~オシリスレッド寮前~
「ここがオシリスレッドだよ!」
「うわぁ~……本当に来てしまったのですねぇ……」
僕は万丈目の敗北の詳細を知るため幸子と一緒にレッド寮へとやってきた。
前回の月1テストから万丈目の様子がおかしく、今もそれが治る様子がない。
常にイライラしてるし近付きすぎると怒鳴られる時もあって、怒鳴る時に辛そうな雰囲気を感じる時があって正直これは不味いと思う。
普段から厳選主義だった部分はあったけれどやたらレアカードであることと高い攻撃力、上級モンスターである事に固執するようになって、少し考えれば弱くなってるって事くらい気付きそうなものなのに。
だってさ、ヘル・バーナーだよ?
炎獄魔人ヘル・バーナー☆6、炎、悪魔族
攻撃力2800
守備力1800
このカードを除く自分の手札を全て墓地に捨て、
さらに自分フィールド上の攻撃力2000以上のモンスター1体を生け贄に捧げなければ通常召喚できない。
相手フィールド上モンスター1体につきこのカードの攻撃力は200ポイントアップする。
このカード以外の自分フィールド上のモンスター1体につきこのカードの攻撃力は500ポイントダウンする。
……確かにさ、万丈目はヘルカードも多用してるしヘルソルジャーは奈落の落とし穴に引っ掛からなくて厄介だけど、ヘル関連とはいえヘル・バーナーなんだよ???
今の万丈目は焦りからちょっと良くわかんない事になっていて本人はそれに気付いていない。
『駄目だ駄目だ!こんなデッキじゃ!
もう今までの戦術だけじゃ追い付けない時代が来たんだ、そうでなければこの俺があんなドロップアウトに負けるわけが……』
ってさ、その考え方は理解できるけどテーブルに並んでるそれら、一周回ってペガサス島DVDの時代に戻ってない?大丈夫?
『う~ん……いっそのこと攻撃力低下を利用してあまのじゃくの呪いとスケープゴートでも入れてみたら?』
『ふざけて……どっから入ってきた!?』
『え?てっきり男子寮入れない僕のために窓開けっぱにしてたのかと』
『ここ三階……だ、だいたい!そんなふざけたコンボが成立するわけないだろ!?』
『あ、怒るとこそこなんだ……でもさ、そのテーブルに並べてるのよりはまだ成立すると思うんだけど……』
『う、うるさい出てけ!』
『むぅ~、わかった。じゃあね、また来るから』
あの様子じゃ大丈夫な訳が無いんだよなぁ~……
破壊耐性すらないレアカードに依存したデッキを作ろうとしちゃててさ~。
あんなの幸子相手ならフィッシャーチャージで除去られ最悪1アド稼がれるし、僕が相手じゃ仮に召喚を許してもその打点アップじゃ団結の力1枚装備されただけで上昇値に4倍の差を付けられるんだよ?
でもあまのじゃくの呪い採用してたらそれで逆転して僕には勝てるかも?
ちなみに幻のDVDであるペガサス島はラーイエローの三沢大地くんが持ってるって話を聞いて頼んでみたら簡単に貸してくれたから明日香達と幸子も呼んで皆で見た。
「こういう場所、てっきりドラマの中だけの話だと思っていたのですが本当に実在するのですわね。
………これは本当に人が住めるような場所なのですの?」
「ん~?ドラマの中?……あぁ、なるほど。
さては幸子、あの昼ドラ見たでしょ?」
「な、なんのことでしょう?わかりませんわ?」
「だってそういうシーンあったような~……
ど~したのかな~?恥ずかしがらずにこっちを向いてみな~?」
「い、いけません。アレは破廉恥ですわ……」
話題の昼ドラ一挙放送みたいな感じでさ、ちょっとだけ女子寮の中でも話題になっていたから僕と同じように見た側だねこれは。
それにしてもそっか、あの内容も破廉恥に入るのか。
肌を露出したりくっついたりしてないから大丈夫だと思ってたけど普通……に、このお嬢様を入れていいのか困るけど、普通の感覚だと破廉恥なのね。
納得はできてないけど覚えておこ。
ちなみにだけど、たぶん幸子が破廉恥って言ってるのは、
