結構長くなっちゃいました
キリト視点9割
二人を尾行する風先輩視点1割ほどでお送りします
「よし、行ったわね」
和人と美森の姿が遠くになるのを見計らって、友奈宅の敷地内から出てくる三人の少女達。
友奈、風、樹は離れていく二人の友から気付かれないように見守る。風と友奈は、十分に距離が離れたのを確認してお互いに頷き合った。
「後を追うわよ」
「はい!」
やる気十分な二人に、それとは対照的な者が一人。
「え~、本当にやるの?」
樹の方はあまり乗り気じゃない様子。この案件において、彼女は被害者と言っていいだろう。
昨日、部室に帰ってきた彼女の目に飛び込んできたのは、ほくほくと満足気な風&友奈と、意気消沈としたキリトの姿だった。
そのあまりに意味不明な現場に困惑した樹は、一先ず藪蛇は突かず、げっそりした和人を労わる役目に徹した。そして、今は首謀者二名による尾行に巻き込まれようとしている訳だ。
「これも和人の為よ、樹。勇者部は世の為、人の為になる事を勇んでする部活。それは部員相手でも例外じゃないわ。そう、これは和人の悩みを解決するっていう立派な奉仕活動なのよ」
――それはちょっと無理がある様な……
少なくとも、とうの本人である和人が望んでいないのだから、余計なお世話にも程がある。まあそんな事、今この場で言った所で意味がないのは、樹にも分かっていた。
「私達は二人に気付かれないように付いて行って、トラブルに巻き込まれそうなったら助ける。……でしたよね?」
「ええ、皆で和人をサポートするのよ!」
「「おー!」」
「後で和人先輩に怒られても知らないよ……」
やる気満々な二人を前に、樹は苦笑しながら和人の歩いて行った方を見つめた。
□
最寄りの家電量販店までは、美森の家から徒歩で四十分程かかる。
自転車に乗るなりすれば何ら苦労なく着く距離でも、車椅子生活の美森では行くにも一苦労だ。その為、普段から友奈がほぼ付きっきりでサポートしているのだが、当然やむを得ない事情で彼女が居ない時もある。
そういう時だけ、勇者部の誰かが手伝うのだが……
今回はそのうちの一つ、正に稀有な例という事になる。もっとも、これ自体が風先輩によって仕組まれた事だと言うバックグラウンドがある以上、珍しいも何も無い。
俺からすれば、ただの『余計なお世話』である。
「悪いな、美森。折角の休日なのに、俺の買い物に付き合わせる形になって」
「それはお互い様よ。私も必要な物があったし、むしろ急に友奈ちゃんが来れなくなって困ってたから、和人くんが一緒に来てくれて助かったわ」
買う物は主に部の活動に必要なものだ。
依頼で必要な物は、その都度部費か依頼主から支払われる形で買い足している。俺にはもっぱら電子機器修理の依頼が来る事も多いので、その為に必要な物を買いに来る事は割と多い。あまり専門的な物となるとショッピングモールや一般的な家電量販店では買えないが、今回は個人的に買いたい物も含めてそうでもない。
美森と俺は、それぞれ商品と睨めっこしながら会話する。
「今の所、ホームページの更新は俺と美森がやってるけど、そろそろ友奈や風先輩にもやり方教えた方がいいかもな」
「そうね。もし私達のどちらもがしばらく部活に来れない様な状況になったら、誰かが私達の代わりをする必要があるし……」
そんな会話をしながら、SSDやらコード回りの小物を買い物かごに放り込んでいく。
あらかじめ買う物は殆ど決まっていたので、俺も美森もそこまで時間は掛からない。あれこれ目移りする時間も含めて、大体一時間半くらいで片が付く。
仕送りは潤沢とは言え、決して無限ではない。控えめにと思いつつも、欲しいものが何分多いものだからどうしても出費はかさむ。
部で必要な物も含めて全ての買い物が終わった頃には、時刻は十二時をちょうど過ぎた頃合いになっていた。
いつもなら即刻家に帰る所だが、今は美森が居るのでそうも行かない。ならば、ちょっと早いが昼飯にするか?そう考えていると、ピロンとスマホの通知音が鳴った。
スマホを取り出してメッセージを確認する。
「げっ」
それを見て、俺は渋い顔をせざる負えなかった。
【お昼に誘いなさい。
「どうかした?」
「あぁいや、何でもない。それより時間もちょうど良いし、そろそろお昼にしないか?」
風先輩の提案に乗る訳ではないが、実際やる事も終わって暇になったのは事実だ。
このまま帰ってお開きにしても良いが、それだと風先輩がまた面倒な行動に出かねない。
「いいけど、何処にするの?」
「ここの近くにかめやがあっただろ?そこにしようぜ」
「……分かったわ」
美森は一見何もない場所をチラっと見た後に、コクリと頷いた。
――これ、彼女も風先輩達の尾行に気付いてないか?
