蟲惑魔とGX世界   作:メリルメリルメリル

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 今回はいろんな設定が出てきます。
 こういう設定考えたりとか矛盾だらけでも考察して遊ぶの好きなんで入れた。
 学園祭回3つに分けたけど4つに分けた方が良かったと書き終えてから思った。



 誤字報告ありがとうございます。


学園祭3

 

 ラドリーちゃんが放った巨大なエネルギーが確実に確実に明日香先輩を飲み込み、そして爆発した。

 

 

「やった……ヤッター!明日香さんに初めて勝てた!」

 

【やったね!】

 

 

 ラドリーちゃんとハイタッチをして喜び合う。

 欲を言えば……今回のこのデッキみたいなのを1発ネタって言うんだっけ?

 コレじゃなくていつもの主力デッキで勝ちたかったけど、負け続きだった相手に勝てるとこんなにも嬉しいんだって初めて知った。

 

 いずれ本気のアトラ姉さんに……は、まだ勝てるイメージがわかないなぁ……

 今回のデッキで挑んだらウイルスカードで魔法カード全部消し飛ばされる未来しか見えない。

 僕にはわかる。

 

 

「悪いのだけど、まだデュエルは終わっていないわよ?」

 

【え?なんで!?】

 

「まさか……」

 

 

 ソリッドビジョンの煙から無傷の明日香さんが声をかけてきて、その姿を確認してビックリして1歩下がってしまう。

 けれど、この現象には覚えがあった。

 

 

「まさか!『発動していたのさ!』を成功させたの!?」

 

 

 『発動していたのさ!』とはスポーツで言うところのゾーンに入ったデュエリストがよく使う超高等テクニックである。

 

 デュエルディスクを用いて行うデュエルとテーブルで行うデュエルでは決定的に違う部分が存在する。

 それこそがカードごとに発動するまでの時間が違うところだ。

 

 これは一例でしかないが、

 

 ・伏せたトラップカードが完全に起き上がるまでの時間。

 

 ・効果が発揮する知らせとなる光る演出が終わるまでの時間。

 

 ・発揮される効果が完全に適応されるまでの時間。

 

 大まかにこの3つの時間が存在し、テーブルでデュエルする分には強力であってもこの時間的要素で使いにくくなったり無効にされやすい等の現象が生じてくる程に重要な要素だ。

 

 デュエルディスクでのデュエルの判定は全てデュエルディスクに委ねられているのでコレらを上手く活用する事で普通のカードをカウンタートラップ以上の無効不可なモノへと昇華させることができる。

 

 けれどこれは本当に難しいテクニックなのだ。

 

 何故って、今回みたいな直接攻撃に対する『発動していたのさ!』は、自分が発動するカードの上記の時間を完璧に把握して、目の前に迫る敗北を確信させるプレッシャーを見つながら着弾の時間を見切り発動させなければ成立しないんだよ!?

 

 ちなみにプロデュエリストはそれらに加えて今の僕達の何百倍もの視線に囲まれながら、何万・何十万・何百万・何千万人ものファンからの期待と、勝利し続け積み上げてきた分だけのプレッシャーと戦いながら上記の時間を把握し、その一瞬によって勝敗を分けてしまうような激戦を日夜戦いを繰り広げているのである。

 彼らプロデュエリストの精神力も記憶力も反射神経もいろいろと化け物だよ。

 

 

「ええ、でもあれだけ大きなエネルギーだったもの。

 貴女の死角になってから使えば良いだけだしそんなに難しくなかったわ。

 私が発動していたのはこのカード、和睦の使者よ」

 

「なるほど、バリアを展開する系や効果を与える系じゃなくて発動したらターン中常時効果が適応されるタイプの……ん?」

 

 

 え?じゃあ何でわざわざ『発動していたのさ!』をして……

 

 ………そっか、明日香さんもこの舞台を盛り上げようとしてわざとこうしてくれたんだ。

 これがリスペクトデュエルってもの……なのかな?

 

 

【あ~、今回もダメだったね】

 

「そうだね~また負けちゃったかぁ~。攻撃しても意味無いしターンエンドだよ」

 

「私のターン、ドロー!

