神保町チェンソー   作:岩ノ森

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お久しぶりです。みんな大好き飲み回です。長くなりそうだったんで前後編に分けました


飲み(前編)

 『カンパーイ!!』

 「かーっ!仕事終わりの酒ウメェ~!!」

 「飲みすぎないようにねミノス」

 「パワーてめコラ、それは私のから揚げですの寄越せ」

 「何を言うか、肉は全部ワシのじゃ」

 「ふ、二人とも、ケンカはダメだよ」

 「主よ・・・お許しください。またもや魔女のサバトの誘惑につられてしまいました・・・」

 「おお!この飯うめぇー!!」

 「・・・・・・・・・・・・」

 ゆりねたち悪魔御一行と早川ファミリーは居酒屋にいた。

 

 何故こうなったのかというとゆりねが商店街の福引で居酒屋の割引券8人分を当てたからである。

 ゆりねといつもの悪魔たちと天使のぺこら、それに早川家3人を足すとちょうど8人となる。ということでこの飲み会が開催されたという次第である。

 「でもゆりねちゃんも丁度8人分の割引券なんてよく当てたな~」

 「神、もとい作者の大いなる意思を感じますの。チェンソーマン人気エピソードの飲み回にあやかった回を書けば平均評価とブクマ数がうなぎ上りだぜげへへ的な策略を感じますの」

 「やめとこうよ邪推は・・・」

 邪神ちゃん一行は普段通りのギャグ時空でどんちゃん騒ぎである。

 

 だがそんな中で早川アキは別のことを考えていた。

 (先日の一件で邪神以外の悪魔たちの驚異的な力は把握できた。人間に友好的とはいえあれだけの力を持った悪魔たちだ。この飲み会でさらに距離が縮まれば奴らの真意も分かるかもしれない)

 仕事終わりの飲みでも仕事モード。日本人の鑑といえるかもしれない。

 「馬刺し!馬刺しはワシのじゃ!!」

 「テメー一人で食ってんじゃねえよ!」

 「そうですの!奪わずに分け合えば節子も助かったかもしれないですの!!」

 そんなアキを他所に、同居人のパワーとデンジは神保町悪魔ズと一緒くたになって騒いでいた。

 「はぁ・・・・・」

 例によってアキはそんな二人+αを見てため息をつかずにいられなかった。

 

 「どうしたーアキ?せっかくの飲みなのにため息なんかついてよ」

 「ああミノスか、何でもない・・・」

 「ならいいんだけどさ。せっかくみんな集まったんだしパーッと行こうぜパーッと!!」

 アキに話しかけてきたのは先日知り合った牛の角を持った悪魔、ミノスである。どうやらミノスはアキのことを気に入ったようだ。

 

 「景気づけにさ!私と飲み比べしないか!?こないだの勝負の代わりによー」

 「いや、飲み比べには勝った試しがない。遠慮しとく」

 「何だよーつまんねーの」

 「ミノス、無理な飲酒による死亡事故は多いのよ。節度を保って飲んで、強要はしない」

 「そうですの、大体お前ヤマタノオロチとヒュドラの合いの子かってくらい飲むから勝敗なんて火を見るよりも明らかですの」

 「んー、ゆりねちゃんに言われちゃしゃーねえな。じゃあぶっ倒れない程度に飲み合おうぜー」

 「ああ、それなりに付き合おう」

 ミノスは大ジョッキになみなみとつがれたビールを口に含み、ぐびぐびと飲んでいく。高圧で吸い上げているのかと思うくらいに生大がどんどん消えていく。

 「かーっ!うめえ!!酒飲んでる時が一番楽しいなーやっぱ!!あ、お姉さん!生大もう一杯!!」

 (なんて酒豪だ)

 アキはミノスの飲みっぷりに感心するとともに半ば引いていた。同時に飲み比べに乗らなくてよかったと安堵していた。

 

 「んー!この牛肉の甘辛焼きもんめー!ビールによく合うなー!!」

 牛の悪魔が牛を食う。悪魔だから何ら不思議はないのだが、傍から見ると異様な光景である。

 「それだけ食べていれば、あれだけのパワーも納得だな」

 「おうよ!!毎日食べて鍛えりゃアキだってこれくらいにすぐなるぜ!!」

 事実、剣でミノスを攻撃したときも無効にダメージが行くどころかこちらに衝撃が来たほどだ。あれだけの筋力、もし本気で戦闘になっていたらすぐに肉塊にされていたかもしれない。そう考えるとアキは心の中で秘かに身震いした。