今の一瞥は明らかにそうとしか思えない。実際、彼女が見た方向にはくだんの三人組が隠れている。だとすれば、首謀者である風先輩の未来は、縄で縛って吊し上げ確定だ。
俺も何度かやられた事はあるが、キレた美森を相手に抵抗など意味をなさない。ヘルかデッドの二択、なおどちらも地獄である事には変わりない。
近いうちに訪れるであろう未来に思いを馳せつつ、俺は美森を連れてかめやに向かう。
休日のお昼時とは言え、十分に座れる席はあった。普段から勇者部の面々と来ている慣れしたんだ店なのもあって、心の中のモヤモヤも多少は解れるというもの。
俺と美森はそれぞれ肉うどんときつねうどんを注文する。
「……ねぇ、和人くん」
「ん、なんだ?」
おずおずと、それでいて困ったような表情で美森が俺に訊ねてきた。
「その、最初は気のせいだと思ったんだけど……朝からずっとコソコソと付けまして来てるのって、もしかしなくても友奈ちゃん達よね?」
その問いに、俺は特に驚く事もなく肯定した。
「やっぱり、美森も気付いてたんだな?」
「えぇ、流石にあそこまで露骨だと……」
――おっしゃる通りで。
現在、風先輩達は俺達の後ろを取るような位置――ちょうど死角となるテーブルに三人で座っている。一応、彼女達も俺達に気付かれないよう気を付けてる
気配の消し方も雑だし、何より距離が近すぎる。
こんな秘密裏の"ひ"の字も守れないような尾行は、当然ながら事情を知る俺だけでなく美森にも気付かれる。
「あー、別に気にしなくていいと思うぞ?あいつらの単なる悪ふざけだし、主に"風先輩の"だけど……」
「でも友奈ちゃん、今日は用事があるって言ってたのに……」
「それは……まあ色々と事情があると言いますか。友奈も樹も、別に悪気があった訳じゃないんだ。ただ、風先輩の暴走に巻き込まれただけで……」
一応、友奈と樹の名誉は守ろうと思う。風先輩は知らん。
今回のデート(?)作戦は、風先輩が独断で勝手に押し進めたものだ。友奈も『協力した』という点においては共犯であるものの、彼女の性格や心情からして悪ふざけの意図はなく、百パーセントの善意だった可能性が高い。
故に、感情的には情状酌量の余地もある。
そして、樹に関しては完全に巻き込まれただけであり、真面目に悩み相談をした俺なんかもっと馬鹿みたいな目にあっている。
美森と過ごす時間自体は普通に楽しいから、風先輩に対して特別怒っているという事もない。要するに、彼女達の尾行に関しては既に割とどうでもいいと思っている。
やりたいなら勝手にやれってスタンスを取るのが、俺にとって最もダメージの低い躱し方だと分かっているのだ。
「そんな訳だから、さ」
「………それもそうね。でも、それなら風先輩は後でお仕置きね」
――南無。
悪いがここは首謀者として大人しく罰を受けてくれ、風先輩。
□
「うっ、何だか寒気が……」
「風先輩、風邪ですか?」
「うぅーん、こんな時期に風邪なんて引くかしら?」
距離的に二人の会話の内容が聞き取れず、風は自身に迫る危険に気がついていなかった。
そして、自分達の尾行がとっくの昔にバレている事にも気付いていない。指示を送った時点で薄々勘づかれる程度の予想はしているが、それがまさか潜伏場所まで筒抜けだとは夢にも思っていない。
「あっ、二人が動いたよ。お姉ちゃん」
「あの二人食べるの早いわね。引き続き追うわよ」
風の予定で言えば、そろそろデートも終盤戦。
ショッピングの後の事は和人自身の采配に任せてはいるが、まさかそのまま帰ろうとなんてしたら速攻で指示を出す気満々である。
□
六月ともなれば、日が沈むのも冬場よりかなり遅い。
三時半頃にかめやを出ると、出費の割に軽い買い物袋を一瞥してから思案する。
――確か、この後は何処か別の場所に美森を誘うんだったか?