 サイバー・エンジェル-弁天-でドラゴンメイド・パルラに攻撃!」

 

 僕のライフは残り2100。

 パルラ姉さんの攻撃力は3000で4300の弁天さんの攻撃で1300のダメージが入る。

 そこに効果が加わりパルラ姉さんの守備力分のダメージも入る事で僕は敗北した。

 

 

 

 

 デュエルの後に簡単に挨拶したり未だに慣れない写真撮影を終え、僕が先に休憩を取る事になったから控え向かう。

 優秀生クラスの横には教室と繋がっている部屋があって、そこは教室の半分ほどとそこそこ広い物置になっていてそこを控えとして使っているから優秀生以外は誰も来ない。

 

 

「むうぅうぅ~!また負けたー!万丈目慰めて~!」

 

「うぉおい!お、お前!ええいくっつくな!」

 

 

 そこにいるだろう万丈目を見つけ次第隠れながら接近、そして背後を取り肩から腕を回す形で抱きついて他に誰もいないのを良い事にいつもより強めにじゃれる。

 万丈目は大きいからジャンプして飛び掛かる形になるし足が付かなくなって、振りほどこうとされるから足が振り回される。

 せっかく人間の友達を作ったんだからって変な気を回されてアトラ姉さん達がどっか行ちゃった分だけ甘えるつもりでウザ絡みを仕掛けてやるんだから!

 

 

「ん?は~い、どうぞ~」

 

 

 とか馬鹿な事をしていたらノックがしたので返事だけして続行。

 

 

「失礼する。準はいる……か……」

 

「なっ!?長作兄さん!?正司兄さん!?」

 

「え?万丈目のお兄さん?」

 

 

 確かに顔付きがそっくりかもって興味を強く引かれたので万丈目から降りて近付く。

 

 

「隼、お前………って何だ!?近い、近いぞ!?」

 

 

 しまった。完全に万丈目に近付く感覚だったから距離感間違えた。

 

 

「あ、ごめんなさい。近かった?離れるね。

 ………ふふ、ねえ万丈目……だと、紛らわしいね。ねえ準くん」

 

「じゅ!?……仕方あるまい」

 

「やった!ねえ準くん、お兄さん準くんそっくりな反応するね」

 

「俺と長作兄さんが?」

 

「うん。反応がそっくり。優しそうなお兄さんだね」

 

「お、おい準こっちこい。(おい、その娘は……お前の彼女か?)」

 

「は、はぁ!?」

 

 

 お兄さんが万丈目の肩組んでそんな事を耳打ちしてるのに驚きはしても全然嫌がっている様子がない。

 いいなぁ、僕もそうやってふれあいながら話していたい。

 ちょっと触っちゃお。

 

 

「い、いえ。正司兄さんコイツは……近い、触るな、離れろ」

 

「え?なんで?距離はいつもこんなかん、ちょっ、押さないで!わかった!わかったから!

 ……もう、準くんの照れ屋さんめ」

 

「てれ……」

 

「じゃあ僕はここ座るから良い感じにして」

 

「お前はいい加減距離感くらい自分で覚えろ!……長作兄さん、正司兄さん。

 コイツが例の精霊に育てられた人間で名前はサラです」

 

「ほう……なるほど、その娘が例の……というか男、なのか?」

 

「いや、この娘が男なのは無理があるぞ。

 声もそうだが、メイド服越しでもわかる程に骨格、肩の感じが違いすぎる。

 何より……いや、何でも無い。

 とにかく無理があるぞ」

 

 

 はい、今絶対に視線が僕の胸に来たぞ~。

 蟲惑魔な僕がその気配に気付けないなんて、近くでカレー作ってるなってのいうのを匂いで気付けないのと同じくらい無い事だから無理だってば。

 

 僕の胸ってギリギリBに届かないAカップで身長や年齢考えればある方なんだよね。

 特に今は胸のラインがわかりやすいパルラさん風メイド服を着てるから男は無理があるって言葉も納得できる。

 

 僕の胸に向けられるその視線に合わせ、人差し指を両方のほっぺに当てた可愛い満笑顔を差し込んでみる。

 すると長作お兄さんはハッとして片手で口元を押さえて少し顔を背けた。

 