 「でもなー」

 「ん?」

 「大胸筋が全然でかくならねえんだよなー。おっぱいはどんどんデカくなるのに」

 「ブッ!!」

 いきなりのエロ話にアキはビールを吹いた。

 「み、ミノス、男の人にそういう話はどうかと・・・」

 「ええ、いーじゃん。アキなら気にしねえって」

 「ミノスとか言ったな!俺はデンジ!よろしくな!!」

 「ミノス、気を付けますの。このエロデンジは脳内が中坊とほぼ変わりませんの」

 「ぎゃっはっは!見ろゆりねの奴!!顔を真っ赤にしておるぞ!!意外とウブな奴じゃぎゃはははは!!」

 「・・・パワーちゃん、それ以上からかうとあなたがおつまみになるわよ」

 「ヒッ」

 ミノスの発言により、居酒屋のワンスペースがまるで下世話な大学のサークルのようになってしまった。

 確かにミノスの胸部は大きめだ。一般的に言う巨乳どころか爆乳と言っても差し支えない。やはり牛の悪魔だからだろうか。

 

 「どうしたアキ?そんなに私の胸ばかり見て」

 「あっ、いや。すまん・・・」

 「何やってんだアキ!そういうエロ係は俺の務めだろうが!!」

 「そうじゃそうじゃ!デンジと同じエロ係なんて2人もいらんわ!!」

 「黙ってろお前ら!!」

 ここぞとばかりにからかってくるバカ二人を諫める。まだ飲み始めてから10分も経ってないのにアキは心労が早くもピークに達していた。

 「そんなに気になるなら揉むか?おっぱい?」

 「揉まん!!!!!」

 「み、ミノスゥ!そういう発言はネットのうるさい人たちに搾取だって叩かれちゃうよ!!」

 「えーでも疲れてる男にはおっぱい揉ませとけっておふくろも言ってたぜ?」

 「おいどうするデンジ、アキがエロ係に落ちてしまっておるぞ・・・」

 「うげー、あんな昔の漫画のキャラみたいなアキ、俺見たくなかったぜ・・・」

 「違うって言ってるだろ!!!!!」

 「お客様店内ではお静かにお願いします」

 「あっ、はい。すみません・・・」

 店員に怒られつつもアキは思った。

 こんな大声出すのも久しぶりだと。

 

 

 「邪神ちゃんドロップキックに男キャラが出るとああなるんだな。普段は出るとしてもモブ男ばかりだから知りませんでしたの」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 「こんな顔真っ赤にして黙々と飯食うゆりねも見られませんの・・・。解釈違いって叩かれますの・・・・・」

 (うう・・・、さっきからぺこらの出番が少ないです・・・・・)

 蚊帳の外の女子3人はそれぞれの苦悩に苛まされていた。

 

 

 「おいクソパワー、これは私が頼んだ刺身ですの」

 「その手をどけろ、どうせ穀潰しのお前はゆりねやメデューサの金にたかるのだからまた注文すればいいであろう」

 「ムキィー!前々からその横柄な態度が気に入らなかったんですの!!お前なんかサラダでも食ってろ!!」

 「むぐっ」

 邪神ちゃんが無理やりパワーの口に大量の野菜サラダを詰め込んだ。

 「うげえー、土の味がするぅ~・・・」

 「ギャハハハ!良い様だなぁオイ!!そのまま土に還ってぺんぺん草として悪ガキどもに踏まれまくればいいんですの!!!」

 「じ、邪神ちゃんやりすぎだよ・・・」

 パワーをいびる邪神ちゃんをメデューサが諫める。いつもの光景である。

 「よくもやりおったな下等悪魔がぁ!!」

 「ぐべえ!?」

 負けじとパワーが邪神ちゃんに詰め込んだのは・・・。

 「おヴぇええええ!!ゴキブリですの!!!」

 「ギャハハハハ!!こんなこともあるかとゴミ捨て場におったのをあらかじめ捕まえておったんじゃ!!ワシの頭脳プレーの勝利じゃ!!」

 「ぱ、パワーさん・・・。ここ飲食店ですから・・・・・」

 邪神ちゃんにやり返すパワーをメデューサが宥める。毎度の光景である。

 「よくもやりやがったなこの腐れ悪魔!!1週間歯磨いてない口のツバペッペを喰らえですの!!ペッペッ」

 「うげっ、きたねっ」

 「雑魚悪魔が!!お前なんかワシのタンカス以下じゃ!!カーッペッペッ!!」

 「ああっ!!ぺこらのから揚げにぃ!!!」

 唾と痰のかけ合いという一応女性キャラとは思えない応酬をしまくるバカ悪魔二匹。それに被弾する哀れな天使ぺこら。日常の光景である。

 