犯人のグループが女性を車で拉致して海の近くにある廃墟に閉じこめて、その女性は縄で縛られ口も塞がれて5人の男にかこまれいてどうしてやろうかと話してるシーンの事だと思う。
その犯人達は学生の不良グループで、しかも元エリートで濡れ衣を着せられ落ちこぼれと呼ばれるようになった過去があるんだよね。
それでドラマの中で拐われた女性より僕の方がちっちゃいから「貴女が一人でオシリスレッドへ!?どうしともと言うなら私も行きます!」って感じになったんだろうな~。たぶん。
数日ちょっと曇り空続きで今日は晴天だったからさ、わりとルンルンで寮を出ようとした所で偶然声かけられて和やかに話してたのにレッド寮に行くんだ~って言ったらさ、急に血相変わるんだもん。
ビックリだよね。
「僕としては龍牙さんが闇に飲まれて飛び降り自殺するシーンあるじゃん。
あれ直前まで凄くシリアスなシーンだったのに飛び降りた次の瞬間、学ラン着せた手抜きな人形が崖をバウンドして海に落ちていくもんだからお腹抱えて笑っちゃってさ~」
「えぇっ!?境遇が残酷過ぎてとてもではありませんが見ていれませんでしたのに!?」
「うん。だからこそ落差が酷くてお口あんぐりから大爆笑って感じ?」
「ま、まあ楽しみ方は人それぞれですものね……
ところで、先程も思いましたがここは本当に人が住んでいますの?」
「幸子ちゃんはお嬢様って感じですわね~。
僕なんてコレどころかお家すら無い原始生活でしたのに~、オーホッホッホッホ!」
「……えぇ?」
その何言ってるの?って本気で疑問に思うのやめて!
まるで僕が家無き子みたいじゃん実際そうだったんだけどもさ!
強いて言えば縄張りに聖域作って理想の湿度の空間にしていたくらいかなぁ?
ついでに聖域内に入った虫なんかの命を問答無用で吸いとってヘカにしてたから食事も必要無い快適な場所だったんだよ?
……まあ、娯楽を知っちゃった今戻れって言われても頻繁に人間社会に顔出す事になるんだろうけどさ。
「スゥー……たあぁーのもおぉー!!!」
「えぇ……?」
「なんだ?……て、なんだサラちゃ、げぇ!?ブルー!?」
「失礼な人ですね」
「そこのオシリスレッド生!僕と目があったな!
さあデュエルだ!デュエルで貴方を尋問いたしますわ!」
「貴女も十分ドラマの影響受けてますわよ?」
いやだってあの不良グループのリーダーたる龍牙さんは最後までカリスマ性凄かったじゃん。
真の黒幕を『悪は悪として散るべきだ』と散っていった気高き龍牙さんと比べたらミジンコみたいに思えるくらいだったじゃん。
10年以上前の些細な嫉妬がきっかけで、再び出会った時に何もかも持ってたお前(主人公)が羨ましかったから奪ってやる事にした!で、最後まで龍牙を利用して、自分は命を賭ける覚悟も無いときた。
だからこそあの身投げシーンの出来の悪さに唖然として、じんわりと込み上げてきて、大爆笑の流れになる。
ほんと、役者の演技力と制作費用が釣り合っていませんわ!
あと作中龍牙さんは伝説クラスのレアカードたるLVモンスターを使用しているのもあってインパクト抜群で、ダーク・ルシアスLV8を使いこなす猛者でしたわ!
ダーク・ルシアスの効果を使うとは言ってませんけどね!
「ドラゴン・ウォリアーを融合召喚!」
「僕の前でドラゴン・ウォリアーを出すとは良い度胸ですわね!
奈落の落とし穴!」
ダーク・ルシアスを打ち破ったにっくきドラゴン・ウォリアーを僕の前に出すなんて許せない!
「えぇ?とりあえずライフを1000払い無効で。
俺さ、いつもコイツ出してるじゃん……」
「知ってる!
アームズ・コールを発動するよ!」
「えぇ~……?それも無効で……ねえねえ、このサラちゃんどうしちゃったの?」
「こっち見ないで、気にせず続きをなさってくださいませ。
……ねえ遊城さん、サラはレッド寮だといつもこんな感じ?」
「いつもじゃねーけどだいたいこんな感じだぜ?」
「自由奔放すぎて一部のレッド生じゃ精霊じゃなくて妖精さん「蟲惑魔だよ!」……とか言われたりするっすよ?