 

「コホン、失礼した」

 

「うん。それよりどうです?」

 

 

 両手でスカートを軽く持ち上げカーテシーをしてからいろんなポーズを取ると「これは、どうも」と、ほんの少しトーンの上がった中々に良い感じのお言葉を長作お兄さんから頂きました。

 

 

「あ、そうだ。ちょっと待ってて」

 

 

 そんな感じに見せてる途中で思い付きでカメラを持ってくる。

 撮るとすぐに写真が出てくるけど、写真が反映されるまで時間がかかるタイプのやつ。

 

 

「せっかくだし4人で写真とりません?

 僕の魔法で4人同時でも大丈夫だから。ねっ?」

 

「……せっかくだし、か」

 

「それもそうだな。撮るぞ準」

 

「兄さん……わかりました」

 

 

 お兄さん達がノリノリなのを見てちょっと複雑な心境っぽいんだけどほんの少し嬉しそうにしてる。

 やっぱ照れ屋さんじゃん。

 

 でもなんか……兄弟って初めて見るけど面倒くさいというか、もっとコミュニケーション取ろうよ。

 姉妹とじゃこんなにも違うなんて思いもしなかったよ。

 

 お金持ちでいろいろ忙しいって聞くし万丈目兄弟が特別なのかな?

 それとも私達が特別なの?

 そりゃ蟲惑魔と人間さんじゃ違うかもしれないけど、やっぱり万丈目兄弟が変なんだと思うよ?

 

 変ではあるけど、愛情があるからたぶん大丈夫だと思う。。

 万丈目のお兄さん達は、視線や僅かな動作から万丈目の事が気がかりな様子だと見てとれて、つまりそれってさ、それだけ大切にしてるって事じゃん。

 ただ万丈目にはそれがあまり通じてないように感じる部分はちょっと不安だけど、僕が口出しする事じゃないしね。

 

 しかしこれは、なんか、凄く、凄いね?

 なんだろう、ティオ姉と違ってとても流暢で凄く聞き取りやすい言葉なのにティオ姉以上に通じないなんて事がこの世にあったんだって驚きだよ。

 

 

「それじゃあ撮るよ!はい、チーズ!」

 

 

 そんな事思いながら空気を和ませる為にも4人で人数分の写真を撮り、次に僕とペアで順番に撮る。

 

 ペアで撮る時は身長差がありすぎるので魔法で浮いて全身のものと上半身だけの写真を。 

 

 そして最後に万丈目兄弟だけで3枚の写真を撮った。

 

 この順番がけっこう大事でね、いきなり兄弟だけでって言っても最初の様子じゃ「せっかくだし」ってならないから。

 こうやってハードルを下げておく必要があったんだ。

 万丈目兄弟程酷くないけど、ランカ姉さんが似たような感じだから扱いに慣れていて、それに助けられたよ。

 

 ……あ、そっか。

 僕の姉さん達がみんなランカ姉さんみたいな性格だったらって考えれば……ごめんなさいランカ姉さん。

 姉さんには悪いけど、正直凄く面倒くさいよそれ………

 

 

「最初の方の写真がもう浮かんでるよ。ほらこれ!

 ………なんか万丈……準くんいつもより表情柔らかくない?」

 

「はぁ!?貴様適当な事を言うな!?」

 

「何で?僕はこの表情好きだよ?」

 

「ぐっ……本当に、ふざけるなよ」

 

「ふざけてないもん」

 

「そう言うな準、いい娘じゃないか」

 

「兄さん……それでもコイツは男ですよ………」

 

「いやだからそれは有り得ないだろ」

 

 

 む……なんか万丈目が珍しく差別的っていうか、やたら距離を取ろうとする。

 

 というか確かに身分証は男性になってるけど僕の体9割は女性の両性だってば。

 なんかこうやって変な区別のしかたをされたままでいると面倒な事になりそうだから訂正しとこ。

 

「あの~……僕は精霊として体の最適化を行ってる最中で、今は両性だけどいずれ完全な蟲惑魔として女性になるから、男でも女でも間違ってるし間違ってないよ?」

 

「そ、そうなのか……?」

 

「うん。というより準くん?

