい]
そんな新歩の苦悩を1グラムも理解できないとでも言うように、先堂はメッセージを打ち込んだ。
「……だから、なれないんだ。全部無視して行ったって僕一人じゃ勝てないし、何も変わらない。結局帯刀さんや詩さんの意見が一番救える。でも……今の僕じゃ割り切れないから……! どうしようもないから、変わろうと!」
[お前が言ったんだ]
[変わらなくてもいいんだろ]
新歩は感情任せに思いを叫んだ。
それに対して手元に表示された、抑揚の無い先堂の
先堂を探しに行って、連れ戻した時の言葉だ。
彼の事を知って、変わってほしくないと思ったから言った。社会の中で、彼は彼でいて欲しいと思ったから。
「でも、会社の為に……僕は……!」
[さっきからなに真面目ぶってんだよ]
[あの時のお前はイカれてた]
[頭のおかしいヒーローオタクの癖に]
「えぇ……!?」
先堂の遠慮のなさすぎる評価。もはや誹謗の類である。
だが、ショックを受けると同時に、新歩は腹の奥から何かが込み上げてきたのを感じた。
[人に言われて納得するなよ]
[お前はもっと凄いやつだ]
今度は先堂が、握った拳で新歩の胸を突いた。
その拳が熱を伝えるように、新歩の内側が温度を上げる。自分じゃない誰かがそう言ってくれるだけで、途方もなく嬉しくて、何に悩んでたかすらも忘れられた。
言われれば確かにその通りだ。こんな不自由な社会で、新歩は先堂になんて無責任な事を言ったのだろう。でも、先堂はそんな言葉に応えてくれた。それなのに自分が真っ先に諦めてどうする。
「そうだ……僕だって戦ってやる」
適応できないのなら形振り構わず抗え。
亡き友の意思のために変身し、戦うと宣言した、廉太郎のように。
「───先堂、一つだけ考えがある。頼みたいことがあるんだけど、いけるよね?」
[いける]
[さっきしっかり寝たから]
もう新歩の顔に迷いは無い。
先堂は嬉しそうに、それでもやはり少し嫌そうに、笑って新歩の手を取った。
___________
「あら、夏樹くん。久しぶり」
「三河さん……」
帯刀はO³コーポレーションのデータアナリスト、三河と廊下でばったり遭遇。目に見えて疲れている様子の帯刀を見て、三河はニヤニヤとその顔を眺めていた。
「楽しそうですね……そちらは余程暇なんですか」
「いや、超忙しいわよ。ロギアを調べたりだとか、こないだのファウストの映像解析とか、他社の動向を探ったりだとか。いやもう本当調べたいことだらけで……!」
「情報マニアが……」
「何?」
「いえ何でも」
三河が超優秀なアナリストである理由は、仕事と趣味が完全に一致しているからと言われている。社員や顧客の細かすぎる情報を纏めたファイルを肴に一杯やっているのを見た、という噂が囁かれているくらいだ。酒好きも周知の事実である分、否定しづらいのが本当に困る。
「こっちは先堂どころか千才もいなくなって大騒ぎですよ……! 古月さんもいないから騒いでるのは俺だけですが……!」
「O³の狂犬、帯刀夏樹が部下に振り回されてる~。愉快~」
「先堂は三河さんの部下でもあるんですよ。分かってます!?」
「まぁあの子は天才だし。それに、千才くんが消えた理由には心当たりがあるって顔してるけど」
三河の言葉は帯刀の図星を突いた。それは帯刀が新歩と初めて出会い、オービットの資格者を任せた時から危惧していたことだった。
「……千才は真面目で優しすぎるんですよ。GFの藤城氏の訃報と今回の戦況。いずれ必ずこうなることは分かっていたが、早過ぎた。俺が守ってやるべきだった。このまま壊れてしまうくらいなら、今は……」
「先堂くんはサボり癖こそあるけど責任感はある方よ。無関心でいることをやめた彼は使命を放棄しない。千才くんも同じ。どんなに傷ついても逃げ出す事は絶対しない」
彼女の分析はいつだって正しいし、そんなことは帯刀も知っている。それでも抱えた不安を捨てきれない帯刀の後ろを指し、三河は微笑む。
「帯刀さん!!」
「ほらね」
「……俺が馬鹿みたいじゃないですか」
息を切らした新歩と先堂がそこにいた。そして、新歩は強い声で帯刀に己の心を叩きつける。
「僕は……やっぱり諦めたくない! ファンガスは僕らが獲って、今すぐ街は取り戻す。その上で誰も死なせない! 僕らはヒーローです! このクソみたいな現状は、僕らが動かす!」
「……威勢だけじゃ小石一つ動かないぞ。プランはあるんだろうな」
「あります!!」
そこには先刻までは無かった覚悟があった。
三河は面白そうに目を見開く。殻を破った新人と、己以外に期待の視線を向ける帯刀。彼女も知らなかった、そんな彼らの一面に。
___________
新歩が考えた案を基に、必要なシステムを先堂が構築。2人が急ピッチで考察、検証、演算、改良を重ねて完成した作戦。新歩はその全容を帯刀と三河に提案した。
「───驚いたな」
帯刀はまずそう呟いた。この短時間で作戦を仕上げてきたこともあるが、何よりもこの作戦のコンセプトだ。これまでの新歩からは絶対に出てこなかった発想。
「これをお前が考えたのか、千才」
「はい」
「これが何を意味するか分かってるのか」
「夢も責任も生きてこそでしょう。僕は藤城さんのことを尊敬してました。でも、あんな風に死んで欲しくなかった。これが侮辱で、僕のエゴだとしても、誰にも文句は言わせません」
帯刀は再び作戦に目を通す。筋は通っているし、使うシステムも先堂の能力を考えるとまず間違いなく不備は無い。確かにこの作戦が成功すれば、迅速にロギアを処理しつつ、被害を理論上最小に抑え、なおかつO³コーポレーションの業界での地位を大幅に上げることができる。
