蟲惑魔とGX世界   作:メリルメリルメリル

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周囲からの視線

 

 蟲惑魔には昆虫族と植物族の2種類が存在する。

 植物であるのだから例外を除けば当然光合成が必要なわけで、僕にも光合成は生きていく為に必須の行動だったのだと最近知ったばかりだ。

 

 てっきり僕にとっての光合成という行動は、人間にとってのパンを食べるか米を食べるかの違いなのだと思っていたのだけれど違ったみたい。

 繰り返しになるのだけど、どうやら僕の体は光合成無しでは生きられないみたい。

 

 だから今、僕は島にいた頃みたいにティオ姉さんと仲良く光合成をしている。

 

 意識を向けて、自分の髪の毛を操作する時みたいな感覚で背中から葉を出してググッと伸ばす。

 この時に一緒に根っこも少し出てくるのだけど、これは仕方の無い事だし気にせず葉っぱを伸ばしていく。

 

 僕の葉を見て【なんとなく鳥の羽みたいだよね】って言ったのは誰だったっけな?

 ジーナ姉さんだっけ?

 ただ、【まるで天使様みたいだね】って言ったのはポトリーちゃんだって事だけは絶対忘れられないと思う。

 だってそれで大喧嘩しちゃったんだし……

 

 あの後僕の勘違いだったんだってわかったけどさ、僕があの時知っている天使族って言ったらアトラ姉さんに対して集団でリンチをしかけてきたボルテニスみたいな奴らしかいなくて、あんなのと一緒にされたと思ったら誰だって怒ると思うよ?

 初めからエデ・アーラエ様みたいだって言ってくれたら喧嘩なんてしなかったのに……

 エデ・アーラエ様は実は天使族だって教わるまでずっと悪魔族だと思っていた僕も悪いからちゃんとポトリーちゃんに謝って仲直りしたよ?

 

 この時が友達との初めての喧嘩だったかな。 懐かしい。

 

 ちなみに裁きを下す者(笑)ボルテニスはアトラ姉さんの術によって1人残らずカードに封印された……

 

 までは良かったのだけど、封印したボルテニスのカードをわざわざ部下らしき天使に渡しに行ったのは未だに納得いかない。

 アトラ姉さんが封印して、アトラ姉さんが決めたことだから別に良いけど、あのまま渡さずハッピーエンドでも良かったじゃん。

 

 噂でしか知らないけどボルテニスの奴、部下を沢山引き連れておいて返り討ちにあい、あんなにもボコボコにされるなんて失態をしておいて降格も何も無しでのうのうと元の役職で仕事してるんだってさ。

 やっぱりこれなんか納得いかなくない?

 身内びいき過ぎませんかね天使社会さん?

 

 おっと、話しがかなりズレちゃった。

 僕のこの大きな2枚の葉だけど、天使にできるんだから上手く使えば羽ばたいたりしなくても空を飛べるんじゃないかってなって、飛べる友達代表のラドリーちゃんの指導の下で修行して飛べるようになったんだよね。

 

 正確に言うと鳥みたいに自力で飛べる訳じゃ無いんだけど……

 跳躍する時により高く跳び上がるために使ったり、滑空したり、落下速度を物凄くゆっくりにできるようになったんだよね。

 似たような魔法もあるんだけど、ヘカの消耗量が多少多くなる事に目をつぶるとしても魔法と違って術式を構築するっていう面倒な行程を省略できるのはかなり便利だよ?

 

 蟲惑魔一族は新しい落とし子が生まれるたびに特殊な能力であったりその個体を象徴とする特徴を持って生まれるんだけど、僕のはどうやらこの飛行能力みたい。

 

 そんな自慢の葉をこれでもかと伸ばして……

 

 

「あぁ~……授業サボって光合成するの最っっっっ高ぉ~………」

 

【そんなに……授業は嫌………?】

 

「ん~……?