 女や男以前に僕の事人間って紹介してたけど、そっちの方が無理があるんじゃないの?」 

 

「人間って言い出したのはお前の長女なんだが……」

 

「駄目だよ万丈目!

 あれはアトラ姉さんの渾身の冗談だったんだろうけど引くに引けなくなっちゃっただけなんだからスルーしてあげなきゃ可哀想じゃん!」

 

「は?冗談?」

 

 

 ……え?この反応もしかして本気で僕の事を人間だって信じてる?

 嘘でしょ……まさか万丈目がそんなに純粋だったなんて………

 これは意外な一面を見れたね。嬉しいけどどこかの誰かにいつか騙されそうで不安になるね。

 

 

「いやさぁ、逆にどこの世界に光合成しないと体調崩すし背中の葉っぱで空を飛べる両性の人間がいるの?」

 

「そうだな。間違いなくそれは人間の枠組みからは外れている」

 

 

 正司お兄さんから強い口調での肯定をしてもらえたし「ですよねぇ~」って困った感じに返事を返す。

 

 そして、真っ直ぐと目を見て「準くん」と名を呼び、僕がどれ程真剣に話そうとしているかという空気を作り出してから言葉を続ける。

 

 

「前に準くんがさ、『そんなのはデュエリストとして些細な差だ』って感じの事を言ってくれたの覚えている?

 僕はさ、それが凄く嬉しかったんだよ?

 それにあの時だけじゃない。

 そう、今、これだけ一緒に過ごしているのに今も本気で僕を人間だと思ってくれていた。

 つまりそれってさ、僕の事を完全に受け入れてくれてるって事じゃん?

 僕はね、凄く、凄く嬉しいんだよ。

 万丈目と最初の友達になって、最初に友達になれた人間が万丈目で良かったって思えるくらい」

 

 

 じ………っと目を見つめて僕の気持ちをぶつけた。

 これくらい蟲惑魔一族じゃわりとデフォなやり取りだから目を背けて照れないでよ。

 ついでにここまではしなくて良いけどさ、少しは見習って本音でお兄さん達と話そうね?

 

 

「けど、準くんはそれで良いとしてもさ、お兄さん達には正しく教えなくちゃいけないんじゃない?

 ほら……一部のアカデミア生が向ける恐れの視線に気付けない程僕は鈍感じゃないし、その理由もわかるから。

 友達付き合いに口出しするのはあまり褒められた事じゃないとも思うけどさ、やっぱり例外はあるよ。

 その中でも種族の違いなんて十分過ぎるほど例外に当てはまる内容だと僕は思うな」

 

「……お前、そんなこと思っていたのか?」

 

「思っていたというか、常識?

 ……うん、常識の違いだね。

 僕ら蟲惑魔は数が少なくて一族全員が家族だから、友達は必然的に他種族になるからさ」

 

「なるほど……」

 

「………さってと!それじゃ僕はこれくらいにして他のとこ行ってくるね」

 

「は?なんだ急に?」

 

「いやさ、最初はちょっとお兄さん達見て部屋出ようとしてたんだけどさ、あの様子じゃ準くん達写真の1つも撮らなさそうだなって思ったからちょっと長居しすぎちゃったよ。

 ……ほら見て、やっぱり良く撮れてる。これは僕の分だから持ってくね。

 それじゃ万丈目、また午後頑張るから。後でね」

 

 

 そう言って手を振りながら教室をあとにする。

 

 

 

 

 万丈目兄弟と戯れ終え廊下に出るとやっぱり人が多くて落ち着かない。

 ただでさえ人間界に慣れきっていないのに、お祭というだけあって見知らぬ人が沢山来ていてなんか別の場所へ来てしまったのかと錯覚しそうになる。

 

 

「ふぅ~……あ~緊張したぁ~………」

 

 

 そんな廊下で誰にも聞こえないくらい小さく声をもらす。

 別に万丈目兄弟と話した事に緊張したんじゃないんだ。

 

 カメラに撮られる事に緊張をしたんだよ。

 

 何故って精霊界じゃ犯罪だからね。

 正確に言うと魔法都市周辺じゃ犯罪で未だに『物に姿を固定し宿す』ってなると凄く悪いことをしている気がしてちょっとゾワゾワする。

 

 カメラのような道具を作ることは当然として持ち込みすら固く禁止されている。

 これは人間界で言うところの銃を持って飛行機に乗る感覚って感じかな?

