いつも通りの退屈な日だった。
歩いて半日で1周できるような小さな孤島の森の中。
それなりに広く流れの緩やかな川を覗きこんで魚を眺めていた。
そんな時だ。
変な音がして、雲一つ無い晴天を見上げてみると鉄の鳥が燃えながらこちらの方へ近づいてくる。
その鳥は私の上を通り過ぎて遠くの方に、けれどあれだけの惨事が起きたにしては近すぎる場所へと落ちて動かなくなったのだろう。
あの巨体が動いているだろう音が聞き取れない。
私は今の鳥が何なのか知っている。
アレは機械族で人間を運ぶ契約を交わし共存する事を選んだ変わりモノ共だ。
あいつらは毎日毎日忙しなく空飛んで大勢の人間を運んでいるのだと沢山のヘカ……今風に言うとデュエルエナジーって言うんだったかな?
最後に黒い顔の奴にあった時そんな事を言っていたような気がする。
そんなわけで今落ちた奴から感じた沢山のヘカからそれなりの人間がいたとわかる。
弱いくせに馬鹿みたいに働いてるからそういう事になるんだ。
何故そう生き急ぐんだ?
しかしここ数十年……数百年経ったか?
いずれにせよここのところヘカといったら魔法都市から頂く分くらいで新鮮なモノは口にしてないな。
良い機会だ、久々に新鮮な肉と純度の高いヘカを頂けるかもしれない。
私の世界たる花園や深淵の谷間は当然として、ドリームランドにすら人間はいない。
普段であったらよそ者たる私が闇雲に人間を襲えばこの時空のバランスを崩す事になり、結果的に異変を解決しようとする強い奴らにリンチされたり体真っ二つにされて半身を封印されたり……
だが!今回はそんな面倒な事を考える必要は無い!
死ぬ事を待つしかない存在の理は世界の外側へと傾いている!
ならば行き先がこの世界から私の腹を経由してから冥界に行こうがそれは完全な誤差だから何の問題も無いだろ!
そう考えてからの行動は早かった。
数分でその場所へたどり着けば木々を薙ぎ倒し大きな岩に激突した鉄の大鳥の残骸があった。
【ヘカの薄い潰れた肉に焼けた肉ぅ~、焼きすぎ肉に~黒焦げ肉ぅ~……ふむ】
上機嫌に歌まで口ずさみ選別をしていたが良さげな肉が見当たらない。
まったく、これだから下等生物なんだよ。
これだけあればと思ったけど、あまり質を求めすぎて鮮度を落とすのももったいないか?
【……ん?】
あれは……ヘカを利用した術?
【へぇ~、凄い凄い。
これほどのヘカは初めて……いや、昔石板に私達を封印して操っていた奴らがいた頃に近い質のを見たことあるけど、この幼さで本当に凄い。
だからこそ、君は欲をかきすぎたね。
自由に実体化できる技量も無いくせに独り占めしようとしたんだ?】
自分で私達と発言したけれど、流石にコレと同列視されるのは嫌ね。
私の口じゃなくて誰かの口から言われた言葉なら食い殺してやってたかも。
【ん?どうしたんだい?今私はとても機嫌が良いんだ。
消えてくれれば見逃してあげるよ?…………………………ねぇ、見逃してあげるって言ってんじゃん】
……術が使えるんだから言葉が通じていない訳がないよね?
【あっそう。……………あれ?意外とおいしい。
もしかしてこの極上のヘカをずっと食べてたからなのかな?
だとしたら下等生物のくせに生意気】
さてさて、今回の主役のお味は~……
【……これ、今食べた下等生物かな?】
幼子の上に絵の描かれた硬い紙が置かれていて今食べた下等生物が描かれていた。
【ん~?これもしかして私達を閉じ込めておく石板の術が復活したってこと?……って、あぁ。消えちゃった】
消えちゃったも何も私が食ったんだから当然の結果か。
真っ白の枠に真っ白の絵で何の力も込められてない入れ物になっちゃった。
【ま、いっか。さ~てご馳走ご馳走……ッ!?】
なにこの味……はあぁ~………………なるほど、そうか、そうだったのか。
何で神であるはずのあいつ等が好き好んで人間の命令を聞いていたのか少しわかった。
うん、このヘカの味を知ってしまったら他のヘカなんて口にできないのも頷ける。
このヘカ危険かも……本当にこれ以上口にしてたら二度と普通のヘカを食べれなくなるかもしれない。
【うん、流石に……もったいないか。よし、持って帰ろ!】
本当にいつも通りの範疇から出ないような日々の中のほんの少しの娯楽程度の変化であった。
けれどこの時の私は知らなかった。
私は、価値観が違っただけで精霊や魔物と呼ばれる存在の中でも人に近い精神構造をした存在であったのだと。
拾った赤子同然の幼子が成長していき、ある時ふと気になって名を付ける事にした。
このいとし子の名は……サラムトリフィ。
……たぶん、この時、この瞬間だったのだろう。
私達のような長く生きる存在が強力な呪い、あるいは病だとよぶものにかかったのは。
私のかかったこの呪い、私はこれを『死に方が見える呪い』とよんでいる。
ヘカとデュエルエナジーの違いがわかりません。