神保町にある古アパートのとある一室、花園ゆりねと悪魔「邪神ちゃん」が住まう部屋がある。
その物々しい部屋で、悪魔たちと人間たちが一堂に会していた。
「すき焼きですのー」
「イェーイ!肉だ肉!」
「この牛肉全部ワシのじゃ!!」
「大勢ですいません」
「いえ、みんなで仲良くした方がいいですから」
仰々しいものではなく、ただのすき焼きパーティーだが。
事の始まりは花園ゆりねの隣室に住む住人、早川アキがゆりねにA5ランクの上等な牛肉を持ってきたことから始まる。
日頃から身内のパワーが迷惑をかけているということで、謝罪の品として持ってきたものである。
良識あるゆりねは流石に遠慮した。だが誠意の品を貰わないのも失礼に当たる。それに牛肉の量的にも、ゆりねと邪神ちゃん二人で食べるには多すぎる。
ならば早川家全員も誘ってパーティーをすればいいのでは、となったのが事の次第である。
「おいデンジクソ野郎。この肉は私が育ててたものですの」
「んだよこの蛇。元々アキが持ってきた肉だろうが」
「この牛肉は元々ワシのじゃ。ワシが買ったんじゃ」
「「全部横取りすんじゃねぇー!!」」
予想通り、だいぶ騒がしいパーティーとなったわけだが。
「やめろ二人とも。人の家で迷惑だろが」
「邪神ちゃん、食べる時は仲良く」
「「「はい・・・・・」」」
保護者に気圧され、居候たちが押し黙る。
それぞれどちらの威圧に気圧されたのか、ここでは言わないでおこう。
「騒がしくないですか?」
「いいえ、こういうのには慣れてるので」
アキはゆりねに気を遣っているようだ。どちらの作品でも貴重な、良識と常識を兼ね備えた二人である(当社比) お互い気を遣いあってしまうのだろう。というかそれが当然なわけだが。
「デンジの肉、取ってあげますの」
「おう、悪いな」
「ほらよ」
「おう、って野菜ばっかじゃねーか!!」
「いい若いもんが肉ばっか食ってんじゃねーですの!!」
「おめえだってそう変わんねえだろうが!!」
「ハーイ、人を見た目で判断してますのー!私短命な人間どもと違って億は年齢いってますのー!!」
「じゃあババアじゃねーか!!」
「んだとコラーッ!!こんな美少女魔貴族捕まえてババアだとーっ!!」
「おめえがそう言ったんだろうか!!」
「キーッ!パワーほどではねーけどお前もムカつきますの!!ちょっと表出ろコラァッ!!」
デンジと邪神ちゃんがケンカを始めた。いつぞやのパワーと邪神ちゃんのケンカほど酷くはないが、年齢からかけ離れた子供じみたケンカである。争いは同じレベル同士の者でしか発生しないというが、(パワーも含めて)精神年齢が近いのだろうか。
「やめろデンジ、静かにしろ」
「邪神ちゃん、仲良くって言ったばかりよね」
「「だってこいつが!!」」
「「静かに、仲良く」」
「「はい・・・・・」」
再度、保護者に気おされ大きい子供が押し黙る。いつの時代も母親とは強い者なのだ。
「親なんかになんないわよ」
「え、どうしました突然?」
「いえ、何でも。お互い大変ですね」
相変わらずギャーギャー騒いでいる悪魔たちを見てゆりねは呟く。悪魔(早川家は魔人とチェンソーマンだが)と住み合っているもの同士、通じるものがあるのだろう。
「まあ、そうですね・・・」
実際、アキの家はデンジとパワーが来てからうるさくなった。机は食べ物の残骸で散らかり、風呂には長い待ち時間ができ、おまけに同居人の一人はトイレを流さない。
これなら一人暮らしの方が気楽でいいだろう。
だが。
「感傷に浸る間も、なくなりましたね」
暗い過去を思い出して浸る時間は少なくなった。
それは数少ないメリットであると、アキは心の底で思っている。
「まあ、騒がしいのはそれはそれで楽しいですよね」
ゆりねも半ば同意した。
邪神ちゃんが来てからというもの、殺し殺されの毎日である。ゆりねに召喚された邪神ちゃんは一人では生まれ故郷の魔界に帰れない。帰還の呪文をゆりねが唱えるか、術師のゆりね本人が死ぬかしないと決して魔界に帰ることはできないのだ。
そんなわけで邪神ちゃんは執拗にゆりねを殺そうとして、毎度返り討ちにあう。正直、ゆりねとしてはいい迷惑なのだが。
「私も暇な日は少なくなりました」
毎日が大騒ぎ、様々な悪魔とも知り合い、スリリングな毎日を送っている。正直、満更でもないのだ。
騒がしい悪魔たちとの、平穏とはかけ離れた騒動の日々を送る。
そういう意味でも、二人は似通っているのかもしれない。
「あーっ!肉がねえですの!!」
「パワーてめえ!全部食いやがったな!!」
「もむもむ。ワシじゃない。アキが全部食いおったわ」
「すぐバレる嘘ついてんじゃねえー!!」
「というかお前、肉ばかりじゃなくて野菜も食えですの!!」
邪神ちゃんが半ば強引にパワーのお椀に野菜を追加する。
