みなさんこんにちは。私は邪神ちゃんの大親友の悪魔、メデューサです。
その親友の邪神ちゃんは今、人間界の神保町という街に住んでいるので魔界からしょっちゅう会いに来ています。
今日も邪神ちゃんに呼ばれて、お土産のフレッシュムーンを買ってお邪魔するつもりです。邪神ちゃん喜んでくれるといいなぁ。
ウヌノワイショウナアタマデカンガエタサクセンナドキタイデキンワ ナンダヨコノヤロー
あれ?邪神ちゃんの部屋の中から声がする?ゆりねさん・・・の声とは違うみたいだし・・・。
誰かお客さんでも来てるのかな?
ガチャリ
「お前の頭なんてキチ〇イ印のノータ〇ン入りだろうが!!」
「ワシはアル中ジジイを超インテリ作戦で倒したことがあるんじゃ!パチンコ脳の貴様とはおつむの出来が違うわ!!」
「アル中ジジイ殺したところで何の自慢になるんだ!!この脳みそカビ生え悪魔!!」
ギャーギャー ボコスカ
「・・・・・・・・・・・・・」
邪神ちゃんが!二人!?
「はい、邪神ちゃん。お土産のフレッシュムーン」
「おおっ、早速おやつにしますの」
エジプト風の衣装を身に着けた悪魔、メデューサはいつものようにお土産のフレッシュムーンを邪神ちゃんに渡す。日常的な恒例風景だった。
「ところで・・・そちらの人は?」
メデューサは先ほどまで邪神ちゃんと取っ組み合っていた見知らぬ悪魔の方を一瞥する。悪魔というより分類上は魔人なのだが。
「ああ、それは音の出るうるさい置物みたいなものだから気にしなくていいですの」
「なんじゃと貴様!?弱い無能のまま突っ立っているのはウヌの方であろう!!」
「うるせー!私には99の隠された必殺技があんだよ!!本気出せばお前どころかゆりねだってイチコロですの!!」
「ほぉー、面白い!ならばゆりねの前にお前との決着をつけてやろう!!」
「上等だ!脳漿たたみにぶちまけろおらぁっ!!」
メデューサが入ってきたときと同じような取っ組み合いが再び始まった。悪魔同士の頂上決戦というより子供のケンカのようであるが。
「あの・・・邪神ちゃん・・・・・」
「ん?」
「ご姉妹がいらっしゃったの・・・?」
「「違うわ!!」」
メデューサの勘違いも無理はないだろう。
「なんと無礼な悪魔よ!このIQ53万のインテリとこの愚物を同等と見なすとは!!」
「なぁ~にがIQ53万だ!?IQは高くても250くらいですの!IQの意味も知らずそんな使い方してる時点で自分がバカで~す!って自己紹介してるようなもんですの!」
「あ、はい・・・ごめんなさい・・・・・」
「何でメデューサも謝るんだよ!!あれか!?私がこいつの言う通りバカって言いたいのか!?」
「い、いやっ、そんなつもりじゃっ」
邪神ちゃんに畳みかけられるメデューサ、これも日常の恒例風景である。
「ひれ伏せ!そこの下等な悪魔!ワシの名はパワー!!いずれ下等な悪魔と人間どもを支配する偉大な魔人じゃ!!」
「わ、わ~、すごい~・・・」
「メデューサ!お前はいちいち合わせなくていいですの!その流されやすさ、直さないと今に詐欺にあいますの!!」