 

 ……こんな例えがすぐに出てくるって僕もずいぶん人間界色に染まったなぁ~。

 取巻くん達が貸してくれたのが知るきっかけになった映画という娯楽が楽しすぎるのが悪い。

 

 禁じられている理由は宗教的?感情的理由かな?

 僕を含めて若い精霊にはどれ程恐ろしい事かはわからないけど、昔石板に精霊を封印する術を手得した人間がいて、しかも国家規模で存在していたのが理由らしい。

 

 そんな昔の事をって思うかもしれないけど、昔は無法だったからこそ今の常識じゃ倫理観が邪魔して絶対に使えないような邪悪な術とかも存在したらしくて、それを考えると元々強力な『物に収める封印術』を軍事的接点の無い人に発展させる機会を与えるのは不味いって僕にもわかるよ。

 だからこそ犯罪なんだろうね。

 

 ……あ、駄目だこりゃ。

 やっぱりアクション映画に毒され過ぎてる。

 眠れない夜は姉さん達やラドリーちゃんポトリーちゃんなんかと映画を見て時間潰してる影響で自然と『軍事的』なんて言葉が浮かんできたよ。

 島を出る前の僕なら確実に『戦う為の群れ』とか言ってたのに。

 

 でも映画って面白いし仕方ないじゃん。

 前見た映画は飛行機に実弾の銃を持ち込めないからって理由でカードを弾にして飛ばす銃を『玩具だ』とか言って持ち込んで、機内で沢山の悪党に発砲して当然のようにカードが刺さって、あきらかに軽傷なのに悶絶してるシーンなんて爆笑もので……

 

 

「あ!サラちゃん!」

 

「お~?ジュンコさん?あれ?1人?珍しいね~」

 

「でしょ~?」

 

 

 おぉ~……油断したなぁ~………

 いつもセットで気配を把握してたから片割れってなったら全然気づけなかった。

 そして当然のように後ろから抱き持ち上げられて足がつかない。

 人間さん皆大きすぎるんだってば!

 確か前に明日香さんは170センチって聞いたしジュンコさんはそれより少し小さいくらいなんだけど、僕は135センチ33キロでちょっとで済ませて良い差じゃない!

 平均的な蟲惑魔サイズだよ!

 

 

「ジュンコ、その子お友達?」

 

「そうだよ。ほら前に話した精霊の女の子のサラちゃん。可愛いでしょ~」

 

「あらまあ、お人形さんみたい。妖精さんって言われても納得できそうなくらい可愛い子ね」

 

 

 お~っと、ジュンコさんに取り押さえられた上でジュンコさんそっくりな人とで完全に挟まれちゃった。

 ……本当にそっくりな人だね。

 

 

「もしかしてジュンコさんのお姉さん?」

 

「あらまあお世辞が上手」

 

「いやいや、お母さんだよ。私のお母さん」

 

「………おかあさん?」

 

 

 おかあさん……どっかで聞いたことあるような…………

 

 

「う~ん……???」

 

「あれ?どうしたの?」

 

「ちょっと待って、ここまで出かかってる」

 

 ……………あっ、思い出した。

 以前見た映画で『君のお母さん達は無事だ。だからここから脱出するんだ!』って言ってたアレだ。

 あの後聞き慣れないワードだったから調べたら家族関係の一種だって知ったんだった。

 それまで家族関係って兄弟か姉妹の二種類しか知らなかったんだよね。

 

 

「あぁ!お母さん!うんそっくりだね!」

 

「……サラちゃん?なんか今日ちょっと変?さっきのデュエルで疲れたのかしら?」

 

「そうじゃなくて僕はお母さんって知らないからさ」

 

 アトラ姉さんは僕ら蟲惑魔を産んだのではなく、その漏れだした力によって自然発生させたからそもそも生態が違うから仕方ないじゃん。

 

 

「………え?サラちゃん、お母さんいないの?」

 

「ん?姉さん達しかいないよ~?」

 

 

 ……あれ?もしかして返答間違えた?

