蟲惑魔とGX世界   作:メリルメリルメリル

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出口を目指して①

 

 ~元特特生寮1階廊下~

 

 

 僕が出現させたプチファイヤーボールを四方に配置し漂わせる事で光源にしながら、

 姉さんを先頭に幸子、僕の順番で廊下を進んでいる。

 

 

「ところでさ。

 姉さんって今、ステータスで言ったらどれくらいなの?」

 

【ん~、デュエルモンスターズで言うなら……

 攻守300くらいかな?

 出せても精々500が限度だろうね】

 

「え?何故そんなに低いのですか?」

 

「それはね、この場所が人間界だからだよ」

 

 

 デュエルモンスターズのルールにおいてはカードに記されたレベルや攻撃力、効果といったものが全てなのだけど、

 記されているのは代表的なものばかりで全ての能力が記されている訳ではない。

 

 精霊目線でカードとは精霊界と人間界を繋いでいる大事なものであり、

 休憩所的なものであり、

 なにかを封じる時の便利なマジックアイテムでもある。

というのが主なカードに対してのにんしきなのだけど……

 

 精霊という存在は本能的に自分が楽しければ良いという存在で、どれだけ強い理性があろうと人間の三大欲求と同じで避けることができない。

 優しい精霊でもイタズラ好きなのが多いのはそれが本能だからとしか言いようがない。

 

 だから人間界は力を貸せばヘカを分けてくれる程度の認識でヘカを供給する手段の1つと考えている者が多い事は口にはしないけれど精霊共通の認識だったりする。

 

 なのでカードに精霊が宿りその人間に見えるという現象はそれだけ信頼されたという証明でもある。

 逆の場合も否定はしないけど。

 例えば……オマエ、いつか、絶対ぶっ殺してやるからな……みたいな?

 

 現在ランカ姉さんのステータスが低いのは人間界と精霊界では世界のルールが異なり、カードを通すだけでは全ての能力を人間界へ持ち込めないという部分が大きい。

 カードは確かに器として便利ではあるものの、融通の利く代物ではない。

 その上ルールの違いによって持ち込める力の量が大幅に減ってしまう。

 

 仮に全ての能力を1枚のカードに納める事ができたのなら……

 今ここにいないけど、アトラ姉さんの場合10万文字あっても足りないと思う。

 

 能力もそうだけど、攻撃力や守備力は実戦での経験量やその時の体調等も完全に無視した通常時の肉体的or魔力的強さを数値化した目安でしかない。

 だから精霊界で攻撃力2000のモンスターと1500のランカ姉さんが戦闘を行った場合ランカ姉が勝つ事だって当然ある。

 

 デュエルのルールだと絶対に負ける内容だとしても、

 デュエルという名の世界。

 人間界という名の世界。

 精霊界という名の世界。

 その他様々な世界。

 世界が違えばルールも異なるので出せる能力に変化が出てきて簡単にその世界では絶対だったモノが簡単に覆ってしまう。

 

 例えば、戦闘破壊されない筈のマシュマロンがブラック・マジシャンに何の補助も無しに戦闘破壊されたり、

 例えば、悪魔族レベル10だが攻撃力が0な筈のモンスターなのにイベントが行われている街中で破壊活動をしたり、

 例えば、この世界では速攻魔法なのに別の世界ではトラップカードになっていたり、

 例えば、墓地から蘇生する事で真の力を発揮される筈の神のカードだったのに、何故か特殊召喚できないという文面が付いているなど上げればキリがない。

 

 世界のルールの違いによって出す事のできる力への影響はあまりにも大きい。

 これらの影響力はとてもではないが無視できるものではない。

 

 しかし例外がある。

 それこそが完全実体化できているかどうかの有無。

 普段姉達が実体化しているのは十分なヘカの供給手段を持ち合わせ、高度な魔術を扱えるからでできている仮の体。

 ゲームの中に自分の分身を作り自由に操作しているようなものであり、

 この方法だとゲームの中の世界と現実の世界のルール両方に縛られる事になるため本来の実力の半分でも出せたら幸運と言わざるをえない。

 

 では完全実体化すればどうなるかという話だが、

 最初はルールの違いで混乱するだろうけど、間違いなくその世界で自分自身が出せる全ての力を出しきる事ができるようになる。

 

 

「それが僕だよ」

 

