これから描かれることは現実である。
「おいデンジ。これはどういうことだ・・・」
しかし実態を目にすれば誰もが恐れおののこう。
「俺もどうなってんのか分かんねーんだよ・・・」
今、デンジとアキの目前に。
「あら、デンジさんアキさんおはようございます。朝ごはんの準備をしてたんです。お口に合えばいいんですけど。うふふ」
綺麗なパワーがいた。
話は1日前にメデューサが持ってきたお土産から始まる。
「200年前に注文したエデンの果実がやっと届いたんですよー!」
「あの注文しても100年待ちは当たり前のエデリンが!?」
「人間にはできない会話してるわねー」
傍から聞くと異様な会話だが、注文しても半年待ちのプリンや30年待ちのコロッケなど、皆さんも目にしたことがあるだろう。それらの商品を悪魔規模に伸ばしただけである。なんとも所帯じみた悪魔たちである。
「早速切って食べましょう!」
「それはいいですの!それはいいんだが・・・」
「む?」
「何でてめえがいるんだパワー!!」
邪神ちゃんはいつからいたのか部屋に陣取っているパワーに激昂した。
「いちゃ悪いのか?ここはワシの部屋じゃ」
「またてめえの虚言壁が始まりやがった!!いい加減その脳みそ精○病院のマッドサイエンティストに掻っ捌いてもらった方が知能が猿並み程度には上がるんじゃねえのか!?」
「クソみたいな口からクソみたいな言葉しか吐けない矮小な悪魔に言われとうないわ。お前の脳みそこそ、そのへんのキ○ガイの脳みそと挿げ替えた方がまだメデューサの負担も減るじゃろう」
「何だとコノヤロー!!??」
「やるというのか?あ~ん?」
いつも通り、バチバチと二人の間で火花が散り始めた。
「ま、まあまあ邪神ちゃん。パワーさんにもエデンのリンゴ食べてもらおう?パワーさん、せっかくなんでエデンのリンゴ食べていってください。あと一人分くらいはあるだろうし」
「キーーーっ!!!メデューサはパワーに甘すぎですの!!お前は一生私だけの下僕やってりゃいいんですの!!」
「メデューサは賢いからどちらが強いか分かっておるのじゃ。より強いワシの方に頭を垂れるのは当然であろうが!はーっはっはっはっ!!!」
「てめえ・・・ぶっころ!!!」
「邪神ちゃん、ティータイムは楽しく」
「パワーさん、あんまりいじわるするとリンゴあげませんよ」
「はい・・・」
「うむ・・・」
頭北京原人以下の二人にもやはり逆らえない人というのは存在するらしい。
そんなこんなでエデンのリンゴを切り分けてティータイムとなった。
「美味しいわねこれ~。水分がたっぷりで甘いわ~」
「200年待ったかいがありました」
ゆりねとメデューサはエデンのリンゴをかじりその味わいに舌鼓を打っていた。
が、一方邪神ちゃんとパワーは。
「「・・・・・・・・」」
「どうしたの二人とも、さっきから黙って」
「邪神ちゃん?パワーさん?」
何か様子がおかしい。誰の目にも明らかであった。
だがそのすぐ後にそれ以上に様子がおかしいと判断せざるを得ないことが怒るのである。
「ふ、服を着ていない・・・!なんて恥ずかしい存在なんだ私は・・・!!」
「じゃ、邪神ちゃん!?」
「今までの私は何と恥ずべき存在だったのでしょう。神よ、恥ずべき私をお許しください」
「ぷっ」
エデンのリンゴを食べたせいで、二人の人格がきれいになってしまったのである。
そして現在に至る。
「あの、ゆりねさん・・・。パワーの様子が・・・何か妙なんですが・・・・・」
「デンジさん、どうでしょう?目玉焼きは半熟でよろしかったでしょうか?コーヒー、お砂糖入りますか?」
「えっ、あっ、はいっ」
「あー、多分昨日家で地獄直送のエデンのリンゴを食べちゃったせいだと思います」
「地獄直送のエデンのリンゴ!?」
「エデンのリンゴを食べてアダムとイブは知性と恥を覚えて服を着始めて色々なことをするようになったって話ありますよね?」
「は、はぁ」
「多分悪魔のパワーちゃんがエデンのリンゴを食べちゃったせいで、今まで以上の知性と本来無かった善性が芽生えたんだと思います。」
「な、なるほど・・・?」
あまりにもトンチキに次ぐトンチキで半分も理解できていないというのが、アキの現状だった。
「あの・・・これは治るんでしょうか?」
「治したいですか?」
「え~~~~~~~っっっと・・・・・・・」
「治さなくても実害は無いと思います。それでも治したかったらうちに来てください」
「は、はあ。お願いします・・・・・」
釈然としないままアキは電話を切った。
「アキさん」
「なっ、何だ?」
「お電話終わりました?アキさんのスープ、温めなおしますんでちょっと待っててくださいね」
「は、はい・・・」
エプロンを着たパワーはルンルンといった感じで台所に向かった。
「おい、あれ、どうすんだよ・・・」
デンジはアキに耳打ちし、変わり果ててしまったパワーを指さす。
「・・・・・まあ実害は無いわけだし」
「ほっとくのかよ!?」
「しばらく様子を見ると言ってるんだ」
正直、いつもの迷惑尊大パワーと比べれば非常に平和でありがたい。どちらがいいかなんて答え、聞くまでもないだろう。
ただ。
「はい、アキさんの分のスープです。それでは、手と手を合わせていただきまーす!」
「い、いただきます・・・」
「いただきます・・・」
「野菜さんや卵さん達、本当にごめんなさい。せめてもの責任として残さず食べますから。ね?」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
((気持ち悪い!!!))