「で、でもこの人本当に結構強いと思うよ?そんな感じをビンビン感じるし・・・」
「はぁ~!?じゃあお前、私がこのクソ悪魔よりも弱いって言いたいのか~?私はこのクソ悪魔よりもレベルの低いカスで~すってことなのか~」
「だから違うって~」
メデューサは半泣きになりながら弁明する。あまりにも哀れだが魔界の小学校の頃からの腐れ縁、そう簡単に切れる縁ではないのである。
「ウヌのような奴、昨日のドラマで見たわ。DV彼氏とかいうやつじゃ」
「はぁ!?誰がDVですの!?メデューサは私より弱いんだから従うのは当然ですの!!」
「弱い奴は強い奴に従えということか!それは万里ある!!だったらウヌもワシの部下として従え!!」
「誰がお前より弱いだ!!お前の方が弱いんだからお前が私に従え!!」
またもギャースカと低レベル同士の争いが始まった。2倍に増えたクズ悪魔にメデューサはうろたえることしかできない。
「ふ、二人ともやめて・・・。ほら、フレッシュムーンだけじゃなくて東京バナナもあるし」
「うるさい!口を突っ込むなですの!」
「弱い奴は黙っておれ!!」
二匹のDV悪魔に一斉に打ちのめされたメデューサは。
「うぅ、ぐすっ」
「「げっ」」
とうとう泣き出してしまった。
「えぇぇん、せっかく久しぶりに邪神ちゃんに会えると思ってきたのに・・・」
メデューサの宝石のような瞳から煌びやかな涙がぽろぽろとこぼれる。
「な、泣くな、メデューサ?私も言い過ぎたから。な?」
「うん、うん・・・ごめんね」
「は、はっ、これだから弱い下等な悪魔は。女の腐ったように泣けば全てが済むと思っておる」
そうパワーが言った瞬間、邪神ちゃんの目が今まで見たこともないくらい鋭い目となってパワーに突き刺さった。
「・・・・・・」
先ほどまでイキっていたパワーも、その人をも殺せるような目線を向けられ流石に委縮した。
「ふ、二人とも。一度仲直りしよ?ね?お茶淹れてお菓子も食べて?」
「・・・しょーがねえですの」
「菓子が食えるなら文句は言わん」
メデューサのか弱いオーラに絆され、先ほどまで獣のようだった二人の血気も離散してしまったようだ。
「うんめぇ~、フレッシュムーンうんめぇ~」
「フフ、良かった。たくさん買ってきたからたくさん食べてね」
「このフレッシュムーンはワシのじゃ、全部ワシのじゃ」
「てめぇまた独り占めしてんじゃねえー!!」
「二人とも、ケンカはダメ?だよ」
「「むぅ・・・」」
邪神ちゃんとパワーにはそれぞれ逆らえない存在がいる。が、今のメデューサには別の意味で逆らえなかった。
「パワーさんもどうぞ。遠慮しないで食べてください」
「おうおう!最強のワシに菓子を捧げるとは分かっておるではないか!」
「あはは、そうですね」
どうやらメデューサもある程度パワーと打ち解けたようだ。日頃から似たようなものを相手にしているので対応に慣れているのかもしれない。
(パワーてめぇ!メデューサは私のしもべですの!!昔からのマブダチみたいに馴れ馴れしくしてんじゃねえ!メデューサ!!お前もお前だ!!そんな奴に媚びへつらうな!!私との付き合いの方が年季が違うだろうが!!!)