正直な話、感服だ。これほどの代案を用意されるとは思わなかった。
しかし『完璧』ではない。これが上に通るかはまた別の話だ。帯刀としてもこの最善と彼らの決意を貫き通したいが、そればかりは何とも言えない。
どうするべきか思い悩む帯刀の手から、作戦の資料が取り上げられた。
「ふむふむ、なるほど。ほぉ~よく出来てますねぇ、流石はウチの期待の新人です」
「古月部長!?」
「古月さん……今までどこで何を……!?」
作戦会議に割って入ったのは、事業部の幽霊部長と化しつつある古月。せめて置物であって欲しいというのは帯刀談である。青筋を浮かべて睨みつける帯刀から目を逸らしつつ、古月は新歩と千堂の方を向く。
「言われるままじゃなく、自分で考えて動く。言ってなかったけどこれウチの理念です。そっちの方が僕が楽できるんで。そう、良く出来ました。2人ともそれでいい」
「あ、ありがとうございます」
「ですが、まだまだ詰めが甘い。三河ちゃん、データアナリスト───O³の司令塔から見て、この作戦の成功率はどんくらい?」
同じく作戦のプレゼンを聞いていた三河に、古月が問いかけた。
データアナリストの仕事は収集・分析だけでなく、開発や営業の戦略の立案も含まれる。その口から語られるのは、未来予知と同等な限りなく正確な数値。
「とびきり甘く見積もっても20%といったところですね。リスクを考えると期待値はもっと低い。これで上を頷かせるのは難しいと思います」
宣告されたのは厳しい現実。渾身の一発だっただけに、新歩は悔しそうに肩を落とす。明らかに不服そうな顔で千堂がメッセージを打ち込もうとするが、その前に古月が声を発した。
「そんなものです。80点狙いで勉強しても60点切って単位落とすでしょ? 求めればその分零すものも大きい」
「……ですが古月さん、俺はこの作戦に賭けるべきだと思います。確かにリスクも大きいがリターンも大きい。やってみる価値は十分にある!」
「帯刀さん……!」
「そのリスクは必要ないものまで求めた結果でしょう。それでは上は納得しない」
「それは……! でも、僕は……!」
「なのでもっと求めるんですよ。使いましょう、『フルウェア』」
古月が不意に出したその単語。帯刀は瞠目し、三河は驚きの余り咳き込む一方で、新歩と千堂は何も理解できていない様子だった。理解できないまま、一拍置いて三河が古月へと詰め寄っていく。
「いやいやいや『フルウェア』はウチの虎の子ですよ!? そもそもまだ未完成ですし、ここでそのカードを切るのは流石に……」
「理論段階のままいつまで温めておく気ですか。先堂くん帰って来たしやれるの分かってるでしょ? これが上手く行けば総取りどころじゃない、損失なんて余裕で踏み倒せます。いいですか2人とも、100点を目指すのなら目指すべきは100点じゃない。常に100点を取れるのは500点を取る人間だけです」
100%を求めて20%なら、500%を求めればいい。
あまりにも単純で、安直。そしてあまりにも過酷。求めるものが大きいということは、当然それだけ負担と労力を強いる。
古月が目で問いかける、『どうするか』と。
帯刀も同じく目で示し、千堂は苦い顔で頷いた。だから新歩は、ハッキリと声で答える。
「やります!」
「よろしい。ではこの案、手直しして僕が提出します。上には僕が
その時、音が聞こえた気がした。
新歩が動き、それが何かと噛み合った音。その余りにも微かな音が、戦いの始まりを告げた。
__________
その日、O³コーポレーションが緊急の記者会見を開いた。
世間を騒がせている巨大ロギア(T型)。ウェブライダーを擁する企業達がそろそろ動き出すと囁かれていた正にその時、O³がすぐにT型討伐に踏み出すという声明を出したのだ。
作戦の詳細は伏せられていたが、そこでO³は「確実にT型を倒す算段がある」と断言したのだ。O³ほどの大企業が焦ってこの件に飛びつく理由はないのに、わざわざ強い言葉で宣言した。その発言の途轍もない重さが、説得力となって世間へと降り注いだ。
O³という大企業が動くことで市民たちが安堵する一方、黙っていられないのはT型を狙っていた他企業だ。玉砕覚悟だった企業、様子見に回っていた企業、それらは一様に余裕を失うことになった。
そして、O³コーポレーションが宣言した作戦実行の当日。
『どういうつもり?』
「狙い通り皆が動き出しました。来てますよね、詩さんも」
詩が強引に交換した連絡先。電話越しに詩が新歩に問う。今まで彼女が新歩に向けていた声とは違う、明らかに警戒を含んだ声色だった。それに対し新歩は淡々と、しかし芯の通った言葉で返す。
「僕らは仲間じゃない。僕らはヒーローじゃない。それが社会の構造で、それが正しいのだとしても、僕たちが動かします。僕は僕の実現を諦めません」
電話が切れた。新歩の目の前の風景を支配するのは、街のトレードマークだった高層ビルの隣で聳えるキノコ型の巨城。菌糸の毒に侵された街の周囲に、ウェブライダーたちが集う。
「予測外だぜ。何が出来るってんだ? もっと俺の知らねぇことを教えてくれ」
蟻でも眺めるように、デバッガーが城の上から群がるウェブライダーを見下ろす。
誰かが中央に向けて走り出した。その流れが伝播していき、『T型争奪戦』が始まった。