「そうですのね~……

 しかし、それだと何故サラだけ完全実体化できて、ランカさん達はできないのでしょう?」

 

 

 とりあえず一室に入り小さいながらも聖域を展開して安全地帯の確保をした。

 あまりヘカの無駄遣いはできないのでとりあえずこの一室だけにして、あまりにも広いようなら他にも作る予定。

 

 ランカ姉さんのステータスの低さに関しての説明は聖域の展開中にほぼ済ませた。

聖域の展開には時間がかかり、説明を終えても最後の固定化が済んでない状態。

 

 時間はかかるけどやはりこの選択は良かった。

 説明をする僕とランカ姉が全く焦っていない様子を見ていた事もあって幸子は落ち着きを取り戻している。

 今は僕が持参したコップタイプで大きめなステンレス魔法瓶に入れていた紅茶を飲みながら、ソファーに座って聖域の作成を興味深げに眺めつつ耳を傾けてくれている。

 

 

【何でもなにも、サラは人間だし……】

 

「確かにサラちゃんは優しくて良い人ですわよね」

 

「ん~?急にそんな誉められてもひもQしか出ないよ~?食べる?」

 

「……ひもきゅう?」

 

「……えっ?ひもQ知らないの!?

 グミだよグミ!?グミ……わかる???

 ほらこれ、美味しいよ?」

 

「流石にグミは知っていますが……なるほど、庶民が食べるお菓子は変わた形をしていますわね~。

 これは貰っても良いのかしら?」

 

「良いけど……もしかしてチョコボールとかブタメンも知らなかったりする?」

 

「ブタメン……は知りませんがチョコボールとはトリュフチョコの別名かしら?」

 

「えぇ?……逆に僕はそれを知らないんだけどどんな………」

 

 

 そんな他愛ない話をしていて展開した聖域があと少しで完成するというタイミングでドタドタと誰かが走り回る音がし、

 遅れて『どこなのここはー!うぎゃー!なんなーノ!怖いーノ!』と、随分と聞きなれてしまった変な口調が遅れて聞こえてくる。

 

 

「……少し前まで私もあんな感じだったのかしら?」

 

 

 足音を聞いてビクリと体を跳ねさせた幸子だけど、そのなんとも気の抜ける声に呆れている様子でこれなら大丈夫そう。

 

 

「なんでここにいるかはこの際置いといて、クロノス先生は好きだし無視はできないかなぁ……」

 

「あら意外ですわね。

 てっきり遊城さんの扱いで嫌いなのかと思っていましたわ」

 

「いやいや、クロノス先生は真面目過ぎるから十代が許せないだけで良い先生じゃん。

 月1テストの時担当が大徳寺先生だったから万丈目が叱ってたけど、クロノス先生だったら絶対叱ってくれてたって。

 それじゃあクロノス先生を迎えに行ってくるから姉さんは聖域の仕上げお願い」

 

【ん。任せなさい】

 

「サラ、気を付けてね」

 

「うん、気を付ける。

 すぐ戻るから待っててね。行って来ま~す」

 

 

 少し不安そうな幸子へ手を振って愉快な叫び声のする方へ向かう。

 足音からして階段を降りてくる様子だったから下で少し待っていると……

 

 

「クロノス先生、サラちゃんですよ~……って、屋根裏の物の怪!初めて見た!」

 

「シニョーラサラ!?

 な、なぜシニョーラが……って、お目めマッカッカーなノーネ!

 あっ!お、落ちるノーネ!!!」

 

 

 精霊界でクリボーは結構見るけど屋根裏の物の怪は初めて見た。それも5匹も。

 けどそんな事より、

 明かりが無くても見えているからって横着したのが原因で、暗闇の中で赤く光る僕の瞳に驚いたクロノス先生は自分の足を引っかけてしまった。

 先生の体が投げ出されるようになるのを見て、反射的にヘカを身体強化へとまわし、勢いよく落ちてきたクロノス先生が怪我してしまわないよう体と葉っぱを使って包むように優しくキャッチする。

 その間も敵である屋根裏の物の怪達から視線は外さない。

 