それが問題だった。
それだけが問題ならよかった。
だが問題はもう一つ起こった。
「おいパワー!!そっち行ったぞ!!!」
「イヤです!悪魔とはいえ血をぶちまけて命を奪うなんて・・・」
「いつもの通りぶん殴りゃいいんだよ!!!」
「ああ、あの頃の私は愚かでした・・・。神よ、許したもう・・・」
悪魔退治の際にからっきし役に立たないパワーが出来上がってしまったのである。
「ああもうこいつ役に立たねえ!!俺がやる!!!」
ヴヴヴウウウウウウウウウンン!!!ギャルルルルルルルルルッッッ!!!!!
ドブシャアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!
「ひゃあっ!!血ぃ!!きゅう・・・・・」
綺麗なパワーは辺り一面に飛び散った血と悪魔の臓物を見て気絶した。
「仕事が増えたぜ・・・・・」
「戻すか・・・」
アキとデンジは、泣く泣くパワーを元に戻す決心を決めた。
「あら邪神ちゃんさん、昨日ぶりですね。来てるお洋服も可愛らしくて、気品に満ちてますよ」
「あら、ありがとうパワーさん。パワーさんみたいなお花屋さんから出てきたようなきれいな人に言われたら光栄ですの」
「まあお上手」
「あはは♪」
「うふふ♪」
キャッキャウフフとしているパワーと邪神ちゃん。昨日の地獄の亡者共が吐くような罵詈雑言を吐き散らかしていた二人とはまるで真逆そのものである。
「本当に治していいんですね?」
「はい、お願いします・・・」
「気持ち悪いからとっとと頼むぜ」
アキもさんざん悩んだが悪魔退治の戦力が減るよりかはマシ、という結論に至った。文字通り、天秤にかけたわけである。
「で、どうやって治すんです?」
「壊れた古い家電の治し方ってありますよね?」
「えっ」
「叩けば治る」
ドグシャァッ!!!
「ぐぶぇっ!」「ぴぎゃみっ!」
「バールのようなものでぶっ叩いた!!?」
「うげえっ」
ゆりねのエデリン症候群(作者命名)の対処法。
ぶっ叩いて治す。
「ぐげええええええ」「ぐぎゃああああ」
パワーと邪神ちゃんは辺り一面に血や脳漿を巻き散らかし苦しんでいた。
「もうちょっと強く叩いた方が良かったかしら」
(頼む人を間違えたか!?)
アキもデンジもゆりねの悪魔に対する扱いのひどさに内心引いていた。
が、数分後。
「お、ちょんまげにデンジですの」
「うぬら何しとるんじゃ?」
「ほ、ホントに治った・・・」
「みたいですね、良かった」
ゆりねの言う通り叩けば治った。悪魔の脳とは家電並みに単純なのだろうか。
「む、蛇女寄るでないわ!うぬのドブの腐ったような血の臭いが体に染みついてしまうでわないか!!」
「んだとこらぁっ!!お前の体臭だって一週間便所に放置してハエもたからねえクソの臭いだろうが!!」
この世のものとは思えない汚い言語による会話がまたもや再開された。
「あ、ありがとうございました・・・」
「アキさんのお役に立てて何よりです」
ゆりねに礼を言いつつアキは戻してよかったものだろうか、と心の中で思っていた。
「お、リンゴあんじゃん。もーらい」
「おいデンジ」
「あ、それ」
「・・・・・・・」
「デンジ?」
「早川先輩!一匹でも多くの悪魔を倒すために鍛錬に出かけましょう!!」
「えっ」
「僕たちの頑張りが一人一人の幸せな日々に繋がるんですから!!」
「なんじゃ、どうしたんじゃデンジ」
「気持ち悪いですの・・・」
「あの、これ・・・」
「あれが話してたエデンのリンゴです」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「どうします?また治しますか?」
「ちょっと待ってください・・・・・」
パワーと邪神ちゃんのかけ合いを描くと悪口のボキャブラリーは増えるが人として大切な何かが失われていく気がします。