そんなパワーとメデューサの様子を見て、邪神ちゃんは嫉妬の黒い炎を燃え滾らせていた。
「そっ、そういえば邪神ちゃん!今日私を呼んだ理由って何?」
そんな邪神ちゃんの殺気を感じ取ったのか、メデューサは話の方向をあからさまにずらした。どこぞの雑誌のラブコメでよく見る手法である。
「ああ、そうだった。メデューサ、今日お前には重大な任務を下しますの」
「な、何?」
急に物々しい雰囲気となり、メデューサもゴクリと息を飲む。
「メデューサ」
「は、はい」
「ゆりねを殺す囮になってくれ!」
「え?」
物々しい雰囲気とは異なり、要求はいつもの恒例のものだった。
「見てろよー、このひもを引っ張るとなー・・・」
邪神ちゃんは天井から生えている紐をクイッと引っ張る。すると・・・。
ヒュー ゴンッ
天井から鉄タライが降ってきた。どんな仕掛けになっているのか。
「昔のバラエティをユー〇ューブの違法アップロードで見て思いついた殺し方ですの。この古来からの方法ならば、流石のゆりねも即地獄行きですの」
「フフフ、超インテリのワシが知恵を授けてやったからこの罠ができたのじゃ。床に額をすり合わせて感謝するがよい」
「んだとテメー!お前は横で私のパソコンの動画を煎餅食いながら眺めてただけだろうが!」
「この罠はワシの能力が無ければ作れなかった代物じゃ!お前がワシの靴を舐めるほど感謝して当然であろう!!」
「てめえ!ゆりねの前にまずお前を殺してやる!!」
「ま、まあまあ」
本日何回目か分からないメデューサの諫め。部屋に入ってくる前もこうしてどっちがより功労者かで言い争っていたのであろう。
「そ、それで・・・結局私は何を・・・・・?」
「お前はゆりねをこの座布団の上に座らせてくれればいいですの」
「え?」
「ワシやこいつではゆりねに警戒されるであろうからな。見たところ弱そうなお前ならゆりねも警戒せずにこの座布団の上に座るであろう」
「ええ・・・」
つまりは罠の効力が発揮できるエリアまでゆりねを誘い出すために、メデューサを利用しようという魂胆である。邪神ちゃんどもも邪神ちゃんどもだが、何回も同じように利用されているのに毎回呼ばれては来るメデューサもメデューサである。
「いやぁ~、やっとゆりねを殺せて魔界へゴーホームできますの。長かったなー」
「フハハハハッ、邪魔な人間が一人減って今夜はワシも血が旨いわ」
「おー、ゆりねを殺せた暁には少しくらい私の血を飲ませてやってもいいですの」
「お前の臭い血なんぞいらん。それにお前はゆりねを殺した時点で魔界に帰るであろう」
「ちげえねえ!」
「「ガハハハハハハハハハ!!!」」
歯をむき出しにして、肩を組み合って笑う邪神とパワー。IQが低いと喧嘩っ早いが忘れるのも早いのである。
(やっぱこの二人、姉妹なんじゃないかな・・・)
意気投合している二人を見て、メデューサはこっそりそう思った。
(あと何かもう、オチが見えた気が・・・・・)
「ただいまー。はぁー、バイト疲れたー」
「ゆ、ゆりねさん。おかえりなさい・・・」
「あら、メデューサ。来てたの」
「は、はい、お邪魔してます・・・」
見るからにおどおどとしているメデューサ。誰がどう見ても何らかの陰謀に巻き込まれているのは一目瞭然である。
「邪神ちゃん、あんたせっかくメデューサが来てくれてるんだからお茶くらい出しなさいよ」
「はーい、ですの」
邪神ちゃんとパワーは居間に寝っ転がってテレビを見ている(ふりをしている)
「ゆ、ゆりねさん・・・座布団です・・・・・」
「あら、お客なのに気を遣わせちゃって悪いわね」
「い、いえ。癖みたいなものですから・・・」
とうとうゆりねは罠の仕掛けられている座布団の上に座ってしまった。
(フハハ、その小憎たらしい顔を見るのも今日が最後じゃ無力な人間)
(グッバイゆりね、人間界での生活もまあ悪くはなかったですの)
そんなことを思いながら、二人は罠を作動させる紐を引いた。
クイッ
ヒューッ ゴンッ!