 …………………別に~、嫌じゃないよ?

 むしろ新しい事を沢山知れるから好きだよ~?」

 

【じゃあ……なんで?】

 

「ティオ姉も絵を描くの好きだけど、毎日、それも半日も誰かに言われて描かされてたら同じ事言うんじゃない~?」

 

【……………確かに、絵、好きだけど……そうなる………かも???】

 

「そうだね~」

 

 

 …………はい、会話終了。

 

 こうやって特に何も無いけど、側にいるだけで落ち着ける存在とただただ時間を浪費するという貴重な時間のありがたみを噛み締められるのは人間世界の慌ただしさを知ったからだよねぇ~。

 

 本当、場所がデュエルアカデミア中等部野外デュエルスペースの端っこなんて騒がしいところじゃなければ日当たりも風も良い感じでもう何も言うことなかったのにねぇ~。

 

 ティオ姉は自分で出した大きな葉っぱの上に寝転がり、そのティオ姉の上に僕が重なって丁度十字になっている状態でかれこれ……あぁ~、もう2時間以上も経っていたのか~。

 光合成してるとあっという間だよね本当。

 なんていうか、光合成をしている間は思考力が低下しているっていうか、ポワポワとした気持ちで全部流れていって空だって飛んでいけそう。

 まあ僕は飛べるし丁度今はティオ姉だけだから1人だけなら運んで飛んでけるね。

 2人以上はちょっと厳しいかなぁ~。

 

 

【そういえば……今日……水浴び……だよね?】

 

「ふえ?……………………あ!今日か!?」

 

 

 姉さんの言葉にポワポワした気持ちから一気に引き戻され、設置されている大きな時計に目をこらす。

 あの針の時計、アナログって言うんだっけ?

 とにかくあの針で時間がわかるやつ、まだ一目で読み取れるだけなじめてないからじっと見ちゃうしゆっくりじゃないと読み間違えちゃうのも仕方ないじゃん。

 

 えっと、確か水浴び……ではなく水泳の授業は午後からだったはず……あ、まだお昼休み少し前くらいの時間か。

 

 

【ん……サラちゃんの水着……楽しみ】

 

「え?プールじゃなくて僕の水着?」

 

【沢山の水はあまり……そういうのは、ジーナちゃんやトリオンちゃん】

 

「そっか~。てっきり姉さんの事だし移動が面倒なんだと思ってたよ」

 

【ん、それもある】

 

「よっ、と。

 それじゃ姉さんが楽しみにしてくれているしさっそく着替えるね~」

 

 

 姉さんの葉っぱから降りて上から脱いでいこうとしたけど、上だけ脱いだところで着替えをしまったままだと気付く。

 

 

「【コールゲート】」

 

 

 術の土台を作りヘカを込め、キーワードを口にすることで術が発動して空中に闇を凝縮したかのような黒くて小さなゲートが出現し、そこから目当てのバインダーが落ちてくるのでキャッチする。

 

 

「えっと、水着水着……これだ」

 

 

 バインダーから1枚のカードを取り出し、姉さんの葉っぱの上に置いて「発動」することで水着が出現する。

 

 ちゃちゃっと水着に着替え、水着を着ている間に姉さんが簡単に畳んでくれた服を「セット」する事でカード化する。

 

 ウィッチクラフト製作のマジックバインダーは本当に便利。

 人間世界の科学技術っていうのも凄くて便利なんだけど、重力魔法の応用で重さの軽減なんかもできる魔法工学の方がやっぱり重宝するって感じがするよね。

 

 

「これが水着なんだけど……どう?」

 

 

 バインダーを収納しコールゲートを消してから水着をみせるようにいろいろとポーズをとる。

 

 

【お~……似合う。

 サラが黒、珍しい……かわいい。

 けど……さっき着てた服……と、あまり変わらない……???】

 

 

「あ~……うん。そうだね、着てる途中で僕も思った」

 

 

 さっきまで着ていた服はアトラ姉さんの服と似たような感じの服で、人間界のファッション的に言うと……

 

 おへそが出るフリルのついた灰色のキャミソールに紺色のデニムスカートって感じかな?

