神保町チェンソー   作:岩ノ森

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邪神ちゃんとチェンソーマンのクロスってこれでいいですか?


邪神とチェンソー

 悪魔。

 それは人間たちが太古の昔に想像した、この世にはびこる不幸や災いを具現化したものである。人々は闇に住まう、その恐ろしい存在たちを恐れた。

 

 「貴様・・・殺してやる!」

 

 だが現代科学が台頭するにつれ、悪魔や神々といった人知を超える超常的な存在は否定された。

 

 「ほう、貴様ごときが“最強”の悪魔であるわしに歯向かうじゃと・・・」

 

 だが悪魔は存在する。

 科学で裏打ちできない存在。かつて人間たちが恐れ、おののいた存在。

 それらはまだ闇の中に潜んでいる。

 「覚悟しろぉ!!」「1秒で屠ってくれるわ!!」

 20XX年の現代、二匹の悪魔による頂上決戦が行われようとしていた。

 

 

 「そのフレッシュムーンは私のですの!!」

 「これはわしのじゃ!!わしが買ったものじゃ!!!」

 「嘘ついてんじゃねぇ!!メデューサがお土産に買ってきたもんだろうが!!」

 今回の邪神ちゃんとパワーのケンカの要因。

 

 おやつのフレッシュムーン。

 

 

 

 「あまり騒がないでよ。課題のレポートに集中できないじゃない」

 そう言って二人を諫めるのはこの部屋の住居者にして主、ゆりねである。

 ゴシックロリータ調の服に眼帯といういささかロックな風貌をしているが、どうやら他の二人(二匹?)に比べると良識がありそうである。

 「だってよゆりね!!こいついきなり上がり込んできてさんざん私の部屋でくつろいだ挙句に家のモンぶん獲ろうとしてるんだぞ!?もう窃盗犯だろ窃盗犯!!」

 そう怒り狂っている少女は、上半身は美麗な金髪をした美少女であるが下半身は蛇の尻尾という明らかに人外の見た目をしていた。

 それもそのはず。彼女は人間ではなく、かつて花園ゆりねが召喚した悪魔。“邪神ちゃん”である。(「邪神ちゃん」というのはあだ名ではなく本名の一部なのだ。「ちゃん」までが正式名称である。冗談みたいだが)

 「ここはわしの部屋じゃ!!お前らが勝手に上がり込んどるんじゃ!!」

 その邪神ちゃんに対して檄を飛ばすのは、これまた一見金髪の美女であるが頭に角が生えている人外。彼女の名は“パワー”。“血の悪魔”が人間に憑依し、意識を乗っ取った“血の魔人”である。

 「お前虚言癖がすぎるぞ!!頭どうかしちまってるんじゃねーのか!?」

 「あんたが言うか」

 邪神ちゃんの汚い怒声に冷たくツッコミを入れるゆりね。彼女からしてみれば現在のパワーの行いと普段の邪神ちゃんの行いはそう変わらない。虚言癖があり、自分より弱い者には偉そうで、強い者には媚びへつらい、おまけに不潔。目立った特徴を羅列すればどっちがどっちだか分からないくらいである。そうゆりねは確信していた。

 「もう許さねえ!この部屋の主は私ですの!!即刻追い出してやる!!!」

 そう言って臨戦態勢を取る邪神ちゃん。その体からは某7つの玉を集める系の少年漫画の主人公のような、金色のオーラが放たれていた。(おそらくだが見た目だけのハッタリである)

 「“邪神”の名を冠するものの力、見せてやる!!」

 「ほーう、面白い!最強の悪魔であるわしに向かってくるとは!!」

 血の魔人、パワーも臨戦態勢を取る。自分の手のひらから出した血を固め、ハンマーを錬成し振りかざした。

 「ドロップキックで蹴り殺してやる!!」

 「やってみるがいい!!」

 邪神ちゃんの“蹴り”と、パワーの“血”。

 四畳半の空間で最強の悪魔同志の雌雄を決する戦いが。

 

 ヴヴヴヴヴウヴヴヴヴウヴヴンッッッ

 

 始まらなかった。

 

 「「・・・・・・・・・・・」」

 二人はのっそりとその物騒な音のする方に首を向けてみる。

 そこには怒りのオーラに満ちたゆりねが、伐採用のチェーンソーを持って仁王立ちしていた。

 「ここ、賃貸なのよ。壊れたらどうしてくれるの」

 彼女がチェーンソーを回しながら呟くその言葉は、人間の言葉というよりまるで地獄の底からせり上がってくる猛獣の唸り声のようだった。

 「いや、あの・・・悪いのはこいつですの」

 邪神ちゃんは引き攣った愛想笑いをしながら、パワーの方を指さす。その当のパワーも、人間であるはずのゆりねが発する邪気に震え上がっている。

 「・・・・・ゆりね。実はわしがこやつを捕まえましたぁー!!」

 「なっ!テメェッ!!」

 そう言ってパワーはすぐさま邪神ちゃんを羽交い締めにした。

 「菓子を横取りしようとした下劣な悪魔を捕まえましたぁ!!」

 「テメェーッ!!!どこまで性根が腐ってやがる!!!!!」

 お互い怒声を浴びせながら、くんずほぐれつギャースカ叫ぶバカ悪魔二匹。見よ、これが現代における悪魔の姿である。かつてのエクソシストが見たら一周廻って落胆するであろう。