__________
株式会社アオネ交通。会社そのものは大手と言えるほどではないが、グループの運営会社からウェブライダーシステムとGuff産の配車アプリ『One's Wheel』を任されており、一時はそれなりに有名になった会社だ。
ただ、その勢いは長く続かなかった。他のGuff産アプリに比べても業績は平均程度をキープ。このGuff産業で『平均の維持』は『沈没』と同義だ。ウェブライダー会社としては更に厳しく、フットワークで勝っても戦闘力が今一つで成果は上げられなかった。
「もうこれに賭けるしかない、ってか……」
ウェブライダー『ブルース』ホイールウェア
所属:『株式会社アオネ交通』
変身者:タクシードライバー
業績が悪くても運営会社はアオネ交通を見捨てるようなことはしない。成果を急かすようなこともされなかった。ただ自分たちが停滞の沼にいると自覚しているからこそ、行部たちはその寛大さに意味を強いてしまった。
社員の誰かは、ウェブライダーシステムという恩義に報いれない自身の情けなさを嘆いた。また誰かは、アオネ交通はとっくに見捨てられたのではないかと言い出した。どうせ何も言われないのならと、怠惰に逃げようとする社員もいた。会社が中から腐り始めたのを、皆が感じていた。
そんな中に発生した巨大ロギア。不謹慎だが、会社の誰もがこれしかないと思った。ここで目に見える功績を上げれば、会社はまた一つになれるはずだ。そして、現場で命を張る行部が真っ先にそれを声に出した。
「こんなこと、若い子にはさせられないからね。もう一回だけでいいんだ。俺がどうなっても、もう一回会社を盛り上げれたら……そうしたら……!」
もうアオネ交通で働いて20年。社長や会社には一生かけても返せない恩がある。
覚悟を胸に、ブルースは汚染街の中心に急ぐ。街の中には進化系のロギアがうろついていて、自分と同じ覚悟を持ったウェブライダーたちが戦っている。
進めば進むほど敵の数は増え、ウイルスや罠が苛烈になっていく。
20年間、行部は車を走らせ続けた。しかし、どんな目的地よりも、あのT型の本体が遠く感じる。どれだけ命を削ろうとも辿り着けないと思ってしまうほどに。
それでも、分かっていても、諦められない。命を賭けて会社のために───
「……なんだ? 誰か、走ってる……?」
その時、空を駆けるようなエンジン音が、戦う者たちの耳に鳴り響いた。
「───帯刀さん! マッピングは!」
『ドローンは全部やられたが解析は終わってる! 所定のポイントにマーカーも直接打ち込んだ! あと1分で先堂が仕上げる!』
「了解です! 仮面ライダーオービット、出ます!」
周囲のコピーファンガスを蹴散らし、バイクと共に降り立ったのは『オービット』。
この争奪戦の中心にいる、O³コーポレーションのウェブライダー。その登場は彼らの焦燥と競争心を一層高める。オービットよりも早く、オービットよりも先へ、そんな流れにブルースも身を投じようとした瞬間、
そのゴーグルに映る視界に一通のメールが表示された。
「『オービット』から、メール……!?」
『件名:巨大ロギア掃討の件について
この場にお集まりのウェブライダーの皆様
初めてご連絡いたします。
ウェブライダー『オービット』の装着者を担当しております。O³コーポレーション ライダー事業部の千才新歩と申します。
戦闘中のご連絡となり申し訳ございません。
この度は皆様と共同のロギア討伐となりましたこと、心から光栄に思います。』
「喧嘩を売っているのか?」が素直な感想。冷静な感想としては「意味が分からない」だ。周囲を見るに、自分以外のウェブライダーにもこのメールは一斉送信されているらしい。
『つきましては、皆様のロギア討伐の一助となりますよう、弊社で解析したロギア内の地図を共有させていただきたく、連絡をいたしました』
「はぁ!?」
ブルースの視界にO³コーポレーションの『Geo Senter』のマップが表示された。ロギア内の地形、罠や敵の位置、そして何より驚いたのは『ロギア内に点在するアプリギア』の位置が表示されていたのだ。
『進化系のロギアの肉体や能力は、アプリギア丸々一つのデータで構築されてる。それがロギアの骨なんだとしたら、T型のあの広大な肉体はQ-Pay一つじゃ成り立たないんじゃないかな』
それが新歩が最初に思いついた仮説で、その後の先堂の解析によりこれは正しいことが証明された。T型は膨大なGuffのデータと、複数のアプリギアの集合体だ。
そして、それらのアプリギアは中小企業にとっては垂涎もののお宝である。
その情報が送られて彼らは気付くのだ。あの遠すぎる城を目指さずとも、ここら一帯そのものが金鉱脈であるということに。
『なお、この地図は未完成であり、より正確な地図は皆さまのご協力によって完成します。
ご協力に同意いただければ、皆さまのサイファイデバイスに探知プログラムを転送し、より詳細な解析を開始します。更新された地図はご協力いただける方のみに公開されます。また、探知プログラムの位置情報も共有されますので、協力者同士で争う心配もございません。
何卒ご検討くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。
O³コーポレーション
ライダー事業部 千才新歩』
ウェブライダーたちが足を止める。
意図が全く分からない。こんな有益すぎる情報をわざわざばら撒く理由は? こんなリスクを負う理由は? そもそもロギアの解析どころかマッピング? 他社の規格に対応した探知プログラムの転送? 大体、どうやってこの場にいるウェブライダーを把握したんだ?