 「お、おいアキ。ほっといていいのかよ?これじゃ店員さんマジギレして俺達追い出すぞ?」

 流石に見かねたデンジがアキに耳打ちする。だがアキは平静としていた。

 「大丈夫だ。そろそろだろ」

 「そろそろ?」

 「支配者の登場がな」

 瞬間、凄まじいオーラが居酒屋を支配した。

 

 ギギギと壊れたおもちゃのように首をオーラの方に向けるパワーと邪神ちゃん。

 「二人とも、食事中の人だっているのよ」

 例によって殺意の波動に満ちたゆりねがそこにいた。

 「いやー良かったわ。ラブコメみたいな雰囲気からいつもの空気に戻って」

 「「あ・・・あ・・・・・」」

 二人は汚い喧嘩をしていたのも忘れてお互い抱き合って震えていた。

 「じゃあいつも通り、いくわね」

 いつも通り、二人の悪魔の断末魔が夜の街を彩った。

 

 

 「さあ、再開と行きましょう。食事は楽しくね」

 「あ、ああ・・・」

 「ですね」

 「うう・・・ぺこらのから揚げ・・・・・」

 「あっはは!相変わらずだなー!」

 「あ・・・ぎ・・・・・」

 「げ・・・げ・・・・・」

 バカ2匹は頭に焼き鳥の串を刺されまくり剣山のようになっていた。いかに落ちぶれた華道家ともいえど、これに花を活ける人間などいないだろう。

 「ふ、二人とも大丈夫・・・?」

 そんな二人に声をかける人間、もとい悪魔がいた。メデューサである。

 「邪神ちゃん、接着剤で補強したげる。パワーさん、私の血で良かったらどうぞ」

 メデューサはバカ二匹を甲斐甲斐しく世話する。

 「メデューサ・・・だったか?」

 「あ、どうもアキさん。邪神ちゃんがまた迷惑をかけました」

 「それはいいんだが・・・パワーまで世話をすることは無いんだぞ。後で俺たちが連れ帰る」

 「ええ、でも何かほっとけなくて」

 人がいい、もとい悪魔がいい。原作でも何度も思ってる人もいるかもしれないがもはや天使である。アキも例に漏れずそう思っていた。

 「パワーさん、邪神ちゃんの姉妹かなって思うくらい似てるんで、そのせいでほっとけないのかもしれないです」

 「・・・なるほど」

 「あっ、ごめんなさい!こんなこと言ったら流石に失礼ですよね!?」

 「失礼だと思う自覚はあるんですね・・・」

 「あはは。でも邪神ちゃん、パワーさんがアパートに来てから元気になったんですよ。きっと切磋琢磨できる友達ができたからだと思います」

 メデューサは和やかに笑う。こんな笑みができる者など今時人間でもいないと思うくらいに。

 「なっ!!メデューサてめえ!!誰がこのタンカス悪魔のおかげで元気になってるだ!!でたらめ言うのも大概にしろ!!」

 「もー邪神ちゃん、顔真っ赤だよ。照れちゃダメ」

 「誰が照れてるだコノヤロー!!」

 「ほー、中々殊勝なところがあるではないか雑魚悪魔。ワシが人間どもを支配してやったら下僕くらいにはしてやっていいぞ」

 いつの間にか起きていたパワーがどや顔で宣う。

 「・・・パワーも邪神と出会ってからどうやら調子がいいみたいです」

 「なっ!アキ!!でたらめを言うでないわ!!!」

 「ですからこちらこそ、末永くよろしく」

 「はい!お互い大変ですけど!」

 「なーっお前ら!!青春アニメ映画みたいなことしてんじゃねえですの!!この二次創作に似つかわしくないですの!!!」

 「そうじゃそうじゃ!!ワシらが見たいのはもっと血しぶきがドロドロしたものじゃ!!」

 「二人とも、照れずにたまには素直になったら?」

 「誰が照れてるだゆりね!!出番が少ないからって適当なこと言うなですの!!!」

 

 シュッ ドスッ

 

 ゆりねの投げた焼き鳥の串が邪神ちゃんの脳天に直撃した。

 「げびゃあ!!」

 「出番の少なさは言うんじゃないわよ」

 「邪神ちゃーん!!!」

 「ひいぃ~・・・」

 「やれやれ・・・」

 

 

 夜は長い。飲みはまだ続く。

 

 




だんだんアキ君が主人公みたいになってきました。第1部では半分くらいそうだったかもですけど。
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