 「いい加減に・・・」

 ゆりねは悪魔二匹の戯言などに意を介さず。

 「しなさいっ!!」

 振りかざしたチェーンソーで、邪神ちゃんの首を一刀両断斬り裂いた。

 「ぐええっ」

 邪神ちゃんの首が畳の敷かれた居間に転がる。残された邪神ちゃんの胴体からは噴水のように、紅い鮮血が迸っている。

 その光景を見て、パワーも顔を青くして震え上がっていた。

 (人間の癖になんて恐ろしさじゃこいつ!薄々感じておったがマキマと同じ匂いがする!!)

 パワーは自分が唯一心の底から逆らえない、女上司のことを思い出しさらに震え上がっていた。

 「ア〇ンアルファ・・・ア〇ンアルファをくれ・・・・・」

 未だに生きている邪神ちゃんは首だけで某メーカーの接着剤を求めていた。邪神ちゃんの悪魔たる由縁はその不死性にある。首を両断したくらいでは死なず、接着剤でくっつければ直るという、ギャグ漫画じみた生態をしているのだ(ゆえにゆりねからはいつも拷問同然の断罪を受ける)

 「部屋汚した罰よ。しばらくデュラハンみたいなその姿でいなさい」

 「首チョンパしたのはお前だろ・・・・・」

 「後でぶちまけた血、掃除しとくのよ」

 「はい・・・・・・・」

 その不死性を以ってしても、邪神ちゃんはゆりねに逆らえない。この四畳半の狭い空間の中で、一種の食物連鎖のようなカースト制度が生まれてしまっていた。

 ゆりねはゆらりとした動作で首だけをパワーの方に向ける。

 「アキさんに免じてパワーちゃんは見逃してあげるけど、あんまり度が過ぎるようだとあなたの服が赤い模様で染まることになるから気を付けてね」

 パワーはブンブン首を縦に振って同意した。食物連鎖に新たなる人員が増えたようだ。

 

 ガチャリと音がして、血で染まったゆりねの部屋のドアが開いた。

 「うへー、外まで血の匂いがプンプンすると思ってたら、またこりゃ派手にやらかしてんな」

 「すいませんゆりねさん。うちのパワーがまたやらかしたみたいで」

 そう言って上がり込んできたのは金髪の少年“デンジ”と、後ろ髪をちょんまげのように纏めた青年“早川アキ”だった。二人(というかアキ)がゆりねの部屋に上がり込んでいたパワーの保護者なのだ。

 「いいんですアキさん、邪神ちゃんもまたバカやらかしてるんで」

 「あの、その邪神の首が転がっているんですけど・・・」

 「あー、後でア〇ンアルファでくっつけるので」

 「そうですか・・・・・」

 アキはこの部屋の惨状と、隣人の悪魔の扱い方に若干引く。仕事柄こういう凄惨な状況には慣れているはずなのだが、後始末の仕方があまりにもギャグで脳がバグっていた。

 「お、フレッシュムーンあんじゃん。もーらい」

 さっきまで邪神ちゃんの血の匂いにエンガチョしていたデンジだが、すぐ気を取り直して先のケンカの原因であるフレッシュムーンに手を伸ばす。

 「やめろ人んちのもんだぞ。はしたない」

 「ほーはへはっへふへ(もー食べちゃってるぜ)」

 「気にしないでください。ケンカの原因がなくなったんで大助かりです」

 「すみません・・・。今度お詫びに伺います・・・・・」

 デンジとパワーというそれぞれ別ベクトルで常識がない同居人二人の保護者をしているアキ。日々気苦労が絶えないのである。

 「ほらパワー、帰んぞ」

 「ううっ、デンジィィィ。わしを見捨てないどくれぇぇ」

 「わーったよっ。ほら行くぞ!」

 「すみません。お騒がせしました」

 「こちらこそ」

 そういうとアキをはじめとする早川家は、いそいそとゆりねの部屋から去って行った。

 

 

 

 ここは神保町、カレー屋と本屋が立ち並ぶ格式ある歴史深い町。

 「あ、あのクソ魔人のせいでひどい目にあった・・・」

 「半分自業自得でしょ」

 だが近年、町を象徴するものが増えつつある。

 「ふ、フレッシュムーン・・・。ゆりねが・・・ゆりねがやってくる・・・・・」

 「ああ?食わねーの?せっかく買ってきたのに。じゃあ全部俺もーらい」

 「やめろデンジ。お詫びの品、高級牛肉とかでいいだろうか・・・」

 「肉!?じゃあすき焼きにしようぜすき焼きに!」

 ここは神保町。

 人と悪魔が住まう、愉快な町である。

 

 

 




パワーちゃんと邪神ちゃんの絡みが見たい、という欲求だけで書きました。邪神ちゃんの作風優先で行くと思うのでタグにもありますがキャラ崩壊ご注意ください。
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