その答えの大半は、O³のマンパワーと技術力によるもの。
改良した『Geo Senter』と帯刀が率いる調査隊で安全圏から広範囲のマッピングを行い、今回の戦闘に参加する企業をアナリストたちが予測し、それらに対応した探知プログラムをプログラマーが構築する。
そこにあるのは、想像もつかないほどの企業としての地力の違い。
「っ……でも、俺は……もう一度会社を……!」
遠くに見えていたはずの目的地が、もう見えなくなっていた。
ゴールがT型本体なのは確かめるまでもない。ただ、それを手に入れるのに、O³と戦わなければいけないという事実が重く圧し掛かる。それだけではなく、彼の心を折ったのは「周囲にあるアプリギア」の位置情報だった。
わざわざ競い合わなくていい。これ以上先に進まなくていい。
死ななくても、会社に利益を持ち帰れる。それが天下への切符じゃないとしても。
「社長、俺は……」
ここに来る前、社長は心配そうにこう言って行部を送り出した。
「気持ちは嬉しい。でも、無理はしないでくれ」。その言葉が今になって───
視界のマップに次々とウェブライダーの位置情報が追加されていく。
ウェブライダー『ブルース』は、目的地に背を向けて走り出した。
__________
他のウェブライダーが足を止めている間にも、オービットのバイクは中心を目指す。
これが新歩が考案した作戦だった。T型無血攻略には大規模な連携が不可欠だが、下手に出ても誰も協力してくれない。それなら強制的に協力させるのみ。
千載一遇の好機にのぼせ、死をも恐れないと思い上がった者たちに現実を叩きつける。同時に、わざわざ身を滅ぼすまでもない、身の丈にあった功績を提供する。そうして出来上がるのは、新歩と目的を同じにしながら競合しない理想的な協力者たち。
傲慢だ。他人の覚悟を一切尊重しない残酷なエゴの押し付け。
それでも新歩は生きて欲しかった。死に場所なんて言い訳で消えて欲しくなかった。上を目指すのなら、己を犠牲にしない努力に気付いてほしかった。
その理想を実現するために、新歩は「動かした」のだ。新歩から千堂へ、帯刀へ。そして連動は三河に、古月に伝わり、O³コーポレーションそのものに届き、そして今ウェブライダー業界を動かしてみせた。それはまるで『歯車』のように。
ただし、この作戦で動かせない歯車がある。
「お人好しね、何処まで行っても。それともエゴイストって言った方がいいかしら?」
詩───リボルトもまた、ここまでの道のりを踏破してオービットに並び立った。ReVTechnicaは企業のレベルとしてO³コーポレーションに匹敵する存在だ。敵対関係にある今、リボルトは新歩の策では動いてくれない最大の障壁となっている。
「アナタの策は見事よ。巨大なロギアも一個の生命体、身体の各部を満遍なく攻撃すれば弱体化するし防衛機構も薄くなる。アプリギアを摘出すればその分だけ肉体も崩壊するでしょうね。同時多発ってのも極めて効果的。でもよかったの? アプリギアを他所の会社に譲って」
「そこは必要経費ってことで納得してもらいました。どの道全部独り占めなんて無理ですし」
「私に言わせればこっちの方が非現実的よ。仲間でもない他人に、運命を委ねるなんて」
「皆さん僕よりずっと長く社会で生きてる。だから信じたんです。この土壇場で、きっと皆さんは冷静になってくれるって」
「そう。でも、見立てが2点甘いわ。まず、アナタの計算には『正気が欠けた人間』が入ってない」
突如、オービットとリボルトの後方で起こる爆発。誰かがT型の罠を踏み抜いたのは分かった。ただ、そんなもので微塵も足を止めず、その爆煙を堂々と割いて現れたのは───五來廉太郎、ウェブライダー『ファウスト』。
「……五來さん」
「さっきのが施しのつもりなら、拍子抜けだ。舐めるなよ。この先にいる
そこにあるのは利害を思考の外に捨て置いた、激しい執念。
ファウストの後ろに続くのは、ファウストやギルダーに似た色彩と複眼のロゴの無い多数のウェブライダーたち。胸には菊の文様があり、新歩がそれを見て警察を想起する。
その想像通り、彼らは警察に配備された量産型サイファイナックルウォッチで変身した『九十九トルーパー』。現状はまだ仮の部隊で小規模ではあるが、ファウストの指示で動く優秀な兵隊である。
「意外ね、警察が動くなんて」
「指揮権は俺にある。言ったはずだ、俺はこの手で俺たちの夢を阻む者を打ち倒すと」
「それで、どうする気? アラタ」
オービット、リボルト、ファウスト。三者の目の前には大小入り混じった無数のコピーファンガスに、複雑な地形。いくら協力者が得られたと言っても、T型攻略はここからが本番なのは明白だった。
「2点目よ。ここからゴールまでの
それが新歩の策においての一番の不安要素だった。思惑通りに行った場合、こうなることは予測できていたのだが、新歩の知見ではその予測に対する回答を出せなかった。それだけ『リボルト』と『ファウスト』は強大な存在だった。