場所の選出は俺に一任されているが、必ず余った時間で何処かに美森と二人で行くように言われている。
それ自体を守る義務や義理はない。しかし、俺自身もこのまま彼女を家に送り届けて終わりというのは味気なく感じる。そもそも今回、美森と出かける事になったのは俺の悩みを解決するためだった。風先輩に凄まじく曲解されたとは言え、その目的は未だ果たせてはいない。
「……なあ、美森。この後まだ時間あるか?」
「ん?ええ、大丈夫よ」
「じゃあ、ちょっと付き合ってくれないか?ほんの近所だからさ」
美森は首を傾げながらも了承してくれた。
そんな彼女を連れて向かったのは、夕暮れ時の港だ。
そこからは、夕日の沈む瀬戸内海が一望できる。
四時にもなると青かった空には薄く黄昏色のベールがかかり始め、幾ばくかのして夜になる。夕日に照らされた港には何隻かの船が停泊していて、無骨な鉄とコンクリが独特な物寂しさを演出する。
目的地は、その港を更にまっすぐ進んだ場所にある堤防の上。
そこなら海景色を遮る物がなく、夕方になると人も殆ど来ないので、何か落ち着いて物を考えたり、誰かと話したりするには最適だ。
そして、堤防の上へ進むには階段や背の高い段差を幾つか越える必要がある。
故に、美森を連れていくには彼女を車椅子からおろして、抱え上げる必要があった。
「ここからは抱えて上るけど、大丈夫そうか?」
「和人くんなら信用できるし、問題ないわ。お願いしていい?」
「了解、それじゃあしっかり掴まっといてくれ」
そんな様子の美森を横抱きに抱える。
腕にかかる負荷は思ったよりも軽くて、羽の様とは行かずとも、数十メートルほど抱えて進むくらいなら十分に可能だ。
俺自身、普段から特別鍛えている訳ではないが、勇者になって以降それなりのトレーニングはしているので、これくらいならどうという事は無い。
――だったら、わざわざ横に抱えず背負えば良いだろって?
彼女を相手に背負うなんてしたら、それこそこっちが羞恥でそれどころじゃなくなる。理由は察してほしい。
美森は俺の首に手を回してしっかり掴まりながらも、恐るおそるな様子で問いかけた。
「その……重くないかしら?」
「全然へっちゃら、むしろ軽いくらいだよ。美森こそ、普段ちゃんと食べてるのか?」
「失礼ね。私は和人くんと違って、食生活をおざなりにするような事はしないわ」
彼女の言葉に苦笑する。
万が一にも落っことしたりしないよう堤防の上を慎重に進んでいたが、数分と掛からずに端まで辿り着く。
目の前に広がるのは一面の海。この辺に住む人からすると何の変哲もない見慣れた景色だが、何か二人きりで話すならちょうど良いロケーションだ。
「この辺でいいか……下ろすぞ?」
「えぇ」
丁度いい段差に三森を下ろして、俺も隣に座る。
そこでようやく一息つく。
当初はどうなる事かと思ったが、蓋を開ければあっという間に一日は過ぎて、それなりに楽しく有意義な時間だった。
しかし、俺にはまだ解決すべき事柄がある。それを果たすのに、このタイミングは絶好のチャンスだ。
数秒ほど沈黙が続き、意を決して俺は口を開いた。
「前に、聞いた事があったよな?過去に俺と美森が、知り合いだったんじゃないかって……」
「あの時は驚いたわ。いきなりそんな事聞いてくるんだもの」
「ハハッ、確かに……」
それは部に入ってから三ヶ月くらいの時、何度目かの美森との依頼だった時だった。
今にして思えば、本当に変な問いだったと思う。
「でも、最初見た時から他人には思えなかったんだ。医者からは過去に面識がある人に会うと、そんな風に思う事があるって聞いてたし……余計にな」
不思議な物だ。
東郷美森という名前には一切の聞き覚えがなかったのに、その顔も、声も、初めて聞いたとは思えない程に既視感があった。それはきっと気のせいじゃないと思って、あの時の俺は逸る気持ちを抑えきれず、彼女に聞いたのだ。