 

 まだ人間世界のファッションには疎いから正確な名称はわからないけれど、私も含め姉さん達もみんな自分の魅力を際立たせる事には力を惜しまないから他の物事よりは理解が早いよ。

 でないと獲物から搾り取れないからね~。

 

 それはさておき水着なのだけど、葉をすぐに出せる状態にしておかないと体調を崩す体質を考慮されてアカデミア推奨のスクール水着や海パンと呼ばれるモノとは違う水着の着用を許可してもらえた。

 

 僕は海パンでもいいって言ったんだけど駄目だって明日香さんにメチャクチャ叱られた。

 

 それで僕が着ることになった水着は光合成の為にお腹辺りで上下に分かれてる黒の水着でね、上はピッチリとしたスクール水着みたいな感じで、下はパンツタイプのものだよ。

 そのパンツの端のゆったりとしている部分をつまんで少し持ち上げてみたりといろんなポーズで姉さんに見せたんだ。

 

 けど、姉さんが言うように偶然にもさっき着ていた服と形状がダブっちゃった。

 デニムスカートとパンツで差はあるけど丈は同じくらいだし……

 強いて言えばパンツの方が材質の関係でヒラヒラしていてるかな。

 

 

「……?」

 

【……見られてる、ね?】

 

「うん、そうだね?」

 

 

 何故か周囲の視線が物凄く集まっている。

 あまり人はいないのだけど、デュエルの手を止めてまでこっちを見ているのはビックリだよ。

 

 

【美味しそう………サラも立派にチャームができるだけ成長した。

 私、嬉しい……かも? けど、ちょっと、寂しい?】

 

「え?ヘカも術も使ってないけど?」

 

【元々チャームにヘカも術式も必要無い……私達蟲惑魔はチャームにヘカを込めて何も考えられないくらい強力なモノにしているだけ、だから、土台がしっかりしてればより強力に、強固に作用する。

 何も無しにこの威力……流石、私達自慢の妹だね………】

 

「そ、そうかなぁ?……えへへ」

 

 

 撫でられながら褒められちゃった。

 ティオ姉さんは本当にそう思っていてくれているのか、普段の口数の少なさと辿々しさからは信じられないくらい流暢な口調で語りかけるように褒めてくれて、そのトーンからも嬉しさが伝わってきて僕の胸に幸せな感情があふれ出てくるのを感じる。

 

 

【ん?】

 

「あ、チャイム鳴った。 食堂でお昼食べよっか」

 

【ん】

 

 

 実体化していた姉さんは半透明な姿になって飛んでついてくる。

 実体化したままだと飛べないもんね。

 でも苦労して飛べるようになった僕からしたらちょっとそれズルいと思う。

 

 しっかりと背中の葉をしまってから食堂に行ってバインダーから朝買っておいたパンを取り出して食べようとしたんだけど、万丈目さんに「お前は何でもう水着になっているんだ」と突っ込まれた。

 

 本当はアカデミアのルールとして決められた時間に着替えないと駄目だったみたい。

 

「そんなの校則に書いてなかったじゃん」って小さく反発してみたんだけど、「そんな事まで一々書いていたらお前が前に出した魔法書並に分厚くなるわ」って言われて「確かに」って納得したので僕の完全敗北だった。

 

 それにしても取巻太陽くんと慕谷雷蔵くんは最近全然目を合わせて話してくれないんだけど、万丈目さんは……

 時々、一瞬だけ僕の胸元とかに視線が行くけど、基本的には目線を離したり対応を変える事が無く、間違ったことをしたらその都度指摘してくれて、やっぱりそういう積み重ねから強く信頼できるし側に居てても良いんだって感じる。

 