 ……のだけど、う~んどうしよう。

 反射的だったからこの際ヘカの無駄遣いも仕方ないとして、強化の影響で情報処理能力も上がっているからゆっくりに見えて悩む余地ができてしまった。

 迎撃用として魔法を3つくらい準備してたのだけど、たぶん攻撃力0になってる敵を相手に使ってしまうのは流石に魔力が勿体な…………

「ん…」

 人の気配?身体強化使っておいて良かった。

 じゃなかったら気付けなかった。

 ならここで起動する魔法は……

 

 

「【風霊術-雅!】」

 

【ヤネヤネー!?!?】

 

 

 階段全面を駆け上る風圧の壁に押され吹き飛んでいく。

 最上階の壁に激突するように放ったからそのままヘカを失って実体化できなくなるでしょ。

 

 

「光源っと…【プチファイヤーボール】……よし。

 クロノス先生大丈夫?どこか痛いところない?」

 

「だ、大丈夫なノーネ。それよりシニョーラサラ、なぜシニョーラが?

 それにここはどこなーノ」

 

「それは合流してから話しますね。

 それより……階段のところに隠れてるよね?

 出てこないなら魔法を撃つ。いや、私が直接いくよ?」

 

 

 もし魔法を扱える相手なら流石にクロノス先生を抱えながらは無理だから、先生を守る簡単な結界を張って姉さんが来てくれるように派手に暴れてやるって気概で強く警告した。

 

 

「て、敵じゃないのにゃ~。撃たないでほしいのにゃ~」

 

「ごめんサラちゃん。こっちも状況がわからなくて……」

 

「大徳寺先生に黒井先輩?」

 

 

 両手を上げてゆっくり階段を降りてきたのはレッド寮にいるはずの大徳寺先生と、日中デュエルした義則くんと同室の黒井鳴門先輩だった。

 

 

 

 

 3人を連れて聖域を作った部屋に戻って情報交換をする。

 

 クロノス先生は職員室に自分のハンコを忘れた事に気が付いて、ハンコを取りに懐中電灯を片手に向かっていき、正面からだと遠いからパスワードとか多少面倒でも裏口から入った。

 そして気が付いたらここにいたと語ってくれた。

 

 説明をしているクロノス先生の様子は落ち着きがなくて、あまりにも挙動不審過ぎてまるでそれっぽい作り話を今作ったという風にも見てとれてしまう。

 けれど、さっきまで屋根裏の物の怪に追われていた事を踏まえると今までヘカ等のオカルト的な力とは接点の無い人が急に巻き込まれるとこうなってしまうような気もするといった印象を受けた。

 

 

 大徳寺先生と黒井先輩なのだけど、どうやら黒井先輩はラーイエロー昇進みたい。

 とりあえずおめでとうって小さく拍手をしたことは置いといて、黒井先輩は寮の中で快適にゲームができるように改造をし過ぎたみたいで、その事で相談事等をここ数日繰り返していたみたい。

 その相談をしていたら周囲が急に暗くなり、気が付けば別の場所にいたみたい。

 

 建物から出ようと1階に降りて外への扉を開くと、

 その先は黒と赤の闇だけが広がっていて、地面すら無くて、近くにあった置物を放り込んだら落ちて見えなくなったんだって。

 そこでようやく魔術的な何かに巻き込まれたのだと認め、それまでは理解はしていたが認めたくなくて軽率な行動をしてしまっていたと反省していると大徳寺先生が語る。

 

 認めた瞬間、畳み掛けるように廊下から強い魔力を持つ暗闇に潜む赤く輝く瞳を持つ何かがいる事に気付いて物陰に隠れ、それがこちらに来る事なくどこかの部屋に入って出て来ない事を確認した2人は2階へ戻る。

 ちなみにこの赤い瞳の正体は僕とランカ姉さんだ。

 

 何かしら魔法を破る手段が見つからないか2階の部屋を探索しはじめ、

 

 1つ目の部屋は家具がほぼ何も無い殺風景な部屋。

 部屋の真ん中には教卓が1つだけがあって、

 『◯◯ラ◯○=◯◯ャ◯◯◯◯◯の◯◯記録』という文字が掠れて表紙の読めない本が教卓の上に置いてあったという。

 一応持ってきたと言うので見せてもらったけれど、内容の方も所々辛うじて読める程度であってコレに期待は持てそうにない。

 