「ぐえっ」
上から落ちてきたタライが脳天に直撃し、ゆりねはその場に倒れ伏した。
「しゃああああっ!とうとうゆりねをこの手でやりましたの!」
「フハハハッ!多少力があろうとも、軟弱な人間なぞ所詮この程度よ!」
ゆりねの死体(?)の周りで小躍りするように喜ぶバカ悪魔二匹。しかし一人だけ違うことを考えている者がいた。
(あぁ・・・もうこれいつものオチだ・・・・・)
メデューサである。
何度も邪神ちゃんにこのパターンを見せつけられてきたため、この後何が起こるかはこれまでの経験が教えていた。
「あんたら・・・」
「「へ?」」
「何やってんのよ・・・・・」
ゆらりとその場で立ち上がるゆりね。頭にはデカイたんこぶができていた。
「ゆ、ゆりね!何で生きて・・・!?」
「あんなんで死ねるわけないでしょ。脳みそにカビでも沸いてるの?」
ゆりねのその眼光は、見たもの全てを石に変えるが如き眼力を誇っていた。
「わ、罠に誘い込んだのはメデューサですの!」
「えぇっ!?」
「そうじゃ!こいつがやれとワシらを脅したんじゃ!」
「ひどいよぉ!二人とも!!」
二人そろってメデューサに罪をなすりつける。やはり生き別れの姉妹か何かではなかろうか。
「どうせあんたらが唆したんでしょ」
「「あ・・・あ・・・・・」」
「このクズ悪魔どもが」
四畳半の室内の中に、二人の断末魔と鮮血が広がった。
「はい、邪神ちゃん。アロンア〇ファ」
「や、優しくくっつけてくれ・・・・・」
ゆりねの制裁(拷問)後、メデューサが切断された邪神ちゃんの体の後処理をしていた。
「ゆ、ゆりねのやつ・・・ここまでしなくてもいいだろうがよ・・・・・」
(自業自得じゃないかなぁ・・・)
とメデューサは思うが口には出さない。出したらまたとんでもないことになるのは分かり切ってるからだ。
「うげぇぇぇ・・・・・」
「ぱ、パワーさんも大丈夫ですか・・・?」
「ち、血じゃあ・・・血が足りぬ・・・・・」
パワーもゆりねに制裁され、血みどろの池に倒れ伏していた。未だに出血しており悪魔なのに顔面蒼白である。
「え~っと、血があればいいんですね?」
「う、うむ・・・血さえ飲めればすぐ復活できる・・・」
「・・・じゃあ」
メデューサはその場にあったはさみの刃の方で自分の手首に傷をつけた。
「どうぞ」
そのポタポタ滴り落ちる血の雫をパワーに飲ませ始めた。
「おい!メデューサ!!そんな奴に気なんか使うんじゃねーですの!!」
「だ、だってケガしてるし、ほっとけないよ!」
復活してヤジを飛ばしている邪神ちゃんをよそに、パワーは一心不乱にメデューサの血の雫を舌の伸ばして舐めていた。
「そ、それに・・・」
「それに?」
「・・・ううん、何でもない」
メデューサは口をつぐんだ。これを言ったらまた邪神ちゃんは烈火のごとく怒りだすに違いないからだ。
「大丈夫ですか?すぐ元気になりますよ?」
「うぅ・・・・・」
「邪神ちゃんといると毎日トラブルで、大変ですよね」
メデューサはにっこりと優しい笑みをパワーに向ける。悪魔とは思えぬ慈愛だった。
「・・・・・・・・・・」
「おいこら!私がトラブルメーカーみたいに言うんじゃねーですの!」
「だって本当のことじゃない」
「きぃ~!メデューサのくせに言うに事欠いて!!もうお前とは絶交ですの!!」
「も~、そんなに怒らないで。パチンコ代また貸してあげるから」
「ホントですの!?じゃあ絶交取り消しですの!!」
「もー」
日常風景の邪神ちゃんとメデューサのやり取り。一見微笑ましいがよく考えるとあかん彼氏彼女の関係である。
(・・・なんじゃこのぬくい感じは)
だがそんなメデューサを見て、パワーは友達の猫のニャーコを抱いた時のような気持ちを覚えていた。
(本当に姉妹じゃないんだよね)
初めて見たときは、生き別れのお姉さんか何かだと思ったけど。
でもちょっと欲張りなところとかが本当に邪神ちゃんそっくり。
だからかな。パワーさんのこと。
なんかほっとけないんだよね。
邪神ちゃんとパワーちゃんの絡み考えるの疲れる・・・。クズが二人以上いると場が大変です。
そのうちぺこら様も出したいんですが誰と絡ませようか・・・。