結城友奈は勇者である-黒の章-   作:グランドマスター・リア

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第十話:鮮烈な剣技

 

 園子、銀、須美の三人は顔を見合わせて模擬戦を行う順番を話し合い始めた。

 

「誰からにする?あたしは別にいつでもいいけど」

 

「戦略的に考えるなら、出来るだけ手の内を見たい所ね。先の戦闘から見ても、あの人が強者なのは間違いない」

 

「じゃあ、わたしからやろうかな~。ほら、盾でキリトさんの攻撃を受ければその分ミノさんとわっしーが戦いやすくなるかもだし~」

 

 それぞれ意見を出しながら、作戦を立てていく。最初こそ乗り気ではなかった須美も含めて、模擬戦闘とは言えどうせなら勝ちたい。

 例え、全員が勝つことは出来なくとも、誰かが一矢でも報いる事が出来れば御の字だと言う共通的な目標が既に出来上がっていた。

 

「いや、そういう事ならあたしが最初に行きたい」

 

「何か、考えがあるのね?」

 

「まぁな。それに、キリトさんのあの余裕そうな顔を少しは焦らせてみたいだろ?」

 

 銀は頼もしくも笑みを浮かべてそう言った。それを見て、次に我こそはと声を上げたのは園子だった。

 

「ミノさんが一番なら、二番目はわたしが行きたいかな~」

 

「それなら、私が三番目ね。どうせなら勝ちましょう!」

 

 須美の声に、二人が「おおーっ!」と元気に掛け声を上げた。

 

 

 

 

 数分の後、戦闘する順番は無事に決まったみたいだった。

 

「お待たせしました。キリトさん、最初はあたしです」

 

 そう言って、俺の前に立ったのは二刀流使いである三ノ輪銀だった。彼女の武器は剣というよりは両手斧に近い形状をしていて、身の丈程もあるそれを二本も操るという豪快な戦闘スタイルをしている。

 瞬間火力は俺よりも高く、シンプルな故に対策も立て辛い。

 

「成程、そういう事か」

 

 その表情を見れば分かる。彼女の目的は手の内を見るとか、そう言った送りバント的なものじゃない。純粋にお互いがフラットな状態での試合を彼女は望んでいるんだ。でなければ、そんな明らかにボコボコにする気満々な格闘ゲーマーみたいな顔はしない。

 良いじゃないか。そういう事なら、俺も正々堂々正面から受け止め答えるだけだ。

 

「それじゃあ、やるか!」

 

 勇者システムを起動する事で、その身を光が覆い剣士キリトとしての自分を投影していく。

 黒い勇者装束の裾を翻し、背中に二本の剣が出現する。俺はエリュシデータの柄に手をかけて抜くと、いつものように半身を引いた構えを取った。それを見て銀は僅かに不機嫌そうに言った。

 

「……二本目は使わないんですね」

 

「あれは使うべき時にしかつかわないって決めてるんだ。手加減してる訳じゃないよ」

 

 これは命の奪い合いじゃないのだ、純粋な力比べで二刀流を使うつもりはない。

 

「安芸さん、審判をお願いします」

 

「分かったわ。それでは――」

 

 銀を視界に収め、一層に集中力を高める。その動作一つ、空気の振動する一瞬すらも見逃さない。全神経が臨戦態勢に入り、感じられるのは己と剣のみにシャットアウトされる。

 一秒、二秒――三秒経つよりも早く、開始の合図がなされた。

 

「始め!」

 

 それと同時に、俺は瞬迅した。

 

 

 

 

 最初の一撃を防いだこと、あたしがこの戦いで自分を褒めるとしたらここしかない。

 

「ッ!」

 

 瞬きする間もない一瞬、漆黒の刃が既に目の前に迫っていた。

 それを間一髪で剣を割り込ませて防ぐと、今度は瞬時に切り返して下段から守りの隙間を突くような斬り上げが襲う。

 

「くっ……」

 

 それを姿勢を後方に倒して躱すと、負けじと二本の剣を横凪に一閃し反撃するが、キリトさんはまるで、それを読んでいたかのように後方に飛んで回避する。

 距離が空いて振り出しに戻る。

 ……訳もなく、こちらが呼吸を整える隙すらも与える事なく、キリトさんの剣はライトイエローの光を帯びた。

 

▽片手剣単発技▽

レイジスパイク

 

 その瞬間、さっき以上の速度でキリトさんは間合い詰め神速の突きを放ったのだ。

 さっきみたいに防御が間に合う速さじゃない。

 そう判断したあたしは咄嗟に左手の剣を離す事で、右の剣を重心にして勢いよく体を投げ出す。そのまま、訓練場の床を滑りながら態勢を整えると、再びキリトさんを見据える。

 

「そう言えばそれ、前の戦闘でも使ってましたよね?何て言う技なんですか?」

 

 あたしが不敵に笑みを浮かべて聞くと、キリトさんは余裕な様子で答えた。

 

「これはソードスキルって言うんだ。特定の動きや構えを取る事で通常の何倍もの速度と威力で剣を振る事ができる。言わば、俺の勇者としての固有技能って所かな」

 

 『ソードスキル』というのか、確かにあんな技はあたしには使えない。

 園子の槍が変幻自在であり、須美の矢に特殊な力が込められているように、キリトさんの場合はそのソードスキルが勇者として与えられた力という訳だ。

 それに先日は、二刀流で同じ技を使っていたし、きっといくつか別のパターンの出し方みたいなのがある。

 

 確かに技自体も強力だが、更にこの途轍もない反応速度から繰り出されるからこそ、これ程までに厄介なんだ。

 さっき、あたしはこの人に「二刀流は使わないのか?」なんて聞いたけど、それこそ使われてたら最初の時点で負けていた可能性だってある。

 

「本当に遠い、でも……」

 

 だからこそ、現時点であたしが出来る限りの力を試すしかない。

 今あたしの手にあるのは剣一本だけ、手放した片方を取りに行くのは不可能だ。

 それなら、次の一撃に全霊をかける。

 右の手に持った大剣を両手に持ち替え、背負う様な構えを取る。それを見たキリトさんも剣を前下段に構え、その黒い瞳でこちらを見据えた。

 

「――行くぞ」

 

 あたしが動いたのと、キリトさんが動いたのは殆ど同時だった。

 剣に備わった神樹様の力が発動し、火花を散らして爆発的な推進力を得る。対するキリトは剣を下段から少し上げると、それを始動にして刃にブルーの輝きが纏われる。

 お互いに凄まじい速度で訓練場を駆け抜けると、一瞬にして間合いに内に入った。

 

 接近の速度はここに来て互角、互いが間合いに入ったと同時に互いの剣を振り抜く。

 

「おっ、りゃあぁぁぁああ!!」

 

 銀は渾身の覇気を迸らせながら大剣を右斜め上段から振り下ろし、キリトさんは姿勢を低くしながら最小限の動作で下段から斬り上げを放った。

 それを見ていた誰もが、恐らく銀までもが思ったはずだ。

 このまま剣と剣がぶつかれば、押し負けるのはキリトさんの方だと……

 

 漆黒の直剣と、大剣が衝突する。

 ――キィンという耳をつんざくような音が二回(・・)鳴り、勝負は終わりを告げた。




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