 2つ目の部屋は真っ白な部屋。

 その部屋の中は不自由無く見通せるくらい明かるいのに、ドアを開けても廊下に光が漏れない不思議な部屋なんだって。

 その真っ白な部屋には12枚のカードが時計の数字のように床に置かれていて、それらのカードから小さな黒い靄が出ていてあまりにも異様な部屋だったから後回しにする事にしたみたい。

 

 3つ目の部屋は書斎。

 部屋に入るとすぐに『この部屋の本の持ち出しは禁止。』と書かれた注意書きがあって、魔術的にそういうルールを付けたのかもしれないからと警戒して読み途中の本を持ち出さなかったそう。

 大徳寺先生は『賢者の石と銀の鍵について』というタイトルの本を読んでいて、黒井先輩は何か使えそうな物はないかと引き出しなんかを物色している最中にクロノス先生の絶叫が聞こえて僕と合流できた。

 

 

「……という訳にゃ~」

 

【賢者の石……ね。

 お前、錬金術師なんだし気持ちはわかるが黒幕がその気だったら即死してても不思議じゃないぞ?】

 

「ははは、面目ないにゃ~」

 

「賢者の石って何だ?」

 

【賢者の石とは錬金術師にとって最後の到達点であり、作り上げた錬金術師の技量で効果が大きく変わってくる。

 どんな物質も等価交換により黄金に変える事ができるのは当たり前。

 生命の創造、不老不死に至る事すら可能な伝説の代物だ】

 

「ふ、不老不死……・馬鹿馬鹿しいーノ」

 

【あぁ、その通りだ。本当に馬鹿馬鹿しい。

 人間は永遠の時の流れに耐えられるような魂じゃない。

 肉体だけじゃ魂そのも……】

「そういう難しい話しは後で専門家として!

 それでその賢者の石って言うの今回のと何か関係あると思う!?」

 

 

 ……我ながらかなりメチャクチャな話題ずらししたなぁ~。

 ランカ姉さんはわりと人間にどう思われようが構わないスタンスだから平気でこういうことを口にする。

 その内容を口にしたらたぶん最終的に1番ダメージ行くのティオ姉さんだから。

 ランカ姉さんは後で絶対叱る。

 

 

【ふむ……断定はできないけど、賢者の石は錬金術師を釣る為のもので本命は銀の鍵じゃないか?】

 

「銀の鍵ってなに?」

 

【ん?サラ知らないの?】

 

「ん。初耳」

 

【簡単に説明すると時空を移動するための道具かな。

 使うと神に目を付けられる事になる危険性が高いけど】

 

「えぇっ!?……なにそれ、凄く危険じゃん」

 

【ん。仮に見つけて使うにしても最終手段が妥当】

 

「……そんなに危険なのですの?」

 

「ん。凄く危険。

 あの三幻神ですらコピーカードを使われただけで神の裁きを下すのは有名な話しだよね?

 人間に多少の理解がある神ですらそうなのに、どんな神かもわからないのに目をつけられるなんて危険すぎるよ」

 

「確かに……」

 

【何にしても情報が足りなすぎる。

 けど、黒幕が何かしたいかは大体わかったしとりあえず書斎に行くとしよう】

 

「なに!?目的がわかるのか!?」

 

【わかるもなにも……娯楽よ娯楽。

 こんな謎解きみたいな空間創っておいて悩んで相談して試練を乗り越える姿を見届けないなんて有り得ないでしょ?

 私のような可憐で優しい精霊もいれば、そういう精霊もいるのよ】

 

 

 そういって笑顔を見せるランカ姉さんだけど、どう考えてもランカ姉は【そういう精霊】寄りの存在だと思うなぁ~……

 なんて思いながらも私を先頭に、最後尾をランカ姉さんになるようにしながら探索途中だという書斎へと向かった。

 





 ロックマンEXEが楽しいですぜ!
 今6でエリスチ*が出るまでガチャ地獄に浸ってる。

 ひもQが2019年に生産終了していた事に驚きました。

 クロノス先生がシニョール、シニョーラって言うの。
 今まで気にもしなかったけど同意味なんだろうって気になってググったんですよ。
 シニョールは良い。
 ただシニョーラって、↓コピペ。
 イタリア語 で「 淑女 」あるいは「 既婚女性 」の意味を意味する単語「Signora」のカタカナ表現。未婚女性の場合は「シニョリーナ」、男性の場合は「シニョーレ」。
 ……だってさ。
 マジかクロノス先生。 
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