蟲惑魔とGX世界   作:メリルメリルメリル

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人間界生活本番

 

 僕の名前はサラムトリフィ。

 沢山の姉さん達に囲まれて育った誇り高き蟲惑魔一族の一番末っ子で、姉さん達は僕の事を縮めてサラって呼んでるんだ。

 

 生きる為の方法や他の種族との関わり方はアトラ姉さんが教えてくれたのだけど、よく遊んでくれるのはトリオン姉さんだったからか、僕の口調は自然とトリオン姉さん寄りになっちゃったんだよね。

 

 ティオ姉さんは喋るのが苦手みたいだけど楽しいのは好きみたいでトリオン姉さんと遊ぶ時に一緒にいることが多い。

 あと絵を描くのが好きで一緒にお絵描きしたりする。

 

 リセ姉さんは髪を弄るのが好きで、カズーラ姉さんは触るのが好きみたいでいつも手近な何かを触っていて………

 

 とにかく僕はそんな姉さん達の事が大好きで、それで満ち足りていた。

 

 

 満ちていたのだけど、アトラ姉さんはそれだけじゃダメって思ったみたいなんだよね。

 

 

 サラの為にサラの友達をつくりにいこう。

 ついでに勉強もして沢山知ろう。

 知らないと困る事もあるし最悪生きられない。

 

 って言うから僕達皆で島の外へ出る事になった。

 友達なら精霊界にポトリーちゃんやラドリーちゃんがいるんだけどなぁ……

 

 本当は、島から出たくなかったけど……

 皆がいてくれるならどこでも良いかな。

 

 

 

 

 人間の世界に来た。

 来たけれど文字が読めない。

 服の面積が広すぎて光合成がしづらくて落ち着かない。

 扉と壁の違いが一目でわからない。

 夜には寝るらしいのだけど、毎日眠る方法がわからない。

 ナイフとフォーク、当然お箸の使い方もわからない。

 わからない、わからない、わからない、わからない、わからない…………

 

 

 そんな中でアトラ姉さんが御守りと言って一枚のカード(アトラの蟲惑魔)を渡してくれた。

 やっぱりそのカードに書かれた文字も僕には読めなかった。

 

 けれど、その文字が伝えたい意味は理解できたんだ。

 

 このカードはどんな能力を持っていて、どんな事ができるのかがその力の揺らぎから感じ取る事ができたから。

 

 その事を利用して文字と照らし合わせながら覚えていって、読み書きできるようになるのは0から学んだにしては意外とすんなりと(4ヶ月程度)不自由ない程度までできるようになった。

 

 あとトリオン姉さんは島にいる前は人間の世界に溶け込んでいたらしくて、姉さんが手伝ってくれたのもあって余計に早く覚えられた。

 

 逆にアトラ姉さんは姉さん達の中で誰よりも島の外の事を知らなかったみたいでトリオン姉さん曰く【じぇねれいしょんぎゃっぷ?】が凄い事になっているらしい。

 

 具体的には……

 

 

【そろそろディアハも覚えていこっか】

 

【……ディアハ?】

 

【ディアハねぇ~……最後に石板見たのはいつだったかしら~?】

 

【………え? ちょ、ちょっとアトラ姉? 本気で言ってる?

 ディアハなんて言葉昨今耳にしないのだけど、姉さんは何千年前を生きてるのさ???】

 

【そうなの?】

 

【そうなの!ねえ、ディアハなんて聞かないよね?】

 

【ん……今はデュエルが主流………】

 

【ほらあのティオ姉ですらデュエルって呼ぶレベルだよ!

 ディアハはもう完全に死語だから通じないってば!】

 

【そうなのね。 人間世界の流れは早いわね~】

 

【人類がネットワーク社会に入ってから余計に加速したし気持ちはわかるけどそれにしたってアトラ姉さんさぁ~……

 サラとは別にアトラ姉もケータイの使い方くらい覚えておいた方が良いよ?】

 

【私も持ってる……ほら、コレ……白っぽい赤でかわい~やつ………】

 

【……それ、人間じゃないのにどうやって手に入れたの?】

 

【企業秘密です】

 

【きぎょーひみつ?】

 

【どこの企業かしらね~?】

 

【きぎょー? ………あ、秘密って事ね】

 

【アトラ姉……大丈夫………?】

 

【本気なのは伝わるけどコレはわからないわね~】

 

【じょ、冗談は置いておくとして、入手手段だけど!