ロギアも同じだ。世界は止まらず回り続け、社会はいつも同じ事実を突きつける。
『現実は新歩の成長を待ってくれない』。
人はすぐには成長しないけど、『オービット』は違う。
新歩はその可能性に気付いていた。
新歩の意思から歯車が噛み合い、その期待は結実した。オービットは右手を開き、その手の内にある『鍵』を曝け出す。
「それが僕の───僕たちの仕事です」
それは、帯刀から受け渡された白い『Dr.SMART』のギア。
オービットは斜めにドライバーに収まったサイファイデバイスを横に倒し、『Dr.SMART』をその中心『セントラルギア』に嚙み合わせるように装填。これにより、サイファイドライバーで今、『Can-View』と『セントラルギア』と『Dr.SMART』の3つが連結した。
その光景を見たリボルトとファウストが瞠目する。
技術者である2人は理解している。今からオービットに何が起こるのかを。それが一体、何を意味するのかを。
オービットが再びサイファイデバイスを斜めに倒し、変身機構が完全に噛み合った。
実現する
《Circuit-Open! Trace-On!》
《ORBIT!》
《Can-View!》
《Dr.SMART!》
『Can-View』の右半身のみの青い装甲を補完するように、ダイバーフォームの素体のままだった左半身に生成される、白のアーマー。
青と白がオービットの全身を網羅する。
今ここに実現するのは、オービットの『理論値』にして『完成形』。
《
《
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「『フルウェア』───!?」
『Guffのデータは相互干渉する』、これは大原則である。その原理からGuff内部ではアプリギアを使えない。しかし一方で、ロギアはアプリギアを体内に取り込めるという事例が示すように、破壊し合わないアプリギアの併用可能性が仮説として論じられてきた。
しかし、実際にアプリギアの併用が招くのはデータの損傷と使用者への多大な負担。ガジェットを介するならまだしも、それを実現した報告は無かった。まさに今、この瞬間まで。
「すいません詩さん。
検索エンジンアプリ『Can-View』×OS最適化アプリ『Dr.SMART』
仮面ライダーオービット キャンビュードクターウェア
オービットの左半身、『Dr.SMART』のライドギアーマーが起動し、エクステンストライカーとリンクする。危機を察知したファウストが走り出し、リボルトがホバーボード『リボルボーダレイザー』に乗って速度を上げた。
しかし、新たな時代に生まれた革新は、あらゆる既存を追い越していく。
「速っ───」
いくら速度を上げてもオービットに追い付けない。陸上選手がフォームの修正で劇的にタイムを縮めるように、今のオービットは溢れる動力を完全に制御下に置き、最小のエネルギーで最大のパフォーマンスを出力し、最短の走行ルートを駆け抜ける。
リボルトは思わず感嘆し、足を止めて見惚れてしまった。
洗練され尽くした、これ以上が存在しない数値。
そこにあったのは何よりも美しい『理論』の形だ。
「目的達成率71%、次のフェーズに移行」
新歩の頭は澄んでいた。『Can-View』だけの時とは比べ物にならないほど、的確に動ける。見えるもの全てが理解できる。
左右の壁面から新たな非人型の小コピーファンガス7体が出現し、新種のウイルスを持った胞子をばら撒いた。オービットは0.2秒で再計算を完了させ、損傷したプログラムを復元しセキュリティをアップデートし、右腕の棍棒装備『ブラウザーシャフト』に0.05秒間展開した電子刃で敵を切り裂いた。それを7回。
思った時には既に、思った以上の結果が実現している。
これが『フルウェア』。O³コーポレーションの技術の結晶。
「───解析完了。見つけた!」
協力に同意したウェブライダー達から送られてくるデータから、オービットは戦闘と並行してT型の全容の解析を進めていた。そして、遂に目標を発見・分析したオービットは1秒間の思案の後、来た道を引き返した。
「五來さん」
「……っ!? どういう事だ。何のつもりだ……! 何故戻って来た!」
ファウストはその兵力を活用し、リボルトよりもT型の深部にまで進んでいた。目指すのは当然中央の本体。オービットを追い越すことを全く諦めていないのは、その執念に満ちた声で分かる。
だから新歩も余計な言い訳はしない。オービットは端的に、あるデータをファウストへと送信した。
「これは……ふざけるなよ。俺を蔑んでいるのか!? この反応は、『Q-Pay』だ……!」
「はい。『Q-Pay』は本体とは別の場所にありました。僕は真っ直ぐ本体に向かいます。『Q-Pay』をどうするかは、五來さんが決めてください」
廉太郎が『Q-Pay』の反応を見間違えるはずもない。そしてオービットの言う通り、彼が中心に向かってファウストが『Q-Pay』に向かえば、確実にファウストの方が先に目的地に着く距離にある。