『俺達、何処かで会った事あるか?』
だが、結果は芳しい物じゃなかった。
奇しくも、彼女もまた俺と同じように記憶喪失だったからだ。
「最近になって、よく私の事を見てたのも、それと関係が?」
その問いに、俺は驚く。
「……気付いてたのか?」
「あれだけ目で追われたら、流石に気付くわ。偶に声をかけても空返事で心ここに在らずといった様子だったし、何か悩みでもあるのかなって思ってたけど……」
そうか。
いや、そりゃそうか。
「それは……ごめん」
「……?何で和人くんが謝るの?」
美森が首をかしげる。
「だって、いい気分じゃないだろ?人にジロジロ見られるのって……」
視線を感じるというのは、それだけで言い知れない感覚を覚える。
それは不快感であったり、立場や関係、状況が違えば逆であったりもするが、この場合は間違いなく前者だろう。作業してても気が散るだろうし、だとしたら悪い事をしたと思っての謝罪だった。
でも、美森は首を横に振った。
「確かに、見ず知らずの人だったらそうだけど……和人くんが相手ならそんな事ないわ。むしろ、心配の方が強かった」
曇りない純粋無垢な目に見据えられて、にべもなく頬を掻いた。
返答を出せずにいる俺に、美森は俯きがちに言った。
「……他人に思えなかったという話なら、私だってそうよ。私も和人くんを見た時、同じように思ったもの」
胸の前に手を置いて、何かを大切にするような仕草で美森は言う。
「私も最初は期待してた。もしかしたら、私の忘れた過去をこの人なら知ってるかもって……」
「だとしたら、お互いに当てが外れたな」
「うん。でも、和人くんは今になってそれがまた気になりだしたのよね?」
昨今の心中を見事に言い当てられる。
ここまでの会話の内容からして察せられるのは当然だが、見透かされるというのはやはり少々むずがゆい。しかし、ここまで来て否定する意味もない。
「ああ、勇者に変身した直後からかな?こう、無意識に……何かが胸につっかえるような感覚を覚える事が多くなった」
勇者への変身と、バーテックスとの戦い。
俺だけ特殊な力を持ち、他の勇者とは丸っきり別の戦い方をする。それが、忘れてしまった過去と全くの無関係だとは思えない。大赦はずっと白を切り通しているが、その予感は次第に確信へと変わりつつある。
俺は無意識に、その最後のピースを探しているのかもしれない。
「今日の事も、それを友奈に相談したのがきっかけだった」
「そう……」
何かを考えるような顔をした美森。その直後、彼女はこう言った。
「それなら、これからは私も和人くんの記憶が戻るように協力するわ」
「え?でも、いいのか?」
「勿論よ。それに、和人くんの記憶が戻れば、私の記憶を探る手がかりにもなるでしょ?」
確かに、理屈は通っている。
お互いにメリットがある。しかし、元は俺の身勝手な事情から始まった訳だから少しだけ負い目もある。
「だけど……」
「
「うっ」
ぐうの音も出ない。
どうやら美森は、俺以上に俺の事を理解しているらしい。
「謝るのは、本当に悪い事をした時だけでいい。私が良いって言ってるんだから、和人くんが気に病む事なんて一つもないのよ?」
そう語る彼女の言葉が、俺がいかにちっぽけな事を気にしていたのかを気付かせてくれる。
「そうだな……ありがとう。何だか、気持ちがすっと軽くなったよ」
「ふふっ、どうしたしまして」
こうなってようやく、素直な気持ちを口にする事が出来た。
こんな風に自分を思ってくれる存在が傍に居て、心底幸せ者だと思う。今だからこそ、それを深く感じるのだ。目が覚めて、頭の中にある空白がひたすらに悲しくて、傍にはそれを埋めてくれる人は居なくて、ずっと一人で抜け殻みたいに生きていた。
それが今はどうだ?