気が付いたらいなくなってたとかも良くあるし」
「そうなのね」
「この程度で驚いてたら身が持たねーよ。
アイツさらっとそこの崖下からここまでジャンプ1回で上ってくるんだからな」
「……人柄を知っていますから怖くはありませんが、ちっちゃくて可愛くてもデュエルモンスターズの精霊なのですわね」
「それより海野であってるよな?
サラとの激戦途中からだったけど俺も見たぜ!
スッゲー強いんだな!俺ともデュエルしようぜ!」
「また今度なら構いませんわ。今日遊城さんに用があるのはサラですので」
「え?俺に?じゃあ何で義則とデュエルしてんだ?」
「さぁ?」
「目と目があったからデュエルで尋問するってさっき言ってたっすよ兄貴」
「意味わかんねーけど面白い考えだな。それくらい気軽にデュエルできるって最高じゃねーか!」
「そうかしら?
……と、あらら、攻撃宣言しちゃったわね。これで決着よ」
「ライフコストはもっと考えて使いなさいオシリスレッド!
串刺しの落とし穴!!!」
串刺しの落とし穴とは!
このターンに召喚・特殊召喚された相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。
その攻撃モンスターを破壊し、そのモンスターの元々の攻撃力の半分のダメージを相手に与える。
ペガサス島のDVD内であの武藤遊戯の友である城之内克也が使用した超有名カードだよ!
「本命はそれかぁ!?ぐあああああああ!!!」
「悪は去った!付き合ってくれてありがとう!」
「本当に感謝しなさい。失礼な人は撤回いたしますわ。
優しい人ですわね。
あと、悪党はどう見てもサラだったわよ?」
「そうっすね、完全に当たり屋だったもん」
「う、うるさいなぁ!過程はどうあれ勝てば良かろうなのだぁ!」
「うっわ、そんな可愛い声の勝てば良かろうなのだぁを聞くことになるとは思わなかったぜ」
「あれ?十代ジョジョ知ってたの?」
「何言ってんだよ、こんなの義務教育だろ?
誰だって聞き終わったCDをCDケースに戻すだろ?
俺だってそうする。それくらい当然の事だぜ」
「……どうやらオシリスレッドは私の知ってる国とは違うようですわ」
「ゴメン兄貴、ボクも知らないっす……」
「何ぃ!?翔まで知らねーのかよ!?」
「どうする?ここはデュエルで解決するしか……」
「デュエルはそこまで万能じゃねーよ!」
「そっか~。デュエルで世界を笑顔にするってキャッチコピーは嘘だったのか」
「CMは嘘もあるから気をつけろよな」
「うん!」
「……ねえサラ、貴女万丈目さんより遊城さんとの方が仲良くありません?」
「え?万丈目の方が仲良いよ?」
「それで、義則くんに何を尋問しようとしてたんすか?」
「そうだった!義則くん!君には遊城十代を匿っている容疑がある!
これはまだ質問だが、返答次第で尋問に変わるから早めに答える事を僕はオススメしておくよ」
「な、なんだって~。
くぅ~、つまり俺のこの声も届いていないんじゃあぁ~ないのかぁ~?
気を付けろよサラ~。
ずっと友達のふりしていやがったけど、そいつの正体は新手のスタンド使いだぜぇ~」
「「…………」」
手を鳴らしてパン!
十代に向けてピース。
遠くを見るジェスチャー。
「パンツーまるみえ」
「「イエーイ!」」
残念ながら漫画じゃ良くわかんないからハイタッチで閉めましたとさ。
あの漫画、セリフの言い回しといい記憶に残りやすい部分多いからこうやって通じ会うと楽しいね!
「ふぅ~、満足した。
ところで十代さ、だいぶ話変わるけど月1テストで万丈目に勝った……の前に、
ちょっと、いや、かなり真面目な話。
真面目な話だよ?ちゃんと答えてね。ちゃんと……答える、良いね?」
「お、おぅ。真面目な話な。よしこい!」
「それじゃあ……十代さ、筆記テスト遅刻してたよね?
何か理由でもあったの?」
「あぁ、あれな~。
アレは行く途中トメさんの車が動けなくなってたから手伝ってたら時間掛かっちまってよ」
「トメさんって購買部のおばちゃん?」
「そのトメさん」
「あの日は確か……新パックの入荷日だったわよね」
「うん。大量入荷するって聞いたのに買い占められちゃったやつだね。
……なら、じょうりょーしゃくりょう?の余地ありだね」
「情状酌量ですわ」
「そうそれ!