「馬鹿にするな……! 言っただろう、俺が仇を取る! 俺が『Q-Pay』を取り戻す! 俺がこのロギアを独占し、再び俺たちの夢を───GFアドバンスを……! 全ては俺が成し遂げることだ! 強者の憐れみのつもりか!」
「違います、これは『提案』です! 解析の結果、T型と『Q-Pay』は既に切り離されていました。今ここで『Q-Pay』だけを取ってもT型は倒せず、心臓部を失ったT型は逃走します。『本体』と『Q-Pay』を同時に攻めるしかないんです! そして今、『Q-Pay』を任せられるのは五來さんしかいません!」
壮大が信頼した新歩はここで嘘をつくような男ではない。
この話を無視して本体を撃破できたとしても、本体と切り離されているのならその余波で『Q-Pay』が消滅する可能性が高い。それだけは阻止しなくてはならない。しかし、『Q-Pay』を取りに行けばこの先にいるはずの
諦めを強いられている事実に怒りが込み上げる。
調整も戦闘の練度も不十分な『ファウスト』に、未完成な九十九トルーパー部隊。夢を叶えるにはまだ力が足りていないという事だ。今は負けを認め、焼けるような悔しさを胸に刻みつけろ。
「……総員、『Q-Pay』の確保に向かう!」
「頼みます!」
「言われるまでも無い……!」
オービットは再び本体に向けて走り出した。
中心に近付くにつれて道のりは険しくなっていく。しかし、各地でウェブライダーたちがアプリギアの摘出に成功しているようで、全体的にT型の攻撃の勢いが落ちている。地形も維持できないようになり道も単調になりつつあった。
オービットはルートの再計算を完了させ、更にもう一段加速。
そしてオービットはエンジンを止め、バイクから降りて地に足を付けた。この領域の中心部───塔の如く聳え立つT型の『本体』の麓へと到達したのだ。
『Dr.SMART』は内部データや装甲を消費することで、『処置』に必要な器具を簡易的ではあるが生成できる。
オービットは左腕の装甲からボール大の弾丸を生成し、本体目掛けて蹴り入れた。しかし、T型本体は沈黙で無傷を語る。最大の問題は、このどこをどう倒せばいいか分からない圧倒的な巨体だ。
「出会い頭かよ。酷ぇことしやがる」
喉の浅い部分で笑うような、低い声色の落ち着いた軽口。壮年期の男性のようだが、どこか無邪気とも言える若々しい言動。人間に限りなく近くありながら、隔たれている、存在単位の『不気味の谷』。
Guffの住人、『デバッガー』はやはり最奥でウェブライダーを待ち構えていた。
「お早う。お前が一番乗りだ、何か感想はあるか?」
「お前はロギアなのか?」
「例えば、お前らが俺を人間と呼ぶのなら、『そう』であるように。パラドックスさ。物は見ようってやつだよ。俺も俺で興味津々なんだ、俺が何なのか、お前らが何なのか」
オービットの態度は落ち着いていた。デバッガーが記憶している限りでは、先日顔を合わせた時には酷く恐怖と動揺を顕わにしていたはずなのだが。それが気になりながらも、デバッガーは会話を進める。
「俺ぁ、こうなるとは思ってなかった。もっと犠牲が出る泥沼を作ったつもりだったんだぜ? その間にコイツの根はGuffの『樹』と接続し、戦争を仕掛けられたっていうのによ」
楽しげに語るデバッガーに、新歩の背筋が凍る。
Guffの住人である彼は、人間に明確な敵対意識を持っている。目的は人間世界の侵略なのか? 人類がGuffから資源を発掘し、己の発展に利用したように。
「お前だろ、これをやったのは。人類の種を守るために外敵を排除すんのは分かるぜ。でもどうして野次馬の雑魚を守るような、面倒なやり方してやがったんだ? おかしいぜお前」
「……僕が彼らを守ることの、何がおかしいんだ」
「群れを守る、子孫を残す、生命にはそういう使命ってもんがあるだろ。役に立たない雑魚を守って何になる? アイツらが生きてることに意味があるのか? なんでアイツらは生きたがって足を止めたんだ?」
これまでの廉太郎の様子から察しは付く。
このデバッガーという存在が、そうやって何も理解しないまま、壮大を殺したのだろう。
T型に埋まっていた『加工済みの状態のアプリギア』が、彼が殺したウェブライダーの数を示唆している。
思考を介さない怒りが、新歩の全身を軋ませるのを感じた。
だが新歩は叫ばない。
オービットがずっと平静を貫く理由に、デバッガーも気付いた。彼は最初からデバッガーを見ていない。その視線が見据えていたのは、常にデバッガーの後ろ。
T型の体の各部が、ぼんやりと輝き始めた。
「デバッガー、今はお前の事はどうだっていい。でも知らないなら教えてやる。『生きるために生きれる』のが人間だ。生そのものに意味を見出せるのが僕たちだ。だから僕は、理由無く命を助ける! その先にあるのが、望んだ未来だと信じて!」