「野菜は嫌いじゃ!ポイじゃポイ!!」
その白菜や白滝が入ったお椀ごと、パワーは遠くにぶん投げた。
「おいパワーいい加減に」
「テメェーーーーーッッッ!!!」
アキが怒るよりも先に、邪神ちゃんがド怒りモードに入っていた。
「食い物を粗末にするな!!命は粗末にしても食べ物は粗末にするな!!!」
「ワシは野菜は嫌いじゃ」
「野菜だって生きてんだよ!命があんだよ!!命を差別するんじゃねえ―っ!!!」
微妙に矛盾した発言をする邪神ちゃん。だがおそらく本人は気づいてはいない。食べ物を無駄にするなという意見そのものは正しいのだが。
「邪神ちゃんやめなさい、楽しい食卓が台無しじゃない」
「今回のはこいつが悪いだろーが!!」
「確かにそうだけど、あんたも怒りすぎよ」
「ホントすいません。すぐおいとましますんで」
「えー!もっと肉食いてえよー!!」
「黙れデンジ」
見かねて同居人二人を連れて出ようとするアキ。だがおさまるような邪神ちゃんではない。
「もう許さねえパワー!!この場でぶっ殺してやる!!」
そう言うと邪神ちゃんは飛び上がり、長い尻尾をパワーの方へ向けた。
これこそ、“邪神ちゃんドロップキック”という作品を象徴する邪神ちゃんのドロップキックである。
「3話目にしてようやく出せますの!!クロスオーバー系二次創作SSとはいえこれがなきゃ邪神ちゃんとクロスする意味がねえーっ!!!食らえ必殺!『邪神ちゃんドロップキッーーークッッッ!!!!!!』」
やたら長い口上を言いながらパワーに向かっていく邪神ちゃんの脚(尻尾?) パワーも負けじと、血を錬成したスレッジハンマーで応戦しようとしていた。
「はぁ・・・。アキさんちょっと刀をお借りしますね」
「え、いやでもそれ」
そう言ってゆりねはアキの背中の刀を抜く。その刀身は刃ではなく、釘であった。
ゆりねはキックを放とうと滞空している邪神ちゃんに釘をかざした。
「うて」
ピィン
ズッ
「ぐえっ」
3
「うて」
ピィン
ズッ
「ぐええっ」
2
「うて」
ピィン
ズンッ
「ぐえええっ」
1
「とどめ刺して」
0
「ぎゃーっ」
邪神ちゃんはドロップキックを放つ前に、呪いの悪魔に囚われその命を散らした。
「ふうーっ、すみません。うちの邪神ちゃんがお騒がせして」
「いや、あの、その釘・・・」
平然としているゆりねに対して動揺するアキ。ぽかんと見ているデンジ。ブルブル震えているパワーと死んでいる邪神ちゃん。リアクションは三者三様であった。
私は“呪いの悪魔”『カース』
私を使ったということは、私と契約したということ
お前が払う代償は、お前自身の『寿命』
今回の使用でお前の寿命は
「3秒よね?」
え?
「これくらいの利用なら、取られる寿命は3秒くらいよね」
いや、そんなことは
「3秒、よね?」
・・・・・あ、はい 3秒でいいです
「ついでに、アキさんからもだいぶ寿命取ってるみたいだけど、返してあげて」
え、いや、そんな横暴な
「返すのよ。いい?」
・・・・・・・はい
というわけで早川アキ 私がお前から取った寿命、トータルで15秒くらいだから
「あ、ああ・・・・・」
80年近く生きれるから 健康的な生活心がければもっとかも
「わ、わかった・・・・・」
これからもよろしく
そう言って呪いの悪魔は逃げるように去って行った。
アキの寿命が増えた。というか戻った。
喜ばしいと思うべきなのだが。
「ええ・・・・・」
アキには困惑の感情しかなかった。
「では、お騒がせしました・・・」
「こちらこそ、またよろしければ一緒に食事でも食べましょう」
「デンジィィィ、あの女怖いィィ。今すぐ始末すべきじゃぁぁ」
「だいじょーぶだから。今夜一緒に寝てやるから」
そんなこんなですき焼きパーティーも宴たけなわとなり、早川家一同は自室に帰ることになった。ゆりねの同じアパートの隣室である。
「ぐうう、ゆりねテメェ。呪いのせいでまだ調子悪いですの・・・」
「あら、生きてたの」
「勝手に殺すな!」
呪いの悪魔の攻撃を食らって割とピンピンしている邪神ちゃんを見て、アキは呪いの悪魔の効力を疑い始めた。
部屋に戻ったアキはとある作業をしていた。暗がりに小さ目な照明一つで、どうやら書類をまとめているようだ。ちなみに、デンジとパワーはもう寝ている。
「人間のはずなのに、あれほどの強大な力・・・」
アキはテーブルの引き出しから数枚の写真を取り出した。
「やはりマキマさんが言っていたことは正しいのか・・・?」
その写真は、ゆりねと邪神ちゃんが映っている写真だった。
カースファンのみなさんごめんなさい・・・。カースくんが弱いんじゃないです。ゆりねとギャグ時空が強すぎるだけです。
というかアキくんの口調が難しい・・・。邪神ちゃんギャグに染まるのかこの人は