 この気配、なんか嫌な方向に向かいそう。

 

 

「あの、達しかって言っちゃったけど、沢山いるのにしかって言い方は変だったかも。

 あと、姉さん達は僕が物心付く前からとっくに大人だったから大人の保護者は姉さんで……それに姉さん達は僕を大事にしてくれているよ?」

 

 

 だからそんな僕を心配するような負のオーラを発しながら抱き抱える止めて。

 さっきは気持ち的にだったけど今は物理的に凄くゾワゾワする!

 ……って、あれ?まだ降ろしてって言ってないのに降ろしてくれた。なんで???

 いつもは嫌とか言って疲れるまで降ろしてくれないのに?

 

 

「そう言うジュンコさんの父上は?」

 

「父上って呼び方珍しいわね」

 

 

 しまった。アクション映画でお母さんはあまり出てこないけど『君のお父上が残した物だ』的なセリフを聞いた回数が多かったからこう言ったけど、父かお父さんの方が当たりだったみたい。

 3択外すのなんか悔しい。

 

「お父さんは仕事だよ?」

 

「優しい人?」

 

「それはもう!自慢のお父さんよ」

 

「そっか~」

 

 

 ……お父さん、お母さんってどんな感じなんだろ?

 さっきの感じからしてたぶんお母さんやお父さんがいない事が地雷なんだよね?

 聞きたいけど映画のマイケルが言ってた『地雷原でタップダンスする』ようなものだろうしジュンコさんに聞くのは止めとこ。

 

 その後も長くなりそうだったから適当に理由付けて抜け出した。

 マイケルもあのセリフの後10分とかからず爆発してたから余計なことはしないのが一番だね。

 

 

 

 

「……という事があってさ、万丈目と明日香さんにとってお父さんとお母さんってどんな感じ?」

 

「その流れで俺達に聞くのか……」

 

「駄目だった?」

 

「私は大丈夫よ。

 他のクラスと違って私達のクラスだとサラさんの家庭事情や関係性は詳しいし良い判断ね」

 

 

 現在はメイド喫茶事態が休みの時間帯。

 このメイド喫茶の休み時間が終わったら僕が出て次のデュエルの時間まで明日香さんが休みという事になっている。

 

 その時間帯に相談があるって言って、アカデミア中等部で僕が生活している部屋に招待してお昼を食べながら明日香さんに聞いてみることにした。

 

 したところで偶然にも暇そうにしている万丈目を回収してきたって感じ。

 初めからお兄さん達は生でアカデミアでの万丈目の様子を見るのと軽く話すのが目的だったらしくて終わったらすぐに帰っちゃったんだって。

 やっぱり写真撮るの誘ったのファインプレーだったじゃん。

 

 

「けど、いきなり聞かれても困る内容なのも事実よね。

 どう答えようかしら……」

 

「こういう時は姉さん達と言う思いつきワードが良いと思うんだ」

 

「思いつきワード?」

 

「感じた事を言葉にするのが難しいなら何でも良いから思い付く事をぶつ切りでもとりあえず口にするって伝え方なんだけど難しい?

 例えば……よくわかんないから適当に言うけど、お母さんとお父さんとは『友達とあまり変わんない存在』……とか?

 1つじゃなくて思い付く事沢山言ってくれると助かるな」

 

「なるほど。

 ちなみにそれ、案外的外れじゃ無いわよ?