「話せてよかったぜ。準備ができたらまた会おうや」
オービットがデバッガーの横を通り過ぎ、T型本体に向けて駆け出した。
それと同時刻。オービットが送信した位置情報にファウストが到着する。T型は自身の心臓を守ろうと、菌糸の腕から放つ光線と爆裂する胞子で抵抗。
だが、ファウストは『プロテクション365』の機能で自身及び九十九トルーパーの周囲に防壁を展開しており、ダメージは皆無。各員に指示を出すことで四方八方の触腕やコピーファンガスを排除し、展開した光の盾を刃のように扱うことでT型の肉体を掘り進んでいく。
最後に現れた堅牢な肉壁を、九十九トルーパーの一斉射撃と分割した盾での斬撃で正確に裁断。その奥には、失われた『Q-Pay』のアプリギアが原型を留めたまま眠っていた。
「壮大……!」
T型の最後の抵抗を単身で突き破り、ファウストはその手に『Q-Pay』を掴んだ。
大地が───T型の肉体が揺れ、電子の轟音で絶叫する。
そして視点はオービットへと戻る。本体を眼前にして、『Q-Pay』を失ったT型の暴走が始まった。無秩序にコピーファンガスを産み落とし、『ファンガスエリア』全体が不定形に変化する。予測通りの逃走、その前兆だ。
ただ、T型は逃げる前に、失ったアプリギアやエネルギーの補填を行うつもりのようだ。残った力をヤケクソに消費し、各地のウェブライダーを襲いだしているのが送られた映像から確認できる。
「無駄だ。絶対に誰も死なせない! それが僕の実現する、『オービット』だ!」
本体から伸びる糸のような無数の触腕が、それぞれ極細のレーザーを発射し緻密な包囲網を作り上げる。産み落とされるコピーファンガスは即座に爆発し、衝撃波と共に新種のウイルスを撒き散らす。死を目前にした生命の、凶悪極まる足掻き。
オービットはそれらを最短・最小の動作で回避し続け、T型の体を猛速で駆け上がっていく。苛烈な攻撃に一部の被弾を強いられるが、アーマーの破損部分は『Dr.SMART』が即座に補修。足は止めない。速度も緩めない。頂点に達し、オービットは全力で跳躍した。
「ハロー、Can-View。映像検索」
上空から一望する『ファンガスエリア』の全貌と、本体の全体像。本体の体に点在する『光』と、変位する身体の奥から晒された、その身体に刻印された『No.16』の文字。
(数字……?)
その意味は分からない。ただ、その数字に重なる最後の『光』を確認し、解析は終了した。
ロギアには破壊することで絶命に至る『核』が存在する。進化系の場合、その『核』は複数に分裂し、各部に散らばる。
「初めての仕事の時、帯刀さんが発見した事実だ。どんなに敵が大きくても、この方法なら倒せる!」
オービットが本体到達と同時に撃ち込んだ弾丸。あれはバットロギアとの戦闘時、帯刀が行った『診断』と同じだ。ロギアの体内に消化された弾は『核』と反応し、発光させて可視化させる。
バットロギアの時は『核』を全て破壊しても倒せず、大ダメージに留まった。だが今のT型は肉体を構成するアプリギアの大半と『Q-Pay』を失っている。シミュレーションの結果、この状態で『核』を全て破壊すれば99.68%でT型は消滅する。
体を駆け登っている間の観測と、上空からの映像検索により、全38個の『核』を確認。
《Circuit-Full-Open!》
《Can-View!》《Dr.SMART!》
「ハロー、Dr.SMART。『容量解放』『キャッシュ全消費』」
3つの歯車が再び廻転し、光を放つ。
ここまでの戦闘でオービットが検索・解析・保存した膨大なデータ。『Dr.SMART』によって、そのデータキャッシュは圧縮され動力へと変換される。そして、データを消費したことで処理は更に高速化され、全てのリソースが一つのシステムへと集約する。
要は簡単な話だ。ヒーローの必殺技はこうと決まってる。
『全身全霊の全力を、この一撃に込めて』。
T型本体のすぐ隣、この街のトレードマークの高層ビル。空中から飛び移ってその壁を蹴り、オービットは『核』目掛けて飛躍した。
敵が抵抗するよりも早く。
敵が『核』の位置をズラすよりも速く。
敵がその狙いに気付くよりも疾く。
弾丸のような蹴りが一つの『核』を砕くと、オービットは速度を緩めず次の『核』を斬り裂く。その間実に1秒未満。そして次へ、その次へと、精査され尽くした一分の無駄も無い動作で破壊を紡ぐ。
それは理論値最短の星座を描く、蹴撃と斬撃の躍動。
青と白が交錯する
《IGNITION-OVERDRIVE》
その光景は戦場にいた全ての者の記憶に焼き付き、この事実を知らしめた。
史上最大のロギアとウェブライダーの利益競争。それを制覇したのは、O³コーポレーションであると。
38個の『核』は正確に、ほぼ同時に破壊され、ファンガスロギアT型は蒸発するように完全消滅した。
_____________
「いやあ、お疲れ様でした。取ってくれましたね、100点。もう300点くらいは上げちゃってもいい成果かなぁこれは」