なら十代にお説教するのは無し!」
「俺説教されるとこだったのか?」
「うん。説教は無しになったけど、かわりにお願いがあるの」
「サラちゃんからのお願い……良いなぁ兄貴……」
「翔?」
「羨ましいぞ遊城十代……」
「義則お前もかよ……」
「オホン……それで、お願いって言うのはせめて月1テストとかの大事な日は静かにしてってお願い」
「あ、あはは……いやあれは確かに俺も悪かった」
「うん、十代が悪い。
確かにあの時、万丈目の言葉は強すぎて反発したくなるのもわかるよ?
けど、あの万丈目の言葉はあの場にいた殆どの人達の代弁だったんだと僕は思うんだ。
皆、本気で頑張って、その成果を出して夢へ近づこうとする大事な時なの。
イエローの人がブルーに上がれたのなら、その人は親に連絡して沢山誉めてもらって、将来の夢を目指す努力の励みにしたりして、そういうことがあると思うんだよ。
それくらい皆本気で大事な日なの。
確かに僕もプロデュエリストを目指している訳じゃ無いけどそれでもわかる。
簡単に使ってるように見えるけど、魔法を使えるようになるのって凄く大変なんだよ?
……十代、ちょっと手を上げてみて」
「お、おう。……これでいいか?」
「うん。ありがとう。
じゃあ次は今どうやって手を上げたか説明してくれる?」
「ん?なんだそれ?こうやって……」
「ううん。僕は見せてなんて言ってないよ?
どうやって手を上げたのか説明してって言ったの。
だから言葉で。
わかりやすく。
具体的に説明してね」
「はぁ?どうやって……どうやってだ???
しょ、翔!お前説明できるか!?」
「え、えっと、腕には神経があってそれが脳からの……無理だよ兄貴!
義則くんは!?」
「わかりきってる事を聞くなよ!?」
「幸子はどう?
生まれつき腕の無い人が義手を付けたとして、その人が動かせるように言葉で説明してあげられる?」
「それは……私にはできませんわね……」
「うん。それが普通のこと。
1から魔法の使い方を覚えるのはそれと同じくらい難しい事なんだ。
だから方向性は違うけど、昔の僕は魔法が使えなくて、そもそも僕にヘカが、魔力なんてものがあるかも感じられなくて、悔しくていっぱい泣いて、それでも頑張って使えるようになったんだよ。
だから皆の気持ちが痛いほどよくわかる。
だから……お願い。
完全には無理でも、頑張っている人達の事も気に止めてあげて。
十代ならできるって僕は信じてるから」
「……けっきょくお説教になってません?」
「え?いやいや説教とはまた違うじゃん。
これはお願いだし、何より思いは言葉にしないと絶対に伝わらないんだよ?
僕は幸子じゃないし、十代でも、姉さん達でも無い。
だから僕たち蟲惑魔一族はどれだけ下手くそな言葉でも一度伝えたいと思った事は伝わるまで語るって掟を作ったんだ」
それは蟲惑魔一族の掟の中でも特に強く定着している。
ティオ姉を信仰していたかつての集落と同じ惨劇を繰り返さないために……
「よし!これでお願いも済んだし心置きなく本題を聞けるね!
十代さ、万丈目に勝ったのは知ってるんだけどどうやって勝ったの?
直接本人に聞きたかったら来たんだよね」
「それはコイツ、ハネクリボーLV10の効果を使ってだぜ!」
「その子いつの間にLVモンスターに?
あ~でも決め手うんぬんよりも試合の流れとか万丈目がどんな様子だったかとかを聞きたいんだけど良い?」
「もちろん良いぜ!」
「それだったらボク達の部屋来ます?緑茶しか出せないけど」
「うん行く~」
「なっ!殿方の部屋に行くなどいけませんわ!」
「わわっ!
……もう、急に持ち上げないでよビックリするじゃん」
「え~っと……それじゃあ食堂の方でどうっすか?」
「それなら……構いませんわよ?」
とりあえず場所を食堂に移す事になって義則くんはゲームをつけっぱなしで出てきたみたいで続きするって言って部屋に戻った。
ゲーム途中だったのに付き合ってくれるって優しいなぁ~。
日常パートでダラダラだべらせるの楽しいね!
気が付けば外だけで6000文字超えてたので分割した。
明日ロックマンEXEの発売日でわくわくを取り戻しすぎてちょっとテンションがおかしい。