 ……だってほら。 私、蟲惑魔だよ?】

 

【……なるほど、程々にしておきなさいよ。

 もしかしたら今後人間と共存する事になるかもしれないのだから、仲良くしなきゃ駄目よ?】

 

【時代が変われば手段が変わるのはなにも人間だけじゃないんだよ、姉さん。

 それは私達蟲惑魔にだって言えることで、世の中には消えた方が良いけど消す事のできないのなんかがいるからそれらが狙い目だよ】

 

 

 ……なんて話しをしていたくらいにはトリオン姉さんはこの人間世界に溶け込んでいるんだよなぁ~。

 

 僕も学ぶことが多いけどアトラ姉さんも同じくらい覚えようと頑張って、とうとう人間社会に溶け込む本番の時が来た。

 

 

 

 

 ~デュエルアカデミア中等部校長室~

 

 身分証というモノを貰ってから1年と少し経った頃、故郷の島から僕達を連れ出した変なしゃべり方の人が迎えに来てくれて、「呼ばれるまで、ほんの少しだけこの扉の前で待っていてほしいのデース」と言われたので大人しく待つ。

 

 この変なしゃべり方の人がいなかったら僕はここにいないし、姉さん達のカードを手に入れる機会なんて無かっただろうからその辺の事は一応感謝している。

 だけど、僕はこの人のことあまり好きじゃないんだよね。

 なんていうか、姉さん達が僕に注いでくれる気配と全然違うし、敵意とも違うし何だろあの気配と視線。

 ぱっと見優しげな感じがするんだけどどうも違うような……

 

 ま、いっか。

 どうせ僕が関わることなんてあんまり無い人間だし。

 友達作りが目的だし仲良くなろうとはしてたけどあの気配がする間はやっぱり無理だよね。

 それにアトラ姉さんとトリオン姉さんの3人で難しい話しているところをよく見かけるし僕が入ってややこしくするのは悪い気がするからね。

 

 

「サラボーイ、入りなサーイ」

 

 

 いよいよ本番か。

 島を出てから沢山人間界の常識を学んだ。

 今アトラ姉さんが手を繋いでいてくれている。

 だけど……それでも少し不安だな。

 

 扉を開けると変なしゃべり方の人と同じくらいと、それ以上の人が1人ずつ。

 僕と同じくらいの人が8人もいて予想より多くて少しビックリして足が止まりかけるけど、半透明状態(普通の人間には見えない状態)になったアトラ姉さんに引っ張られて中に入る事ができた。

 

 

「女の子?」

 

 

 誰が言ったかわかんないけどそんな声がした。

 僕は蟲惑魔だからよくわからないけど、一応人間の男と同じ特徴があったから男って事になっている。

 

 ちなみに僕はティオ姉さん似の顔付きでウェーブがかった腰まで届く髪をしていて、カズーラ姉さん似の金髪と青の瞳、身長はアトラ姉さんとほぼ同じくらいなんだ。

 これは本体部分をを除いた姉さん達と比べたら丁度中間くらいの大きさな訳で、つまり僕は平均的な大きさをしているんだよね。

 どこからどう見ても蟲惑魔なこの容姿は僕の自慢だ。

 

 

「初めまして、人間さん達。僕の名前はサラの蟲惑魔って言うん……です……ます?

 蟲惑魔族で一番後の生まれで趣味はお絵かきとお喋りだけど楽しいことなら全般好きだよ……ですね?

 デュエルは……デュエルよりヘカを使った実戦的な術の練習の方が得意かな」

 

「Why!? 初めて聞きマース!? もしかして隠し【はいスト~ップ。 術くらい好きなだけ見せてあげるから後でね】

 

 

 ヘカで小さな黒い雷の球体を発生させ破裂させる音で変なしゃべりを中断させ、その大きな音で周囲の意識を集めたアトラ姉さんは視線の中で完全に実体化した。

 そんな姉さんの姿を見て他の人達が小さく声を漏らしているのだけど……

 さっきから大人しくしているのはアトラ姉さんとトリオン姉さんだけで他の姉さん達は随分好き勝手してるのだけど本当に見えてないの?本当に?

 見えてないか、そっか~……

 

 

【初めまして、人間さん達。 私の名はアトラの蟲惑魔。

 誇り高き蟲惑魔族の始まりにてこの子、サラちゃんの保護者でお姉さんよ。

 サラはまだ若すぎるから念のために本当の名は伏せているけれど、今の技量ならあと2~3年もすれば言っても問題のないレベルになると思うのだけど……今は教えられないわ。ごめんね。

 さて、ここにいる人達はもう説明を受けているだろうけど、今後のデュエルモンスターズ界と精霊界の関係の……なんて難しすぎる話しは私もサラもよくわからないわ。

 だから難しいことは気にしないでこの子と普通に仲良くしてあげてくれると嬉しいわ。

 今は緊張と慣れない敬語で変な感じになっているけれど、普段は明るい良い子だから。よろしくね】

 

「よろしくね。……よろしくお願いいたします」

 

【……ふふ、敬語に緊張。サラちゃんかわいい】

 

「む~……」

 

【いじけないいじけない。 これからすぐデュエルをするのに緊張してたらもっとへたっぴになっちゃうかもしれないからって姉さんなりの気遣いなんだから、ね?】

 

「へ? もうするの?」

 

【そうよ。 それで、誰が対戦相手なのかしら?】

 

「……未知のモンスターを相手にするのに他の雑魚じゃ足をすくわれるかもしれないからな。

 この俺、中等部トップの万丈目準が相手だ!」

 

 この出会いから僕ののんびりとした生活はほんの少し慌ただしく、けれど充実したモノへと変わっていった。

 

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