「古月さん何もしてないですよ。夏樹くんも。そんなことより飲み行きましょ! 打ち上げいつにします?」
「古月さん、三河さん、今から対応続きなんで仕事してもらえますか? あと俺は現場でウェブライダーに混じってデータ収集と協力者へのサポートしてました。ちゃんと社長に報告してくださいね、出世に関わるんで」
T型をO³コーポレーションが撃破したニュースは、現場にいたマスコミによって瞬く間に世間を駆け抜けた。新歩の作戦は周囲を大きく巻き込んだものだったというのもあり、帯刀は休む間もなく後始末である。
しかし、今回の一件での死者はゼロ。さらに爆発が起こらない撃破法を取ったことで、街もほとんど無傷で戻り、しばらくの洗浄作業を終えれば住民も帰れる見込みだという。
「先堂は作戦中ほぼ暇そうにしていたので
「流石ですねぇ。今回の作戦は、先堂くんという才能が無ければまず成り立たないものでした。彼は今後も我が社の切り札として活躍してくれるでしょう。そして、千才くん。彼は本当によく乗り越えてくれました」
古月も帯刀と同じように、新歩がいずれぶつかる課題に気付いていたようだ。彼はいい加減な人間に見えるが、今回の戦略眼やあの無茶な作戦を採用まで通した手腕など、その力は付き合いの長い帯刀から見ても得体が知れない。
「彼は優秀です。1を聞けば10理解できる。だからこそ、理解し過ぎてしまうのが心配でした」
ウェブライダー業界の現実を前に、新歩は適応することもできたはずだ。そうすれば彼はその後も自己を抑え、求められた通りの成果を出し続けただろう。しかし、彼はその未来に抗い、人との連動を以て僅かながら社会という現実を変えて見せたのだ。
「本当によかった。10理解して10出力する機械は使い物になりません。僕が欲しいのは、10理解して100を実現する逸材です」
彼にはどこまで見えていたのだろうか。軽薄に笑う古月が、帯刀には少しだけ恐ろしく見えた。
しかし、今は一先ず新歩が勝ち取ったモノを讃えよう。
「お前に賭けてよかったよ、千才」
避難所から送られてきた感謝のメールと、戦いで疲れ果てて眠る新歩を見て、帯刀は笑って呟いた。
___________
オービットがT型を倒したという報せは、当然『彼』のもとにも届く。『彼』は椅子に座ったまま、その報告を味わうように目を閉じる。
「『成功』……実に、イイ響きだ。彼はしっかりとGuffを乗りこなしているんだね」
細身のオーダースーツとブランド物の革靴は、全身で自身の格式を誇示しているようで、ソックスだけは素っ頓狂なデザイン。そんな計算されたような人間臭さは、ある者には愛嬌と見られ、ある者には畏れとして見られる要素だ。
「あぁ、彼はどんな風に戦場を駆けたのだろう。その思考回路でどんな図を描いたのだろう。古月からの詳しい報告が待ち遠しいよ。全く……本当に、期待しかない───ボクの『
O³コーポレーション
彼は社長の椅子から、新歩が歩む未来に思いを馳せる。
同刻、データ解析を行っていた先堂の手が止まる。
『それ』はバットロギアとカメレオンロギアのデータにも存在した。だが、今までは意味があるようなものには見えなかった。そうやって見逃されるように偽装されていたのだ。それが今、『Q-Pay』を強引に引き剥がした影響かセキュリティごと分解され、表に現れた。
巧妙かつ奥深くに隠され、閉ざされ、偽装され、並の技術ではまず辿り着けない領域に『それ』は眠っていた。
(解読不可のプログラム、『No.16』……?)
オービットの戦闘映像に残されていた、T型の肉体に刻まれた『数字』と一致する名前。
デバッガーによって現世に落とされた『鍵』。
物語は、Guffの深淵を覗く。
File-11 仮面ライダーオービット キャンビュードクターウェア
【挿絵表示】
仮面ライダーオービットが検索エンジンアプリ「Can-View」とOS最適化ツールアプリ「Dr.SMART」を同時使用したフルウェア形態。右半身の「Can-View」のライドアプリギアーマーによる検索・分析能力を、左半身の「Dr.SMART」のライドアプリギアーマーが持つアプリ性能向上機能で拡張しており、膨大・複雑なデータの解析が可能。また、検索能力の使用でアプリギアに蓄積した不要なデータキャッシュを可処分データとして圧縮・消費することで、一時的ながら戦闘能力の爆発的な上昇を実現する。
File-12 仮面ライダーブルース ホイールウェア
【挿絵表示】
「サイファイナックルウォッチ」で変身するウェブライダー。変身者は株式会社アオネ交通タクシードライバー 行部幸平。配車アプリ「One's Wheel」のアプリギアから生成されたライドアプリギアーマーを纏い、高い走力と優れたエネルギー効率でロギア発生現場にいち早く駆け付け、戦闘を行う。また、複数召喚が可能なサポート車両「ワンズキャブ」は、味方や市民を乗せて目的地まで自動走行を行う。