過去の事はこれからも調べて行こうと思う。しかしそのせいで"今"を蔑ろをする事は許されない。
話していると時間が過ぎるのは早くて、気が付けば空は確かな夕暮れ時を迎えようとしていた。儚くも、美しい景色を眺めながら美森が言う。
「本当に良い場所ね。こういう所、この足じゃ一人で来れないから和人くんが居て良かった」
「言ってくれれば、何度だって連れてくるよ」
「そう?じゃあ今度は『高屋神社』まで、抱えて行ってもらおうかしら?」
「流石にそれは勘弁してくれ……」
美森のユーモアは時々冗談に聞こえないから恐ろしい。
だが、そんな彼女だからこそ、勇者部には必要なのだ。
全く予想もつかないような奇想天外な行動に出る事もあれば、根は生真面目で淑やかで、そういう多面的な要素を持つ彼女だからこそ、勇者部をより活気のある部にする事が出来ている。
そうした時間がこれからも続けばいいと思う。
これからも、ずっと……
と、物思いふけるのもいいが、暗くなると堤防の上は危ないので、あまり長居は出来ない。
「結構長く話込んじゃったし、暗くなる前に帰るか?」
「そうね。でも和人くん、忘れてない?私達にはまだやるべき事が残ってるわ」
「やるべき事?……あぁ、そう言えばそうだったな」
美森の言葉に俺は一瞬首を傾げてから、その意味する所に気付いて得心する。
彼女は視線を俺達が上ってきた階段へと向けると、口を開いた。
「出てきてください、
その声に「ギクッ」というセルフ擬音が聞こえて、ようやく観念したのかおもむろに犬吠埼風が姿を現した。その後ろには友奈と樹を伴っており、まるでいたずらがバレた子供みたいに苦笑を浮かべていた。
「い、いやぁ流石ね、東郷。まさかバレていたとは……」
「言っときますけど、俺も美森も最初から気付いてましたからね?というか、途中から普通にメッセで指示とか送って来てたし、もはや隠す気なかったでしょ?」
「あはは……お姉ちゃん、もう諦めた方がいいと思うよ?」
「うぅ~、だってぇ……」
この部長をして妹の方がずっとしっかりしているように見える。
俺の方は何やかんや風先輩のお陰で美森とちゃんと話が出来た側面があるので、そこまで責めるつもりはない。しかし、巻き込まれただけの美森は別だ。
「ごめんなさい東郷さん!嘘ついて、騙すような真似して……」
友奈は真っ先に美森に頭を下げた。
それに対して美森は特に怒っているという様子もなく返答した。
「いいのよ、友奈ちゃん。確かに、最初はちょっとショックだったけど……でも、そのお陰で和人くんとちゃんと話せたし、今回は許します」
案の定、美森と友奈の間に変なわだかまりが出来る事もなかった。
全ては一件落着、そんな雰囲気が場に流れる。しかし、次に美森が風先輩に向けて放った視線と言葉によって、それらは一瞬にして凍り付いた。
「それでは――風先輩?こうなった事情について、ちゃんと話してくれますね?」
般若や鬼や、そう表現できる程の圧。
樹なんか顔を真っ青にして「ひっ」と喉を鳴らしていた。
向けられた本人である風先輩なんて、本当に先輩かと思えるくらいには慌てふためきたじろいでいた。嘘や言い逃れは通用しない。それを示すブラックスマイルは、首謀者を捕らえるには十分な威力を持っていた。
「は、はい……」
それから、美森に事情を話した風先輩は翌日、部室で縄で縛られ三時間膝に重しを乗せて正座させられる事となった。
一応、描写はしてませんがキリトくんが悩んでた事についてはここから数日を経て解決してます
やはりこの二人にはちゃんと話を割り振らなければと二話かけた日常回となりました
次回は遂に赤い勇者が登場します
因みにタイトルをナンバリング形式にしたのは単純にタイトル案の底が尽きたからです()