 元々取巻くんと慕谷くんの2人は僕に対して甘いというか過剰に優しい対応をしていたんけど、最近は特にそれが強くなったんだよね。

 万丈目さんは関しては、今は僕のわがままで砕けた感じに接してくれて、最初の頃は女性に対する接し方とあまり変わらず、けれどデュエルに関しては男女関係無い、万丈目さんの出せる力を惜しみなく出してくれるストイックさがとても良い。

 

 ここまでの評価に嘘は無いんだけど、実は他にも万丈目さんの近くによくいるのには理由があって……

 明日香さんの友達のジュンコさんとももえさんって2人がいるんだけど、この2人が僕を捕まえようとするのを何かと理由をつけて助け出してくれるんだよね。

 これにはもう感謝しかないよ本当。

 

 ジュンコさん達に捕まったら美容の話しをされたりやたら肌を触られたり、最近は葉の付け根が気になるって言われて初めてそんなところ触られたんだけど、そこを触られると凄くくすぐったくなるなんて初めて知って、それを知った姉さん達におもちゃにされて……

 まったく、あの2人は本当に怖いもの知らずというか遠慮知らずというか……遠慮知らずだよ!

 

 

 

 

 はい、楽しい水泳の授業で完全に人外行動をしてしまっていた事を教えられたサラちゃんです。

 

 僕はね、葉が太陽の光を浴びてさえいればそれで呼吸しているのとあまり変わらないから長時間潜っていられるんだ。

 だから泳ぎの練習ついでにいつもの水浴びを楽しむ感覚でずっと潜ってたんだけどさ、どうやら人間さんは10分も潜ってられないし、仮にできても息が荒れないなんて有り得ないようで益々奇怪なモノを見る目線で見られるようになっちゃった。

 

 これには流石にやっちゃったかなって思って落ち込んでたんだけど、「お前はお前だ。俺が認めるデュエリストの1人だ」って万丈目さんが……

 万丈目さんはデュエルに関してはプライドの高さから相手を過小評価するときはあるけど、そんなお世辞を言うタイプじゃないのにそんな言葉を口にしたって事はあのデュエル地獄の日々を見てそう評価してくれていたって事!?

 それもこのタイミングになるまで温存して励ましてくれたの!?

 取巻くんと慕谷くんじゃないけど、「万丈目さん付いていきます!」って気持ちがわかった気分だよ。

 

 そんな風に思ったタイミングで職員室に呼び出しを受けて、水泳の事がもう職員室にまで……ってビクビクしながら職員室に向かったんだ。

 その時も万丈目さんが側に付いてきてくれて……ちょっと万丈目さん良い人過ぎない!?

 

 その結果、「お、お前は外で着替えるなんていったい何を考えてるんだ!はしたないだろッ!!!」

 

 ……って、顔を真っ赤にした万丈目さんから本気のお説教を受けることになりました。

 その怒り方が、昔危険な事をした僕の事を本当に心配して叱ってくれたランカ姉さんの姿を彷彿とさせて、正直かなり怖かったけど……

 本当にこの人は僕のことを心配してくれているんだなって思えて、勝手だけど僕の中で万丈目さん……いや、万丈目と僕は友達になれていたんだと強く感じる事ができたんだ。

 

 もし今すぐ万丈目なんて呼び捨てにするような事をしたら絶対に叱られるからしないけど、隙を見て呼び捨てで呼んでみよう。

 それが駄目なら万丈目くんで。

 

 

 しかしそれを実行する前に明日香さんに呼び止められ、背後に控えたジュンコさんとももえさんの3人がかりでの説教をしかけてきて……助けて万丈目!って振り向いたのに「自業自得だ馬鹿」って置いてかれた。

 今回ばかりは万丈目くんも助けてくれなかった。ぐすん。

 





 ウィッチクラフト制マジックバインダーには全てのカードにカード化限度枚数が存在しないので便利。
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