 そういう家庭もあるらしいけど、少なくとも私達は『友達とあまり変わらない存在』には当てはまらないと思うのだけど、万丈目くんもそうかしら?」

 

「あぁ。友達と変わらないなんて言ったら殺される。

 俺にとっての親は『越えるべき存在』だな」

 

「『側にいることが当たり前で守ってくれる人』かしら」

 

「『見本とし己の力に変えるべき存在』」

 

「『この人に認めてもらいたいと思う人』」

 

「『厳しい』」

 

「『優しいけど厳しい人』」

 

「『俺の根本となる部分に強い影響を与えた人物』」

 

「『よく叱りよく誉めてくれた人』」

 

「『必要であれば嫌でも押し付けてくる』」

 

「『悲しい時とかに甘えさせてくれる人』」

 

「『俺を産んだ存在』」

 

「……万丈目くん、貴方のお家ちょっと殺伐としすぎていないかしら?」

 

「厳しそうだけど優しそうなお兄さん達だったもんね。

きっとお父さんも似た感じなんだよね」

 

「さっきもそんな事いっていたな。優しそうか?」

 

「万丈目がそう感じるのはコミュニケーション不足なだけだってば」

 

「……それで、何かわかったか?」

 

「うん!よくわかったよありがとう!」

 

 

 必要であれば僕が嫌がってもモノを与えようとしてきたりするけど、それは優しさ故の厳しさ。

 僕が間違ったり危険な事をすれば叱ってくれて、友達と喧嘩しちゃって悲しくなった時は沢山甘やかしながらも諭してくれて、僕という……サラムトリフィという存在の根元に直結する、いずれ越えるべき存在。

 

 

「つまり僕にとってのアトラ姉さんみたいな人って事だね」

 

「……どう思う天上院くん?」

 

「サラさんが満足そうだし良いんじゃないかしら?」

 

 

 満足のいく答えが出てスッキリした僕は後半のメイド業をこなして明日香さんとのデュエルなのだけど……勝っちゃったよ。

 

 早い段階でシエンの間者でデビルコックを送りつけてキラー・トマトを突撃させる事に成功して、最後にはカタパルト・タートルに攻撃力上げたパングリーバーガーを射出して勝利した。

 ラドリーちゃんがカタパルト・タートルを落としたのが悪いのであって僕は悪くない。

 でも勝てて嬉しかった。

 

 

 

 

学園祭が終わったその夜。

 

 

「アトラ姉~」

 

【ん~?もしかしてサメ映画かしら?】

 

「アトラ姉サメ好きだよね~」

 

【あのメチャクチャな内容を低予算で真面目にやっているのが面白いのよ】

 

「ん~……姉さんが見たいのなら見よっか」

 

【やった】

 

「それよりアトラ姉」

 

【なあに?】

 

「甘えても良い?」

 

【え?何かあった?】

 

「特に何もないけど、なんとなく気分……ダメ?」

 

【ううん、おいで。沢山撫でてあげる】

 

 

 アトラ姉さんに膝枕してもらい撫でて貰いながらサメ映画を見た。

 お母さんってこんな感じか。うん。確かにこういう存在がいないってなると同情したくなるのも頷ける。

 

 ただサメ映画はいったい誰がこんな作品作ろうなんて思ったんだという内容だった。

 幽霊になったサメが水さえあればどこにでも現れるって何なの???

 まあ、アトラ姉さんが時折変な笑い声漏らして楽しそうだったから良いけど……

 






 発動していたのさ!の説明の内容について。

 アニメGXにて大徳寺先生の罠で野外授業という名目で墓守のいる場所に連れてこられる回があるんですけど、その時のデュエルでとあるモンスターが十代に直接攻撃をするのを一瞬ためらい、その隙に十代は罠か何かを発動し窮地を脱するのですが……

 その直後のやり取りがまるで十代が発動する時間すら与えず攻撃を当てていれば勝っていたと取れるような内容でして(うろ覚えなので間違ってたらごめんなさい)
 カードゲームではあるがテニス等の球技みたいに止める事ができないし、沈黙は肯定と取るみたいに一度止まるとライフを取られる結果のみが襲いかかるんじゃないかなって。

 他にデュエルで効果の説明を無しにわからん殺しもこの世界では立派な戦術なんだと思う。
 ルール的には問題ないが倫理的には大問題なだけで。

 そしてプロデュエリストはただ強いだけじゃダメだと思うんですよね。
 それこそあえて効果を口にする事でデュエルを長引かせ放送時間の調整をしたりとかそういう配慮も入ってきたりするんじゃないですかね?

 こういうの想像するの楽しいね。
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